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ニュースレター(機関紙)

話題の感染症14 「肺炎球菌ワクチンの登場」
NL02090102
感染症、肺炎球菌

(財)海外邦人医療基金(顧問)
長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
おおり医院(院長)
大利 昌久

 肺炎球菌によって、多くの高齢者が死亡しており、日本でも社会問題化しつつある。高齢者に限らず、小児科でも問題である。1989年の米国での調査では、肺炎球菌感染症は、全肺炎の10~25%を占め、年間4万人が死亡しているという。英国の成績によると、入院加療を必要とした成人肺炎の34%が本菌によるものだった。

 日本では、1988年に肺炎球菌ワクチンが輸入販売されているが、不思議なことに、医師も一般人も、ほとんどこの事実を知らない。肺炎球菌ワクチン研究会代表の松木慶蔵先生(長崎大学名誉教授)も、日本の実情を憂いていた。

病原体
 肺炎球菌は、グラム陽性球菌。病原性の高い肺炎球菌は、菌体表面に莢膜を形成するのが特徴で、この莢膜多糖体が病原性を規定する因子と考えられている。この構成糖、化学組成の違いから、84の菌型、血清型に分けられている。

肺炎球菌ワクチン
 肺炎球菌ワクチンは、日本では製造されていない。1983年、米国FDAが承認した米国メルク社製のPneumo vax 23(ニューモバックス)を万有製薬会社が輸入し、市販中である。ワクチンの対象者は、2歳以上で肺炎球菌感染によって重症化の恐れが高い人、また、65歳以上の高齢者が優先される。

 米国での接種奨励対象を表1に示した。米国では、65歳以上の接種率は、45%以上とのこと。なお、冬季、インフルエンザを接種する人は、本ワクチンとの接種間隔を1週間あけた方がよい。ワクチンの効果は、ほぼ5年以上と考えられる。表2は、接種が受けられない人を示した。

ワクチンの効果
 本ワクチン開発の先駆者Austrian博士は、南アフリカ、パプアニューギニアで肺炎高発症地域での野外実験を実施し、約80%の予防効果があったとしている。その後、米国の追随テストでは、60~70%の予防効果が示された。

ワクチンの将来
 日本では馴染みの薄いワクチンだが、急速に高齢化社会になりつつある日本では、今後、真剣な取り組みが必要である。更に、多くの人々が接種できるよう、インフルエンザのような国の援助が必要と思われる。北海道瀬棚町では、2002年より接種助成を始めている。同町国保診療所の村上智彦先生の「町ぐるみで予防の重要性を実践したい」という姿勢が町政を動かしたのだ。

 2002年6月、日本で初めて、テレビで放映されたこともあり、本ワクチン接種希望者が増えている。当院(神奈川県)でも65歳以上の高齢者で糖尿病の人、および肺炎を繰り返す人をターゲットに接種をはじめた。

治療現場から
 肺炎は、悪性新生物、心疾患、脳血管障害に次ぐ死亡率である。この数年、肺炎による死亡率は上昇しつつある。特に高齢者に死亡率が高く、平成11年の人口動態統計資料によると人口10万人中、65歳以上では16,324人が死亡した。予想以上に多い。

 ペニシリン系薬剤に対する治療効果は薄く、最近、高価なニューキノロン系薬剤が開発されたばかり。治療の現場からの印象では、ワクチンで肺炎は予防する方が、はるかに経済的である。

表1.米国における肺炎球菌ワクチン接種奨励の対象
《成人》
①血管系疾患、肺疾患、糖尿病、肝硬変、あるいは65歳以上の高齢者など
 肺炎球菌感染症に対するハイリスク群の人
②免疫不全患者、たとえば、脾機能不全、ホジキン病リンパ腫、多発性骨
 髄腫、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、臓器移植などで免疫機能不全を伴う人
③エイズ不顕性および顕性感染の人
《小児》
①慢性疾患たとえば機能的不脾症、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ症候群および
 免疫不全の2歳以上の小児
②2歳以上の不顕性または顕性エイズ感染小児
《特殊グループ》
特別な環境に住み、肺炎球菌感染に対する危険性が高い人


表2.接種が受けられない人
1.過去に肺炎球菌ワクチンを接種した人
2.現在、放射線治療や免疫抑制剤治療を受けている人
3.現在、発熱中や急性疾患に罹っている人
4.本剤の成分によってアナフィラキシーを起こした人
5.その他、予防接種を受けることが不適当な状態にある人