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ニュースレター(機関紙)

話題の感染症1
NL01060102
感染症 /狂牛病 /インフルエンザ /食中毒

(財)海外邦人医療基金 顧問
長崎大学熱帯医学研究所
大利 昌久

 今や海外旅行ブームと言われ、海外赴任、出張を含めると、ついに日本からの出国者は1700万人をこえる勢いです。それに伴い、いろいろな病気を日本に持ち帰り、不幸にして発病する人も後をたちません。航空機の発達により、遠いアフリカの感染症も、数日で日本に持ち帰る有り様です。「感染症に国境がなくなった」とも言えます。
 本誌にて、内外で話題になっている感染症を、タイムリーにシリーズとしてまとめてみます。

1)狂牛病

 1986年に英国で発見された狂牛病。1996年には、変異型の狂牛病も発生。今や、欧州各国に広がり、アジアにも飛び火しようとしている。人に感染することが分かり、日本など各国で牛肉の輸入規制に乗り出した。この病気の病原体は、従来の常識を破り、細菌でもウイルスでもないタンパク質「プリオン」が自己増殖するというもの。
 農水省は、「水際作戦」を展開中。欧州産の牛肉については、2001年1月より禁輸措置をとっている。その他の国からの牛肉も、病気でない証明書が必要という。私たち医療を担う者に関係があるのが、牛を材料に使った医薬品や化粧品である。厚生省の感染症情報でも明らかなように、狂牛病からの発症が濃厚な「クロイツフェルト・ヤコブ病」が日本で発生している点は問題である。発病までの潜伏期間は5年とする説があり、発病ルートは不明。
 FAO(国連食糧農業機関)は、欧州を含む100カ国以上の牛が狂牛病に感染している可能性があると報告。FAOが特に懸念しているのは、東欧、中東、アジアへの流行拡大である。病原体に汚染されている可能性のある動物性飼料を、英国政府は国内で禁止した後も輸出を続けていたという事実が分かったからだ。このニュースが流れて、ベジタリアンが増えたという報道は、人の食生活を脅かす点で深刻だ。

2)小流行だったインフルエンザ

 今期、予想が外れ、インフルエンザの大流行はなかった。何故だったのかは、もう少し医学的な解析が必要である。
 予防接種について意見を述べると、多くの専門家が指摘し始めたように、過去に大きな誤りがある。それは、インフルエンザウイルスが学童の身体で増幅され大流行するという考えがあり、学童を中心にインフルエンザワクチンを接種することで、大流行を予防しようとした。そのため、死亡率の高い高齢者への積極的なワクチン接種は、忘れられていたのだ。
 今期の大流行がなかった理由は、インフルエンザウイルス側にあるとしても、1999年の大流行の苦い経験から、若年者や老人施設などの高齢者に積極的なワクチン接種がなされ、予防に役立ったことも原因の一つと考えられる。
 当「おおり医院」でも厚生省の指定を受け、2001年1月9日より2001年4月6日にかけて、神奈川県西部地域の「インフルエンザ定点観測」を毎日おこなった。3月12日から20日にかけて、全国と同じく小流行をみたが、たいした数ではなかった。インフルエンザの流行が少なかった本当の原因を知りたいところである。

3)最近問題になって来た食中毒

小型球形ウイルス
 乳幼児下痢症に「何らかのウイルス」が関与することが以前から疑われていたが、長い間その本体を発見出来なかった。1986年、米国、オハイオ州の小学校で集団胃腸炎が発生。
 この時、電子顕微鏡によってとらえられたのが小型球形ウイルスで、Small(小さな)、Round(球形の)、Structured(構造をもつ)、Virus(ウイルス)、略して「SRSV」(小型球形ウイルス)と命名された。

① 発生
 米国、英国、オーストラリア、日本など各地で発生。食品や水を介して集団発生するので、「食中毒」の病原体として最近重視されている。日本国内では、ここ数年増加。97年度から旧厚生省(厚生労働省)では、このウイルスによる集団例を「食中毒」扱いとし、その予防策に重点を置いている。
 当院でも2000年冬、6人の集団食中毒が発生。症状が著明なことから、細菌感染以外にウイルス感染を疑い、神奈川県衛生研究所に依頼し、6人中4人にSRSVが認められた。
 日常診察でも注意が必要と言える。

② SRSVの正体
 粒子の大きさは、極めて小さく、インフルエンザウイルスの約5分の1の大きさ。人工培養(組織培養)が不可能なウイルスである。

③ 潜伏期間と症状
1)SRSVは、乳幼児だけでなく成人、老人にも感染。
2)潜伏期間は、2~70時間(平均36~40時間)。
3)発症期間が12~60時間で予後は良好。
4)特徴ある症状は、吐気と嘔吐および水様性下痢。その他、腹痛、発熱、悪寒、倦怠感などもみられる。
5)発熱は、約半数が37℃台、38℃台が40%であり、39℃以上の高熱はほとんどない。
6)下痢は、ほとんどが水様性あるいは軟便で、血便は稀。

④ 感染源
 SRSVに感染している患者と保菌者が、重要な感染源となる。
1)カキなどの貝類による感染
 汚水により汚染された貝類が重要。海外では特に要注意。ウイルスが二枚貝の中で濃縮されると考えられる。今まではカキからウイルスの証明が出来なかったが、現在は遺伝子診断技術によってSRSVの汚染が証明されるようになっている。
2)水からの感染
 汚水で汚染された井戸水、湧き水や氷が原因となる。
3)保菌者から食品から人への感染
 調理従事者がSRSVの感染者あるいは保菌者であって、食品のサラダが汚染を受ける。
4)人から人への感染
 患者保菌者の糞便や嘔吐物がエアゾル状になって二次感染を起こしたり、また手指を介する感染を想定される。

⑤ 予防対策
1)充分に加熱すること。
2)二次感染予防には、手洗いの励行、うがいおよびマスクの着用が有効である。
3)調理従事者が、冬季に嘔吐や下痢などの症状があったらSRSVの感染を疑い、調理に従事させないこと。

⑥ 治療
 補液などの対症療法が中心となる。