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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10110101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇ヘリコバクターピロリ菌

<ヘリコバクターピロリ菌>、最近は、この名前に聞き覚えのある方もかなり多いのではないかと思います(以後、ピロリ菌と記載します)。これは胃の中に住んでいる菌で、胃炎や、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などと深いかかわりがあることがわかっていましたが、その後、胃がんの発生にも関連があることがわかってきました。このため、以前は症状がない方に対しては積極的には治療はしていませんでしたが、2009年1月、日本ヘリコバクター学会は感染している方は症状のあるなしに関わらず治療しましょうという方針を発表しました。

シンガポールでは、特に大きく話題になっているわけではありませんが、シンガポールメディカルアソーシエイションの月刊誌に特集記事が掲載されましたので、良い機会と思い記事にしてみました。

感染
感染経路ははっきりしたものはわかっていませんが、発展途上国など衛生状態のよくない国での感染率は、衛生状態のよい先進国と比べると明らかに高いことがわかっています。
感染は乳幼児期に成立することが多いとされています。感染源としては井戸水や保菌している親との濃厚な接触(口移しによる食事)などが考えられています。下痢便や吐しゃ物も感染源になります。産道感染もあるようですが感染が定着する率は低いようです。日本でのピロリ菌の感染率は、時代を経るにつれて下がってきてはいますが、2010年時点では、小児では10%程度、40歳で30%、60歳で60%程度と考えられています。夫婦間の感染については、はっきりしたことはわかりません。

関連する病気
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、胃がんなどが上げられます。また、慢性蕁麻疹、小児の鉄欠乏性貧血との関連も疑われてはいますが、まだ、確実な証拠は得られておらず、今後の検討が必要であるとされています。

もちろん、ピロリ菌の感染があっても、全員が病気になるわけではありません。潰瘍になる人は2~3%と言われています。しかし、ピロリ菌感染があって十二指腸潰瘍を繰り返した人が治療に成功すると90%以上の人で潰瘍を起こさなくなるというデータがありますので、関連が深いことは間違いないでしょう。

胃がんは日本では年に10万人以上が発症しています。ピロリ菌を持っている人はもっていない人と比べますと胃がんの発生率が5倍以上多いことが分かっています。2008年8月、日本の大規模研究の成果が発表され、ピロリ菌を治療すると、胃がんの発生率を1/3に減らせることが報告されました。

感染の検査
内視鏡検査、尿素呼気検査、血液検査、糞便の検査などがあります。除菌が成功したかどうかは治療終了後しばらく時間をおいてから検査します。

治療
日本ヘリコバクター学会発表の治療法ではまず、アモキシシリン、クラリスロマイシン、とプロトンポンプ阻害薬(PPI)という薬を一日2回一週間行うことが標準(一次除菌)です。これによる除菌の成功率は当初は90%ぐらいありましたが、現在では70~80%程度となっています。そのため、一次除菌に失敗した場合には2次除菌としてクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えた治療法があります。これによる成功率は80-90%とされています。結果、2次除菌まですると95%ぐらいの方が治療を成功することになります。

シンガポールでは上記二つの治療法のほかにPPI,クラリスロマイシン(1日1g)、メトロニダゾールという組み合わせの治療法の合計3つを標準療法としています。また、薬の量は日本に比べ、かなり多くなっています。ちなみに、日本ヘリコバクター学会は、日本での研究の結果、クラリスロマイシンの量は400mgでも800mgでも治療成績に有意な差はないとしています。いずれもシンガポールに比べて低用量です。

また、これらの標準治療でうまくいかなかった場合として他の治療法も紹介されています。これらの中には日本のガイドラインに載っていないものも含まれています。

いずれにしろ、治療を開始された場合は、お薬は決められた通りに飲まないと、治療が成功しないばかりか薬が効かない菌を作ってしまうことにもなりますのでご注意ください。もちろん、使用するお薬にアレルギーのある方には治療はできません。

お薬の副作用
下痢や軟便が10-30%ぐらいの頻度で現れますが、1日2~3回の排便で済むようならお薬は続けた方がよいでしょう。
また、味覚異常(苦みや金属みたいな味がする)なども5~15%ぐらいの頻度でおこります。
また、皮膚の異常がおこることもあります。
薬の中止を考えるような強い副作用が出る場合は2~5%とされています。

その他、詳しいことは主治医にお尋ねください。
 


◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇点滴はどこに刺してほしいですか?

点滴一つにしてもフィリピンと日本では、針をさす位置が大きく異なります。
当地では末梢の点滴の針を手背の静脈(手の甲)に確保します。医師は医科大学や研修病院でもそこがベストな部位として教育されています。   
ファーストチョイスで手背の静脈、そこで確保できなければ手首付近の静脈、そこでも確保困難なら肘部付近の静脈へとだんだん上がっていきます。日本では肘付近の静脈(前腕正中皮静脈または橈側皮静脈)が最初に選択されることが多いと思いますが、当地では上記のように最後に選択される部位となっています。

当地で入院した場合の持続点滴、微量滴下持続点滴も医師は同様の部位、つまり手背を選択します。右腕に刺すのか左腕に刺すのかを聞いてみましたが、「なるべく利き腕は避ける」とのことです。したがって当地では、多くの患者さんは左の手背静脈に点滴を受けることになります。
外来で1~2時間の点滴を受けるのであれば手背部でも大きな問題はないと思いますが、入院中の24時間持続点滴では日常生活にも大きな影響が出てきます。点滴挿入部の針が抜けないようにテープで固定しますので、食事においてはスプーンやフォークが持ちにくい、お皿が持ちにくいなどの問題もあります。長時間の点滴により浮腫が起これば簡単な手作業もしづらくなります。指輪をしている患者さんはむくんで指輪が抜けなくなることもあります。
また排便後にお尻を拭きにくい、手を洗うことが困難などの不具合も出てきます。点滴を手背部に確保した場合、どのようにして手を洗うのかを聞きましたが、手掌(手のひら)と指先のみ洗うのだそうです。

そこで、なぜ手背部に点滴を確保するのか医師に理由を聞いてみました。「点滴の針がさしやすい」、「痛みが少ない」、「静脈炎を起こしても回復が早い」などの理由でした。点滴の確保部位は“末梢ほど生理学的に良い”と習っているとのことです。

中心静脈点滴の挿入部位は、カットダウンして内側前腕皮静脈から挿入することが多いようです。日本のように頸部の静脈や鎖骨下(上)の静脈からの挿入は特別な理由がなければ行わないとのことです。

点滴をどこから刺すか、点滴ラインの交換時期はどのくらいか、中心静脈点滴の適応などは患者側の経済状態、医師側の考え方に依ることが大きいようです。

点滴の適応についても日本と異なり、患者さんにとっては肉体的・精神的に大きな負担となりストレスが生じる場合があります。治療は患者さんの為に行うものです。点滴一つにしても十分に説明を受けたうえで治療を受けていただくことが大切です。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇海外医療情報交換会

10月29日開催されたJOMF海外医療情報交換会に参加するため、一時帰国しました。奄美の大雨被害、ムラピ山の噴火と、行き、帰り共に災害を追いかけるような形の旅でした。

「ジャカルタに赴任して10カ月」の題で、ジャカルタの医療事情について、次のような内容を中心に報告しました。
この10カ月間で入院になった方の病名のトップ3は、デング熱・虫垂炎・A型肝炎でした。その他、循環器関係の病気(不安定狭心症・不整脈など)が目立ちました。
循環器系に着目します。急性心筋梗塞の様に、航空機で搬送するリスクが大きく、かつ時間との勝負になるような場合、ジャカルタで治療することを私はお勧めします。見学させてもらった施設には、医療設備は最新のものが整っていました。日本人が利用するような病院はどこも同様でしょう。医師の技術レベルも高いと思います。もちろん、シンガポールや日本と比較すれば、いろいろ問題はあります。しかし、搬送のリスクと天秤にかけた場合、私はジャカルタでの治療に軍配を上げます。診療費は病院、医師によって変わります。自由診療のためです。

一方、飛行機での移動が時間も含めて問題にならない場合は、本人や家族、会社の都合や希望によって、どこで検査、治療を受けるべきか判断すればいいのではないでしょうか。加入している保険も関係しますね。

発表時にお伝えできなかった点を補足します。
ジャカルタの医療レベルに関する私の印象は、主に次のものに基づいています。①自分が紹介した患者さんの治療結果。②知り合ったドクターへのインタビュー。③病院見学など。
問題点があります。①に関しては、私が紹介した患者数がまだ少ない。②はあくまでも私の主観に基づくもので、客観性には欠ける。また、数字は公式データではない。③は一緒に治療を行ったわけではないので表面的なものしか見えていない。これらは今後の課題とさせてください。

これから現地のドクターともさらに交流を深めて、信頼関係を築いて行きたいと思います。

(以上)