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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(7)「海外赴任者のストレス~小さな子供たちの場合」
NL03060102
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

海外赴任家族の一員として、子供達も多くのストレスを受けることとなる。
生まれたての新生児から成人を前にした思春期の子供達まで、それぞれにこのストレスから何らかの影響を受けるであろう。時には、妊娠中の胎児にもこの影響が見られることもあるのである。

小さい子供達の場合、その最も大きな特徴は、ストレスからくる症状なのか発達の問題なのか非常に紛らわしい状態が多いと云うことである。今まで、シンガポールの診療所で経験した子供達の症状を列挙してみる。
1歳時くらいであれば、癇癪をおこしやすい・むずがる・母親から離れない・人見知りがはげしい。
1歳半以降には、お腹が張りやすい・もどしやすい・極度の人見知り・落ち着きが無い。
3歳頃には、言葉の発達が遅い・どもり・登園時の腹痛・嘔吐・おねしょ・赤ちゃん帰り。

こんな例があった。1歳10ヶ月の男の子。第一子として誕生し、10ヶ月の時に来星した。1歳10ヶ月まで発達障害もなく、順調な成長であったが、ここ数ヶ月、会話の最初の単語をどもり始めた。当初はゆったりと構えていた両親も段々と症状がひどくなってゆくことに不安を覚え、診療所を訪れた。
表情の豊かな男の子で、遊びに大変興味を示し、こちらが楽しくなるような赤ちゃんであった。
話したいこともたくさんあるようで、その瞳は輝いていたが、まだ、2歳にもなっていない子である。自分の考えたことが上手く伝えられず、溢れる気持ちが言葉にならない用であった。勿論、診療室でも「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ・・・・・ぼくね」と会話の開始に非常に時間が掛かった。

お母さんの話では、1歳8ヶ月から英語のプレイグループに入っており、その中で患児は高い緊張を強いられているとのことであった。日本語で生活し、英語で先生と交流する。「Hallo. Good bye.」だって言わなきゃいけない。
お母さんも私も「この子も頑張っているのだな~」とつくづく感心した次第であった。
結局、何も状況を変えないまま、強いて言えば「本人のきがすすまないときには、プレイグループはお休みする」という対応だけで、お母さんと私は「待つこと」を選択した。

待つこと1年、3歳のお誕生日が近づいた頃から、症状に大きな変化が現れた。この子の言語能力が発達し、自分の伝えたい話を自分のペースで伝えられるようになるにつれ、会話のつまずきは消失していったのだった。

もちろん、全ての症例が、こんなに順調に問題解決に至るわけではない。医療機関の助けを必要とする状態の子供達も多くあるが、子供達に共通して言えることは、皆がそれぞれ強い快復力と成長する力を持っていることである。
海外生活をすることで、子供達にもまた、ストレス環境を強いることになるかもしれないが、きちんとした環境とサポート、そして正確な理解があれば、成長と共に問題を乗り越えてゆく力が、子供にはあるのかもしれない。