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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(23)「海外赴任者のストレス~小学生の苦労」
NL04100102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外赴任者のストレス~小学生の苦労


シンガポール日本人会診療所
小川原 純子


先日、マレーシアの在留邦人を対象にしている無料情報誌‘日馬プレス’の取材を受けた。
その後、マレーシアから患者さんの問い合わせ・受診が増加したが、その多くが子供関係の相談であったことに驚かされた。
どの相談も深刻で、海外での子供の教育・家庭の役割の重さなどを痛感させられるケースが多かった。

シンガポール日本人会診療所では、夏休み明けのこの時期、子供の登校しぶりの相談が増加する。シンガポールの日本人小学校では、バス通学がほとんどである。学校と住居の距離にもよるが、最も離れた地域に住んでいる場合、朝6時半に起床し、7時過ぎにはスクールバスに乗って、30~40分の通学時間を要する。当地では、年間を通して7時に日が昇り、7時に日が沈むため、日の出前の起床である。

夏休み、久しぶりに日本に戻り、何の義務も宿題もなく遊びぬいてくる。楽しいことが一杯あって、習い事も宿題もない日本での生活は、どんなに楽しいことであろう。
夏休みをぎりぎり一杯まで満喫し、登校の2~3日前にシンガポールに戻って来る子供たちも少なくない。日の出前の起床に体調を戻し、30分のバスに慣れるには子供たちもさぞかし大変なことであろう。

身体的なリズムを、‘シンガポールスタイル’に戻すことは大変である上に、日本では、母親が一緒に行動していることが多く、母親との精神的密着度・一体感も増している。登校によって母親から引き離されるということで、小学校低学年児では特に不安が増しやすい。
また、母親自身が海外赴任地に再び戻ることに強い不安感・孤独感を抱いたりしている場合には、この精神状態が子供に影響を及ぼすことは、もちろん考えられる。

もう一つの問題は、インターナショナルスクールに通う子供たちである。当地では、在留邦人の多さから、日本の学習塾の進出も著しい。「折角海外に来たのだから、インターナショナルスクールで英語を学ばせた。だけど、いずれは日本に戻るのだから、日本での学習に遅れの無いようにしておきたい。」こういった子供の将来に対する親自身の不安を解消すべく、帰宅後に学習塾での勉強することも可能である。
ところが、子供だって当然限界がある。学校で頑張って、塾で頑張って、当初は良くとも燃え尽きてしまうケースも少なくない。

「先生、この子は全然宿題を意欲的に取り組まない。他のお子さんのように段取りが自分で出来ないみたいです。」「宿題をやりなさいと言っても、最近は反抗したり、無視してくる。その度に、私がイライラして、ものすごい勢いで怒ってしまうんです。」「子供がうそをつくんです。今日は宿題が無いって・・・」

子供の問題は、親が不安に駆られて、責め立てれば責めたれるほど、どんどん悪化してしまう。「子供の将来への不安」の裏側に「親自身の不安」が見え隠れする。
シンガポールでは、その不安を消し去る方法がいくつもあり、その隙間に子供が深くはまり込んでしまっている事もある様である。

「日本に戻ったときに、この子が困らないようにやってあげているのに」「日本に戻ったときに、子供に恨まれたら嫌だから・・・」最後にご両親からこんな言葉を聞くことも多い。
子供が困ったら、「自分たちはもっと困る」から、‘十分やれることはやってあげたでしょ’と言い切れるように子供を追い込んでいませんか。
一日に一度は、子供が心から楽しめる瞬間を作って欲しい。一日に一度、子供のいい笑顔を見ていないようなら、親のほうもじっくりと今の生活を見直して欲しい。