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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10100101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇新型インフルエンザの流行から学ぶ

皆様ご存知の通り、昨年から今年にかけて新型インフルエンザH1N1が流行しました。
今までと異なるタイプのインフルエンザウイルスが原因であったため、世界的な流行となったわけです。
先日、9月29日から10月1日にかけて、APEC(アジア太平洋経済会議)諸国を集めてシンガポールで、インフルエンザへの対処についての各国の意見交換が行われました。私はオブザーバーとして参加を許されました。

さまざまな議題がありましたが、シンガポールからは今回の新型インフルエンザH1N1の流行に対してどのように対処したかの説明がなされました。

もともと、世界各国、特に先進諸国では鳥インフルエンザがヒト型に移っておこるであろう大流行に備えて、さまざまな準備がなされていました。もちろん、シンガポールでも周到な準備がなされていました。たとえば、抗インフルエンザ薬の備蓄、行動計画の策定、国を挙げての訓練などです。各家庭には<インフルエンザの世界的流行にそなえて>というA5版24ページ程の小冊子も無料で郵送されました。
シンガポール保健省は直接、一般の医師を集めて、会議を開催し意見交換を行う場を作っていました。
行動計画の中には、各地域でどのクリニックが患者さんを見ていくか、抗インフルエンザ薬や感染防御用品などはどのように配布するかなど細かい具体的な問題も決められていました。

昨年からのシンガポールの新型インフルエンザに関する動きをおさらいしてみましょう。
2009年4月23日、メキシコからの新型インフルエンザ発生、患者1000人以上、死亡率6%という突然の発表は世界を震撼させました。この日は金曜日であったため、世界が活発な動きを始めたのは週明けでしたが、シンガポールはいち早く4月26日日曜日午後11時以後、空港で北米からの到着便の乗客に対し、体温チェックを開始しました。私はたまたま、この1時間半後、JALで日本からシンガポールに帰国しましたが、その便がアメリカのユナイテッド航空との共同運航便であったため、体温チェックされた最初のグループの一人となりました。パスポートコントロールに至る道が2人横並びでやっと通れるほどに狭められ、SARSの様子を撮影したビデオで見たのと同じ、赤外線による体温計装置が私たちの体温をチェックしていました。シンガポールは当初は、北米からの入国者、中でも特にメキシコからの入国者に対しては厳しく、入国後1週間の隔離をしていました。

シンガポールでの患者第1号はアメリカからの帰国者で5月26日のことでした。その後、空路での帰国者に散発的に陽性者が出始めました。その度に、乗客が座っていた座席前後3列の乗客は健康状況を報告するように、インターネットを通じて呼びかけがなされました。陸路でも4月28日から体温チェックが始められました。陸路では、入管を一日約25万人が通過するため、迅速で正確な体温チェックが必要となりました。特殊な体温計測機器を使って逐一計測がなされました。陸路では体温チェックが中止されるまでの2ヵ月半で450人の高体温者がみつかり、さらに詳しい検査を受けたとのことでした。特殊な救急車が仕立てられ、検査所では疑い患者さんは互いに6メートルの距離を置いて、マスクをして座らされ、PCR検査の結果が出るまで6時間、そこで待機しなくてはなりませんでした。
6月20日頃には、市中感染が始まり、WHOが最早患者数を報告する必要なしと発表した直後、7月8日には、既に意味がなくなったとして入国管理での体温チェックが中止されました。

シンガポールでの初の死者は7月18日で基礎疾患のある患者さんでした。患者発生数は7月末に大きなピークを迎えましたが、その後徐々に流行は小さくなり、次の大きな波は来ないまま、2010年2月12日にシンガポール独自の警戒レベルは平時と同じ状態に引き下げられました。この間、11月3日からはワクチン接種も始められました。2010年5月までの患者総数は52万人、死者は25人と発表されています。

インフルエンザは発熱などの典型的な症状が出る前に、既に感染力があるために、こうした体温チェックなどの措置は意味がなかったとして批判されることもあるようですが、シンガポールの担当者は、もともと感染を食い止めるというのではなく、少しでも広まりを遅らせるという目的であるとし、少なくとも何もやらないことよりはましであったと公言していました。開き直りともとれる発言ですが私はこれが正直なところではないかと感じました。
日本でも、さまざまな批判がありましたが、誰もが、初めての体験ですから、最初から最良の方法など取れるはずありません。できることをやるしかないし、当初は大げさすぎる方法であっても仕方ないのではないでしょうか?

大切なのは、今回をよき教訓として学ぶことであると思います。
1999年に東南アジアに新興ウイルスとしてニッパウイルスの流行がありましたが、この時は、シンガポールでは、こうした感染症に対して準備がほとんどできていませんでした。担当者は当時の病院の待合室での状況などの映像を私たちに見せて、お粗末な対応であったと、正直に話していらっしゃいました。

その後、2003年にSARSが流行しました。直接ヒトからヒトへ移る感染症であったため、当初は治療にあたった医師などにも死亡者がでましたが、4年前の教訓が生かされて、隔離や接触者のトレースも細かに行われるようになりました。それが流行を抑えることに寄与したことは間違いないでしょう。
その後、2005年のデング熱の流行を経て、今回のインフルエンザの流行となります。過去の経験があっためか、社会的混乱もなく、常に平静でした。

準備の時点で日本より優れていた点は、患者さんを診ることのできるクリニックをあらかじめ確保し発表していたことです。大病院はもちろんインフルエンザの患者を診ます。が、大流行となれば病院は許容量を超えてしまいます。そこで、一般のクリニックで患者を診られる制度を作ることが必要であると考えられていました。政府が直接、抗インフルエンザ薬や感染防御服を、協力を申し出たクリニックに無料で配布することにより、協力するクリニックの数が増え、最寄りの協力クリニックが、インターネットで検索できるようなシステムが作られていました。個人のクリニックが国の統制下に入るというシステムです。1400あるシンガポールの外来クリニックのうち約半数が登録されました。
また、情報伝達システムも優れていました。シンガポールでは平素から、すべての医師の携帯電話番号は保健省に登録されていて、緊急の連絡は携帯にメールが送られてくるようになっています。もちろん長いものは携帯には送れませんが、各医師の電子メールも登録されているため、情報の伝達は実にスムーズです。

流行が始まってからは、こうした電子メールシステムが大変役に立ちました。おかげさまで、それぞれの医師は政府がどういう風に考えているか、現在の状況はどうなのかを、それほどの時間的遅れもなく知ることができました。

他の優れた点としては報道機関をうまく統制していたことでしょうか。シンガポールにはストレートタイムスという政府系の新聞があり、これが、政府の考えを効率的に国民に伝えています。平時には行き過ぎれば危険なシステムではありますが、パンデミックなどの危機的状況に際には、やはりこうしたマスコミの存在も必要であるように思いました。

シンガポールは国の規模が小さいために、統制は比較的容易ではあるのでしょうが、日本でも強い指導力を発揮する機関が、必要ではないかと感じました。

今回はたまたま、致死率が低かったので大事には至りませんでしたが、従来の懸念であった鳥インフルエンザは、徐々に遺伝子変化を起こしつつインドネシアやエジプトで患者が増えています。今回からどれだけ学ぶことができたかが、次のこの本当の危機をうまく乗り越えられるかどうかの鍵となるのではないでしょうか。

 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇マニラのトイレ事情
あなたは水派? それとも紙派?


下痢を主訴に来院する患者さんは多く、後をたちません。10回以上も続けてトイレに行くとテネスムスという状態、つまり極めて頻回にがまんができないくらいに便意を催す状態になり、トイレとの往復で恐怖に近い状態になっていきます。便意が水、紙の設備のあるオフィスやコンドミニアムで起こるのであればまだ安心ですが、外出中に起こると本当につらくなります。マニラ市内の公共施設の多くは水洗トイレですが、トイレットペーパーや手洗いの水道が整っているとは限りません。

そこで今回はマニラに住んでいる人々が“予想外の不意の状況”の時にどのように対応しているのかを聞いてみました。サンプリングには大きな偏りがありますのでそのつもりでお読みください。(日本人女性3、フィリピン人女性3、日本人男性3、フィリピン人男性3)

まず、 1)下痢の時の外出はどうしますか?
いずれの国の女性も、「トイレットペーパーを持ち歩く」と答えました。しかし持っていた紙がなくなってしまった場合、紙を買う時間も間に合わない場合にどうするか、という質問には皆さん困っていました。
日本人男性の方の多くは、「トイレットペーパーのある場所を探す」と答えましたが、探す時間がない場合の行動についてはどうしてよいか困っていました。テネスムスを甘く考えているようでした。フィリピン人男性は皆、近くのトイレに入りお尻を水道の水で洗う、と答えました。

第2の質問、 2)ウオッシュレットが付いている場合にあえて紙を使いますか?という質問に対して、日本人男女は「紙を使う」、フィリピン人はすべてウオッシュレットを使う、と答えました。

第3の質問は、 3)水洗トイレだが紙はない(手持ちの紙もない)、ウオッシュレットもない場合にどうするか?という質問をしました。皆困ってしまいましたが、2名のフィリピン人男性が「水洗で流した便器を流れている水でお尻と手を洗う」と答えました。この答は全くの予想外の答えで大変驚きました。
彼らにとっては水で洗うほうが清潔だ、という考え方です。

今回の話を聞いて、トイレの水に対する清潔観念に違いがあることを感じました。アメーバ赤痢や感染性腸炎の感染経路を考えると飲料水、生野菜、生の魚に注意をするだけでなく、きちんとした手洗いの励行が必要であることは言うまでもありません。同時に行政による更なる環境改善も大切です。今回の聞き取りで改めて実感しました。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇インフルエンザが増えています

断食月が終わり、9月後半から季節性インフルエンザの患者さんが増えています。他の地域ではすでに流行っていたので、レバランの大型連休を契機にジャカルタにも来たかという感じです。

インフルエンザの典型的な症状は、関節痛や筋肉痛を伴う突然の高熱です。喉の痛みも訴える方が多く、咳やくしゃみ、鼻水といった症状は人によって差があるといった印象です。
インフルエンザの迅速診断キットという便利なものも使いますが、その感度の問題から、キットで陰性であっても完全にはインフルエンザを否定はできません。症状に加えて、各コミュニティーでの流行状況や、インフルエンザを発症した人との接触の有無を勘案して診断する必要があります。
逆に、症状がないのにキットで陽性ということもあり得ますが、これは臨床的にはあまり意味の無いものです。時に、家族がインフルエンザに罹ったので心配だから検査をして欲しいという方がいますが、症状がないのであれば検査する必要はないと思います。タミフルを予防内服するかどうかの判断材料には、もしかしたらなるのかもしれませんが…

今年は乾季でも雨が多く、デング熱も継続して見られます。こちらの患者さんも、高熱や関節痛を訴えます。インフルエンザ様の症状がある場合、必要に応じて血液検査も行い、デング熱のチェックも行っています。

ところで、最近インフルエンザと診断した方のほとんどが予防接種を受けていませんでした。
ある会合の席で、今シーズンのインフルエンザ予防接種を受けたかどうか尋ねたら、受けていた方は30人中6人で、邦人全体で見ても予防接種を受けている割合は決して高くないと想像されます。
今からでも、予防接種を受けられては如何でしょうか。因みに、現在インドネシアで使われている予防接種は、日本でこの冬に使われるものと同じ内容です。


今月末は情報交換会ですね。会場でお会いできることを楽しみにしております。


(以上)