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ニュースレター(機関紙)

海外メンタルヘルスの現場から(6)「海外赴任者のストレス~シンガポールの特殊事情(2)」
NL03050103
メンタルヘルス、海外赴任、ストレス

シンガポール日本人会診療所
小川原 純子

前回は、同じテーマで主婦の方の例を取り上げた。今回は、海外で働く男性の職場でのストレスを考えたい。
男性の場合は、日本に比して、同僚が減り上司や部下との人間関係が密になり易い。そこに何らかの問題が生じたときに上記のような「逃げ場の無い状態」に追い込まれてしまうことが多いようである。個人のアイデンティティーが肯定的に評価されない状態が長く続くと、症状が深刻になるケースもある。

症例Gさんは、営業で活躍しながら順調な出世コースを進んできていた。シンガポール転勤もGさん自身も望んで引き受けたものであった。来星当初は、2人の日本人駐在員とローカルスタッフに囲まれて順調な滑り出しであったが、1年後に、支社長が交代となり会社の雰囲気も一変した。

まずは、仕事のやり方でGさんと社長の意見が対立。この時、Gさんは仕事上、上司からの具体的なアドバイスやサポートを必要としていたようだが、上司は「君の優柔不断な態度がいけない。」「もっと努力してもらわなくては、日本側に納得してもらえない。」「この仕事はG君が責任を取るように。自分はサポートしきれない。」など、Gさんの立場の苦しくなるような言動を続けていたようである。

Gさんは、自分に対して否定的な評価や言動が多く、具体的なサポートに欠けた上司に対して常に不満を募らせていたが、結局は、上司とは住まいも一緒であったため、通勤も一緒、昼食も一緒、夜の会食も一緒、週末の接待ゴルフも一緒、という息の付けない日々になってしまっていたのだった。

そんな状態が続いていたある日、出勤前に腹痛と下痢が出現した。最初は「風邪かな?」と考えていたが、症状は2週間も続き、腹痛のために遅刻するようになってしまった。

本来であれば、Gさんが海外に赴任してさらに実力を発揮できる状況が提供されることが望まれるが、海外赴任の現場では人間関係が著しく狭くなり、一定の人間関係が濃密になることで、個人のアイデンティティーを揺るがすことにもなる。アイデンティティーの揺れている状態では、効率の良い仕事は期待できない。特殊な人間関係の軋轢が?日本であったら固執しないで扱える人間関係が、小さな社会では大きな問題となってくる、このことは海外赴任を決定した日本側の会社も理解しておくことが大変重要であろう。