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ニュースレター(機関紙)

東南アジア子育て事情
NL00060104
小児科 /タイ /バンコク

氏田先生は昨年末、ジャカルタ・シンガポール・バンコクなど東南アジア4都市を訪問して「小児の健康管理」に関する講演や個別相談および日本人育児サークルほか多くの在留邦人と交流の場を持たれました。これらを通じて感じられた在留邦人小児の健康に関する悩みや問題点を都市別にレポートしていただいました。シリーズ最終回の今回はバンコク編をお送りします。(編集部)

バンコク編
                                     海外勤務健康管理センター
                                            氏田 由可

バンコクでは、バンコクすくすく会主催の講演会をサミティベ病院の講義室で行った。与えられたテーマは、前半はすくすく会からのリクエストで「子どもの検診のチェックポイント」「子どもの成長について」、コーヒーブレークをはさんで後半に「海外で気をつける病気」である。参加人数は約50名でほとんどが母親だったが、中にはバンコクの医療機関の日本人コーディネーターなど、数人の医療スタッフもみえていた。

成長や発達は小児科領域では非常に大事な分野であり、日本では一般的な市町村による乳幼児健診制度のない海外在留小児にとっては、大きな問題となることがある。今回の講演もそういった背景から出たリクエストと思われるが、実は成長・発達の評価は小児科医にとっても大変難しい。講演会ではなるべく簡単でわかりやすい説明を心がけたものの、参加したお母さんがたには少しわかりにくかったのか、質問が比較的少なく、その点は反省している。一方、後半の小児の病気については、他の会場と同様、発熱時の対処や脱水の予防、肝炎の予防接種の必要性など、多くの質問があった。

ところで、今回の講演会場はバンコクのサミティベ病院が無料で提供してくれた。そのうえ、小さな子ども連れの母親のために、別に小さな部屋を用意して、講演中はスタッフが子どもの面倒を見てくれていた。このサミティベ病院には日本人用の受付窓口と事務室があり、日本人を含む日本語通訳が常駐している。また、日本の大学院を卒業した、いわゆる日卒医が5名おり、邦人医療に大変積極的である。妊娠・出産についても、すくすく会スタッフのリクエストを取り入れ、日本の方法に近い形でお産ができるそうだ。バンコクで日本人がよく利用する医療機関にはサミティベ病院のほか、バンコク・ジェネラルホスピタル、バムルンラド病院、ラム9世病院などがあげられるが、その中でも特に小児科や産婦人科に関してはサミティベ病院が代表的である。その理由の一つは、このように日本人の育児サークルと連携をとりあい、日本人向けのサービスを取り入れる努力をしていることにあろう。バンコクの在留邦人数は現在約2万人であり、病院にとってよいマーケットであることも大きな要因であろうが、実際邦人にとってもありがたいことである。

今回、バンコクすくすく会という育児サークルの規模の大きさや組織だった体制、活動範囲の広さに改めて驚かされた。マタニティ・ミーティング、出産準備教室、わんぱくミーティング、先天性代謝異常スクリーニング、おっぱいサポート、すくすく会便りなど、いくつもの分科会に分かれ、それらをそれぞれのスタッフが運営している。定期的なミーティング以外に、今回のような各種講演会やコンサート、バザーなどが企画され、その他にもタイ語の母子手帳を作成して販売したり、医療用語のタイ語と日本語の対訳本を出版したりと、現場の必要に即した活動が展開されている。在留邦人数の多い都市だからこそできることであろうが、それにしてもバンコクのお母さん方は恵まれていると感じた。なお、ジャカルタ・マザーズクラブと同様、立派なホームページを作成しているので、興味のある方はぜひ一度のぞいてみていただきたい(http://www.palmleaf.com/sukusuku-kai/index.html)。
さて、このように至れり尽せりのすくすく会であるが、やはり問題はたくさん抱えているようだ。まずはスタッフ、特に代表者の後継者探しである。これはどこの育児サークルにも見られる共通の悩みだが、どんな重要なポストであっても赴任期間が終われば帰国してしまうため、活動の引きつぎが難しい。そのためには、マニュアルをきちんと作成したり、永住者に主要スタッフとして加わってもらうなどの対策が必要である。ただ、すくすく会のように規模が大きいと、主要スタッフは会の活動に忙殺されるうえ、あくまでもボランティア活動なので、誰にでも気軽にお願いできることではない。また、看護婦や助産婦、臨床心理士がたまたま在留し、メンバーに加わっているために成立している活動もあり、こちらもそのスタッフが帰国してしまえば続けることができない。これらの問題に関して、日本にいる私達に何かお手伝いできることはないだろうか。今回のように日本人医師として講演をしたり、個別相談に応じたりするのも一つの方法である。また、電話やメールを通じて、アドバイスをしたり質問に答えたりすることもできる。しかし、そのようなコンサルタント的な役割だけでなく、もう少し積極的なサポートができれば、と強く感じた。今後、その方法を模索していきたいと考えている。