• ホーム
  • 基金について
  • 海外医療情報
  • お勧めリンク集
  • よくある質問

ホーム > 海外医療情報 > ニュースレター(機関紙)

ニュースレター(機関紙)

英国ロンドンで実施した歯科医療相談会について(2)
NL03050104
ロンドン、歯科医療、医療事情

東京大学医学部国際地域保健学教室
三上ゆう子

1.「むし歯があるのに歯医者さんで治療してもらえなかったのですが?」

日本の保険による歯科治療は「むし歯を1本詰めていくら」「歯を1本抜いていくら」と治療ごとに細かく治療費が決まっています。医療機関は、その治療費のうち一部を患者さんから頂き、残りを社会保険や国民保険に請求する仕組みになっています。

NHS(National Health Services)という英国の医療保険でも、歯科治療には同じ様な治療費の計算方式をしていました。これは“fee for item”という方式です。ところが、この計算の仕方では、医療機関はむし歯を詰めたり歯を抜いたりすればするほど、たくさん治療費を請求できることになります。

そこで、患者さんが不必要な治療を受けないで済むにはどうしたら良いか?と考えられた結果、英国では“Capitation System”が始まりました。これは、歯科医院が患者さんを担当すると、治療内容にかかわらず一定額がNHSから支払われるという方式です。歯科医としては悪くなってしまった歯を苦労して治療するより、歯が悪くならないように患者さんを指導する方がずっと楽です。そうすれば、歯科医は疾病予防に自然と力が入り、また不必要に行われている治療が減らせるだろう、というわけです。現在のところ、この方式は子供にのみ採用されています。

お子様の口の中にむし歯や変色を見つけて、歯科医院へ連れて行ったにもかかわらず、治療されなかったというケースを何例かお聞きしました。これは、むし歯がまだ初期段階のために削ったり詰めたりする必要はないと診断されたか、もうすぐ永久歯に生え変わる乳歯だから、と診断されたと思われます。Capitation Systemでは、治療をしてもしなくても歯科医院が得る報酬は同じですから様子を見ましょうということになったのでしょう。また、初期段階のむし歯は、フッ素入り歯みがき剤を使用するなどケアがされていれば歯を削らなくても進行を抑えることができるというのは、最近の世界的な考え方です。

この新方式では、お子様はかかっている歯科医院にNHSにより登録されているわけですが、ご両親様が担当の歯科医師にご不満があれば、他院に転院しても構いません。

2.相談会でお聞きした問題のある事例

「妊娠中に親知らずを抜いたら、治療費を請求された」
英国のNHSという保険制度では、成人の歯科治療については日本と同様個人の負担金があります。けれども、妊婦さんは例外で、妊娠中および産後の治療費は原則無料です。この女性は歯科医師から「親知らずの抜歯は妊娠期間中でも自費です」と言われたということですが、無料のはずです。妊娠中に歯科治療や健診を受ける時、クリニックで誰も説明してくれなければ、念のため確認しておきましょう。

「親知らずが痛くなって歯科医院に行ったら、ここでは抜けないと言われて他院を紹介されたがまた断られ、次を紹介。転々とさせられたがどこの医院でもいちいち治療費を請求された」
親知らずは、骨の中にもぐり込んでいたり斜めにはえたりすることがあり、歯医者さん泣かせです。その歯科医院で対応できない難症例であれば、歯科医師は第一にReferral Hospital、つまり総合病院や大学病院を紹介するべきです。

「NHSの歯科医院に通院しているが、そこには歯科医が4~5人勤務していて、日時の予約は取れるが担当医師を選べないと言われている」
クリニックの都合を患者さんに押し付けていますよね。たとえNHSの保険診療であっても、もちろん患者さんは担当医を選ぶことができます。

「治療した歯が悪くなり子供を歯科医院へ連れて行ったが、再治療をしてもらえない」
お口の中を見せてもらったところ、確かにもう一度治療が必要かと思われました。Capitation Systemだと再度治療をしてもNHSから余計に報酬が支払われるわけではないので、担当医師は積極的に治療しようと思わなかったのでしょうか。

3.英国で受けた歯科治療や歯科医師に対してご不満がある場合

英国の歯科医師の多くは誠実な治療を心がけ、患者さんにも優しく対応していると思います。でも、残念ながら、そうでない場合もあることを何人かのご両親様から伺いました。もし、歯科治療や医師に不満があれば、だまっていることはありません。英国には患者さんの権利を守るためにクレームを受け付ける窓口があります。英語の対応ですが、専用の用紙が用意されている場合もあります。患者さんからのクレームがあると、担当した歯科医師は呼び出され、カルテやレントゲン写真を見せて治療について説明する様求められます。場合によっては何らかの形で処分されることもあるでしょう。調査の結果は、後で患者さんに通知されます。

1.Local Health Authorities
ここは、各地域の医療機関を管理している部門です。その地域の歯科医院や総合病院の歯科部門などの状況を最も良く理解しているでしょう。とりあえず今回の相談会にいらっしゃった方が多くお住まいの地域にあるHealth Authoritiesの連絡先を挙げておきました。その他の地域にお住まいの方は電話帳をご参照下さい。
Barnet HA 020 8201 4700
Kensington, Chelsea, Westminster HA 020 7725 3333  NHS Direct 0845 4647

2.NHS(National Health Services)
NHSで受けた治療についてのクレームを受け付けています。NHSのホームページをご参照下さい。
http://www.nhs.uk/patientsvoice/how_to_complain.asp←NHSホームページへ

3.General Dental Council
英国内で働く全ての歯科医師はこの組織に登録しなければなりません(毎年の登録料が高いのよ、と友人の医師はみんなぼやいています・・・)。ここが歯科医療を行う許可を出しており、問題のある医師は許可を取り消されます。NHSだけでなく自費診療に関してもクレームを受け付けます。
http://www.gdc-uk.org/problem/complaints.html←General Dental Councilホームページへ

(編集部より)
三上先生は大和日英基金の助成により、今年2月に5日間に渡りロンドンで英国在住の邦人の小児を対象に無料の歯科医療相談を行ってきました。
その時の様子や印象、これからの対処の仕方についてまとめてもらいましたので、3回のシリーズでお届けしますが、今回はその2回目です。