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ニュースレター(機関紙)

クアラルンプール・シンガポール子育て悩み相談報告
NL04100105
マレーシア、シンガポール、小児科

クアラルンプール・シンガポール子育て悩み相談報告

1.実施期間

2004年6月26日~6月29日(クアラルンプール)
2004年6月30日(シンガポール)           

2.実施者

東京小児療育病院 小児科 椎木 俊秀 先生
(財)海外邦人医療基金 小山 明

3.実施場所

クアラルンプール日本人会館、同日本人会幼稚園、同日本人学校
シンガポール日本人会診療所、同日本人会館

4.相談者数

○クアラルンプール
健康相談:68名
講演会:24名
○シンガポール
健康相談:7名
講演会:約80名

5.健康相談実施方法

他都市での幼児健診と同様、基本的に子供の病気や育児の悩みを持っている親の悩みの解決を第一義とする健康相談とした。

従って、育児上のことも含めて何らかの問題があると親が考えている乳幼児、子供のみを相談の対象とし、元気で問題ないと親が判断した子は対象外とした。

申込書に、健診申込み理由、親の悩み等を記入してもらい、それらを一覧表にして、事前に先生が相談内容を把握できるようにした。

対象者を限定したが、申込者数は68名となり、2日半の日程で、一人平均20分弱程度の相談時間となったことから、一部相談者には時間不足となり、スケジュール遅れから、長時間お待ち頂いた相談者もいた。

尚、相談者には予め「遠城寺式・乳幼児分析的発達検査表」(0才~4才8ヶ月用)を配布し、事前に親に記入してもらい受診日当日に持参頂いた。

今回の相談実施に当たっては準備段階から健康相談終了までクアラルンプール日本人会、シンガポール日本人会診療所に全面的に協力頂いた。

6.相談結果及び講演会

相談結果及び講演会については次の「7.担当医師レポート」参照

7.担当医師レポート

クアラルンプール、シンガポール子育て悩み相談についての報告
東京小児療育病院小児科医 椎木俊秀

【はじめに】2004年6月26日~6月30日までクアラルンプールにて、6月30日シンガポールにてそれぞれ子育て悩み相談を行った。
ここにその概要と特徴について報告する。

Ⅰ.マレーシア

1. 子育て相談
1)期間および相談件数:6月26日、6月27日、6月29日の3日間にわたって子育て悩み相談を行った。参加人数はそれぞれ30名、31名、7名、合計68名であった。
2)相談内容:下記のとおり多岐にわたった。
( )内の数字は件数。相談件数は一人で複数の場合もあり、相談人数とは一致しません。シンガポールも同様。

斜視(1)、まぶしがる(1)、扁桃腺肥大(1)、中耳炎(1)、口臭(1)、斜頸(1)、喘息(1)、肋骨変形(2)、すぐ風邪をひく(1)、よく咳が出る(2)、心雑音(2)、手の振るえ(1)、便秘・下痢(3)、自家中毒(1)、性器が小さい(1)、湿疹・アトピー性皮膚炎(13)、あざ(2)、しこり(1)、発育不良(1)、姿勢が悪い(2)、食事アレルギー4、熱性けいれん(1)、予防接種(5)、授乳の方法(1)、離乳食(1)、哺乳瓶はいつやめる(1)、偏食・少食(2)、夜泣き(2)、おむつがとれない(1)、夜尿・遺尿(4)、テレビの影響(1)、人見知り(1)、指しゃぶり・爪かみ(2)、幼稚園に行かなくなった(2)、親に反抗的(1)、チック(3)、自傷行為(1)、発達の遅れ(6)、多動・不注意(1)・衝動性(3)、自閉症と言われている(3)、パニック(1)

 皮膚に関する訴えが最も多かった。程度は軽いものから重いものまであったがこちらに来てから悪化したという方が多かったのが印象的だった。

 予防接種についての相談はほとんど日本と当地との予防接種のやり方の違いについての相談であった。

 夜尿についても相談が多かった。小学生になっても続いているお子さんが少なくなかった。

 夜泣き、指しゃぶり、チック、登園拒否など心因的な要因を疑わせる訴えも多かった。

 重度の発達の遅れ、自閉症、ADHDなどの障害を持っている方の親御さんのからの深刻な悩みの相談も予想以上に多かった。

 発達のチェックに来られた方も話していくといろいろな悩みがあった。上記の相談内容にはそのような内容も含まれている。

ADHD、心雑音、中耳炎、扁桃腺肥大、夜尿、視力、あざなどの相談については医師の診察を勧めた。

2.その他
 6月28日午前に乳幼児の心の発達について講演を行った。
 6月28日午後に日本人学校の先生方との懇談会を行い、行動障害を起こしている生徒さんたちについての相談を受けた。
 6月29日午後に日本人会幼稚園の先生方との懇談会を行い、質問を受けた。

3.感想
 病気のみならず特に子育て上の問題や発達上の問題などについて、コミュニケーションの問題、文化の問題などがあり親御さんたちは大きな不安と悩みを感じていらっしゃる様子がよくわかった。幼稚園、学校の先生方も同様に園児や生徒たちの身体的、発達的問題についてなかなか相談する場所がなく悩んでいらっしゃる様子が伺えた。こういう問題を少しでも和らげていくための努力が関係者によって行われる必要があると思われる。

 まず予防接種の受け方についての疑問が多いので日本人会、大使館などが中心になり専門家の意見を聞きながら家族に情報提供をしていけるシステムを作る必要があると思われる。

 悩みを持つ家族同士のつながりを強めていく必要もあると思われる。しかし、当地にいる期間はそう長くない方が多いためなかなかつながりを持ちにくいというお話を伺った。現地に長期に滞在する人の中に相談員を養成し、そのような方が中心になり関係が持てた日本の専門家と連絡を取りながら対応をしていくことも考えていいのではないかと思われる。日本から専門家が行って相談を受けることも大事であるが、年に1回では継続的な相談にはのれない。それに対して現地に相談員がいればもっと継続的に相談にのれる。希望者がいれば日本において指導員の教育をすることにJOMFが協力するのもひとつの手ではないかと思われる。

Ⅱ.シンガポール

 シンガポールは急遽決まった訪問だったので6月30日の夕方から夜にかけての短い滞在だった。しかし、関心は大きく講演会にも多くの方が参加され期待の大きさが感じられた。

 クアラルンプールと同じ講演を18時頃から行った。感想としては勉強になったという意見をたくさんいただいたが
、もう少し具体的な事例を挙げながらの話の希望もかなり見られた。一般的な話だけでは実感として乏しいものになるので今後はもっと実例を挙げながらのお話にできたらと思った。

 個別の相談は7名で20時から23時頃まで及んだ。相談内容はADHD(2)、学習障害(2)、自閉症(1)、発達の遅れ(3)、人見知り(1)であった。こんな遅くまでお子さんを連れての相談は大変であったと思うが、それだけ切羽詰った親御さんの気持ちと、なかなか海外において気軽に相談ができない苦悩をこちらでも垣間見る思いがした。

Ⅲ.最後に

 今回のクアラルンプール、シンガポール訪問では私自身多くの貴重な経験ができました。いろいろお世話になった両日本人会の方々をはじめ関係各位に心から感謝いたします。


8.全般

 クアラルンプール、シンガポール両都市共に幼児健康相談を実施したのは、今回が初めてであった。

 そもそもの発端は、クアラルンプールで3年前に始まった歯科健康相談の幼稚園児健診において、歯科医師だけでは手に負えない子供がいるので、小児科医に同行をお願いし、歯科健診時助けて頂いたらどうかとの歯科医師からの提案であった。

 叉、シンガポールに於いても、日本人会診療所医師より、手に負えない子供達が増えているので、神経発達関係の専門の先生に来てもらいたいとの依頼があり、クアラルンプールで相談を実施するのであればシンガポールに立ち寄ってほしいということで、急遽相談及び講演会を行なうこととなった。シンガポールでは上記の事情から、健康相談実施の事前PR期間が数日しかなかったにも拘わらず、講演会には80名以上、相談にも多数の申込みがあり(実際には時間の関係でそのうち7名のみの相談にとどまった)、海外に於ける育児問題の深刻さが伺われた。

 他都市での実施結果と同様、今回の健康相談は講演会も含め、極めて好評であり、多くの相談者より来年度以降の継続実施を要請された。以前の報告書にも述べたが、海外での子育てに関する親の悩みの解消を目的とする今回のような幼児相談は、現在、若返りが進んでいる海外赴任中の邦人の間で切実に求められている医療サービスの一つであり、今後の当基金の主力事業の一つと位置付ける事が出来る。従って、椎木先生よりご提案を頂いている内容の検討も含め、今後とも、この種の健康相談の一層の充実を図っていきたい。