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ニュースレター(機関紙)

話題の感染症9 「C型肝炎」
NL02040103
感染症/肝炎/C型肝炎

(財)海外邦人医療基金(顧問)
長崎大学熱帯医学研究所(非常勤講師)
大利 昌久


◎はじめに
 最近、新聞をにぎわすようになったC型肝炎。血液製剤「フィブリノーゲン」を通じてC型肝炎が感染、「薬害肝炎」として認知されるようになった。
 筆者が、東京大学医科学研究所(医科研)の感染症内科に勤務していた当時、黄疸を伴う肝炎の患者が多数入院していたことがある。ほとんどがAでもBでもない、「非A非B肝炎」。治療が難しい病気で原因は不明。筆者は、非A非B肝炎患者の血液を集め、クロマトグラフィーで分析、その不気味な肝炎の正体に迫ったことがある。ちょうど、日本で初めて、クモのタンパク毒の精製分離に成功したばかりだったので、自信があった。何度か失敗したが、国家の英知といわれた医科研の教授、先輩に、そのたびアドバイスをいただき、研究を続けたものだ。何しろ生きたウイルスが相手だったので、極めて不気味で危険な研究だった。しかし、残念ながら1年におよぶ、アイデアに富んだ研究も、C型肝炎ウイルスの本態には届かなかったのである。1982年のことだった。
 C型肝炎ウイルスは、1989年、米国カイロン社の研究グループが発見。私の物理学的解析方法だけでなく、遺伝子工学の方法を用いたことで成功したらしい。日本では、約200万人を超えるC型肝炎ウイルス感染者がいるといわれている。C型肝炎とは何か、その診断、治療にふれた。


◎肝炎ウイルスを振り返る
 黄疸を伴う感染症は、その存在が昔から知られ、「カタル性黄疸」と言われた時代があった。そして、1920年代「ウイルス肝炎」として学問的に位置付けられるようになったのである。さらにウイルス肝炎は、その感染経路から流行性肝炎(経口感染)と血清肝炎(輸血後)に分類され、その後、ウイルスが確認され、表1のように病名も変わった。表2に肝炎ウイルス発見の歴史をあげた。

表1.肝炎の病名の変遷


表2. 肝炎ウイルス発見の歴史

1965B型肝炎抗原の発見(Blumberg(オーストラリア))
わが国でも大河内らによって確認
1970肝炎ウイルスを電顕で証明(Dane(USA))
1973A型肝炎ウイルス粒子の証明(Feomstone(USA))
1974第3ウイルス非A非B肝炎の認知(Prince(USA))→後のC型肝炎
《日本、米国などにおいて輸血後肝炎対策始まる》
1977第4のウイルスD型肝炎の認知(Rizzetto(イタリア))
→1980年にウイルス粒子として証明
1980第5のウイルス非A非B肝炎の認知(Wong(インド))→後のE型肝炎
1983E型肝炎ウイルス粒子の証明(Balayan(ソ連))
1989Chiron 社(Dr. Bradly)によるC型肝炎のウイルスゲノムのクローニング


◎C型肝炎の診断法
 C型肝炎の診断は、簡単になった。
1)肝機能検査
 全身倦怠感、食欲不振、悪心を伴う場合、急性C型肝炎を疑い、検査する。肝機能検査で確認できるはずである。ウイルスのチェックもおこなう。自覚症状のない慢性C型肝炎は、ウイルスの検査を実施する。
2)ウイルス学的検査
 C型肝炎ウイルスに関する検査法を表3に示した(2002年3月現在)。この多数の検査法を巧みに使い分けることで、C型肝炎の診断だけでなく、インターフェロンの治療効果などの判定も可能となった。
 (1)HCV抗体

 HCV抗体で最初に臨床応用されたものは、C100-3抗体と呼ばれるものだったが、検出率は70%程度と低かった。その後HCV-RNAが解明され、抗体の有用性が検討された結果、1992年、第2世代、現在では、第3世代と呼ばれる抗体系がHCV感染のスクリーニングに用いられ、極めて高い検出率が得られている。
 注意しなければならないのは、C型急性肝炎時に、初感染から抗体陽性化までには1カ月以上かかるため、はじめに陰性とでることがある。この間の診断には、HCV-RNAの有無の確認が必要である。(表4)
 (2)HCV-RNA/コア蛋白測定
 HCVそのものを同定する検査法として、HCV-RNA測定法、コア蛋白量測定法がある。HCV-RNA測定法のうち、ウイルスを定性的に判断するアンプリコア定量法(アンプリコア-M法)、分岐DNAプローブ法が用いられている。
 (3)HCVジェノタイプ/セロタイプ
 HCVはRNAウイルスであり、非常に多数の遺伝子型(ジェノタイプ)が存在する。現在、わが国は、HCVを6種類のグループに分類し、それぞれをさらに細かいサブタイプに分類している。日本ではこのうち1bが約70%、2aが約20%、2bが約10%を占める。血清学的群別(セロタイプ)は、EIA方法を用いてグループ1とグループ2に分類する方法である。後述するインターフェロンの著効率を付した。(表5)

表3. C型肝炎ウイルスに対する検査法
(1)HCVに由来するもの
HCV-RNA
定性アンプリコア定性法
NestedRT-PCR 法
定量分岐DNAプローブ法
アンプリコア定量(アンプリコアーM)法
CRT-PCR 法
HCVコア蛋白量
HCV遺伝子型(ジェノタイプ)
HCV-RNA 超可変領域(HVR 1 )解析
HCV-RNA 1 bNS 5 A 変異

(2)宿主に由来するもの
HCV 抗体
C100-3
HCV 抗体(第 2 世代)
HCV 抗体(第 3 世代)
HCV コア抗体
HCV 抗体 RIBA-111
HCV 群別セロタイプ

表4.C型肝炎の診断・治療の進め方

表5. C型肝炎ウイルスの種類(HCV 遺伝子型)
セロタイプジェノタイプインターフェロン著効率
11 a不詳
1 b20~23%
22 a63~68%
2 b50~53%



◎C型肝炎の感染経路
 感染経路は、輸血のほか、昔おこなわれていた針を変えずに複数の人に注射した予防接種などがあり、これが日本でC型肝炎が蔓延した大きな原因と考えられる。この点から、C型肝炎は「医原病」という人もいる。ただし、C型肝炎ウイルスをもっている人(キャリア)の血液が傷などから体内に入ると感染する。
1)輸血による
 C型肝炎の患者さんに病歴を聞くと、その40%に輸血歴がある。また、今、問題になっている「血液凝固因子製剤」を頻回に受けた人もC型肝炎になっている。つまり、汚染された血液を通じてウイルスが感染した例が多かった。
 歴史を振り返ると、1973年、HBs抗原ウイルスのスクリーニングが導入されて、輸血によってB型肝炎は激減したが、混在していたC型肝炎ウイルスは、そのまま通りぬけて感染したことになる。これが、輸血後の非A非B型肝炎といわれるものだ。1989年、C型肝炎ウイルスの発見に伴い、日本赤十字社血液センターは、献血者のスクリーニングを開始。当時の記録だと、輸血後C型肝炎は2%にまで減少したという。現在では、日本国内で輸血そのものによる感染はないと考えてよい。
2)輸血以外の感染
 医療機関によるディスポーザブル注射針が普及してから、C型肝炎は確実に減った。つまり、それ以前、同一注射針による集団予防接種がおこなわれていた時代があり、これが、重要な感染経路といわれている。これを裏付けるものとして、A医療機関のあるB地域に、C型肝炎が集積しているという事実がある。恐ろしいことなのだ。この反省に立ち、今では針灸治療院での針も個人用が用いられるようになった。
 なお、刺青、麻薬の回し打ちなどでも感染する。
3)性感染症
 今、問題になっているのは、性による感染症である。不特定多数の相手との性交渉は危ない。特に、海外での「買春行為」は自爆に等しい。


◎C型肝炎の経過(慢性肝炎、肝硬変、肝癌)
 C型肝炎とは、C型肝炎ウイルスの感染によって肝臓が炎症を起こす病気。表6にC型肝炎の臨床経過を示した。慢性肝炎から肝硬変、肝癌にすすむことが確認されている。この経過を、どこかでブロックする必要がある。
 一般的な治療は、バランスのとれた食事をとること。肝臓に負担をかけないように飲酒を控えることが必要。ウイルスの活性を抑えたり、これを殺すためには、インターフェロンの注射療法が重要となる。
表6.C型慢性肝疾患の臨床経過


表7. インターフェロン再投与の条件
(1)初回投与において、aまたはbの効果のあったもの
初回投与a:有効以上の効果が認められたもの
(有効:投与終了後、6ヵ月以内にALT(GPT)が正常上限値の2倍以下に改善し、その後6ヵ月以上正常上限値の2倍以下を持続した例)
b:投与終了時点でHCV-RNAが陰性化したもの、またはALT(GPT)が正常化したもの

(2)下記の a または b であること
a:HCV 遺伝子型セロタイプが1以外あるいは、ジェノタイプが1 b 以外
b:HCV-RNA 型1Meq/ml(プローブ法)以下あるいは、100Kcopies/ml(アンプリコア法)。
つまり、ウイルス量が少ないこと。
(インターフェロン製剤の取り扱いについて 平成12年3月17日 保険発第34号より)

◎C型肝炎のインターフェロン療法
 インターフェロンは注射で投与する。現在、インターフェロンの標準的投与期間は6カ月とされている。効果は感染している人のウイルスの遺伝子型や量、患者の状態や肝炎の進展度などによって異なり、また、副作用がある。専門の医師の診断に基づいて、適切な治療をおこなう必要がある。
 2001年11月にインターフェロンとの併用療法で効果があるリバビリンという薬が認可された。ただ、この薬についても副作用があり、効果の程度も感染している人の状態によって異なる。
 インターフェロン単独での有効率(ウイルスが完全に排除される率)は、平均すると約30%だが、抗ウイルス剤であるリバビリンを併用することにより、やや有効率が増す。
1)副作用
 インターフェロン療法をおこなっている多くの患者にはインフルエンザ様の症状(発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、食欲不振等)が、治療開始後早期にみられる。しかし、これらの副作用は、治療を続けていくと軽くなってくる。インターフェロン投与中には、時に様々な副作用がみられるので主治医とよく相談しながら治療をおこなう必要がある。特に注意するべき副作用は、1~2%にみられる「うつ状態」および、それに伴う「自殺企図」である。これは、不眠や不安感等から始まる。また、「間質性肺炎」や「白血球減少」などにも注意が必要。なお、妊婦へのインターフェロンによる治療は、十分な安全性が確認されていないので、通常おこなわない。
 リバビリンを併用した場合の注意すべき副作用として、「貧血」や「肝機能障害」があげられる。また、「催奇性」があるので、妊婦に投与はできないし、男性への投与に関してもパートナーの妊娠等の状況によって制限がある。
 インターフェロンおよびリバビリンによる治療は、専門医とよく相談することが必要である。
2)再投与
 インターフェロンの再投与が、健康保険で認められるようになり、話題を呼んでいる。ただし、再投与の著効率は20%以下といわれ、厳しい条件が付けられている(表7)。


◎おわりに
 肝臓がんの95%以上が、C型かB型肝炎からの肝炎ウイルスによるといわれている。特にC型肝炎からの肝臓癌は、75~80%を占めているので、正しい知識を得て早めに専門医に相談し、治療することが望ましい。
 海外から帰国したら、健康診断項目にC型肝炎のチェックをすることも大切。


参考文献
渡辺秀樹、永山和宣、榎本信幸:C型肝炎ウイルス遺伝子からみたインターフェロン治療:医学のあゆみ、No.200、2002.1
石田永、林紀夫:C型肝炎のウイルス学的検査:消化器治療、No.55、2002.2
厚生労働省:C型肝炎対策に係る啓発関係資料:2002.3