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ニュースレター(機関紙)

マニラ幼児健診報告
NL04010104
健康相談

1. 実施期間
 2003年9月29日~10月1日

2. 実施者
 東京大学医学部小児科講師 榊原 洋一
 (財)海外邦人医療基金 業務部部長 小山 明

3.実施場所
 マニラ日本人会診療所(3日間とも)

4. 受診者数
 総数 44名(男児22名、女児22名)年齢2ヶ月~9才
 日本からの派遣者 39名  現地在住者 5名

5. 健診実施方法

基本的に子供の病気や育児の悩みを持っている親の悩みの解決を第一義とする健診とした。
従って、今回は育児上のことも含めて何らかの問題があると親が考えている乳幼児、子供のみを健診の対象とし、元気で問題ないと親が判断した子は対象外とした。
申込書に必ず、健診申込み理由、親の悩み等を記入してもらい、それらを一覧表にして、事前に先生が相談内容を把握できるようにした。叉、問題が比較的重度と考えられるケースに対してはこれまでの他病院等での診断結果、健診結果等を提出してもらい、訪比前に先生に見て頂いた。
対象者を限定した結果、申込者数は44名となり、2日半の日程で、一人平均30分程度の健診時間がとれたことから、各受診者とも先生と十分な相談が出来たようで、受診者の満足感は極めて高かった。(後述のアンケートの項参照)

尚、受診者には予め 津守真 お茶の水大学名誉教授、稲毛教子 東京国際大学教授共著の「乳幼児精神発達質問紙」(1才未満用、1~3才まで用、3~7才まで用)を配布し、事前に親に記入してもらい受診日当日に持参頂いた。

叉、受診者には全員、はじめに日本人会診療所の土田医師に一般的な問診をお願いし、その後に榊原先生診て頂くようにした。4月に赴任された土田先生ご自身の相談者への紹介、マニラでのお披露目も本健診実施の一つの目的とし、土田先生の協力を得て実施した。

健診実施に当たっては準備段階を含め、マニラ日本人会診療所に全面的に協力頂いた。叉、健診当日には3日間とも受付を担当して頂く等、日本人医療関係資格保持者のボランティアグループ「マニラで健康に暮らす会」スタッフの支援を受けた。

6. 健診結果(10.担当医師レポート参照)

受診者総数は44名であったが、複数の相談内容を持つ受診者が多く、相談内容総数は
67件となった。主な相談内容は、言語発達遅れ7件、運動・身体発達遅れ2件、咳・痰4件、アレルギー2件、アトピー性皮膚炎2件、低身長2件、腹痛2件、肌がざらざら2件 他多岐にわたっている。
受診結果の評価としては 要治療5件、要精査2件、経過観察20件、問題なし17件となり、受診者募集時に上記の通り、病気や育児上の問題ありと母親が考えている子のみを対象としたが、1/3強は「問題なし」との結果となった。

7. 講演会(10.担当医師レポート参照)
3日目午前中に榊原先生の講演会を実施し、24名のお母様方の参加があった。
講演演題は、1.三歳児神話、2.子供の心の病気 の2題で、各々、パワーポイント資料による分かりやすい説明があり、その後の質問も活発で、9時半から12時近くまで、大変好評裏に実施・終了することが出来た。育児経験の少ない若いお母様方にとっては特に有意義な講演であったと思われる。

8. アンケート結果

日本人会診療所に於いて、受診者を対象に任意の無記名のアンケート調査を行なった結果、29名の方から回答を頂いた。
結果概要は次の通り
 相談時間    満足28  不満足0   どちらとも言えない1
 相談内容    満足29  不満足0   どちらとも言えない0
 受付対応    満足29  不満足0   どちらとも言えない0                        
  注)相談時間の「どちらとも言えない」と回答された方の相談時間は15分の設定であった。
主要意見
・ 十分にゆっくりと大変満足のいく相談が出来た
・ これまでの不安が相談により解消された
・ 今後も是非とも定期的に実施して欲しい

9.全般
今回の発達健診は講演会も含め、極めて好評であり、多くの受診者より、来年度以降の継続実施を要請された。海外での子育てに関する親の悩みの解消を目的とする今回のような幼児健診は、現在、海外赴任中の邦人の間で切実に求められている医療サービスの一つであり、今後の当基金の主力事業をなすものと位置付ける事が出来る。従って、来年度以降も他都市を含めて幼児健診を継続実施していきたいと考えている。

10.担当医師レポート
榊原先生の報告を以下に記載します。尚、榊原先生は小児における神経発達についての日本の権威と言われ、NHKテレビへの出演等国内外も含め広くご活躍されているほか、当基金が実施している国際電話やインターネットを利用した海外小児医療相談にも全面的にご協力頂いています。

 <マニラ健診レポート>
 マニラ日本人会の要請に対してこたえる形で、2003年9月29日から10月1日までの3日間、海外邦人医療基金はマニラ在住の日本人小児の発達健診を行った。今回の健診は、通常の健診ではなく、特に発達に関する訴えのある小児を対象として行われた。
ここにその健診の概要について報告し、いくつかの感想を述べてみたい。

(1) 健診の概要
 3日間に受診した小児の数は44名であった。乳児が9名と年齢層のなかでは一番多かったが特に年齢分布に特徴はなく、0歳から9歳までの子どもたちが受診した。主訴はさまざまであるが、今回の健診が「発達の問題」を前面に打ち出していたため、ことばの遅れ(7名)や運動発達の遅れ(2名)など、発達に関する訴えが比較的多かった。

 健診の評価は、要治療、要精査、経過観察、問題なしの4段階で評価した。5名が要治療と判断された。2名は4歳の男児と3歳の女児で、脳性まひの診断ですでにリハビリが行われており、その継続が必要と思われた。9歳の女児は皮膚の結核性の肉芽腫があり、すでに抗結核剤による治療が開始されていた。3歳男児は夜尿症があり、薬剤による治療がすでに開始されている例である。最後の1例は、健診時に上気道炎があり、そのために要治療とされたものである。このように、全例すでに治療が開始されており、健診ではそれを追認するにとどまった。

 要精査の2例は、低身長の8歳の女児と、斜視の3歳の女児であった。それぞれ低身長の精査(手根骨レントゲン撮影)と視力検査が必要と思われた。

 評価で一番多かったのが経過観察であった(20人)。アレルギーや喘息などの慢性疾患、あるいはことばや運動発達の遅れを主訴に受診した子どもは、大部分がこのカテゴリーに入った。ことばや運動発達には個人差が大きいことがあり、健診時点ではまず問題はないと思われたが、一定の期間をおいて再診したほうがよいと判断されたケースが多かった。フィリピン人との国際結婚によるバイリンガルの環境に育ったことが、ことばの発達に影響をあたえていると考えられたケースもあり、今後の経過観察体制の必要性があると思われた。

 問題なしという評価を下した17人のうち9名は、ことばや運動発達あるいは身体発達の訴えであった。結果として問題なしとされたが、発達の専門家のフォローアップが必要と思われた。

(2) 感想
 マニラ日本人会とJOMFの協力により、マニラに住む日本人は必要な基本的医療サービスを受けていることが分かった。治療が必要なケースはみな、適切な治療を受けていた。

 急性疾患や、重症の疾患に対しては、日本人の診療所あるいはマニラの大きな医療機関への紹介によって、きちんとした医療サービスが行われているが、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、夜尿症のような軽微ではあるが長期にわたる治療や医学的アドバイスが必要な疾患や、脳性まひ、言語遅滞のような専門家の経過観察が必要な疾患に対するサービス供給体制は不十分であると思われた。

 今回の健診で一番印象に残ったのは、慢性疾患や発達障害あるいは言語遅滞のある両親が国際結婚をしている家庭子どもたちであった。急性疾患や重症疾患ではないが、フィリピンの医療機関で治療やアドバイスを受けているために、母親はある程度病状や治療について理解していても、それを父親に十分にタガログ語で説明できないケースが数例あった。そのために両親の間での子どもの治療や経過観察についての必要性の理解に差があり、そのことが親(特に日本人の父親)の心配を増すことにつながっていた。

 慢性的な疾患により医療機関での治療や経過観察が必要な子どもで、両親が国際結婚をしている場合には、医師でなくてもよいが、医療について理解のある専門家による説明が必要と思われた(タガログ語と日本語による医療相談)。

その他
 日本人会からの要請があり、母親を対象に子育てについての講演会を行った。日本語での子育て情報が不足している小さい子どものいる親に対して、このような機会は今後も設けてよいのではないかと思った。検診を担当する医師に専門領域を前もって聞いておき、フィリピン訪問の際に、専門領域についての講演会を行うことをここで提案したい。

最後に
 今回のフィリピンでの健診につきいろいろとお世話になったJOMFの小山さんを始め、滞在中お世話になった方々に深謝いたします。