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ニュースレター(機関紙)

東南アジア子育て事情 (続)
NL00050102
シンガポール /小児科

氏田先生は昨年末、ジャカルタ・シンガポール・バンコクなど東南アジア4都市を訪問して「小児の健康管理」に関する講演や個別相談および日本人育児サークルほか多くの在留邦人と交流の場を持たれました。これらを通じて感じられた在留邦人小児の健康に関する悩みや問題点を都市別にレポートしていただきました。前回のジャカルタ編に続き今回はシンガポール編をお送りします。(編集部)

シンガポール編
                                             海外勤務健康管理センター 
                                              氏田 由可

シンガポールでは日本人会ボールルームで講演会を行った。タイトルは「アジアでの子育て-風土病、予防接種、発熱など」とし、シンガポールでよくみられる感染症のほか、発熱や下痢・嘔吐、けいれんなど、子供がおこしやすい症状とその対処について説明した。約50名のお母さん方が参加され、1時間半の講演のあとの質疑応答では、多くの質問を受けた。

質問の中心はやはり予防接種に関することで、具体的にはA型肝炎、B型肝炎、狂犬病、日本脳炎などの接種の必要性や副反応についてである。シンガポールに赴任中の方たちは小児を含め、かなり積極的に予防接種を受けている、という点が印象的であった。現地での医療機関の受診やワクチン接種にあたって不安を感じることが比較的少ない、恵まれた医療事情のシンガポールならではであろう。

花粉症やアトピーなどアレルギー性疾患の治療や予防についての質問もあった。他の東南アジアの都市で大気汚染やヘイズ(煙害)の質問がでたのとは対照的で、シンガポールの環境の良さを改めて感じた。

シンガポールの医療水準は先進国なみで、途上国からの国外緊急移送先の選択肢がシンガポールか日本本国か、となることもしばしばである。そのうえ、日本人会診療所の溝尾先生を含め日本人医師が数名いらして、ハードとソフトのいずれにも大きな問題はなさそうである。

しかし小児の健康という面では、病気を対象とする医療だけでなく、発育や発達に関する、いわゆる保健サービスが重要である。日本ではそれが公的サービスとして供給されており、母子手帳をもらい出生届を提出すれば、自動的にそのレールに乗ることになる。そのため、ともすると保護者はどのような発達チェックが必要なのか、予防接種は何を選択すればよいのか、といった問題意識が薄れ、お役所任せになってしまう。そして海外に赴任し、何もかも自分で手配しなければならなくなったとき、非常に戸惑うケースが多い。さらには知識不足から、チェックや予防接種を何も受けずに過ごしてしまう場合すらある。海外では求めない限り誰も指示してくれないし、ハガキでお知らせしてくれる人もいない。自分の健康は自分で守る、という意識が日本人は一般的に希薄だが、この他人任せの姿勢が多くのトラブルの原因となるようだ。

一方、健康を自己管理するには正しい情報が不可欠で、それを入手できる窓口はしっかり用意されているべきである。その窓口として適当なのは、病院、大使館、日本人会など、いくつか考えられるが、先進国・途上国を問わず、海外で情報を必要とする人が、現地で容易にそれを入手できるシステムづくりが重要であるのは間違いない。

ところで、シンガポールにはバンコクやジャカルタのように組織だった日本人の育児サークルはない。それは進んだ医療環境と無関係ではないだろうが、前述したように育児は医療とは別の側面を持っている。現在ここには5千人あまりの邦人小児が在留しており、なかでも乳幼児が約2,400人もいること、現地で出産する女性が多いことなどから、やはり日本語で相談をしたり、アドバイスを受けたり、助け合ったりする組織は必要であると考えられる。1997年にはシンガポール在住の医療従事者(または経験者)による「メディカルスタッフの会」が設立され、日本人会厚生部に所属して、医療・保健面をサポートする活動を続けている。今回の講演会もこの会が企画をして下さった。しかしこの会の趣旨は在星日本人社会への医療・健康情報の提供であり、対象を小児に限っているわけではない。今後、このメディカルスタッフの会の分科会としてでも、育児サークルが設立されることが望まれる。

その際には、すでに組織として成熟しているジャカルタ・マザーズクラブやバンコク・すくすく会のノウハウを学ぶのが近道である。さらにこれら各都市の育児サークルが独自に活動するだけでなく、お互いに協力しあえれば、もっと効率の良い活動ができる。そのためには誰かが中心となって、これらのグループをつなげる必要がある。その役割をJOHACが果たすことができれば、大変うれしいと思う。