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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り1(シンガポール、マニラ、ジャカルタ)
NL09100101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇愛煙家には更に。。

シンガポールは煙草に関して規制が厳しい国として知られています。世界に先駆けて煙草の宣伝を禁止する法律を作ったのは1971年のことでした。その後、さまざまな規制が作られ、煙草を吸える場所も徐々に狭められてきています。(2005年11月, 2007年07月の記事もご参照ください)。

シンガポールはもともと喫煙率が低い国でしたが、厳しい法的規制の効果もあり、現在、世界的に最も喫煙率の低い国の一つとなっています。18-69歳の喫煙率は1980年の20%から2007年には13.6%に下がっています(ちなみに日本は23.8%(2006年))。しかしながら、近年、気になる傾向があります。それは喫煙率の低下の下げ止まりと若年層の喫煙率の増加です。2004年から2007年までの3年間で、18-69歳の喫煙率は12.6%から13.6%へ微増し、特に18歳から29歳までの年齢層をみると男性の喫煙率が18.2%から25.4%へ、女性の場合は6.6%から9.1%へ上昇しています。特に女性は1998年の調査では3.6%でしたので顕著な増加と言えるでしょう。

この増加の理由は定かではありませんが、ともかくも、こうした背景のため、煙草を更に規制する法改正が検討されているようです。特に若者の喫煙率の上昇は将来にわたって、国民の健康を阻害します。また、経済的損失も多額に上ると計算されています。シンガポール大学の試算によりますと、たばこを原因とする健康問題や病気などによる経済損失は年に7~8億シンガポールドル(約500億円)となると計算されています。

しかし、法を厳しくするには国民の賛成が得られなくてはなりません。そこで、法改正を前にこの8月にアンケートが実施されました。アンケートは電子メール、電話、郵便、ラジオ番組への電話などを介して11の質問の形で公表されました。アンケートに対する受付期間は8月3日から25日まででした。

下にそのうち幾つかをとりあげてみました。
1. 今までは通常の煙の出る煙草が規制されてきましたが、今度はシーシャなどの水煙草やスヌースなどの噛みたばこへの規制もすべきかという質問がありました。これに対しては87%の方が何らかの形で賛成し、このうち50%の人は全面禁止、1/3の方は税を引き上げるとか、年齢制限、購入場所の制限を厳しくするなどの措置が必要であると回答しています。

2. タバコは購入の年齢制限があります。今まではこの法律を破った場合、3回までは罰金30ドル、4回以上は裁判所に行き、最高300ドルまでの罰金でした。これを、それぞれ100ドル、500ドルまでに引き上げる案について意見が求められました。
30ドルを100ドルにすることについては、貧困層に負担になるという経済的な理由などから賛否両論分かれたようですが、4回以上の重犯に関してはもっと高額の罰金でもよいという意見も多かったようです。

3. 煙草を販売する小売店は現在、5000箇所ほどありますが、これを減らす案も挙がっています。扱うべきでない店の候補に挙げられているのは、主に健康関係の薬を扱っている店や、若者向けの製品を主に扱うような店、それから火災に厳重注意が必要なガソリンスタンドなどです。煙草販売店を減らすことには92%の賛成があったそうです。
ちなみに12歳以下の者に煙草を販売したことがわかりますと、その店は煙草を販売する権利を即、喪失します。

まとめとして90%の方が煙草に関する規制をもっと厳しくすることに賛成していると発表されていました。ただ、このアンケートに答えた方の背景や人数は、同時には公表されてはいませんでした。
政府の煙草を規制するという強い姿勢がうかがえるように思います。

 

◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇肺炎球菌感染症と予防接種

肺炎球菌とは
肺炎球菌は肺炎の原因のうち最も多くを占めます。(高齢者の市中肺炎の50%、院内肺炎の10%) 肺炎球菌という名前ですが、肺炎だけではなく、乳幼児の中耳炎や敗血症、髄膜炎などの原因になることもあります。
現在、抗生物質の過剰使用により、ペニシリンなどの抗生物質に効かない肺炎球菌(耐性菌)が急速に増加し(40~60%)、治療に難渋したり死亡したりするケースもあります。

肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌は90種類ほどありますが、肺炎球菌ワクチンは、そのうち頻度の高い23種類の莢膜型の肺炎球菌(1、2、3、4、5、6B、7F、8、9N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33F)をカバーするワクチンで、肺炎球菌感染症の約80%を予防できると考えられています。

最近では、新型インフルエンザの流行に伴い、とくに高齢者で感冒やインフルエンザに併発しやすい細菌性肺炎の予防のために肺炎球菌ワクチンの接種が勧められ、一般にも知られるようになりました。(高齢の慢性肺疾患患者にインフルエンザと肺炎の両ワクチンを接種すれば、入院を63%、死亡を81%減らすとの海外報告もあります)

日本では脾臓を摘出している人のみ保険が適用されています。
また、高齢者などリスクの高い人に対して公費助成金のある自治体もあります。

予防接種スケジュール
接種対象者は、2歳以上で、肺炎球菌による重篤疾患に罹りやすい以下の人です。
1) 脾臓摘出者の肺炎球菌感染症の予防(保険適用あり)
2) 肺炎球菌感染症の予防
(1)鎌状赤血球、あるいはその他の原因で脾臓機能不全の人
(2)心臓・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄液漏などの基礎疾患のある人
(3)65歳以上の高齢者
(4)免疫抑制剤などの治療が予定されている人で、治療開始まで最低でも10日間以上ある人

接種方法は、1回0.5mlを筋肉内または皮下に接種します。
健康な人では、少なくとも接種後5年間は効果が持続するとされています。(高齢者やHIV感染者などで免疫能が低下している人、ネフローゼ症候群の小児などでは、抗体レベルの低下が早いとされており、米国ではこのような人に5年以上の間隔をおいて再接種が行われています)
2回目の接種をすると接種部位の局所反応が強く現れることがあるので、日本では一生に1回しか接種することができません。

肺炎球菌ワクチンの副反応
肺炎球菌ワクチン接種後に接種部位の腫れや、痛み、ときに軽い発熱が見られることがありますが、通常1~2日で消失します。

乳幼児用の肺炎球菌ワクチン
2歳未満の乳幼児は免疫系が未成熟であるため通常の肺炎球菌ワクチンでは十分な抗体が作れません。
Prevenarは、乳幼児の肺炎球菌による敗血症、中耳炎、髄膜炎などの感染症を予防するため、7種類の莢膜ポリサッカライドを不活化ジフテリアトキシンに結合した肺炎球菌7価コンジュゲートワクチンで、米国で開発され、2001年から実用化されています。
生後2~7か月の乳児が初回接種の対象です。
米国では2歳までに4回の接種を行うことになっています。また、2~5歳の感染リスクのある小児に対する接種も推奨されています。
海外では90か国で承認されていて(フィリピンでも接種可能)、日本でもこの9月に、厚生労働省により承認されました。

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日本人会診療所でも、平均1~2人/月の方が肺炎球菌ワクチンの接種をされていて、半数は2~6歳の乳幼児、半数は65歳以上の方です。
上記リスクに当てはまる方は、予防接種をお勧めします。
通常の肺炎球菌ワクチン(PNEUMO23)、乳幼児用の肺炎球菌ワクチン(Prevenar)ともに、日本人会診療所で接種可能です。(PNEUMO23 1920ペソ、Prevenar 5695ペソ) Prevenarは予約が必要です。

また、普段から健康な生活を心がけること、慢性疾患の管理をきちんとしておくことが必要なのは言うまでもありません。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
山本 正志  

◇ジャカルタ-腸チフスの話

近況:パダン沖地震
テレビ・新聞などの報道でご存知のように、9月30日インドネシアのスマトラ島パダン沖でマグニチュード(M)7.9の強い地震が発生しました。ジャカルタでは揺れは殆ど感じられませんでしたが震源に近いパダンでは修正メルカリ震度(MMI)6-7の強い揺れを生じ、インドネシア国家災害対策庁(BNPB)の発表によれば10日午前9時時点でのパダン沖地震の死者は805人、行方不明者は241人で死者行方不明者の合計は1,046人にのぼり現在でも倒壊したホテル、ショッピングモールなどで遺体の捜索が続けられています。
道路の損壊などで遅れていた支援物資もようやく本格的に遠隔地の被災者にも届き始めているようです。

腸チフスの話
私は2009年4月からJJC医療相談室で診療を始めましたが腸チフスで受診された患者さんは1人だけでした。私の推測ですが、アメーバ赤痢やデング熱と違い、腸チフスは予防接種が可能なため、ある程度の邦人の方は予防接種を済ませておられるのかもしれません。(しかし、一方で腸チフスの予防接種の効果は薄いという説もあり、日本では腸チフスの予防接種を敢えて勧めてはいないようです。)

腸チフスはヒトの糞便で汚染された飲み水や食物から感染します。糞便にたかったハエが媒介したりネズミの糞から感染したりすることもあります。また性行為で感染する場合もあるそうです。胆嚢(チフス菌)保菌者のヒトから感染する場合が多いようです。潜伏期間は1~2週間で39度から40度の高熱で発症します。

医学書には腸チフスの3大徴候として徐脈、バラ疹、脾腫とありますが最近では30%~50%の出現率しかないようです。そのほか病初期の下痢とか白血球の増加(または減少)と書かれていますが高熱以外の特異的な症状がない場合が多いようです。
JJC医療相談室に高熱を主訴として受診する患者さんの頻度別疾患は1)インフルエンザ、2)急性上気道炎、3)デング熱、4)急性扁桃炎、5)肺炎などでほとんどが感染症です。腸チフスの確定診断は血液、糞便などによる菌の検出ですがさほど難しいことはありません。(私の経験した腸チフスの患者さんはアメーバ赤痢との重複感染であったため診断に少々とまどいました。)

治療はニューキノロン系抗菌薬(クラビットなど)が第一選択薬として使われます。しかし多剤耐性チフス菌がインド、中央アジア、東南アジアで報告されており、特にインド、ベトナムの渡航者からニューキノロン低感受性菌あるいは耐性菌による腸チフス患者の占める割合が増加しているようです。ニューキノロン薬が使えない例ではCP(クロラムフェニコール)、ABPC(アンピシリン)、第3世代セフェム薬が使われます。いずれの場合も解熱までに数日から1週間かかります。合併症として腸出血(新鮮な血便)に気をつけます。腸出血は腸穿孔の前段階であるため解熱後1週間程度安静、食事制限を行います。

いずれにしても予防として手洗いの励行が基本です。腸チフス予防接種に頼りすぎることなく、食品の衛生管理と手洗いを励行してください。

(以上)