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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(21)「海外赴任者のストレス~一時帰国」
NL04080102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

夏休みのこの時期、シンガポール在住の日本人の多くが休暇を利用して日本への一時帰国を行っている。他の海外赴任地を経験したことがある人からは、「シンガポール赴任は本当に恵まれています。たった6時間で日本に帰れるし、時差も1時間。帰りたければいつだって帰国できるのですから。」自分が生活していても、本当にシンガポールは住みやすい外国であると実感する。

親や親戚・親しい友人に会って、これからの生活を頑張りぬくエネルギーをもらってシンガポールに戻ってきて欲しい。シンガポール事務所に一人で勤務し、3年になるAさんは「日本で昔からの友人にあって、大笑いしてきました。久しぶりだったな、あんなに笑ったのは・・・」ととても良い休暇を過ごせたようでした。学生でシンガポールに来て4ヶ月のBさんは「友達もいろいろな高校で頑張っていました。自分は、外国に来て、一人だけ苦労していると思っていたけど、どこにいても同じ。友達に負けないよう、自分はシンガポールで頑張らなくっちゃ。」と、夏休みを機に気持ちが吹っ切れたようでした。素敵な休暇は、心の基盤をしっかりと支え、治療上症状の改善にも大きく役立ちます。

一方で、せっかくの休暇が台無しになってしまうケースもあるのです。「久しぶりに実家に帰りましたが、以前と同じように親ともめてしまいました。本当は、甘えて休憩したかったのに・・・だめですね。」「夫の両親の家に寄りたくない。子供だけ行かせましたが、夫ともめてしまいました。」「海外生活をしたことのない友人には、こちらの苦労は分からなかったよう。話してみたけど、あまり伝わらなかった。」「日本に戻った際に、会社にも寄りましたが、本社の人達から業務のことでかなり厳しく責められてしまいました。」
一時帰国を経て、「自分はやっぱり孤独なのだ」と強いメッセージを送られて、シンガポールに戻った場合、症状が急速に悪化するか症状が固定化してしまうことも多い。

実家のお母さんが、海外赴任から一時的に戻った子供ともめ事を起こしたいと望んでいるわけはないし、本社の人達が、激励する気持ちや今後への期待もなく叱責・責任追及に終始するという状況も考えにくい。メッセージを出した人と受けての間のギャップをなるべく「ポジティブ」思考に変換して、一時帰国に送り出してあげることが、心療内科の一つの役割でもある。時には、一時帰国を前に「夫の両親の家にどのくらいの期間滞在すべきか?」という話し合いを心療内科の外来で行うこともある。

私にとって、患者さんが日本から戻ってくる9月・10月が楽しみでもある。心療内科で苦心してやった種まきが、どんな結果になっているのか? 種が、完全に干からびて、ぼろぼろになっていないかという不安・もしかしたら、少しでも芽が出て成長しているのではという期待。夏休み明けの9月が、治療の再スタートという感覚である。

「日本に帰ったら、自分には大事な友達が一杯いて、友達にとっても自分が大切な存在だということが分かった。何か緊張していた気持ちが溶けて、涙もろくなったかな。泣けた。」「日本に戻りたいわけじゃない。だけど、いつでも戻ってもいいんだよ。戻る場所があるんだよ。と分かったから、シンガポールで頑張れる。」これが、海外で生活するキーワードかもしれません。