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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10090101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇手足口病(Hand mouth and foot disease, HFMD)流行中

手足口病が今年も流行しています。年初から第34週までの累計患者数は21444人となり、これは過去5年間のこの時期までの累計と比べ、ほぼ2倍となっています。なかでも、第33週(8/15-21)は1週間あたりの患者発生数が1261人と年初来最も多くなり、第34週(8/22-28)も1195人と勢いは衰えていません。

シンガポールでは2008年に大きな流行(年間発生数29686名)がありましたが、今年はさらに大きな流行になるのではないかと懸念されています。手足口病はシンガポールでは全例、24時間以内に保健省に報告することになっていますが、報告例のうち、半分以上は5歳以下のお子さんです。現在までのところ、ほとんどの例は軽症で入院例は1.3%となっています。入院理由は飲食が十分に取れないからというもので、死亡例はありません。

確かに手足口病にかかっても多くは軽症ですみますが、1997年から1998年にかけて、マレーシアで34例、台湾で78例、日本でも3例の死亡例が見られました。2000年から2001年にかけてはシンガポールでも7名の死亡例が記録されています。さらに、2008年には中国で、数十名,2009年には353名の死亡が報告されています。また、今年は更に患者数、死者数が増えているようです。死亡例の原因は、ウイルスによる脳炎などが考えられています。

原因ウイルスには、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、エンテロウイルス71(EV71)など複数あるため、一度かかったことがあっても、再びかかる可能性があります。原因ウイルスの中でEV71という型が毒性が強いとされています。1998年の台湾での死亡症例のうち92%がEV71でした。2008年にも、シンガポールでは約1/4の患者さんでEV71が原因ウイルスとなっていて警戒が強められましたが、今年も、原因ウイルスのうちEV71型が11%あることがわかり、しかも、この割合が増加しつつあるということで警戒を強めています。これは中国、香港、日本、台湾などでも同様の状況です。

シンガポール保健省(Ministry of Health)は、患者の多くが年少者であることからMinistry of Education、Ministry of Community development , youth and sportsと協力して、感染の広まりを食い止めるべく活動を開始しています。

保健省からの通達で、ナーサリーやプレスクールで10名以上または13%以上の園児がHFMDにかかり、16日以上感染が続いている施設は、保健省のサイトに8月13日以後、施設名が公表されるようになりました。9月3日時点では5施設が該当しています。

また、16名以上の園児が発病しているか、または園児の23%以上が手足口病になった施設で、24日以上、感染がとまらない施設は、強制的に10日間、閉鎖されることになりました。これも、8月13日以後、施設名が公表されています。9月3日時点では2施設です。

日本と違って、シンガポール厚生省では、すべての水疱が乾き、発疹に赤みがなくなるまでは学校を休むようにという指針を出しています。通常7日前後かかります。死亡例が出た2000年の手足口病流行時には、政府は強制的にシンガポール国内の全プレスクール、ナーサリーを閉鎖することにより、患者数を劇的に減少させることができた経験が背景にあり、こうした指針が出されているのでしょう。

シンガポールのプレスクール、ナーサリーなどからは、各家庭に、毎朝、お子さんの発熱、手足のチェックなどをするように要請をだしています。各施設でも手足口病の流行時に、園児の発疹チェックや体温チェックをまめに行っており、症状が軽快して再登園するときには医師の診断書が必要な園もあります。政府も、再登園してもよいかどうか医師の確認を得ることを勧めています。また、親側の意識も高く、わが子のクラスに手足口病の子供が1人出た場合、自分の子供を安全のためしばらく幼稚園を休ませるという御家庭も少なくないようです。

伝染性疾患の広がりを食い止めるのは、一人一人の意識、行動が大切です。



 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇マニラの入院事情

今回は、病院入院事情とその問題点について述べたいと思います。
当マニラ日本人会クリニックでは、重症の患者さんの入院を必要と判断した場合、入院先の総合病院へ紹介状を書き手続きがスムーズにできるようにしています。入院後は病状経過や検査・治療の説明などを受けるために病院へ行き、担当医師とコンタクトをとりたいと思っています。しかしながら、ここマニラでは担当医と直接連絡を取ることが簡単ではありません。当地の医療関係者たちに話を聞いてみましたが、その大きな原因は医師の勤務体制にあるようです。日本と全く異なる形態なので、日本人患者さんはとても戸惑いを感じておられるのが現状です。

ここフィリピンでは、勤務医師の多くは病院内の診察室や病室をテナントとして借りています。つまり医師は多数の病院と曜日・時間によりパートタイム契約をして病院に借代を支払い、診察室を借りて医業をおこなっています。例えば月、木の午前中はA病院で外来診察と入院患者対応、火、金の午後はB病院で、水曜日はC病院での手術の日、他は自宅で開業している、といった具合です。その結果、入院患者は担当医師から病態の説明を直接聞く機会も少なく、担当医が不在のときには誰に聞いてよいのか、頼んでよいのかわからない場合がよくあります。担当医が不在のときはその時病院にいるレジデントと呼ばれる研修医が対応し、必要と判断した時には担当医に連絡を取り対応しているというのが現状です。担当医の回診時間も決まっておらず、患者家族は担当医とコンタクトを取るのに非常に苦労しておられます。

では、なぜこのように医師はいくつもの病院と契約をしているのでしょうか。一つの要素は医師の収入の取得方法にあります。入院患者を受け持った医師は給料を病院から受け取るのではなく、主に患者さんから頂く仕組みになっています。つまり医業を行う場所を病院から買う(借りる)。そして診察部屋や医療機器使用代金をテナント代として病院へ支払う。一方で収入は患者さんから、という仕組みになっています。このように医師は患者獲得のため多数の病院と契約をしています。

医師との面談時間にも戸惑う原因の一つは、医師の勤務体制との関連が考えられ、また伝達問題を生じさせているともいえます。今回、当地の病院入院事情と医師勤務体制の問題についてのべましたが、患者さんが少しでも安心して入院生活が送れるよう今後も務めていきたいと思います。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇「エコノミークラス症候群(旅行者血栓症)」

「エコノミークラス症候群」というのを聞いたことがあると思います。長時間同じ姿勢を続けることによって、下半身の静脈内で血液が滞って塊を作り(深部静脈血栓症と言います)、これが血流に乗って流れて行き、肺動脈に詰まって肺血栓症を起こすものです。場合によっては命に関わる危険な病気です。長距離の航空機旅行で、特にエコノミークラスでは狭いスペースに同じ姿勢で長時間座ることになり、この病気を起こすことがあるので、こう呼ばれます。またの呼び名を「旅行者血栓症」とも言います。

先日診察した方は、飛行機には乗っていませんでした。幸い肺血栓症には至らず、深部静脈血栓症の状態での来院でした。考えられる要因としては、事務仕事で座っている時間が長いということ。長時間フライトと同じような状況だったのかもしれません。このように日常の生活環境・職場環境でもこの病気は起こり得ます。
ジャカルタでは車での移動時間も長くなりがちです。この場合も状況は機内と似ています。通勤時間の長い方は要注意です。
また一般に、比較的高齢の女性に多い疾患と言われていますが、ジャカルタでお目にかかった方は何れも若い男性でした。年齢性別に関係なく注意が必要です。

肺血栓症を起こすと、胸の痛みや呼吸困難を訴えます。意識を失うこともあります。万一の場合は至急病院を受診してください。
深部静脈血栓症は血栓ができた部位に痛みを覚えます。ぶつけたり捻ったりした覚えがないのに痛みがあれば(上記のような条件を満たすならば特に)、エコノミークラス症候群も疑う必要があります。

予防法は、定期的に体(下肢)を動かすことです。筋肉の収縮が静脈内の血液を心臓に戻す働きをします。立って歩ければいいのですが、足首を動かすだけでも違います。
水分補給も重要です。血が濃縮されると血栓ができやすくなります。しっかり水分を採ってください。因みにアルコールは水分補給になりません。

あまりお目にかかることのない病気ですが、非常に危険な病気です。しかし、多くの場合、予防することのできる病気です。長時間同じ姿勢で作業せず、小まめに水分補給をすることは、ストレス解消にもつながると思います。
飛行機に長時間乗るときはもちろん、日常生活でも同じような状況にならないようご注意ください。

貧乏ゆすりをしながら、「エコノミークラス症候群予防だ。」と言う友達がいましたが、効果の程は定かでありません。隣の座席では勘弁してほしいですな。


(以上)