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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10070101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇乳がん検診(マンモグラフィー)

乳がんは初期に発見し、適切な治療を受ければ5年後の生存率が100%近くを望めるため、早期の発見がとても大切です。最も発症率が高い年齢層は50歳代ですが、シンガポールの2007年の統計によると、50-69歳の女性のうち、過去2年以内にマンモグラフィーを受けたことのある人は対象年齢にあたる女性の40%にしか過ぎませんでした。しかも、17人に一人のシンガポール人女性がその生涯の間に乳がんにかかると計算されるまでに患者数が増えてきています。

このため、シンガポールでは政府人民行動党が主催する Celebrate Wellnessというプロジェクトが昨年10月に立ち上がりました。これは、他の幾つかの財団の援助の下、マンモグラフィーを受けることを奨励するプロジェクトで3年間にわたって実施されます。シンガポールを5つの地域に分け、各地域ごとに1シリーズ10回の映画と講演会が実施されます。これは乳がんに関する知識を普及させ、マンモグラフィーを受けさせることを主な目的としています。さらに、その他、様々な健康に関する知識をも同時に盛り込まれた内容となっています。

マンモグラフィーの実際の費用は実は100シンガポールドルですが、これは幾つかのの基金のにより既に50%の助成を受け、現在では50シンガポールドルとなっています。今回のプロジェクトではこの更に50%が助成されることになりました。そして、このプロジェクトの一環として、過去3年間に一度もマンモグラフィーを受けたことのない、かつ、対象年齢(今回は50歳から69歳)にあたるシンガポール女性には費用が半額となる券が郵送されることになり、既に北東部地域の47,000人の方に郵送されました。更に、マンモグラフィーは2年に1回行うshuuseizumi ことが勧められるため、今回受診した方には次回のマンモグラフィーに関しても同額の助成が行なわれることも発表されています。

自分の健康を守るのはやはり自己責任が必要という意味で、自費の部分も残していることはシンガポール的だなと感じます。

他の欧米など先進諸国の例を見ますと、オランダは90%近い受診率です。イギリスも70%、イタリアは少し低めですがそれでも60%となっています。
アメリカは1990年代から国家的にマンモグラフィーを受けるように勧め、現在では70%以上の受診率があります。結果、早期に発見されることが多くなり、アメリカの乳がん死亡率は1990年代から減少傾向を見せてきています。

日本では乳がんにかかる女性の割合は1995年ごろには40人に一人、と言われていましたが、2004年の統計では23人に一人、2009年の統計では18人に一人にまで増加してきています。発症数を具体的に上げれば1994年は3万人だったのが、2004年からは5万人を越えています。死者は1990年に4848人、2000年に9171人、2008年には11791人と増え続けています。アメリカと対照的です。日本ではマンモグラフィーの受診率は長らく10%程度で最近ようやく20%程度になって来たところですが、まだまだ、欧米やシンガポールに比べて低率です。
日本でも受診率を上げていく積極的な対策が望まれると思います。

 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇当地における分かりやすい処方の書きかた

今回は小児内服薬の中で、いつも当地で困惑を招いている懸濁液とその処方箋についてお話いたします。

「懸濁液」は内服薬の一つで、自分で水を溶かして作る飲み薬です。小瓶に粉薬が入っていて、それに(お母さんが)水を加えて液体にしてお子さんにのませる薬です。小児用の薬には粉薬やシロップではなく、このような“懸濁液“という形の薬が少なくありません。
今回は、この懸濁液の処方時の問題点と、その解決策を考えてみましました。

まず、化学名Amoxicillinを例にして、懸濁液に関する3つの問題点をのべます。

1) 第一の問題点は、懸濁液を作るために加える水の量が製薬会社によって異なるために引き起こされる問題です。薬局から買ったamoxicillinの小瓶に入れる水の量が製薬会社によって異なるのです。たとえばAという製薬会社は「42ccで溶いて下さい」と指示していますし、Bという製薬会社は「63ccで溶いて下さい」と指示しています。(amoxicillinを販売している会社は数十社に及びます。)
2) 二つ目の問題点は、懸濁液を作った後の薬容量が製薬会社によって異なって換算される、つまり濃度が異なるということです。たとえば水で溶いた後の懸濁液が同じ5ccでもA会社では125mgの薬が含まれており(125mg/5cc)、B会社では5ccの中に250mgの薬が含まれている(250mg/5cc)という具合です。
3) 三つ目の問題点は、薬局によって取り扱っている製薬会社が異なる点です。当初はオリジナルの開発会社の薬を処方していました。しかしジェネリックしか置いていない薬局も多くあります。処方する側はどのジェネリックが薬局において在るかはわからないので“ありそう”と思われる薬を処方箋に書きます。ところがその記載した名前の薬を置いていない場合に薬局は同じ化学名のamoxicillinで代用させようとします。その時に上記1)2)に関連する問題が発生する可能性があります。


つまり、製薬会社が変われば溶かす水の量が異なります。ここで誤りが起こる可能性があります。さらに一回に飲む水薬の量が同じ5ccでも製薬会社によって濃度が異なるため、125mg/5ccのはずが250mg/5ccになってしまう、またはその反対になってしまう可能性があります。
患者さんからも「分かりづらい」という問い合わせを何度もいただきました。

そこで、製薬会社名を書かずに薬の一般名(化学名)だけを書くことにしました。つまり“amoxicillin125mgを1日3回内服してください“というようにです。
患者さんには「溶く水の量が製薬会社によって異なるので薬局で説明を受けてください」とお話ししました。
するとそれぞれの薬局から「一回に何mg飲ませるのか?」と聞いてくるのなら分かるのですが、「一回に何cc飲ませるのか?」との電話が来るようになりました。
そこで「加える水の量が製薬会社によって異なるので、amoxicillinとして一回に125mgになるように飲ませてほしい」と答えましたが、「だから一回に何cc飲ませるのか?」と何度も薬局から聞いてきます。結局最終的には箱に書いてあるインストラクション通りに電話で読んでもらい「125mgだから水で溶いて5ccです」などと答えて、その飲み方を患者さんに説明をしてもらいました。

これで皆さんもおわかりと思いますが、これらの作業は非常に煩雑で間違いも起こしやすいと思いました。
そこで現在は解決方法の一案として以下のような文章を書いたスタンプを作り、処方箋に赤インクで押しています。
Note to Pharmacist:
Please prepare suspension with water already and instruct properly how much to be taken by patient.


つまりご自宅ではなく、薬を購入した薬局で水を加えて懸濁液を作ってもらい、一回に何cc飲んでいただくかを薬局のカウンターで説明してもらい、家では内服するだけというシンプルな形にしました。このように変更したことで薬局や患者さんからのお問い合わせもかなり減ってきました。

今回、懸濁液処方時の問題点、そしてその解決策の一案を述べました。
日本と異なる風土、習慣のなかで薬に対する不安もあるかと思います。これからも患者さん、ご家族のご意見を参考にし、安心できる診療を心がけていきたいと思います。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇密造酒

「屋台で密造酒を飲んで死亡」といった記事を目にします。メタノール中毒です。終戦後の日本でも同様なことがあったそうです。

普段われわれが口にするお酒のアルコール成分はエタノール(エチルアルコール)です。酵素(アルコール脱水素酵素・アルデヒド脱水素酵素)の働きで体内、主に肝臓で代謝され、アセトアルデヒド、酢酸を経て最終的に水と二酸化炭素に分解されます。(二日酔いの辛さは知ってのとおりかと思います。その原因については諸説ありますが、脱水や低血糖状態など複数の要素が絡んでいるようです。)

メタノール(メチルアルコール)も同様に、ホルムアルデヒド、蟻酸へと代謝されます。ホルムアルデヒドと蟻酸は毒性が強く、悪心、嘔吐、めまい等の中毒症状を呈し、死に至る場合もあります。また、死なずとも失明の危険性があることは、ご存知の方も多いでしょう。目がやられるのでメチルアルコールと、昔覚えました。
アルコール脱水素酵素は肝臓だけでなく、目の網膜にも存在します。ここでメタノールがホルムアルデヒドになり、その毒性で網膜がやられて失明します。ホルムアルデヒドの水溶液がホルマリンで、理科室にある標本の固定液として使われています。
網膜に当たった光のエネルギーが視神経を伝わる信号になる過程で、レチナールという物質が関係します。レチノール(ビタミンA)がアルコール脱水素酵素によって酸化されてレチナールになります。アルコール脱水素酵素が目にも存在する理屈です。

メタノール中毒の治療にはエタノールを用います。ウィスキーのような強い酒を飲ませるという、一見冗談のような治療法がテキストにも載っています。酵素がメタノールよりもエタノールを優先して代謝することを利用します。体内のエタノール濃度を上げ、酵素がエタノールを分解している間に、メタノールが肺から排出されるのを期待したものです。

インドネシアはアルコールが高価ですが、得体の知れぬ酒を飲んで新聞紙上を賑わすことの無いようご注意ください。


今回は、日常の健康にはあまり関係ないかもしれません。酒の肴にでもしていただければ幸いです。

(以上)