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ニュースレター(機関紙)

留学に際して必要な健康診断書について(1)
NL04050104
健康診断、予防接種

日比谷クリニック 
奥田丈二

●はじめに

法務省入国管理局の統計によると、学術関連(留学・研修・技術習得・学術研究・調査)目的として出国した日本人の数は、1990年で15万人であったのが2000年には約2倍にあたる29万人余りに達し、景気の低迷にもかかわらず絶えず増加傾向にあります。
留学先は、中国を中心に英語圏外の留学が著明な増加をみせておりますが、米国が全体の4割以上を占め現在もトップを維持しております。

海外に留学する際には健康診断書(Health Certificate)が必要となる場合があります。

旅行者の増加に伴い日本からの入国はかなりと簡素化されてきましたが、一旦留学となると山のような書類を要求されます。この中でも見落とされがちで意外と厄介なのが健康診断書(Health Certificate)です。予防接種証明を含め厳しい条件がつけられていることが多く、完成させるためには追加のワクチン接種等、何回か通院する必要となる場合があり、時間を要します。

特に米国は、留学する州ごとに基準を設けており、全体的にはとても厳しいものになっております。さらに学校独自の基準を設けているところがあるので注意が必要です。

●健康診断書の目的

留学に際する健康診断書には大きくみて2つの目的があります。

ひとつは基礎疾患の有無や、現在の健康状態をチェックすることにより生活面、運動や野外活動などに対する制限や、食物制限(アレルギーなど)を予め確認することです。また、記録として学校や学校に付随する医療機関に残しておくことで、病気や事故など緊急の際での重要な情報となります。

もうひとつの目的は感染症の防止です。WHOを中心に世界規模で対策をおこなっている感染症はまだごく一部であり、感染症に対する対策はそれぞれ国によって異なります。したがって海外からの感染症の輸入に対しては厳しい防波堤を築く必要があります。特に海外からの出入りが多く、人が密集している学校は感染症のリスクが高いため、留学生に対して厳しい水際での管理を行っております。

健康診断において、感染力がつよく重篤な経過を取りうる感染症に現在罹患していないことを証明する必要があります。また、万が一感染症が持ち込まれた場合でも、それが広まるのを防止するために予防接種もしくは感染症に対する抗体を有することの証明を義務付けております。

●健康診断書の内容

1. 現病歴・既往歴・家族歴

現病歴は現在治療中の病気、治療の内容(服用中の薬物名、食事制限など)、活動の制限の有無などです。現地での治療計画(現地で治療を受ける病院名等)も書く必要がある場合もあります。

既往歴は、過去にかかった病気などです。細かい病気が羅列しており、それぞれに有無のチェックを入れなくてはならないフォームが多く見られます。喘息、結核など再発する可能性がある病気や、後遺症を伴う病気をチェックする目的でしょうが、中には何でこんなことまで、、と思われる病気(?)も含まれている場合もあります。

家族歴は、血縁者の病気、生死(死亡している場合はその死因)を記入します。遺伝が関係する病気(高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳梗塞など)を主に記入すればよいでしょう。

この項は原則的には留学者自身が記入する部分ですが、医学専門用語が多いため間違いの無いよう、できる限り医師と一緒に記入するようにした方がよいでしょう。
州や国によっては、この項は省略されている場合があります。

2.一般健診

留学の際に健診をおこなう第一の目的は、前述した通り、現在、感染力の強くかつ、または重篤な経過をたどりうる感染症に現在罹患していないことを診察および検査にて確認することです。

内容は一般的な聴打診、場合によっては簡単な血液生化学検査を要求するところもあります。

問題はツベルクリン反応(mantoux testもしくはPPD)です。ほとんどの留学診断書にはこの項が含まれております。

ツベルクリン反応(以降はツ反とします)は、元々結核感染症者か結核感染の既往があることを診断する為の検査なのですが、日本では乳児期にBCG接種をほぼ100%施行しており、結核感染の有無にかかわらずほとんどの人がツ反陽性です。

米国のように結核が日本よりも少なく、BCG接種をしない国では、ほとんどの人がツ反陰性で、ツ反陽性は現在結核感染症に罹患しているか、過去に結核にかかった既往があると診断されます。

陽性の場合は現在罹患しておらず結核をばらまく可能性が無いことを証明するために、胸部単純レントゲンによるチェックを求められます。日本人は陽性なのがあたりまえなので、最初からレントゲンを撮れば…と思われるでしょうが、やはりツ反→レントゲンというステップが要求されます(BCG接種の有無にかかわらずツ反を受けるよう明記されております)。ツ反の判定は注射してから48時間後なので、2日後にもう一回病院にこなくてはならないので注意が必要です。

3.予防接種の証明

これが一番厄介であり、また学校(国・州)が一番重要視している部分です。

万が一、ある感染症が学校内で発症した場合でも、それぞれの人に防御能があれば中での流行が防げるといった考えであり、決して留学者の健康のために義務づけているわけではありません。

特に米国では麻疹などの国内での撲滅を謀っており、人から人へ感染する病原体の場合、一定のpopulation以下になれば自然と消滅すると言う理論の元に国民全体にMMRワクチンの接種をおこなっており、もちろん留学生にも同様に義務付けているわけです。

留学健康診断書には実際のワクチン接種記録か、実際に罹患した既往がある証明、もしくは血液性化学検査による抗体の存在証明のいずれかが必要となります。

ワクチン接種記録は正確な日付を含めた証明が必要であり、「昔に接種した記憶がある」では無効です。母子手帳があればこれが証明となります。

罹患した既往の証明も罹患した記憶だけでは無効です。たとえばオタフク風邪にかかったことがあると憶えていても、その時オタフク風邪と診断した医師自身が正確な日付を含めて健康診断書を記入しなければならなく、現実的にはほぼ不可能でしょう。

血液検査によるそれぞれの抗体のチェックを行い、陽性である場合はそれぞれの抗体価を含めて記入します。陰性であるものについては入学前までに、ワクチンの接種を終了しておく必要があります。ワクチンによっては数回にわけて接種しなくてはならないものもあり、時間が必要となります。

ワクチン接種(抗体の証明)については絶対に必要であるREQUIRED と 接種を推奨するといった RECOMMENDED に分けられます。

もちろんRECOMMENDEDの項にあるワクチンは必須でなく、REQUIREDの項を達成していれば入学に際して問題はないのですが、場合によってはこれを接種していない為にある種の活動を制限されることがあるので注意が必要です。

●追記

今回は留学健康診断書の一般的な目的、内容について大まかに説明させていただきました。
実際どのようなワクチンが要求されることが多いのか、それぞれのワクチンの接種法、具体的に健康診断書作成に際して留学者の行うことや流れなどについては、私の経験を踏まえて次回以降説明させていただきます。

(編集部より)
海外に留学する際には、健康診断書や予防接種に関して厳しい基準があります。
企業からも海外に留学生を出すことが多くなっていますので、この件で日比谷クリニックの奥田先生に解説してもらうことにしました。3-4回のシリーズとなる予定です。