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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10120101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇“ROLLIES”

シンガポールは煙草に関して規制が厳しい国として知られています。1971年に、世界に先駆けて煙草の宣伝を禁止する法律を作り、その後、さまざまな規制が作られ、煙草を吸える場所も徐々に狭められてきています。(2005年11月, 2007年07月, 2009年10月の記事もご参照ください)。

シンガポールの煙草は値段が高く、20本入り一箱は最も安いものでも10シンガポールドル(620円ぐらい)となっています。
そのためか、最近、かつて人気のあったang hoon(紅煙)が若い世代の間で人気となって来ています。
これは、たばこの葉とそれを巻く紙を買い、自身でスティック状に丸めるものです。そのため、“ROLLIES”とも呼ばれています。一端に火をつけて煙草のように吸います。この葉は煙草に比べ、かなり安価で5ドルから15ドルほどで20g購入でき、それは50本分ぐらいの分量となります。しかも、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで手軽に手にはいります。高騰する煙草の値段に比例するように、2006年に38,174kgだった消費量が, 2009年には 82,994kgに跳ね上がっています。ブランドも38種あるそうです。

しかし、自分で葉を巻くため、当然フィルターが付いていません。そのため、一酸化炭素やニコチン、タールなどの発癌物質を高い濃度で吸い込むことになり、普通の煙草よりも咽頭、喉頭、肺などのガンを招く可能性が高いとされています。

シンガポールの喫煙率は2000年には26%でしたが、2009年には16%にまで下がってきました。反面、煙草が主な原因とされる慢性閉塞性肺疾患の発症年齢は、以前は大抵60-70歳でしたが、現在では、40-50歳代で発症している人が目立つようになって来ています。これは、喫煙開始年齢が、かつての世代より早まっているためだと考えられています。既に、こうした傾向がある上で、より毒性の強い“ROLLIES”が若者の間で広まりつつあることを当局は大変懸念しています。値段が安いため、一人当たりの喫煙量も増える可能性もあります。この傾向が続けば、多くの人が比較的若い年齢で慢性閉塞性肺疾患にかかり、将来の医療費の増大のほか、そうした人たちが十分に労働できないことで、社会的損失にもつながり、社会の負担も増していきます。

ちなみに、慢性閉塞性肺疾患は日本でも、大変患者数が多く、治療を受けていない人も含めると推計で500万人ぐらいいるといわれています。進行すると少しの労作でも息切れが生じ、日常生活が制限を受けます。この病気を根本から治す治療法はないため、煙草を吸わないこと、吸っている方はなるべく早くやめることが勧められます。

 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇脱水です、重症の下痢です、ORTしましょう。

当地ではアメーバ赤痢や細菌/ウイルス感染症による下痢で受診する患者さんが非常に多くおられます。水様性の下痢便のため水分や電解質が体からどんどん失われてしまいます。またデング熱やインフルエンザで高熱が続き脱水のため歩行も困難な状態で受診する患者さんもおられます。これらの脱水時には水だけが失われているのではなく同時にNaやKが失われています。

脱水が原因で病態悪化が起こっている場合には適切な電解質を含んだ補水が必要です。脱水症状は軽い場合はめまい、筋肉痛・筋肉の硬直(こむらがえり)、さらに悪化すると嘔吐、全身倦怠感、さらに悪化して重症になると意識障害、けいれん、手足の運動障害などが起こってきます。

補水は「点滴」で行う場合と「経口」で行う場合があります。入院を余儀なくされるような重症の場合の多くは点滴が適応となりますが、「水は飲めます」、「食事もどうにか食べられます」というような場合には経口補水で病態が改善される場合も多くあります。

今回は経口補水療法:Oral Rehydration Therapy(ORT)について話をします。

ORTは水、Na, K、ブドウ糖などを“腸から吸収されやすいようにバランスよく配合した経口の補水液“です。この“バランス良く”というのが大切です。

ORTは1830年代の熱帯諸国におけるコレラによる脱水症の治療に端を発します。適切な対応が受けられず、脱水が原因で多くの死者がでました。以後、1975年にWHOによる最初のガイドラインが出され、ORTを勧める世界規模のキャンペーンの結果、下痢性疾患の死亡者が大きく減少し、ORTの有効性が実証されました。さらに2002年にはNaとブドウ糖の濃度が見直され新ガイドラインがWHOから提示されました。ORTには電解質とぶどう糖が腸管から吸収されやすいように配合されていて別名「飲む点滴」とも言われています。一般に以下が推奨されています。とても簡単です。

1) 軽~中度の脱水の是正には経口補水液(Oral Rehydration Solution:ORS)を使用
2) ORTは迅速に開始する
3) 脱水が是正されたら非制限食事を与える、食事制限は不要
4) 授乳中の幼児に対しては母乳を継続して与え、ORSを追加投与

ORSにはいくつかの種類があります。はじめからボトルに液体として入っているもの、ゼリー状のもの、錠剤や粉末を決められた量の水に溶かして作るものなどです。当地では200mlに1錠溶かすとバランス良い電解質濃度になるように調合された錠剤などがドラッグストアで売られています。

ここでいくつか注意が必要です。ORTがすべての患者さんに十分な効果があるわけではありません。重度の脱水状態、経口摂取が不可能な状態、激しい嘔吐がある場合、病状に改善傾向が見られない場合は必ず受診して適切な検査・治療を受けて下さい。ORS摂取は大切ですが、多く飲めば飲むほど良いというものではありません。多飲することによって源疾患が治癒するものではありません。ORS摂取量の目安は、学童~成人:500~1000ml/日、幼児:300~600ml/日、乳児1日量:体重1kg当たり30~50mlです。
また、電解質を含まない水やお茶、電解質バランスが悪い果汁飲料、電解質濃度が低いスポーツドリンクはORTとしては適しません。これらを大量に飲むことで逆に悪化することさえありますので注意が必要です。

皆様、お体無理しないように健康にお過ごしください。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇肘内障(ちゅうないしょう)

救急外来で遭遇する小児の病気の一つで、1歳から3歳の子供によく見られます。

典型的な症状としては、手を引っ張られた後、動かすと肘(手)を痛がり、腕をだらりと下げて挙げなくなります。引っ張られた際に、橈骨という骨(剣道で小手を打つところの骨)の肘寄りの部分(橈骨頭)を輪になって包んでいる靭帯(輪状靭帯)が外れることによります。小さいうちは肘の関節が未熟なために起こるもので、5歳以上では稀と言われています。
よく、「肘が抜けたみたいだ」と言って保護者の方が連れて来られます。買い物中にお母さんが手を引いた際や、公園などでお父さんや友達と遊んでいて起こすことがあるようです。

肘内障と診断がつけば整復します。多くの場合は比較的簡単に整復できます。レントゲンを撮っている間に戻っていることもあります。整復後しばらくすると普通に手を動かすようになります。後はリハビリやギブス固定は必要ありません。また、後に障害を残すことは、まずありません。

重要なのは、どのようにして発症したか(受傷機転)です。手を引っ張った後に、というのが大事です。例えば、転んだあとに痛がり始めたのであれば、肘内障ではなく骨折や捻挫など他の外傷を疑わねばなりません。診察の際に、受傷機転がはっきりしない場合(手を引っ張った後に痛がり出したのかどうかが分からない場合)はレントゲンも撮って、肘内障以外のものも検索するようにしています。

レントゲンの人体への悪影響を心配される方がいらっしゃいます。レントゲン検査をする場合、患部を中心に極微量の放射線を被ばくすることになりますが、これでなんらかの障害がおこる確率は、ほぼゼロです。全くのゼロとは書きませんが、限りなくゼロに近いと考えていただいて結構です。診断上得られる利益の方が大きいと考えられる場合のみ、検査をお勧めしております。

肘内障かなと思われた時は、落ち着いて医療機関を受診して下さい。

(以上)