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ニュースレター(機関紙)

海外勤務者のための健康管理ガイド4
NL00070103
感染症 /寄生虫

感染症と寄生虫症
海外勤務健康管理センター
奥沢 英一

■1 はじめに
 海外、特に発展途上地域で生活する場合、各種の感染症や寄生虫症に罹患する可能性が無視できないので、以下の対策が必要となります。
○出国前に予防接種を受ける。抗マラリア剤を準備する(医学的予防)
○海外赴任中の生活で注意事項を守る(一般的予防)
○発熱や下痢が出現したら医師の診察を受ける(早期治療)
 海外で流行する感染症や寄生虫症は、国内では珍しい病気です。しかし国内で発生する原因不明の難病と違って、原因(病原体)が明らかとなった一群の病気です。予防法あるいは治療法の確立された病気が大部分です。上記の対策さえ行っておれば、決して恐れる必要はありません。

■2 感染症の一般的予防法(生活上の注意)
1)水や飲食物から感染する病気
 衛生状態の悪い国では表1にあげた各種感染症、寄生虫症が問題となります。予防法は、第1に生水は飲まないこと。海外では水道水から各種の病原体が検出されます。飲用水は湯冷ましあるいはミネラルウォーターに限ること。第2に海外で刺身は食べないこと。食材に潜む病原体を殺すには、加熱調理を行う以外ありません。第3に調理人から感染する可能性に留意すること。自分で調理を行うのが最良ですが、使用人に任せる場合にはいくつか注意が必要です。まず排便後と調理前の手洗いを徹底させ、爪も短く切らせます。調理場の衛生管理や調理人の健康管理も大切です。

2)皮膚から感染する病気
 裸足で歩くと感染する病気(糞線虫症など)を防ぐには靴を履くことが大切です。水浴びで感染する病気(住血吸虫症など)は流行地が限られています(図1)。該当地域では川や湖に入らないこと。傷口から感染する病気(破傷風など)の予防には、外傷の処置が重要です。破傷風に関しては予防接種を受けておくようおすすめします。

3)吸血昆虫に媒介される病気
 蚊(マラリア、黄熱など)、吸血性のハエ(リーシュマニア症など)、ノミ(腺ペスト等)、シラミ(発疹チフスなど)、サシガメ(シャーガス病)、ダニ(コンゴ・クリミア出血熱など)など吸血昆虫は各種の病気を媒介します。これらの病気を予防するには、虫にさされないように注意することが大切です。中でも蚊の対策は最も重要です。

4)動物から感染する病気
 最も重要な病気は狂犬病です(図2参照)。海外で犬に噛まれたら、適切な処置が必要です。この他、動物の排泄物に病原体が出現し、これに触れただけで感染するもの(ワイル病)、これを吸い込むことで感染する疾患(類鼻疽)、これを口に入れることで感染するもの(包虫症)などもあります。牧草地帯では各種の注意が必要です。

5)ヒトから感染する病気
 病原体はヒトの排泄物に出現しますが、感染力の強いものと弱いもので伝染病としての性格が異なります。感染力が強い病原体(麻疹、ジフテリア、流行性髄膜炎)は、患者とすれ違っただけで感染します。人混みや病院の外来で感染する場合もあるので、予防接種による予防が必要となります。感染力が弱いもの(B型肝炎、HIV)は、性行為で感染する他、医療機関で血液や体液を介して感染することも知られます。特に発展途上地域の病院では1本の注射針を何回も使用している場合もあるので、受診する医療機関はよく選ぶ必要があります。

■3 感染症の早期診断と早期治療
 感染症の症状には様々なものがありますが、下痢、発熱、発疹が重要です。
 海外、特に途上国に滞在する場合、下痢は普通に起こる症状です。血便や発熱といった随伴症状がなければ、放置しても2~3日で自然に治る場合が多いです。水分補給(スポーツ飲料あるいは椰子のジュースがよい)を心がけ、おとなしくしていればよいです。但し、単なる下痢でも3日たっておさまらない場合には、医師の診察が必要でしょう。
 発熱は、明かにカゼと思われる場合を除き、病院に行くべき症状です。特に問題になるのは、マラリアや腸チフスです。いずれも治療可能な病気ですが、放置すると重大な事態に発展します。まずは血液検査で原因を明らかにすることが先決であり、このために内科医の診察が欠かせません。
 熱帯地方では湿疹(かぶれ)や真菌症(水虫の類)が多いです。結節(こぶ)や潰瘍(外皮の欠損)といった症状は熱帯地方特有の病気の可能性があります。原因によって治療法が異なるので、皮膚科医の診察を受けます。
 病気になったら医師の診察を受けるのが最もよい対処法です。しかし、前述したように病院で感染する病気もあります。衛生状態の悪い医療機関でも、早急な対処が必要なら、受診する以外にありません。しかし急を要しない場合なら、先進地域に移動して高水準の医療機関を訪れる方向で考えた方がよいです。ここで2つの判断が要求されます。第1は病気の緊急度です。第2が近隣地域の信頼できる医療機関までのアクセスに関する情報です。海外旅行傷害保険などに加入している場合、このような相談に答えてくれる窓口が設けられている場合が多いので、そちらに問い合わせてみるとよいです。相談窓口がわからない場合には、当センターのFAX相談(045-474-6098)(無料)に申し込まれるのも1つの解決法でしょう。
 寄生虫症の多くは数ヶ月の時間を経て徐々に症状が出現します。これを早期に発見するには検便が必須です。帰国後の健康診断だけではなく、できれば滞在中も年に1回程度検便を受けるようおすすめします。便から寄生虫が検出されたら、駆虫剤を飲めばよいです。

■4 おわりに
 海外で流行する感染症には各種のものがありますが、その多くは予防法も治療法も確立されています。医学的予防(予防接種、抗マラリア剤など)、日常生活における注意(飲食に関する注意、昆虫や動物に関する注意など)、早期治療(下痢や発熱が出現したら医師の診察を受ける)の3種の対策が有効です。これらを総合的に考慮した対策を行えば、いかなる感染症も決して恐ろしい病気ではありません。
 生活上の注意は対策の基本です。しかし、これだけで病気を防ぎきれるわけもありません。必要以上に神経質に考えることは、精神衛生上、望ましいことではありません。必要性に応じた対策をたてることが大切で、地域別情報を入手することが欠かせません。具体的には、流行疾病、予防接種、抗マラリア剤、医療事情といった情報が必要となります。いずれもインターネットから入手可能な情報です。各自必要な情報を収集され、効果的な対策を立てた上で、海外生活をエンジョイしていただきたいです。

(編集部注:このシリーズは、海外勤務健康管理センター(JOHAC)発行の小冊子をベースにして、執筆の先生方のご好意により当ニュースレター用に再編していただき分割して連載しています。当小冊子「海外赴任者のための健康管理ガイドブック」には表題に関する多くのノウハウが一般企業人向けに解りやすくコンパクトに収録されています。入手希望の方はJOHAC研究情報部(FAX:045-474-6098)へご連絡下さい。)