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ニュースレター(機関紙)

バンコク乳幼児・小児健康相談報告
NL04110103
タイ、バンコク、小児科

バンコク乳幼児・小児健康相談報告


1.実施期間
2004年7月30日(金)~8月1日(日)

2.実施者
聖徳大学 人文学部 児童学科 教授 松浦信夫 医師
(財)海外邦人医療基金 小山 明

3.実施場所
タイ国 バンコク市 Samitivej 病院

4.相談者数
講演会出席者:74名
健康相談:55名  

5. 実施概要
本年度は、タイ国日本人会より実施の依頼を受け、各ボランティアの方々、Samitivej病院、日本国大使館、外務省の全面的のご協力を得て、日本人会主催の行事として実施した。  

相談内容等詳細については次項の松浦先生の報告に譲るが、他の都市での健康相談の実施結果を含めた全体の傾向として、発達関係の相談が増えている。

言語を含めた発達系の相談内容については深刻なケースが多いにも拘わらず、海外では信頼出来る相談先が限られていることから、発達系を中心とした幼児小児の健康相談は今後基金が力を入れていく必要のある分野である。
                  

6.担当医師レポート

バンコク乳幼児・小児健康相談並びに講演報告
聖徳大学 人文学部 児童学科 教授 松浦信夫
 
I.実施期間及び場所
平成14年7月30日(金)Samitivej病院で講演及び健康相談
7月31日(土)~8月1日(日)Samitivej病院で健康相談

II.実施までの経過
 昨年まではジャカルタにおいて在留邦人の乳幼児に対して発達・健康相談を担当してきたが、今年はタイ国バンコク市で医療相談を行うことになった。現地の正岡氏、JOMFの小山氏の間で打ち合わせを行い、現地の要望をふまえて例年のジャカルタ健康相談とは以下の点を変えて実施することになった。
1)「子どもの心」と「ことばの発達」を中心にした講演をする。
2)乳幼児健康相談だけでなく、もう少し年齢の枠を広げた乳幼児・小児健康相談とする。
3)対象者が多いので3日間にわたって相談を実施する。
以上のことに対応して準備を行った。特に私のスケジュールと夏休みにはタイ国より一時帰国する人が多いことを考慮し、日曜日を挟んだ7月末に実施することになった。
 
III.事前の準備
 今回は初めてのタイ国での健康相談であったことと講演を行うことでその準備に多くの時間を費やした。特に育児についての講演は、今までに行ったことがなかったので全てのスライドを新たに作成する必要があった。いろいろな参考資料から画像を取り出しPower-pointで編集するのに多大な時間を費やした。

 国際テロの問題があり、空港での管理が厳しくなったこともあり、液体を含めて持参する医薬品を極力少なくした。消毒用アルコール、イソジンガーグル(うがい薬)は外し、医薬品の種類も極力少なくした。

 現地日本人会の準備はよく整っていて、3日間に受診する予定のリストおよび相談希望内容があらかじめ現地より送られてきた。当方の準備の上で非常に有用であった。

 発達の問診には時間がかかるため、精神運動発達の評価のため、昨年同様遠城寺式・乳幼児分析的発達検査法を用意し、予め母親に記入して持参してもらうこととした。生育歴、発達歴、家族歴等は昨年通り予め記載してもらい、現在心配なことなどを記載してもらう問診票を作成した。又、問題のあった子どもについては、昨年の南里先生の受診表コピーをあらかじめ送ってもらい、情報を得た。

IV.出発
 今年も台風の直撃を受け、成田に前泊を考えたが、どうにかその必要もなく、29日予定通り11:00発JAL 717便にてバンコクに向け出発した。15:30予定通りにバンコクに到着し、正岡氏の出迎えを受けた。Westin Grande Sukhumvit Hotelに到着し、夕食をとりながら情報交換を行なった。

V.講演会
 30日(金)の午前中にSamitivej病院講堂にて、講演会を開催した。テーマは「子どものこころ・子供のことば-育児の知恵-」で80人近い父母が集まった。話の内容は
1)こどもの成長、発達の定義
2)こどもの発達:遺伝と環境の関わり
3)インプリンティング(刷り込み)とは
4)ことばの発達
5)こどもの発達、ことばの発達とメディア
6)こどもの発達障害
 以上の内容を約2時間講演し、その後30分くらい質疑応答を受けた。皆大変熱心に聞いてくれたと思われた。又、かなり深刻な問題について質疑応答を受けた。講演の後、参加した父母とコーヒーを共に具体的な相談を受けた。
その後の昼食会では病院幹部やスタッフ20~30名ほどが集まり、有意義な情報交換の機会であった。

VI.乳幼児・小児健康相談実施

7月30日(金)午後 相談者16名。
低身長、熱けいれん、血便、自閉症様行動、広汎性発達障害、斜視、持続する咳嗽などの相談が寄せられた。

7月31日(土)午前 相談者8名。
今回の相談で気がついたことは日本男性が現地の女性と結婚しその子どもの育児についての相談が多かったことである。育児習慣が日本と違い、離乳食も異なる状況下で父母共に育児に不安を抱えての相談が多かった。体重が増えない、哺乳力が少ない、かんしゃくを起こしやすい、ことば・社会性の発達が遅いなどかなり深刻な問題があった。育児の問題のことでも多くの時間が必要なのに、その上にことばのことで十分な説明が通じない問題があり、深刻だが十分に応えられない症例もあった。

7月31日(土)午後 相談者12名。
今回の相談は乳児、小児も含まれたのでインドネシアの相談と基本的に違っていた。ことばの遅れ、低身長、登校拒否。学習障害、かんしゃく、友人との関わり方など何れもかなり深刻な問題が多かつた。

8月1日(日)午前 相談者8名。
今回も全て1歳以上で相談の問題も乳児相談と異なるものであった。頭痛、広汎性発達障害、歯牙の発育不良、ことばの遅れなどであった。

8月1日(日)午後 相談者11名。
ことばの遅れ、運動発達障害などの相談が多かった。

 今回のタイ国訪問は私にとって3回目であった。1回目は空港の近くのホテルで開催された小児糖尿病アジア太平洋州会議であった。2回目はチェンマイで開催された小児糖尿病・内分泌に関するアジア太平洋州会議であった。第1回訪問時はものすごい交通渋滞であった。2回目は目的地がチェンマイでバンコクそのものは訪問しなかった。今回の印象は急速に交通事情が改善していると共に、経済状況が急速に進んだように思われた。自動車台数はすごく増加し、又新しい車が走っていた。

 昨年までのジャカルタ訪問に比し年齢層が高かったこともあり、より問題のある症例に遇うことが出来た。その中の一つは現地の女性と結婚している家族の育児問題であった。育児は一つの文化であり、母親を介して次の世代に伝えられる。しかし、その文化の違いもあり、その間に挟まれている子ども達が一番苦しんでいるのかもしれない。健康に育っている子どもであれば何も問題はないと思うが、発達障害を持った子どもをもったご両親の苦労は大変問題のように思われた。基本的に育ってきた過去の文化の違う夫婦の絆を維持していくのは大変なことと思う。

 日本人夫婦の場合、インドネシアに比し治安も良く、母親が比較的自宅に閉じこもっていることはなく、いろいろな社会活動をしている人が多いように見られた。ただ、対象児の年齢巾も広く、広汎性発達障害、不登校、ことばの遅れなど器質的な異常をもった子どもの相談が多かった。日本にいても難しい発達障害を持って生活していくのは大変苦労の多いことと思われる。ただ、インドネシアに比し医療機関、医師の面ではタイの方が優れており、実際神経発達外来に通っている方もいることから、その分恵まれているように思われた。

 この問題とは別にSamitivej病院の小児科の先生と話し合う機会があった。又、実際患者さんの医療の状況について話を聞いた。タイの病院にとって日本人患者は大お得意さんであり、如何に日本人を集めるかに努力が払われていた。日本人のコメディカルスタッフを雇用し、日本人へのサービスに努めている。Samitivej病院も多分その典型で今回の健診にも病院をあげて協力してくれているように思われた。又一方、過剰な医療を行っているようにも思われた。熱けいれんと思われる子どもに1回のけいれんでは本当に必要かと思われるあらゆる検査が指示されていた。熱けいれんだけでなく他の疾患についてもかなり過剰な医療が行われているような印象を持った。インドネシアの場合、一部のケース以外は日本人医師の診療を受けており、患者サイドも治療の内容がわかっていた。タイの場合、全てタイの医師により行われておりその違いがうかがわれる。