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ニュースレター(機関紙)

海外巡回健康相談に参加して(中近東)
NL02080103
中近東、医療事情

岡山労災病院産婦人科 
平野 加容子

 以前より海外での医療活動に関心を持っていたものの、産婦人科医としてどれだけ役に立つだろうかと思っていた私にとって今回の海外巡回健康相談への参加は大変貴重な経験となりました。年間14チーム派遣されるなか、私は中近東チームに参加し、オマーン(マスカット)、カタール(ドーハ)、そしてアラブ首長国連邦(アブダビ、ドバイ)の3カ国4都市を巡回しました。これらの地域はサッカーが共通のスポーツで日本と同じアジア地域に入ります。アジア予選から応援するサッカーファンの私にとってなじみの国でありドーハと言えばあの9年前の悲劇が思い起こされる場所でもあります。2002日韓ワールドカップに後ろ髪を引かれながらもこれらの国を訪れる事にささやかな幸福を感じていた私ですが、経由地パキスタン(カラチ)が紛争のまっただ中であった為、海外での安全が保証されていないことを改めて実感しました。

【中近東の在留邦人】

 近年中国や韓国の進出、支社の移転などで邦人の数も減少しそれに伴う日本人学校の閉鎖等、日本人会も現在様々な問題を抱えていることが推察されました。しかし女性の場合、日本人会の中だけでしか相談できる人がおられないため、この会が小さくなればなるほどストレスを感じやすい様です。私が危惧していたイスラム教という宗教的影響はほとんど無く、その意味でのストレスを持つ日本人には出会いませんでした。言語に関しては日常生活は英語で問題ないため、アラビア語に困ることは無いようです。しかし医学用語等専門性の強い用語になると英語といえども難しいようで、現地の病院にかかる時の大きな障害になっているようです。

【在留邦人の問題となる病気】

 これらの地域は6月の平均最高気温が37度で湿度も意外に高く約60%です。戸外に出て何かをするということが非常に難しい気候のため、移動は車、スポーツはよほど好きでなければしないことになり、運動不足が大きな問題になると思われます。特にUAEでは他都市に比べ日本食が手に入りやすい、外食レストランの開店時間が遅い(PM7~8時)等の理由により肥満傾向が他都市に比べより強いように感じられました。

【巡回健康相談結果】

 今回の巡回相談では、397名の健康相談を行いそのうち106名の成人女性の受診がありました。私が産婦人科医であったためか、婦人科系の相談が主でしたが、やはり根底には外出しにくい、日本人社会の矮小化等が影を落として居るようです。ストレスから生理不順、体重増加、育児不安等を引き起こし言葉の問題から現地医療機関にもかかれず苦しい思いを貯めている女性が多いのに驚かされました。男性の場合ゴルフなどでうまくストレスが発散できている人が大部分ですが、中にはスポーツが苦手で仕事も忙しくストレス発散ができていない方もいらっしゃいました。男女とも特に重篤な疾患はありませんでした。

【現地医療機関への利用状況】

 多くの現地の医師が、ヨーロッパで教育・研修を受けており、レベルは日本とほとんど変わらないためその点での不安は少ないと思われますが、受診するための予約・紹介状、待ち時間などのシステムの違い、言葉の問題から受診をためらうケースが多いようです。今回、巡回の合間にアブダビで私立の病院を見学させて頂きましたが、医療機器などの施設は非常に充実しており、医師が指名制であるなど日本の病院より優れたサービスを提供しておりました。しかし、ここまでの病院となると事情はいずこも同じで予約が取りにくいといった問題があるそうです。

【終わりに】

 今回巡回した都市は、治安はまず保たれており、致命的風土病もなく食生活も比較的良いことから疾病は限られていましたが、やはり苛烈な気候と邦人の少ない国で生活するストレスが大きな問題と思われました。日本人の場合、周囲に日本人が居ない環境に慣れていないためこの点を重視した健康管理をこれからも続けていく必要があると思われます。