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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10080101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇シンガポールと高齢化

先日、日本の厚生労働省が2009年の日本人の平均余命を発表しました。0歳児の平均余命(平均寿命)は男性79.59歳(世界5位)、女性86.44歳(世界1位)、であるということです。
また、アメリカのCIA(Central Intelligence Agency)のデータによれば、日本は、国民全体では82.06歳(男性78.87歳、女性85.66歳、総人口1億2千万人)で世界で第5位となっています。ちなみに日本より上位にある国はモナコ89.78歳(総人口3.1万人)、マカオ84.38歳(同56万人)、サンマリノ82.95歳(同3.1万人)、アンドラ82.36歳(同8.5万人)です。そしてシンガポールは82.06歳(男性79.45歳、女性84.87歳、同470万人)と日本に次いで第6位となっています。以下は香港81.96歳(同709万人)、8位オーストラリア81.72歳(同2152万人)と続きます。

ちなみに、シンガポール厚生省発表の最新の統計(2008年度)を見ますとシンガポールは国民全体で80.9歳(男性78.4歳、女性83.2歳)となっています。
統計により多少の差はあるものの、シンガポールが世界の長寿国の一つであることは間違いありません。
しかしながら、この国の国民の平均年齢は39.6歳(日本44.6歳)と比較的若く、65歳以上人口はまだ9%(日本22.6%)とまだまだ少なく、現時点では高齢化が切実な問題とはなっていません。参考までに日本で65歳以上人口が人口の9%程度だったのは、今から30年前の昭和55年(1980年)の頃のことでした。当時の日本人の平均寿命は男性73.35歳、女性78.76歳でしたから、今のシンガポールより6歳ほど短いことになります。

人口の老齢化の速度は、様々な要因があり、単純な比較はできませんが、このまま推移しますとシンガポールが近い将来、高度な高齢化社会を迎えることは間違いなく、既に高齢化が大問題となっている他の先進諸国の現状や自国の将来を見据え、様々な議論がなされているようです。

対策としてはまず、経済的対策が挙げられています。これはEldersave, Eldershield, Elderfundという3つからなります。これらは、それぞれ公的保険制度のMedisave, Medi Shield, Medifundに続くものです。ここでの詳述は避けますが、シンガポールの公的保険制度は日本のものとはだいぶ様相が異なるもので、自分の給料のある一定の割合を強制的に積立てさせるものです。積立ですから利用できるのは自分の積み立てた金額内ということになります。(大まかに申し上げれば、Medisaveは入院費用を賄うためのもの、Medi Shieldは任意保険、そしてMedifundはこれらを使い果たした方への公的補助です。)

具体的な受け入れ施設の拡充としては①今後10年で病院のベッド数を60%増やすこと。②2013年と2016年に新しい公的病院(それぞれ200床)を稼働させること。③ナーシングホームの受け入れ可能人数を今後10年で50%増やす(9200人から14,000人へ)などが挙げられています。ナーシングホームに関しては既存の施設の拡充のほか、新しい私立のナーシングホームを今後2年で5つ作ることに厚生省が援助をすることを発表しています。
また、シンガポールは日本の住基制度のようなものを早くから導入していて、国民は全てIDカードをもっており、公立病院での個人の医療データは、すべてそのIDに基づいて記録されています。病院間で情報を共有することで、施設間の移動を容易にすることができると考えられます。

また、基本的な姿勢として、この国の建国の父であるリークアンユー顧問相は、なるべく社会から引退をするなと言っています。定年で会社を引退してしまうと心身共に病気がちになったり、社会に貢献するのではなく、社会に依存することになると主張しています。また、一旦、定年しての再雇用制度は、今までの部下が、急に自分の上司になるような制度であるため、心情的に受け入れにくいので、定年制度は設けず、雇用を継続して、それなりの仕事をしてもらうことが望ましいとの意見を発表していらっしゃいます(給与が下がるのはやむを得ない)。この意見の是非はともかく、現役でいることが、健康維持につながるのならば高齢化問題の一つの解決になるように思えます。顧問相御自身は今年で87歳になりますが、もちろん現役で壮健です。

国の規模が小さいため、そうでない国に比べ、対策は効率よく進むことが期待されますが、この問題を滞りなく克服した国は世界にはまだないため、今後の成り行きが注目されるところです。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇インフルエンザ患者数増加

2010年7月中旬からマニラの当クリニックではインフルエンザ患者数が急増しています。
今マニラは雨季に入っていますが、この時期にインフルエンザや呼吸器感染症が流行するのは例年のようです。私は去る4月に着任しましたが、この状況について同僚のフィリピン人医師に確認したところ、「毎年のことだから驚くことではない、特に学校では流行が著しい」とのことでした。そういえば昨年の今頃は新型インフルエンザの大流行が問題となっていました。

患者さんの症状は典型的なインフルエンザ症状の方が多く、突然の発熱で始まっています。多くの患者さんは咳やのどの痛みを発熱前後に伴っています。しかし少数ですが“高熱のみ”が持続するためデング熱を心配して来院した患者さんでもインフルエンザの方がおられました。
検査キットでの結果は、ほとんどが「A型インフルエンザ」です。
幸いにタミフルが著効し、多くの患者さんは24~48時間以内に解熱し症状も大きく改善しているという状況です。

8月になってからはさらに増加し、インフルエンザの新患が毎日3~5名受診しています。
小児総受診者数が大人に比べて1/3以下であるにもかかわらず、インフルエンザ患者数は大人とほぼ同数でした。小児の間でも感染が拡大していると考えられます。
現地の学校は、12月まで長期の休みはありませんので、インフルエンザ発症が危惧されるところですが、日本人学校は現在夏休みです。この時期が学校内での流行沈静化のきっかけになってほしいものです。

当地ではインフルエンザの鑑別診断として日本と同様の鑑別診断に加え、デング熱、腸チフス、レプトスピラ症なども考慮し診断しなければなりません。できるだけ患者さんの一人一人に正確な診断ができるようスタッフ一同さらに心がけています。(2010年8月10日記)



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇低体温症

トムラウシ山での遭難事故から1年が経過し、ニュースや新聞で、夏山遭難の特集を目にします。亡くなった方の死因は低体温症です。

低体温症とは、深部体温が35度以下に低下した状態とされています。深部体温とは体の中枢の温度で、直腸温や口腔温、鼓膜温は深部体温を表します。普段は37度位に保たれています。(腋下温は深部体温ではありません。)山岳遭難によるものなどは偶発性低体温症と言います。低温環境や、水に濡れたり風に晒されたりすることでエネルギーが奪われ、最悪は死に至ります。

先日、西ジャワ州のグデ山(標高2958メートル?)に登る機会がありました。登山口の標高は約1300メートル。予定では登り6時間、下り5時間の往復コースです。日帰りだとあまり余裕がないですね。早朝、麓を出たときには快晴でした。昼前に頂上に着いた時には、雨こそ降らないものの一面のガスで、期待した景色は望めません。尾根に出ると風があって寒く、長袖アンダーシャツ、厚手のネルシャツの上に雨具を羽織っていました。もし雨が落ちてきていたら、かなり辛い行程になっていたでしょう。

インドネシア歴が長い人から、「グデ山で雨に降られて途中で引き返し、川のようになった道を震えながら降りてきた。」という話を聞いたことがあります。

この「震えながら」というのは重要な信号です。人間の体は、体温を一定に保とうとします。体温が奪われ始めると、体はこれに対抗し、震える(筋肉が勝手に収縮する)ことによって熱を産生します。(エネルギー源となる、糖分・炭水化物の補給が欠かせません。)
熱の産生が追い付かず、更に体温が下がると震えは止まります。真っすぐ歩けなくなり、おかしな行動をとったり、奇声を発したりするようになります。(映画「八甲田山」でもそういうシーンがあります。)低温による脳の機能低下です。
更に体温が低下すると、不整脈が出るようになり、最終的に心臓が止まります。

グデ山では、多くのインドネシア人学生らしきグループに会いました。サンダル履きで大きなザックを背負って登っている人が結構います。このサンダル履きの姿に惑わされて、なめてかかると痛い目に会うと思います。

時季的に登山者の数も多く、天候も穏やかで、登山道はわかり易かったものの、道標の数は極端に少なく、不親切です。また、親切な登山マップはありません。
携帯電話は麓付近以外圏外でした。日本とは環境が違います。次回、個人で登ることがあれば、無線機の使用を検討したいところです。

外傷など何らかの原因で自力歩行が出来なくなった所に、悪天候が重なることもあります。インドネシアの天気予報が当てにならないことはご存じの通り。山の天気が不安定なのは日本もインドネシアも同じです。

熱帯に位置するインドネシアの山でも、状況次第で低体温症は起こり得ると思います。天に見放されないようにしたいものです。


(以上)