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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(24)「海外赴任者のストレス~海外での心のケア1」
NL04110102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~海外での心のケア1


シンガポール日本人会診療所
小川原 純子


数ヶ月前、クアラルンプールの無料情報誌の取材を受け、「シンガポールの医療事情」として、当診療所心療内科を紹介していただいた。記事が発行された週は当診療所にクアラルンプールからの問い合わせが相続き、最近では、300km離れたシンガポールに診察に訪れてくださる方も増えている。こちらが「どんなに出費が掛かる事であろう」と気を揉んだり、御家族の負担を考えたり、余計な心配をしてしまうこともある。
その一方で、「機会があれば、今すぐにでも心療内科に相談したいと思っている人」が、こんなにも多く海外で生活されていたのかと思うと、海外での心のケアについて、大いに考えさせられる事例であった。

シンガポール在住の方の場合、初めての診察から1~2週間後に2回目の診察を設定する。まず、海外では患者さんは病気であろうとも、自ら自立して仕事・家事・子供の世話を行わなければならないので、眠気などの副作用に配慮し、病状に比してかなり少量の内服から開始するため、症状の改善が即座に認められないことが予測されたり、患者さんが副作用を必要以上に我慢しないためでもある。
3~4回このような間隔で治療を行い、症状が安定し出したところで、受診間隔を3~4週間に開けてゆく。
とにかく、初回に受診していただいた後の急性期の対応が治療の鍵となる。最初の数回の診察で、「心療内科にかかって少しずつ楽になってきたなあ・・・」と実感していただくことが、治療継続・お互いの信頼関係の確立に非常に重要である。

シンガポール国内の患者さんには、このように適時に短期的に経過を見ながら対応することが可能であるが、300km離れた外国に住む患者さんに同じスタイルを当てはめることは不可能である。今まで、ジャカルタからの患者さん・日本に帰国した後の相談など、遠隔地からの相談にも出来るだけ対応してきた。外来受診が難しければ、その間は電話・ファックス・メールなども利用することがあったが、治療を成功に導くことは非常に難しいというのが心療内科の現場での正直な感想である。やはり間接的な伝達方法を使用するだけでは、診察・面接するのと同じ診療の質を出すことは容易ではない。

先日、海外における精神医療のあり方を研究していらっしゃる先生にお会いして、ご意見を伺ったが、やはり一人の医師で背負い込める守備範囲というものがあって、それを広げ過ぎても、医者自身がオーバーワークになって、いずれは治療システムが破綻してゆくであろう、というお話であった。

「今すぐにでも相談に伺いたい」「航空運賃を支払ってでも伺います」患者さんに必要とされる限り、きちんとした医療を提供してゆきたい。当心療内科では、治療効果が低くなる可能性も患者さんにきちんと伝えながら、今後も積極的に遠隔地の患者さんを受け入れてゆくことになるであろう。そして、患者さんと共に成功例を積み重ねながら、実地の現場から、新しい医療スタイルの提案が出来たら、喜ばしいことである。