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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10050101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇結核(2)

結核患者の発生数は、先進国では総じて長期トレンドとしては減少傾向にはあるものの、世界的には、決して減っているわけではありません。世界の結核患者数は1990年には推計660万人でしたが、2000年には830万人、2007年には927万人となっています。結核による死者は世界では1年に約300万人を数えます。

世界保健機関(WHO)はこうした状況を背景に今年のテーマを<On the move against tuberculosis: innovative to accelerate action >と定めました。

シンガポールもこれを受けて、結核に対する意識を高めようと現状を発表し、国民に注意を喚起しました。

具体的な内容は以下のようなものです。

シンガポールの結核の患者数の変遷と現状

1. かつてのシンガポールは結核の高蔓延国でした。シンガポールが独立する前の1960年には、人口10万人あたりの患者発生数は307人と記録されています。(ちなみに同時期の日本は500人以上でした。)その後、公衆衛生、治療法の確立などで20年前の1987年には56人まで減少しました。さらにその後10年ほどは55人程度で横ばいでしたが、1998年ごろから再び減少に転じ、2005年には37人、2007年は35人にまで減少しました。ところが、2008年には再び上昇し40人になり、2009年は39人となっています。(日本は20人ほど、西欧諸国は10人以下です)。
2.実数では2009年の新規結核発生は1442人、これは 2008年の1451人に比べわずかに少なくなっています。全体の58%が50歳以上で、72%が男性です。
3.多剤耐性結核の割合は0.5%です。これは、他の諸国(先進国は2-3%)に比べて低くなっています。再発率も0-3%です。低率で抑えられている要因は、服薬コンプライアンスを高めることを強力に進めているからと考えられています。


早期診断と治療を完了することの重要性

4. 結核を制御するためには早期発見ときちんと治療することが重要なのはいうまでもありません。治療を中断すると、いつまでも感染源となるだけでなく、耐性菌発現の原因ともなりえます。耐性菌が発現すると治療は標準(6-9カ月)に比べ長くなり、最低でも18カ月となります。
5. Directly Observed Treatment (DOT)は、結核の国際的標準治療方法です。これは訓練を受けたヘルスケアの専門家が見ている前で薬を患者さんに飲んでもらう方法です。これは服薬コンプライアンスを高めるのに役立つし、副作用の発見も容易にします。DOTは理想的な結核治療方法で、シンガポールのポリクリニックで実施可能です。
6. 結核を疑う症状(長引く咳、発熱、寝汗、予期せぬ体重減少や食欲の減退、倦怠感)がある人は出来るだけ早く医療機関を受診するようにして下さい。また、家人も、この様な症状を示す家族がいたら、病院に連れていくようにして下さい。


結核を制御するためには一人一人が責任を持つことが大切

7. 結核の制御は一人一人の意識がとても大切です。それにより、社会がより安全になり、結核を撲滅できることになるからです。
8. 個人のレベルでは、早めに受診すること、もし、結核になったら確実に薬を飲むことが大切です。結核は基本的には呼吸器の病気なので、咳エチケットは確実に守って下さい。感染を防ぐのに重要だからです。
9. 結核に対する悪いイメージと治療が長期間に及ぶということが、患者さんが病院に診察や治療に行きにくくしてしまっています。しかしながら、これでは結核は減っていきません。患者さんの家族の方、御友人、雇用主の方などは彼らを支え、励まして下さい。
10. 例えば、家族の人は患者さんが治療を継続するように励まして、服薬を忘れないようにして下さい。雇用主は、患者さんがDOTのために、ポリクリニックに行くことを支持して下さい。雇用主は、社員がひとつひとつの薬をきちんと飲むこと、治療を完璧に終了することを、仲間として思いやり、責任感のある同僚として、支持してください。一般的には、患者さんは治療開始後2週間で感染力はなくなります。この期間はmedical leave (有給の医療休暇)でカバーできます。そのため、患者さんが現場に復帰してきたときには感染の危険はもうありません。
11.治療を執拗に履行しない人は、公衆衛生に危険を与えるため、シンガポール保健省が法律に基づいて、強制力をもって治療を行わせます。それでも治療をしない人は、治癒するまでTan Tock Seng病院の伝染病センターに入院する(英語はdetain :拘留)ことになります。
12.結核は治療可能ですし、広まりを抑えることもできます。一人一人が努力すれば、シンガポールの結核を減らすことが出来るのです。


以上の記述はシンガポール政府の、結核を撲滅しようという強い決意、個人の責任を強調する姿勢が伺える内容かと思います。人の伝染病の最大の感染源は人自身なのですから、個人の責任は結核に限らず、多くの伝染病に通ずるものかと思います。

結核に関してさらに詳しい情報を知りたい方は、シンガポール保健省のホームページ(http://www.pqms.moh.gov.sg/apps/fcd_faqmain.aspx)を御覧ください。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
菊地 宏久

◇突然薬がない

マニラに赴任して1カ月が過ぎました。今回はマニラの薬局事情について驚いたお話をしたいと思います。
当クリニックの処方はいわゆる院外処方です。患者さんは、当クリニックで処方箋を書いた紙を持って近所の薬局で薬を買います。ここまでは日本と同じです。ところが指示された薬が訪問した薬局にない場合は、町の薬局は勝手に薬をいわゆるジェネリックに変えたり、“似たもの(まったく別の薬剤)”に変えることがあることがわかりました。また投薬日数や投与量も勝手にその店で変更されたこともありました。薬局によっては「変更しても良いか?」と連絡をくれることもありますが、多くは薬局の勝手な判断で変更してしまいます。このことは患者さんが再診していただいたときにわかりましたのでご注意ください。

また更に驚いたことが何度かありました。突然ある地域の薬局に特定の薬が数種類無くなってしまったのです。例えば、マカティのロックウエルという地区にある数軒のドラッグストア(同じチェーンストア)で“Famotidine"(日本ではガスターという名前が有名です)という薬が突然無くなってしまったのです。何人もの患者さんから苦情の電話をいただいたのですが、なぜこのようなことが起こるのかと不思議に思いました。在庫管理がうまくいっていなかったのか?と思っていましたが、実は「あまりもうからない薬はうちには置きません」というのが本音のようです。

また一度記載された多くの処方箋がそのまま患者さんに返却されるので、患者さんは自己判断で何度でも同じ薬を医師の診察なしに購入することができます。これは便利なようで非常に危険な状況でもあります。薬局では当然薬の効果や副作用などについてもほとんど説明はありませんし、多くは薬剤師ではない人が売っているとのことです。不適切な薬を不適切な飲み方をすることにより病態が逆に悪化したり取り返しのつかない病態に陥ったりする可能性がありますのでどうぞご注意ください。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇万一の時の一次救命処置(BLS)

先日、日本人学校の職員救命救急講習会で一次救命処置(Basic Life Support:以降BLS)の話をしました。現行のBLSのガイドラインを復習する良い機会になり、考えさせられる事もあります。

人は肺で呼吸し、血液中に酸素を取り込みます。心臓から送り出された血液が全身を循環して生命は維持されています。脳への酸素供給が特に重要です。脳は身体活動の中枢であり、数分間血流が途絶えると脳細胞は死んでしまいます。

日常で、突然の心停止に遭遇した際、周りに居合わせた人によるその場での蘇生処置が重要です。心臓マッサージによって脳への血流を途絶えさせないようにしながら、病院の救命救急室まで連携し、命を繋げるのがBLSの目的です。

AEDを使用できれば、その場で心臓の拍動を再開させることも可能です。成人の場合、心停止の多くは、急性心筋梗塞による致死性の不整脈(心室細動)が原因です。心臓の筋肉が無秩序に痙攣した状態で、ポンプとしての機能は果たせません。AEDは心室細動を止めるための医療機器で、Automatic External Defibrillator(自動体外式除細動器)の略です。一般市民が使用できます。

昨年の東京マラソンでタレントの松村邦洋さんが倒れたのは、急性心筋梗塞による心室細動が原因です。AEDが使用され・・・と報道されていました。その後、社会復帰していましたね。

BLSの大まかな手順は、
① 意識の確認(意識がない)
② 人を集める・AEDの準備 
③ 気道確保 
④ 呼吸確認(呼吸していない) 
⑤ 人工呼吸・胸骨圧迫
⑥ AED使用
です。自動車学校等で講習を受けたことのある方は思い出してみてください。また、You Tubeの動画が参考になります。

万一ジャカルタのゴルフ場で心筋梗塞を起こして倒れた場合を想定してみます。近くにAEDは有りません。状況にもよりますが、日本と同様の救急車は期待できず、自家用車での搬送も考えねばなりません。最寄りの受け入れ可能な病院を探す必要があります。携帯電話は大きな武器ですね。

意識のない人を、心肺蘇生を行いながら乗用車で搬送するのは難があります。ミニバンタイプの2列目シートを前に跳ね上げれば、車内で救命処置がやり易くなります。車内にAEDを設置し、市民によるBLSが普及すれば、救命率が上がるかもしれません。但し、AEDは個人で購入するにはまだ高価です。
渋滞に関しては如何ともし難いですね。要人の車がPOLISIに先導してもらっているのを見かけますが、同様のことが緊急時に可能だとしても限界があります。防災ヘリがあれば話は変わります。
環境面でかなり不利な状況の下で、思いついたことを書きました。暗くなるような内容で申し訳ありません。

心肺停止状態で病院に搬送されて来る方の多くは不幸な結末を迎えます。ただその中で、元気に社会復帰できる方も居ます。倒れて直ぐにその場で蘇生処置を開始された方です。細かな手順はあまり気にせず、勇気を持って心臓マッサージを行って下さい。
このような状況にならないのが一番です。予防のため、普段からの健康管理に努めていただければ幸いです。


(以上)