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ニュースレター(機関紙)

海外巡回健康相談に参加して(東アフリカ)
NL02070103
アフリカ、健康相談、健康管理

中国労災病院
溝上 慶子

【はじめに】

 海外巡回健康相談事業は、労働福祉事業団及び海外邦人医療基金により、海外派遣労働者とその家族等の健康管理上の不安を軽減し、健康の維持・増進を図ることを目的に昭和59年度から毎年実施されています。私は募集の知らせを受けた時、2002年9月のアメリカニューヨーク同時多発テロの影響で多少の躊躇はありましたが、これまで当院からこの健康相談事業に参加した方々からアドバイスを受け、応募し参加の機会を得ることができました。
 
巡回地はタンザニア(ダルエスサラーム)、ケニア(ナイロビ)、エチオピア(アジスアベバ)、エジプト(カイロ)の4カ国4都市で、6月1日から6月16日までの16日間の行程でした。直接の相談は医師が受けていますので、看護師である私は体重測定や心電図検査、血糖検査など実施する中で垣間見た印象を述べさせていただきます。

【都市別一般的状況】

ダルエスサラーム(タンザニア)

 30数時間かけてやっと到着。海に面しているので高温多湿と言われていますが、ちょうど雨季が明けたばかりでこの時期が最も良い季節だということでした。しかし、蚊が多くマラリアに対する注意(蚊に刺されないようにする)が必要で、特に山間部に行く時は十分な対策が必須。

 雨季が過ぎた道路は随分荒れていました。市内に近づくにつれ、交差点などで信号停止した際、車のまわりに新聞や時計、シャツ、アンテナなど色々なものを手にして寄ってくる人の数が多くなります。道路端には車のホイル、靴の底、果物なども売られていました。隣を走るタクシーには、これ以上乗り切れないというほどの人が、明らかに定員オーバーの状態で座ることもできず腰をかがめて乗っています。

 日本ではワールドカップが始まっていました。幸い昼食時間に日本対ベルギーの試合を観戦することができました。最初は静かにしていた私達も相手の応援にヒートアップし拍手で応戦です。在留邦人の日本に対する思いはひとしおのようです。

 現地の子供達の教育費は高額で(小学校でも)、費用の支払いができなくなると即、登校できなくなるとのこと。しかし、子供達の目は透き通り輝いていました。

ナイロビ(ケニア)

 ケニア中央を赤道が横切っており、アフリカ、赤道と聞くだけで暑いというイメージでしたが、雨季が過ぎたばかりのナイロビは海抜1,700メートルということもあり昼夜の気温差が激しく、朝など現地の人達は皮製品やセーターを着ていました。

 治安については、数年前、日本人学校へ日曜日に出勤していた校長が襲われ死亡された事件も起きましたが、治安がよくないので昼夜を問わず一人歩きは禁物とされ、外出はほとんど自動車に頼っているようです。健康相談会場となった日本人学校は、鉄のフェンスで囲まれ学校構内は常時10人程の警備関係者によりパトロールされるという警備体制がしいてありました。治安の問題を肌で感じました。

 都心は交通量も多い上、路面状態と見通しの悪さや運転技術やマナーの欠如などにより交通事故も多く、できれば自分で運転しないほうがよいとのこと。また、車窓から見ると、街のあちこちでHIVに関する巨大掲示が目に付きました。HIV感染率は13%といわれていますが、実際はその3倍はあるのではとのことでした。

アジスアベバ(エチオピア)

 海抜2,400メートルの割に気温は高かったアジスアベバは、これから雨季に入るところでした。高地のため低酸素、低気圧のため頭痛、息切れ、動悸、睡眠障害に悩まされることがあるとのことで、私達も健康相談会場の階段では、それを感じました。

 宿泊したホテルは素晴らしかったのですが、一歩ホテルの外に目をやると、トタン屋根の広がる地区。ホテルでは豪華な結婚式が、その外ではそれを見つめる人たち。道端には多くの人たちが何をするでもなく座っています。家畜も多く、羊、ロバなどが道路脇で草を食べたり道路を横切っていきます。

カイロ(エジプト)

 空港に24時近くに到着したのですが人人人。空港からホテルまでも本当にこれが夜中と疑いたくなるような車と人。これまでの3カ国とはまったく異なる印象を受けました。夜間ライトを点灯させず走行している車も多くいました。これもガソリンの節約につながると思われているからだそうです。

 昨日まで気温が40℃あったとのことですが、年間降雨量がわずかで、ほとんど雨が降らないため乾燥しています。エジプトは、国土の94%が砂漠であり、居住可能な土地は、地中海沿岸とナイル河流域、点在するオアシス周囲に限られるため、カイロ周辺への人口増加の集中は年々深刻化しているそうです。住居も砂漠の中に広がり、ピラミッドのすぐそばまで押し寄せています。自動車の増加、慢性渋滞、排気ガスによる公害が悪化し、市内の大気汚染も進み、朝方はスモッグで街が白く澱んで見えるほどでした。

 ナイルの賜物といわれるほど恵みを運ぶナイル河ですが、住血吸虫が住みつき、今でも多くの患者が存在するとのこと。

 交通事情は悪く、自動車の交通量が多いため恒常的な渋滞、少ない信号機、歩行者の飛び出し(皆走行している自動車の間を平然と横切っていく)など交通事故に遭遇する危険は日常的にあり交通事故には十分な注意が必要。多くの在留邦人が現地ドライバーを雇い、自分で運転することは避けていました。

【邦人の日常生活状況と問題点】

食事について

・単身赴任者に急激な体重増加が目立った。これは環境の変化によるストレスや外食の影響が考えられ、奥さんが来られてから食生活が整ったとのこと。
・総じて食事は高カロリー、高脂肪のため体重増加や生活習慣病を気にする方が多い。また、治安の問題で戸外での運動や外出が制限され、自動車による移動となるため運動不足を多くの方が気にされていた。
・外食においては、甘いことが豊かさの象徴ととれるような甘すぎるデザート類が並ぶ。
・生水は安全性に問題があるため、飲用・調理用にはミネラルウオーターを使用。野菜も加熱して食している。また、ほとんどの方が現地に入った後すぐに下痢の洗礼を受けられたようで、水に対しては十分注意が払われている。
・日本食が手に入らず、家事のため雇用した現地人が作る食事が合わないためつらいと言われる方もいた。少しでも日本の食材を手に入れるために庭で野菜を栽培したり、一時帰国の際に乾物を持ちかえるなど色々工夫されていた。

運動不足について

・治安の問題で自由に外出できないことや婦人方においては家事全般をメイドなどに任せるため、テニス・ゴルフで体力を保っているとのこと。身体的・精神的ストレス解消のため望ましいことだと思われました。

人間関係
・特に単身赴任者は仕事においても、現地人との考え方、生活パターンの違いの中、交渉をスムーズに運ばせるため随分神経をつかわれるようです。その上ストレス発散の場所・方法が制限されるため、相当ストレスをかかえることとなります。
・雇用者との生活観の違いから、些細なことまで指示しなければならずそれがストレスとのこと。多くの方が、メイド、運転手、門番など複数の現地人を雇用していますが、清潔観念、育児、料理など文化、生活観の違いから、ストレスは大きいと思われます。台拭きと雑巾の使用方法は異なるということから説明・指導が必要のようです。
・狭い邦人の間の人間関係において、関係が密となることでよい面もありますが、オープンにしたくない事柄については気を遣われることもあり、反対にストレスにつながることもあるようです。一人に話したらその日のうちに1周して話しが大きくなり戻ってくるくらいだと表現されていました。

子供達について
・邦人でも現地の方と結婚されている方や都市から離れたところに居住されている方などは、現地の学校に子供達を通わせていますが、現地の学校では体重・身長測定などほとんど実施されず個人の管理に任されているようです。自分のことよりも子供さん達の成長、健康状況を気にされていました。
・日本人学校に通う子供達は学年が違っても和気あいあいで、色んな年代の子供達が一緒に遊んでいる光景は思いやりが育つ暖かさを感じました。

医療への不安
・日本を離れ最も不安なことは、皆さん医療への不安と答えられました。日本では国民皆保険で当たり前のように受けることができる医療ですが、言葉が通じない、医療レベルの差、感染症の危険などその不安は計り知れないほど大きいようです。そのため大使館の医務官は、普段から邦人が安心して受診できるように現地施設の情報収集に努め、健康の相談に応じておられました。

その他
・婦人方は美容院がなくて困ると言われています。日本では1~2カ月毎に美容院に通いますが、それができないためストレスにつながるようです。
・ゴミも出した後、次々と中身をあさられるので考えて捨てないといけないとのこと。

【健康相談業務】

 各相談会場において事前の打ち合わせ・会場の下見が実施でき、日本人会、JICA、大使館の方々の協力を得て相談は手順よくスムーズに運びました。また、現地採用などで日本への一時帰国などない長期滞在者は、特にこの機会を心待ちにされていたようで、現地の医療機関で事前検査を受け相談に来られたので、多くの具体的な質問を受けることができました。

【おわりに】

 短期間での4都市の巡回だったのですが、海外勤務者、またそのご家族のもつ不安大きさを知ることができました。発展途上国において仕事、生活をするということは各種の不安、危険と隣り合わせです。今回巡回した都市のすべてで私達は大変歓迎していただき、巡回健康相談に対する在留邦人の期待の強さを感じました。私は、巡回相談経験者のアドバイスを受けこの事業に参加させていただきましたが、職場に戻り皆の参加を呼びかけたいと思います。