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ニュースレター(機関紙)

海外巡回健康相談に参加して(中国南部)
NL04020103
中国、医療事情

岡山労災病院
原田良昭


【はじめに】
平成15年10月25日から11月13日まで、海外巡回健康相談に参加しました。
訪問先は、蘇州、合肥、福州、アモイ、東莞、広州でした。
わたしの個人的結論を先に言うと、「日本の企業戦士の生き様に直に触れることができた」という印象でした。
日本での一般医療では、味わえない経験でした。
「プロジェクトX」の一部に触れたような、といってもよいでしょうか。
健康相談としてお話を聞いているうちに、医療だけでなく生活全体について話題が広がっていきます。例えば、現地での生活ぶり、ご家族のこと、日本での仕事の経歴、海外赴任となった経緯、などなど。

【中国南部とのキョリ感、SARS】
成田から上海まで約3時間です。私の住んでいる岡山から東京まで3時間以上掛かりますから、決して「遙かなる異国」という感じではありません。
海外邦人の方も「イザという時には、日本に帰国する」と言っておられました。
一方、昨年のSARS問題の時には、皆さん「苦労をした」そうです。
すなわち、会社から「しばらく帰国しなくてよい」「帰国しても出社しなくてよい」と言われたり、家族からも「しばらく帰らないでね」と言われたと愚痴ておりました。
SARSの報道については、「実態と違っていた」と広州総領事が指摘されていました。「日本でのニュースをみると、市民が皆マスクをして町を歩いているように受け取られる」(実際のところ、私もそういうふうに認識しました)「しかし、実状はマスクを着けていた方はごく一部でした」

【海外巡回健康相談の様子】
中国滞在は16日でした。そのうち、健康相談は、蘇州1日、合肥1日、福州1日、アモイ1日、東莞1日、広州3日、相談者数は、計424人でした。
相談会場は、滞在したホテルの一角が多く、一部は、日本企業の福利厚生会館(東莞)や医療機関(広州)でした。
広州以外は、在留邦人の数は未だ多くなく、健康相談参加者の皆さんは、お互いに顔なじみのようでした。待合室で、世間話が弾みます。私達も、健康相談の合間にその輪の中に入って、ナマの生活情報を教えていただきました。
いわく、どこで生ものを買うか、生ものをどう料理するか、「ナマ野菜は水に2時間漬ける」「ナマ野菜は食べない、すべて熱をとおす」、等々。
待合室に置いていた体脂肪計は、皆さんの関心のマトでした。
相談時間は一人に15分位ありましたので、健康相談以外にも、いろいろ話題は尽きませんでした。

【タバコ】
タバコをのむ人が多いと感じました。
聞くと、赴任してからタバコの数が増えたといいます。また、日本では禁煙していたのに、赴任してから、また吸い始めたという方も少なくありません。
中国では、自分がタバコを吸いたい時には、周囲の人にもタバコを勧める習慣があるそうです。また、言葉の問題からどうしても手持ち無沙汰になること、ストレスが溜まること、職場の周囲で喫煙者が多く、「つい」となるようです。
杓子定規に「タバコは止めましょう」とはなかなか言えません。

【酒】
酒量もハンパでないようでした。中国には「白酒(パイチュー)」という50度を越えるお酒があるそうです。そして、中国では、お酒の席では目と目とあえば乾杯する、自分が飲みたいときは誰かと乾杯して飲むとのこと。
合肥でお会いしたHさんは、工場立ち上げのとき、現地中国人と毎晩会合があり、「何度も意識不明になりました」と笑っていました。「今は少々の酒では平気です」とのことでした。慣れるとヤミツキになるそうです。
私達も白酒をご馳走になりました。白酒の前に牛乳を飲みます。
「酒の前に牛乳?」と冗談かと思いましたが、ホントにテーブルに牛乳が置かれてありました。胃を守るため、会合の前、途中、適宜牛乳を飲みました。
広州のMさんは「慣れるとこんなに美味しい酒はない。ただ、美味しいと思って、日本にミヤゲに持ち帰っても、なぜか日本で飲むと不味いんです」と教えてくれました。中華料理にマッチするのでしょう。
ただし、健康の番人としては、後述の運動不足ともあいまって手放しで感心するわけにもいきません。

【期待】
相談会場に来られる在留邦人の多くは健康な男性成人です。多くの事業所で中国への赴任前に日本で健康診断を受け、また赴任中も定期的に帰国時に健康診断を受けるシステムになっております。したがって、大きな健康上の問題を持っている方はみられません。
しかし、赴任している本人はさておき、帯同している家族は定期的健康診断を受けておらず、この巡回相談を期待しておられました。
一方、小規模の事業所では、定期的な健康診断のシステムが無い方が居ました。そういう方は、特にこの巡回相談を期待しておられました。ただ、この巡回相談さえ受ける余裕の無い方も居るようでした。

【運動不足】
ほぼ皆さんに運動不足が窺われました。皆さん自覚しておられます。
理由として、時間的余裕が無いこと、適当な運動施設が無いこと、治安の問題などがあるようです。
大気汚染があり、気軽にジョギングもできない。
プールがあっても、水質が気になる。
勤務地と住居が近接しており、通勤が運動にならない。
住居によっては、運動施設を備えているようですが、仕事が忙しくて利用するヒマが無いとのことです。このへんは、意識的に時間を作って努力しないといけないようです。毎日の流れに身を任しておくと、生活習慣病のエジキです。
万歩計の使用を薦めました。

【ストレス】
中国に赴任するのに、中国語を勉強するということはないようです。また、多くの方は単身赴任です。
仕事上のストレスに加えて、言葉、生活、文化、習慣、考え方の違いなど、メンタルな要素の問題が少なくない様でした。
一方「日本では出来ない仕事をしている」と仕事を楽しんでいる方もみられました。
家族帯同の方は、家族の問題も心配のタネのようでした。
蘇州では、日本人会世話人の方達が奔走してinternational school とは別に、「日本人クラス」を週1回行っておりました。日本人会世話人の方達によるボランティアです。皆さん多忙なのに、頭が下がります。
広州では、日本人学校を郊外に新設移転しておりました。前年までは、市内中心部のビルを借用していたそうです。

【医療機関】
重大な医療問題で、時間に余裕があれば、上海、香港などの医療機関を受診するようです。
また、ある程度の規模の都市では、一定レベルの(外国人向け)医療機関があり、日常的な診療は可能のようでした。とくに発熱、下痢などのときは「注射をしてもらって、直ぐ治った」という方が少なくありません。中国の医療機関では、よく注射をするようです。(強くて良く効くとのことですが、一体どんな注射なんでしょう?)
逆に、さらに内陸部では信頼できる医療機関が乏しいようです。内陸部で仕事をしている方には、よりいっそう健康相談の必要性が高いと思われました。

【マッサージ、中医】
寝違いの様な症状で、クビが全く動かせなくなって、中医(伝統的医療)を受診した方がいました。医師は「これは3日で治る」と宣言し、3日分の医療費支払いを指示したそうです。そして3回ハリ治療をおこない、3日で完治したそうです。
私は、整形外科医のハシクレですが、このような技術は持ちません。中国3000年の歴史はダテではない。
福州、アモイでは、マッサージが盛んで、現地邦人もよく利用しています。
私達も、日本人会の方にお願いして、マッサージを体験しました。指、コブシ、肘等を用いて、皮膚、皮下組織、筋肉、神経などを、系統的に刺激していきます。解剖学的に一連の流れがあるように感じました。

一方、福州では中医医院を見学しました。
マッサージ室では、患者が腹這いになっておりました。スタッフが2人おり、一人が患者の片足を思いきり引っ張り、同時にもう一人のスタッフが、両手で患者の腰をドスンとばかりに押しておりました。

【日本人会の世話人の方々】
冒頭に書きましたように、この巡回相談で一番印象に残ったのは、健康相談もさることながら、現地で仕事をしている方々のナマの生き様でした。特に、各都市でお世話になりました日本人会世話人の方々の話は強烈でした。皆さん、長年海外でいろいろなトラブルを乗り越えてこられております。同時に、自分の事だけで多忙にもかかわらず、地域の世話に尽力されております。
この方々が、海外邦人の真のカナメであると感じました。

【海外赴任のヒント】 
途上国勤務にはストレスが避けられないでしょうが、しかし、マイナスばかりではないと思います。
立見泰彦先生は、「JOMF海外医療 2003 APRIL NO.30 73-80」で「途上国勤務のメリットとデメリット」として、具体的なアドバイスを紹介しています。途上国でのゆとり、健康管理、異文化での子弟教育、その国の言語を学ぶこと、医療面、現地の情報、現地の友人、食事、そして「意識的に努力して、絶えず自らをリフレッシュ、ブラッシュアップ」するようにすすめています。

海外赴任邦人およびご家族が健康に安心して生活できるように、海外巡回健康相談は、とても重大な役目を担っていると感じました。