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ニュースレター(機関紙)

海外巡回健康相談に参加して(東アフリカ)
NL03090104
タンザニア、ケニア、エチオピア、エジプト、医療事情

関西労災病院内科
両角隆一

はじめに

 海外巡回健康相談・前期アフリカチームに参加しました(平成15年6月2日から17日まで)。
ダルエスサラーム(タンザニア)、ナイロビ(ケニア)、アジスアベバ(エチオピア)、カイロ(エジプト)の5都市において、邦人とその家族を対象とした健康相談会が実施されましたのでその概要を報告させていただきます。


都市名:ダルエスサラーム(国名:タンザニア連合共和国)
滞在期間:平成15年6月3日から6月5日

1.都市の一般状況

 タンザニアは、日本の2.5倍ほどの面積を持つ国で、人口は約3500万人である。2000年の国民一人当たりのGNPは270米ドルと少なく、依然として世界の最貧国のひとつといわれているが、近年の経済状況は堅調に推移しているとのことである。その首都が今回健康相談を行ったダルエスサラームである。海辺の “のどかな町”といった印象で、高層ビルなどは見当たらない。治安状況が悪いときかされていたが、在留邦人の方によると、移動には必ず車(ドライバー付)を利用しているが買い物などは一人でもできるとのことであった。

2.健康相談結果について

 6月4日、健診は日本語補修校に併設された日本人会ホールで行われた。建物は老朽化しており部屋数も足りないが、受付と看護師ブースがひとつの部屋をついたてで区切って設置され、健診に際し特に問題はなかった。しかし、不潔というレベルではないものの、ハエの多さが気になった。午後、一時クーラーが止まった際にはかなり暑くなった。当地では電気事情が悪く停電が頻繁にあるとのことであった。

 タンザニア在留邦人は少なく約150人程度。健診には52名が訪れた。“タンザニア人は総じて穏やかで人懐こい”と皆さんが話されており、そのためか予想外に生活上のストレスは少ないものと推察された。子供たちも元気にすごしているようで、虫さされや汗疹が認められたのみであった。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

 虫が媒介する感染症はアフリカ諸国共通の問題である。中でもマラリアに最も気が使われている。健康相談者の中にもすでにマラリアに罹患した経験のある方が数人おられ、この国では非常に頻度の高い疾患のひとつとなっている。マラリアに対する現地医療機関の対応は早く、的確な治療がなされるようである。しかし、現地医療機関で治療を受けた方の話によると、初期の診断と治療以外は特に何もなされないようで、薬剤の副作用発現や再燃に関する情報など、必ずしも十分な検索と経過観察がなされるわけではないらしい。

 HIV感染については、現状を正確に示す統計的資料は作られていない。しかし、国民の約20%がHIV抗体陽性であり、病院受診者中でのHIV抗体陽性者は約65%との情報がある。ただし、日常生活レベルでは感染する可能性は低いとされていることから、在留邦人の間での関心はむしろ低いとの印象を受けた。タンザニア人にとっても、HIVよりむしろマラリアのほうが怖い疾患であるらしく、HIV感染予防に対する理解は乏しいと話されていた。

 生活習慣病に関しては、前述のごとく治安の問題から移動はほとんどが車であり、日常での運動不足が懸念されていた。食事についても、野菜が少なく手に入らないとのこと。特に、独身者の食生活には問題が多いのではないかと思われた。


都市名:ナイロビ(国名:ケニア共和国)
滞在期間:平成15年6月5日から平成15年6月10日

1.都市の一般状況

 ケニアは、人口約2800万人の農業国ではあるが、この地域では比較的工業化が進んだ国とされている。その首都であるナイロビは大都市で、高層ビルが立ち並んでいる。しかし、1990年代に異常気象や災害にみまわれたのに加え、政府関係者の汚職問題などのために治安が著しく悪化。2002年に政権が交代したことから改善が期待されているが、現在でも治安状況はかなり悪く、ホテル周辺ですら歩くことは出来ないとのことであった。

2.健康相談結果について

 ナイロビでの健診は、6月6日、7日、9日と三回にわたって行われた。

 第一日目は金曜日であることも関係してか、在留邦人の奥様方が主であったように思う。多くの受診者から共通に聞かれたのは治安の悪さである。日常茶飯事的に強盗などの事件が発生しているようで、実際に体験された方もおられた。そのためほとんど屋外に出られないとのこと。ゴルフやテニスなどでストレス解消が可能な方は良いが、屋内で過ごすことが多い方ではストレス性の頭痛や易疲労感、または不眠症(夜中に目がさめてしまう)などが多く聞かれた。

 不眠症については当地の高度が高いということも関連しているのではないかと尋ねられたが、答えを持ち合わせなかった。また、電気事情が悪く、室内が暗いために目が疲れるらしく、これも易疲労感を助長する結果になっているものと推測された。ただし、一年を通じて気候が穏やかであることが、唯一ケニアで働くことの長所としてあげられていた。

 健診二日目は現役勤務者が主であった。大企業の場合、帰国時の健康診断やドックなど行き届いているらしく、新たな症状を訴える症例は少なかった。ストレス性の症状を訴える方も少数であった。ただし、平日は地方都市でのプロジェクトに参加していて家族とも別居状態で過ごされている方々についてはストレスが強いらしく、飲酒、喫煙ともに多い。提携病院であるアガカーン病院を事前に受診して実施された血液検査・腹部エコー・胸部レントゲンを持参する方も多かったが、γGTPやトランスアミナーゼが高値を示す例が数例あった。

 三回目の健診はナイロビ日本人学校で行われた。午前中は低学年生が対象であった。子供たちは皆元気ではあったが、傾向としてやせ形の児童が多く、校長先生の話ではやはり日本の全国平均を下回るとのことであった。同伴してこられた父兄からも1例、4歳にしては身長が低いのではないかとの訴えがあったが、胸郭や骨格についての問題はなく、知能レベルも含め問題は少ないと考えられた。午後は、高学年性と教職員が対象となった。高学年では、慢性的な下痢などの消化器症状を訴えるものが目に付いた。

 さらに、教職員では、体重が日本在住時代に比べて著明に減少している方が数名おられた。その原因として、『食事が合わない』『時々下痢をする』といった訴えを聞いたが、これらに対する有効な対策は見当たらなかった。児童数は少ないが、教職員の仕事はかなりハードであるらしく、帰宅が深夜になることもあるという。海外での生活を意識するためか、父兄・先生方ともに子供に対しては非常に気を配っておられる。ある先生は、“目が届きすぎていることがかえってストレスを生んでいる可能性がある”と話されていた。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

 感染症はケニアにおいても問題ではあるが、高地で気温が低いことから比較的蚊が少なく、マラリアの問題は沿岸地域以外では少ないとのことであった。HIV感染についてJICA専門家医師に伺ったところ、当地についても正確な統計資料はないとのこと。医療機関で検血を受けた方の中ではHIV抗体陽性例は13%と発表されているとのことであった。

 最も問題なのは治安の悪さである。政府が変わったことから改善が期待されていたが、在留邦人の主なストレス源となっていた。また、当地でもやはり肉を中心とする食習慣ゆえか野菜不足で、自宅で野菜を栽培して補っているとの話は多かった。

 ケニアでは、病院を視察できなかったが、現地医療法人は比較的信頼されているようであり、日本における状況と大きな変わりはないように思われた。しかし、手術など、輸血を要する状況が想定される場合は、南アフリカかロンドン、さらには日本への搬送を考えるとのことであった。ただし、個人的な理由で長期滞在(または永住)されている方々においては、大企業や国のサポートがないために事情は少し違っているのかもしれない。

 ACバイパス術後で糖尿病の女性は、インスリン療法も行っているが、血糖測定は一年に一度日本に帰ったときのみ。現地病院へは行きたくないと言う。また、もう一人、今年4月に長時間フライト後の空港で、急激に動悸と脱力があったという女性がおられた。以来、あまり動いておらず、同様の症状はないとのことであった。心電図所見からも、飛行場で急性心筋梗塞を発症していた可能性が高いものと考えられた。早急に医療機関を受診するよう指導したが、このような事例はほかにも多くあるものと思われた。


都市名:アジスアベバ(国名:エチオピア連邦民主共和国)
滞在期間:平成15年6月10日から平成15年6月12日

1.都市の一般状況

 エチオピアは、紀元前よりつづく非常に長い歴史をもつ国であるが、近年は長い内戦や旱魃のために経済状況が極度に悪化していた。しかし2000年には、エリトリアとの国境紛争も収束し、新たな経済再建計画が策定されている。治安も悪くはないといわれ、移動にはドライバー付の車が利用されるが、マーケットでの買い物も可能との話であった。首都アジスアベバには東アフリカ最大のマーケット(マルカート)がある。

 車で市中を視察したが、排気ガスのにおいが強い。旧ソ連製の古いタクシーと日本製の乗り合いバス(これもかなり古い)が大量に使われており、噴煙をまき散らしているのである。窓を開けていると息苦しくなる。高層ビルもあるが、多くは平屋の住居であり、ナイロビとはずいぶん違う。ただし、アジスアベバも高地ゆえか、気候は穏やかで過ごし易いとのことであった。

2.健康相談結果について

 エチオピア在留邦人の数は少なく、健康相談受診者は30名程度。相談内容に目立った特徴は無かったが、やはり下痢などの消化器症状は多い。大使館職員とJICA関連者が中心であり、健康管理もなされている。不眠症以外には特に高地故の問題は感じられなかった。当地では牛肉を生で食する習慣があるらしい。現地職員と同様の生活をしているJICA職員の一人がサナダムシに感染した経験を教えてくれた。

 当地では講演会が実施された。高橋先生(青森労災病院心臓血管外科部長)が、高地での生活および高山病について話され、私が、生活習慣病とその予防について一般的な注意事項を述べた。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

 高地故、気温が低く、感染症については他の国ほど大きな問題とされていない。前述の牛肉の生食など、むしろ寄生虫が問題かと思われた。また、高地生活故か、不眠症を訴える方も比較的多かった。

 HIV感染については、この国においても正確な統計調査はない。感染率は10%程度とされているが、病院受診者の約65%がHIV感染者であるとの報告がなされている。ただし、ここでもHIV感染に関する懸念はほとんど聞かれなかった。

 アジスアベバは比較的治安が良好とのことで、外出も可能といわれていた。しかし、やはり車での移動が主であるようで、運動不足が懸念された。食生活についても、肉食中心の生活で、野菜不足である点は他の国と同様であろう。この国では、非常に古い車がタクシーや乗合バスに使用されており、排気ガスのにおいが強く感じられた。大気汚染の問題は現地在留邦人からは語られなかったが、気になる点ではあった。

 市中病院を視察した。比較的小型の病院で、総合病院ではないが大学病院などからの応援があり、プライマリケアを行う施設としての内容は充実していた。しかし、パラメディカルなどの清潔意識が問題で、他の病院では注射針が使い回しされていたりした事例もあるようで、一般病院の受診には問題があるとの意見があった。SARS対策の一環としても、提携病院の準備が急がれていた。


都市名:カイロ(国名:エジプトアラブ共和国)
滞在期間:平成15年6月12日から平成15年6月17日

1.都市の一般状況

 エジプトは、前の3つの国とは大きく異なる。東アフリカの国というよりはむしろ中東諸国に近い国で、アラブ世界の指導的役割を果たしている。その首都カイロは大都市で、治安も良好とのことであった。日本との経済的交流も他の3国に比し大きく、在留日本人も、2002年現在で860人と、最も多い。砂漠とピラミッドが印象的であるが、これまでの3国に比し日中の気温がかなり高く、暑かった。

2.健康相談結果について

 6月14日と15日の健診は宿泊中のホテルにて行われた。1日目の受診者は約60名、2日目は約40名であった。大使館、JICA関係者ほか、自営業者の方、現地人と結婚された女性および企業関係の方々とそのご子息たち。多彩であった。

 当地においても感染症が問題にならないわけではないが、これまでの3カ国に比べ日本同様の生活習慣病に関する相談が目立った。しかし、原因はよくわからないが下痢などの消化器症状を有する方は多く、大使館の医務官は感染症を疑って抗生物質を投与しているとのことであった。生活習慣病の問題では、自営業などで長期に滞在されている方においてむしろ深刻で、健診を受ける機会は少ないとの事であった。あるレストランの経営者は、糖尿病・高血圧症の診断を以前受けているにもかかわらず、治療を拒否され放置されていた。心疾患の存在も疑われ、検査・治療の必要性をお話ししたが、治療が継続される可能性は低いのではないかと思われた。

 翌6月16日の健診は、カイロ日本人学校において行われた。学校の設備もよく整備されており、疾患の既往、障害についてもよく把握されていた。ただし、学校がゴミ捨て場に隣接しており、ハエの多いのには困った。新たに指摘する問題は見当たらなかったが、健診後、教頭先生から歯科検診の要望が出された。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

 各種感染症や寄生虫など、他の3国に比し個人レベルで問題にされることは少なかった。HIVについては、少なくとも調査結果は公表されていない。周辺諸国の高い罹患率を見ると、この国においてもHIV感染の危険度は高いのではないかと推測されるが、一般には1%以下と認識されているとのことであった。

 周辺諸国に比し治安もいいとされており、生活上のストレスは概して少ないとの意見が多かった。食生活についての問題も、他の周辺諸国よりは良好で、日本食材も比較的容易に手に入るとのことであった。砂漠的な気候、暑さについても問題にされる方はおられなかった。

 3つの病院を視察した。最初の病院は中規模の総合病院で、創設以来の歴史は長い。プライマリケアを行うための機器は整備されているが、救急治療には対応していない。かつては日本人が最も多く利用した病院であったらしいが、病院の老朽化が指摘される中、日本人の利用数も減少しているとのことであった。2つ目の病院は、日帰り手術を目的に作られた病院であった。クリティカルパス様に、診療がプログラム化されており、帰宅後の経過は電話で確認するシステムとなっている。一般外来診療を行う施設も併設されており、内科、外科、皮膚科、眼科など、外部の医師が担当しているとのことであった。3つ目の病院は、市内から30分ほどのところにある大規模な病院であった。24時間、救急医療に対応可能で、ヘリポートも設置されていた。施設としては十二分な能力を備えており高度先進医療が実施可能と考えられたが、現状では病床の利用率は必ずしも高くないように推察された。

 このように、カイロの医療施設は充実しており、在留邦人の信頼も得ているものと思われた。しかし、当地の医療費は全て個人負担によりなされているが(他の3国も全く同様)、現地の医療保険については大企業や国などの援助のない自営業者などの利用は限られたものになっている可能性がある。