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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(22)「海外赴任者のストレス~帰国への不安2」
NL04090102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

海外メンタルヘルスの現場から(22)「海外赴任者のストレス~帰国への不安2」


シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

長期間のアジア海外赴任を終えて帰国する方々は、「自分は日本から随分離れているけど、日本に帰ってうまくやってゆけるのだろうか?」「日本で通用するだろうか?」という不安を感じるようである。それくらいアジアでは、生活のテンポ・仕事のスタイル・職住接近した環境・車通勤など日本では手に入りにくい環境が整っている一面もある。また、プライベートの時間を考えても、ゴルフは日本に比して安価で至便であり、通勤時間が短縮される分、家族との時間も作りやすい。「シンガポールの生活のほうが人間らしいですよ。」という感想をおっしゃる方も少なくない。

仕事上でも、「海外赴任先での仕事はやりがいがあった。」という感想をよく耳にする。少数の人数で取り仕切るため、システムが簡略で自己決断できる範囲や自己裁量権が広がり、自分の努力・自分の力量がすぐに仕事の成果として反映されるシステムが、仕事へのやりがいに繋がっている様である。良い成果が出始めれば、仕事から非常に大きな充実感を得られ、成功体験へとつながる。ところが、この充実感から、日本に帰国し、大きな組織の一員に再び組み込まれることへの「違和感」を生むことがある。

この「違和感」が高じて、本帰国して、現在の海外生活を手放すくらいなら退社して海外で転職しよう・独立しようと考え、即座に実行に移る方もいらっしゃるようである。さらに複数の要因が関与していると思うが、海外赴任を終えて日本帰国後に適応障害やうつ状態を経験する人もある。このように、日本帰国辞令が大きな人生の転機になることは事実であるが、どの道を選んでも、非常な努力と苦労が必要となるであろう。

もう一つ帰国時の特徴的な心理葛藤がある。一人の自己裁量権が高く、自分が仕切る形である分野の仕事全体を把握している場合、後任者に引き継ぐ際に、何とも言えない喪失感を覚える。自分が一から築き上げた大きなもの、例えば、立ち上げたプロジェクト・広げた人間関係の輪・あるいはお客様との信頼関係を手放すときの喪失感が、後任者に対する不適切な不安や、逆に多大な期待として向いてしまうこともある。この葛藤が著しいときには、「こいつに任せて大丈夫なのか?」という不安感に襲われ、引継ぎに支障を来たすケースもあった。
ただし、実際に担当者が変わり、仕事の成果が大きく変化したケースもあり、人材の大切さに驚かされることも多い。企業側も、海外では、日本と事業スタイルが異なることを再確認する必要がある。個人の資質や力量に掛かる比重が非常に大きいシステムになっている特徴を理解した人員配置も重要であろう。