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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL10020101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇シンガポールの医療政策~Medisaveが海外施設でも利用可能に!?~

シンガポール人、および永住権取得者の方々はMedisaveという名目で、給料の一部を医療費用に天引きされています。ちょっと日本の健康保険税と似ているようですが、実は異質なものです。日本の場合は税金なのに対し、Medisaveの場合は個人の定額貯金のような意味合いです。使われなかった分は利子が付き、ある年齢に達したら個人に返還されます。

また、Medisaveは入院の場合には使えますが、外来で使える場合はごく一部の疾患(施設)に限られています。(これを補填する意味合いからか、公共の外来医療施設は大変安価です)

シンガポールは政府は福祉国家にはならないと言っています。自分の健康は自分の責任において見るということです*1。一見、冷たいように思える考え方ですが、定額貯金のようなシステムを入れたことにより、過剰な医療費を使わないということを意識させ、健康への意識を高めるのにも繋がっていると思います(Medisaveに関しての詳細はシンガポール保健省のホームページをご覧ください。)

さて、このMedisaveですが、この3月から海外でも使用が出来るようになります。どんな形にせよ、一旦政府に預けたお金ですから、これは政府が運用しているお金です。シンガポールの資産と言ってもいいものです。
こうした資金ですので、これをよく他の国でも使えるようにしたものだと思いましたが、実際のところ、かなりの制限があるようです。
その制限とは以下のようものです。

1.入院と日帰り手術のみに適応される。外来診療は適応にならない。
2.シンガポールのMedisave-accredited institution/referral centreから承認を受けた施設のみに適応される。
3.シンガポールのMedisave-accredited institution/referral centreを通して紹介される必要がある。
4.当該の海外医療施設は入院前に入院が必要かどうかの審査をし、費用の見積もりを提出しなくてはならない。
5.当該の医療施設は患者の満足度、および、治療の結果を報告する義務を負う。


利用できることになった施設はかなり限定されています。実際に3月から利用できる海外施設はHealth Management International (HMI) とParkway Holdings Pte Ltd.という2つの医療団体に関連する一部の病院に限られています。いずれもシンガポールに拠点をもつ医療団体です。

Health Management International (HMI)関係の医療施設で今回、適応になるのはマレーシアのジョホールバルのRegency Specialist HospitalとマラッカのMakhota Medical Centreの2病院です。
Parkway Holdings Pte Ltd.関連施設ではマレーシアのPantai group関連の9つの病院とクアラルンプールのthe Gleneagles Intan Medical Centreとなっています。

こうした病院はシンガポール人が多く訪れる地域ですので、シンガポール人にとって恩恵でありましょう。
Medisaveのお金はシンガポールの財産の一つと言えるわけですから、これを奔放に垂れ流さないため、厳しい制限がつき、利用可能施設もシンガポール関連の病院施設に限定されたのであろうと想像します。
 
国の経済を堅持しつつ、可能なサービスを提供していくという事でしょうか。日本の医療経済の危機的状況を見るにつけ学ぶべきところが多いように思います。

*1:個人で負い切れないような医療費がかかった場合には補助する制度もあります。

 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇咳喘息

長引く咳で診療所を受診される方は、とくにこの季節に多いように思う。日本人にとっては爽やかないい季節なのだが、意外と日中と朝晩の寒暖の差が激しいこと(朝晩は20度前後、日中は30度以上)、乾季で雨がほとんど降らないため大気中の物質が舞いやすいことが原因ではないかと思う。

また近年、咳が長引く時に、咳喘息の可能性、ということが言われるようになった。(最初の報告は1979年Corraoらによる) 医学情報が簡単に手に入るようになったこともあり、患者さんの方から、咳喘息ではないか、と言われることも多い。

咳喘息とは?
慢性咳嗽の原因として最も頻度の高い疾患であり、喘鳴(ゼーゼー)や呼吸困難を伴わず慢性の咳嗽を唯一の症状とする。通常は痰を伴わない空咳が就寝時や深夜あるいは早朝に強く出、上気道炎、冷気、運動、飲酒、喫煙、雨天、精神的な緊張などが増悪因子となる。
咳止めは効果が少なく、喘息と同様にβ刺激薬、テオフィリンなどの気管支拡張薬が有効である。
経過中30%前後が通常の喘息に移行すると言われている。

日本呼吸器学会咳嗽ガイドラインでは、以下のように診断基準を決めているが、気道過敏性試験などは行える施設が限られてくるため、1)および5)を満たすものを簡易診断基準としている。

<咳喘息の診断基準>
1)喘鳴を伴わない咳嗽が8週間以上持続する
聴診上もwheezeを認めない
2)喘鳴、呼吸困難など喘息の既往を認めない
3)8週間以内に上気道炎に罹患していない
4)気道過敏性の亢進
5)気管支拡張薬が有効
6)咳感受性は亢進していない
7)胸部X線で異常を認めない


<咳喘息の簡易診断基準>
1)喘鳴を伴わない咳嗽が8週間以上持続する
聴診上もwheezeを認めない
5)気管支拡張薬が有効


その他、慢性咳嗽を症状とする病気には、以下のものがある。
・アトピー咳嗽
喘鳴(ゼーゼー)や呼吸困難を伴わない乾性咳嗽が8週間以上持続し、アトピー素因を持つ。咳喘息と違い気管支拡張薬は効果がなく、抗ヒスタミン薬やステロイド薬で咳嗽発作が消失する。

・感染後咳嗽
感冒の後に3週間以上持続する咳嗽で、胸部X線では異常を認めず、最終的には自然軽快する。通常、抗菌薬治療は不要だが、肺炎マイコプラズマや肺炎クラミドフィラ、百日咳では、比較的早期であれば抗菌薬が有効である。
咳喘息やアトピー咳嗽と合併することもある。

・慢性気管支炎、肺結核、肺癌など、また高血圧の薬の副作用、副鼻腔炎の後鼻漏、胃食道逆流などが原因になることもある。

喘息と言われたら?
喘息は、1)素因、2)抗原物質(アレルゲン)、3)増悪因子が複雑に絡み合って発症する。
薬物療法と同時に悪化要因を回避することが重要である。
(抗原物質としては、ハウスダスト、ペット、カビなどの吸入性抗原、肉類、卵、乳製品、また防腐剤、着色料などの食物抗原があり、増悪因子としては、上気道炎、冷気、運動、飲酒、喫煙、雨天、精神的ストレスなどがある。それぞれの対処の仕方について情報はたくさんあるので、ここでは割愛する。)
また、親から受け継いだ素因だからとあきらめず、体質改善をしていこうという試みは決して無駄ではない。自分の健康は自分で守るという積極的な心構えこそが一番重要なのではないかと思っている。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
原 稔  

◇不安定狭心症とインドネシア医療レベル雑感

赴任後、あっという間にひと月余りが経過しました。穏やかな日々を望んでいるのですが、なかなかそうはいかないようです。

「不安定狭心症」という病気があります。
心臓自身に血液を供給している動脈を冠状動脈と呼びます。この冠状動脈の流れが悪くなると狭心症を起こし、血流が途絶えると心筋梗塞を引き起こします。心臓の筋肉が壊死するので、命に関わります。

動脈硬化などにより冠状動脈の内腔が狭くなると、体を動かした際、心臓の筋肉の酸素需要に供給が追い付かなくなり、狭心症発作を起こすことがあります。労作性狭心症です。典型的な症状は、左胸の痛みや締め付け感ですが、左肩や上腕の痛みを訴える人もいます。この発作の頻度が増えたり、今までは何ともなかった軽い運動でも発作を起こしたりする状態が「不安定狭心症」です。今まさに冠状動脈が閉塞しようとしているのかもしれません。いつ心筋梗塞を発症してもおかしくない危険な状態です。
緊急で専門病院を受診する必要があります。

このような疾患の方が相談室を訪れた場合、初めから診断がついている訳ではありません。診察・検査の結果「不安定狭心症」との診断に至るのですが、その過程で、当相談室が入っているMedikalokaの専門医(インドネシア人)にコンサルトします。その際のレスポンスは、トレーニングを積んだ循環器内科医のものです。その後、所有の救急車に医師が同乗し、専門病院へ搬送します。私は他の患者さんもあり、残念ながらまだ同行する場面がありませんが、後の報告から、車内での処置は妥当なもののようです。
病院到着後、必要に応じて、緊急或いは待機的に心臓カテーテル検査及び治療が行われます。紹介先からのレポート他から、その内容において、基本的に日本におけるものと大きな違いは感じられません。機会があれば、現場を見学したいと思っています。

シンガポールでの診療を望まれる方が多いと聞きます。コストを度外視すれば、飛行機での移動に伴うリスクと、先の医療レベルの高さとの兼ね合いです。機内での医療行為は限られます。気圧の問題もあります。そのような環境での容体悪化は、想像したくありません。
ジャカルタで、緊急の心臓カテーテル検査及び治療が可能と聞いていましたが、こちらに来て、その認識を深めました。
安定した狭心症などでしたら、シンガポールあるいは日本が安心でしょう。不安定狭心症、況や急性心筋梗塞の場合、シンガポールへの移動はお勧めしません。

インドネシアでの医療に対する不信感には、社会的な背景もあると思います。ここで学ぶことは多そうです。

追記。現地の医師を評価するかの様な文章になってしまいました。医療に関しては勿論のこと、言葉や文化面でも教えていただく事が多く、心より彼らに感謝しています。邦人医療にとって少しでも役に立てばと思い、このような内容を書きましたことをご了解下さい。