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ニュースレター(機関紙)

海外巡回健康相談に参加して(東欧5ケ国)
NL03070103
ポーランド、ルーマニア、ブルガリア、チェコ、ハンガリー 医療事情

関東労災病院副院長
調所 廣之

はじめに

海外巡回健康相談事業は労働福祉事業団ならびに海外邦人医療基金によって毎年14チームによる巡回健康相談が実施されています。今回、ワルシャワ(ポーランド)、ブカレスト(ルーマニア)、ソフィア(ブルガリア)、プラハ(チェコ)、ブタペスト(ハンガリー)の5ヶ国5都市における海外巡回健康相談に参加(平成15年6月8日~23日)しました。そこで各都市の一般的状況と健康相談結果について報告致します。

都市名 ワルシャワ(国名:ポーランド)

1.都市の一般状況

今回の訪問国の中で人口は約4.000万人で最も多い。首都ワルシャワは北緯52度に位置し気候が厳しい。車は古く、道路も悪く、しかも運転も荒い。第2次世界大戦で戦場となり、ワルシャワの町はほとんど破壊されてしまった。しかし戦後、国民の粘り強い努力により可能なかぎり中世さながらの美しい町並みに復元されているのには驚かされた。今後この国はかなり発展することが期待されるという。ポーランド人はプライドが高いようだが、親しくなると面倒見がよいとのこと。日本人には極めて友好的である。飲料水は当然ミネラルウオーターであるが、料理は全般的に塩分が強い印象があった。ポーランドは寒いためワインはできず、ウオッカが主流であった。

2.巡回健康相談結果について

特有な疾患として、ポプラ花粉症(?)及び麦花粉症がある。飛散期が5月~6月でちょうど相談日に一致したため4名がこの花粉症と考えられた。反面、スギ花粉の飛散はなく、日本でスギ花粉症でも当地では発作が起こらないとのこと。その他、皮膚炎、結膜炎などの軽症の相談があった。なお、学童については全員選別聴力検査を実施したが、全員異常なかった。当地で診断、処方を受けておられる方で、これでよいのかと、セカンドピニオンを求めてこられた方がおられた。検査データ、フィルム、治療方針を記載した用紙などはご自分で持参してこられていたので説明をおこなった。携行医薬品の使用状況では主に外用薬を処方した。なお花粉症とも関連して抗アレルギー点眼薬と抗アレルギー剤が必要であった。

3.在留邦人の問題となる疾病

乾燥、温度差による上気道障害が多い。また今後、前述のポプラ花粉症(?)、麦花粉症及び皮膚炎が増加するのではないか。特に冬は零下25度まで低下することもあり、前もって寒冷に対応する知識が必要である。当地に来たばかりに、零下25度の屋外で人を待つはめになり、意識がうすくなり、あげくには血尿がでて、腎孟腎炎となってしばらく苦しんだという方がおられた。長い厳しい冬の寒さと日照時間の短さ、英語が余り通じない、などがストレスの原因となっている。運動不足の方も多い。現地医療機関については、大きな病院は全て公的病院であり、施設の老朽化、現代医療を行うのに必要な医療機器設備が遅れている。邦人は軽症の場合はプライベート病院を利用している。手術が必要な場合は日本あるいは西欧諸国で受けるとのこと。人口あたりの医師数は多い(人口10万人あたり227人)が質に差が大きく、医師の地位も低い。


都市名 ブカレスト(国名:ルーマニア)

1.都市別一般状況

緑は多いが道が悪く埃っぽい。昼は37度近くなり、日本程湿気はないが暑かった。ブカレストの郊外へ出ると途端に田舎となり、馬車での運送や牛を散歩させている素朴な風景に出会える。東欧で唯一のラテン民族で、おおらかで明るい。中国人が多く、中国人に対しては冷たいが、日本人とわかると非常に好意的である。水と食べ物はポーランドと変わりなく、味付けが塩辛い。

2.健康相談結果

午前は日本人学校で、学童、教職員が中心、午後は日本大使館にて成人が中心であった。人数が少なかったので全員内科と耳鼻咽喉科の健診、相談を両方受けてもらった。特段問題のある疾患などはなかったが、ポーランドと同様アレルギー性鼻炎が多いようだ。携行医薬品の使用状況では使用状況に特段のことはなかった。矢張りポーランド同様、抗アレルギー剤を持って行く必要がある。空気が乾燥し、埃っぽいので、うがい薬、トローチの希望が多い。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

冬は-20度以下、夏は40度近くにもなる。春はアレルギー、夏は食中毒、冬はインフルエンザが多い。ブカレスト市内には野犬が約20万匹おり、咬まれると破傷風の危険があるという。野犬狩はしているが、注射をして首輪を付けて、また放すとのこと。従って減らない訳である。ポーランドと同じ気候と言葉の問題がストレスとなっている。現地医療機関についてはポーランドとほぼ同様である。原則的には医院、診療所、病院へ本人の希望で自由に受診することができるが、言葉の問題で邦人はほとんどプライベート病院を受診しているようだ。


都市名 ソフィア(国名:ブルガリア)

1.都市別一般状況

ヨーロッパであるが、アジアの雰囲気が漂う。ブルガリア人は寡黙でシャイであるが、一度知り合えば親身になって面倒をみてくれ、正直で人情に厚いという。男女とも体格はさほど大きくなく、日本人より若干大きい程度。若い女性はポーランド、ルーマニア同様小柄な美人が多い。水はよく、とてもおいしい水がとれるとのことであるが、水道管が錆び付いて濁った水となり、当然飲用不可である。予算がなくて管の交換はしばらくできないとのこと。食べ物もポーランド、ルーマニアと同様塩分が濃く、カロリーもかなり高い。
ヨーロッパ最貧国の一つであり、道は悪く、停電、断水もあるとのこと。緑は多いが観光する所はほとんどない。

2.健康相談結果

ここでも相談者数が多くなかったので、内科と耳鼻咽喉科を両方受診してもらった。相談者は皆特段の病気もなく、過去の発病時には医務官に相談の上、市内の病院に受診している。携行医薬品の使用状況では相談者は必要な医薬品はかなり充足しており、携行医薬品は外用薬の若干の処方が主であった。なお前2国と同様抗アレルギー剤の携行が必要と考えられた。やはり、空気が乾燥し、埃っぽいので、うがい薬、トローチの希望が多い。

3.在留邦人の問題となる疾病等について

一般的にはサルモネラによる食中毒、A型肝炎もみられる。矢張りここでもアレルギー鼻炎が多くなっている。ここでも野犬が多く、邦人も咬まれることがある。幸い狂犬病はほとんど無く、破傷風が心配される。しかし邦人はほとんど予防接種をうけている。前2国と同様、寒暖の厳しい差、乾燥、言葉の問題によるストレスが多い。現地医療機関については前2国とほぼ同様の医療制度で、まず、家庭医を受診、入院が必要な疾患はそこの紹介状を持って公立病院に受診することになる。基本的には医療費は無料。なお現地の医師は、技術はかなり高いが、設備は古い。ブルガリアにはプライベートな高級病院は一つもない。邦人は公立病院に入院せざるをえない。アメリカ、イギリス、ドイツ人の救急患者は自国に緊急搬送しているが、邦人は遠いためなかなか日本への緊急搬送は困難で、ドイツなどに搬送している。そんな折、以前よりソフィアに徳州会病院設立の動きがあり、ここ数年認可手続きを続けてやっと認可されようとしている。目的は500床程度の高級プライベート病院のようで、邦人にとってはある程度期待されている。


都市名 プラハ(国名:チェコ)

1. 都市別一般状況

プラハは戦災がほとんどなく、ロマネスク、ゴシック、ルネッサンス、バロック、アール・ヌーボーなど中世以来のあらゆる建築様式を見ることができ、ヨーロッパで最も中世の雰囲気を感じる町である。トヨタの工場が建設され、今後在留邦人が多くなることが予想される。周ってきた3国と比較して、道路はきれいであり、車もきれいなものが多い。

他の3国に比較して宗教には余り関心が高くなく、無宗教の人も多い。ビールはピルシュナーが有名で1人当たりのビール消費量はドイツを抜いて世界1とのこと。ただ観光客が多く、彼らの飲むビールもその中に含まれているとのこと。水と食べ物は他の3国とほぼ同様。海がないので魚はほとんど食べない。

昨年の洪水で地下鉄が半年動かなかったとのこと。排気ガス規制で町も明るくなった。観光客が増加し、そのためスリや置き引きなども増えているので注意が必要とのこと。

2. 健康相談結果について

日本人学校は高級住宅街にあり、環境は最高である。しかし生徒数が増加し、近々移転せざるをえないとのこと。1名メンタルのアドバイスが必要と考えられた御婦人1名、前日Zecken(ダニ)に刺された幼児1名(既に完全除去されており、刺し口はツツガムシの刺し口のようであった)。児童検診では、喘息、アレルギー性鼻炎、起立性調節障害などで、あらかじめ文書による相談あり。診察の後、母親と話し合った。このような場合、あらかじめ診察のポイントがしぼれる。日本人家族のおばあちゃんは、主訴が多かったが、問診に耳を傾けているうちに「すっかりよくなりました。日本人のお医者さんに聞いてもらってよかった」といって帰られた。このような形のストレスケアが必要な方もおられた。ここでも学童全員には内科及び耳鼻咽喉科健診を実施した。携行医薬品の使用状況は私が耳鼻咽喉科医であることより、点鼻薬の処方を多く出したが、アレルギー性鼻炎は確かに多い。

3. 在留邦人の問題となる疾病等について

森林や草むらにいるZecken(ダニ)に咬まれる脳炎発症の不安が強い。予防接種は流行時期前に実施されるので、今回の相談時期はすでに終了していた。予防接種は1回目の後、1ケ月後、1年後の3回実施される。予防接種を受けていれば問題ないが、受けていない場合は、夏季は郊外や森林で遊ばないよう指導している。しかしプラハでは脳炎発症は稀とのこと。ストレスは言葉の問題。メンタルのアンケート調査に1名かなり深刻な訴えがみられた御婦人がいた。現地医療機関についてはモトール総合病院、ユニケアー小児病院、アメリカンメデカル等プライベートの病院があり、邦人が利用している。相談者には余り問題はなく、よく診てくれるとの意見が多かった。


都市名 ブタペスト(国名:ハンガリー)

1. 都市別一般状況

「ドナウの真珠」と呼ばれる美しく歴史ある町並み、毎夜開かれる音楽会、情熱的な民族舞踊、パプリカを多用するスパイシーな料理、そして極上のワイン等々魅力一杯である。ラテン系やスラブ系に囲まれ、ヨーロッパに投げられた「アジアの石」といわれ、自らをマジャール人(ハンガリー人)と呼んでいる。現在では混血が進みアジア人の容貌はうかがえない。しかし姓が名前の前にきたり、赤ちゃんのお尻に蒙古斑があったり、日本人と共通している点も少なくない。世界有数の温泉都市であり、入浴ばかりではなく、温泉の水を飲むこともある。温度は日本より低く、水着で入る。水と食べ物は他の4国と同様塩分が濃い。海がないため海の魚は余り食べず、食べるとすれば鯉とのこと。

2. 健康相談結果について

第1日目午前は主に学童健診で皆元気であった。午後は成人、第2日目の大使館での相談も主に成人でこの季節花粉症が多かった。携行医薬品は全般的に使用した。主に外用薬の処方希望が多かった。

3. 在留邦人の問題となる疾病等について

プラハと同様にこのシーズンZecken(ダニ)に刺されることがある。チェコ程深刻ではない。花粉症が増えており、当地に2~3年滞在で発症している人がいる。季節は4月~6月で抗原は日本でのカモガヤに相当する草ではないかと考えられる。ストレスはともかく言葉。現地医療機関については医療制度は他の東欧諸国と同様で住居地区の総合診療所に行き、必要があれば紹介状を持って病院を受診することになる。救急病院は他の病院と異なり、救急車のみの急患を受け付けている。アメリカン・ホスピタル等のプライベート病院がある。適切な医療が受けられるが、治療費はかなり高い。