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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL09080101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇マラリア再帰?

今回はシンガポールでマラリアの国内発症が増えているという報告です。

マラリアは世界中の熱帯地域で広く見られるマラリア原虫を原因とする疾患です。ハマダラカという蚊によって媒介されます。4つの型(三日熱、四日熱、熱帯熱、卵形)が知られていますが、そのうち、熱帯熱マラリアは、早期に治療しないと致死的となるため、悪性マラリアとも呼ばれています。マラリアは世界で毎年3-5億人の患者と150-270万人の死亡者があると推定されています。
(その他、マラリアについての詳しい情報は、日本の国立感染症研究所感染症情報センターや厚生省検疫所のサイト(FORTH, For Travelers Health)などを御参照ください)

シンガポールは北緯一度にあり、熱帯雨林性気候のど真ん中に位置していながら、最近までマラリアの心配がほとんどない国とされていました。
もちろん、かつては多数の発症があったと思われますが、都市化が進んだことや、積極的な蚊の駆除が功を奏し、1982年以後、国内発症は年に1~数名で散発的なものとなっていました。しかしながら輸入例や、治療のためにシンガポールに来られるマラリア患者さんが、合わせて年間100-200例はいらっしゃいましたので、常に警戒はされていました。

世間が新型インフルエンザで、恐々としていた今年の5月に、長期間海外渡航歴のない居住者がマラリアを発症し、その患者さんの周辺及び、他の異なる2つの地域から集団発生という形で合計27名(8月12日現在)の患者さんが見つかりました。いずれも三日熱マラリアでした。
三日熱マラリアでは肝細胞内で長期間潜伏状態となる休眠原虫が形成され、これがずっと後になって分裂を開始して血中に放出されること(再発)があります。今回の発症者には、海外からの単純肉体労働者(いずれもシンガポールに長期滞在中ではある)が多いため、再発例もあるのではないか、または再発例が発端となって集団発生が起こった(起居を共にしている)のではないかとも考えられますが、患者さんの中には少数ながらそうした人たちと接点がなく、長期間にわたり海外渡航歴のないシンガポール人も含まれていること、集団発生内の患者さん同士の発症時期が1カ月以上に亘っていることなどから、国内に持続的な発生源がある(またはできてしまった)ことが強く懸念されました。

7月28日夜、集団発生があった地域で、マラリア原虫を媒介する蚊(ハマダラカ)が探索され、13匹のハマダラカが捕獲されましたが、それらの蚊からはマラリア原虫は見つかりませんでした。しかしながら7月29日には大々的な殺虫剤の散布が行われました。

効果を期待したいところですが、蚊を完全に駆除することは大変難しい作業といえます。

今世紀に入り、シンガポールでネッタイシマカという蚊により媒介される熱性疾患のデング熱が急増しました。この疾患は蚊の駆除以外に効果的な予防策がないため、国を挙げて蚊の駆除が大々的に行われましたが、未だに年に数千人の患者さんが出続けています。

さらに、懸命な蚊の駆除を行っていた矢先の2008年2月、シンガポールは、チクングンヤ熱(やはりネッタイシマカにより媒介される)の国内侵入を許してしまいました。今年は既に300名を超える患者さんが出ており、シンガポールに土着してしまったと言えます。(昨年の同時期は48名、年間で648名)

私の居住するコンドミニアムでも週に1回、殺虫剤の散布が行われていますが、蚊がいなくなることはありません。
ハマダラカは都市部には少ないとされているのが救いではありますが、ガーデンシティーを自負する美しい緑豊かな街並みが、逆にマラリアの再帰を許すことに繋がらなければよいのですが。。。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇インフルエンザ 中間報告

この春から世界的に流行しているインフルエンザについて、マニラ日本人会診療所での6月、7月のインフルエンザA型陽性の患者数や疾患の傾向など、若干の報告を加え報告する。

患者数
6月 32名(男性19名 女性13名)
7月 62名(男性32名 女性30名)

年中インフルエンザの発生があるフィリピンであるが、普段と比べ患者数の増加が見られた。
(普段の患者数は、2008年10月 7名、11月 7名、12月 4名、2009年1月 4名、2月 なし、3月12名、4月 1名、5月 5名)

患者数の推移
6月 1日~ 7日5名
6月 8日~14日4名
6月15日~21日2名
6月22日~28日18名
6月29日~7月 5日12名
7月 6日~12日23名
7月13日~19日12名
7月20日~26日10名
7月27日~31日8名


7月初旬にピークが見られ、日本人学校でも各学年で1週間程度の学級閉鎖となった。(インフルエンザだけではなく、雨季になりインフルエンザ以外の感冒、胃腸炎などが増えたことも原因)

その後、患者数の減少が見られるが、7月中旬から夏期休暇に伴い日本に帰省する人が増えたことも一因かもしれない。

性、年齢別患者数
男性0~9歳17名
  10~19歳12名
  20~29歳2名
  30~39歳8名
  40~49歳10名
  50~59歳3名


女性0~9歳20名
  10~19歳10名
  20~29歳5名
  30~39歳6名
  40~49歳1名
  50~59歳0名


幼児~学童期(20歳以下)に多く、成人では何らかの免疫がある可能性も考えられた。
家族内発症は意外に少なかった。

遺伝子検査(H1N1)
患者数の増加により検査が滞るようになり、6月下旬フィリピン保健省の通達により遺伝子検査の対象はハイリスク・グループのみになった。(ハイリスク・グループ:2歳以下および60歳以上、入院が必要な肺炎、コントロール不良の糖尿病、心不全、免疫不全)
また、結果が出るまでに2週間を要した。

6月下旬までに遺伝子検査を行った10名の内訳は、
H1N1陽性5名
H1N1陰性3名
連絡が取れず結果不明2名


抗ウイルス薬
大多数の人が、抗ウイルス薬の使用なしで3、4日以内で解熱した。
タミフルは12名に対して使用された。重症度に応じてというよりも、初期に隔離入院となって投薬された例や、本人の希望で使用した例がほとんどであった。1名(30代男性)のみ、投薬後も3、4日発熱が続き、タミフル耐性を疑わせた。この1名は、結果的にH1N1陽性であった。

入院
6名が入院した。重症度に応じてというよりも、初期に隔離入院になった例、出張中でホテルに継続して宿泊不可能となった例、あとは希望入院であった。
1名(7歳女児)はインフルエンザに腸チフスが合併し、白血球および血小板の低下が見られた。
全員が軽快退院した。
肺炎、脳症などの重篤な合併症は見られなかった。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
山本 正志  

◇アメーバ赤痢に罹りました

本題のアメーバ赤痢に言及する前に、簡単に新型インフルエンザの状況に触れておきます。
JJC医療相談室では7月に入り、38度前後の発熱と軽い下痢を伴う症状から、A型インフルエンザ(新型インフルエンザ)を疑われる患者さんが急増しました。

インドネシア保健省によると、8月4日までの新型インフルエンザの国内死亡者は4人、感染者は500人から600人となっています。新型インフルエンザはインドネシアの各地方では依然多いようですが、ジャカルタでは7月下旬には峠を越えたものと思われ、JJC医療相談室では散発程度しか見受けられなくなりました。

さて、アメーバ赤痢の話題です。私事で恐縮ですが7月22日夜、突然猛烈な下痢に襲われ、腹痛と下痢のためトイレから出られないほどでした。その症状からアメーバ赤痢を疑い、日本から持参したメトロニダゾール(商品名フラジール)を服用すると幸い半日で症状は消え、ほっとしました。

JJC医療相談室へは月に10人から15人がアメーバ赤痢で受診されます。日本と異なりインドネシアではありふれた病気です。診断はセンター内検査室で便を顕微鏡検査しアメーバ赤痢の原因となる原虫(栄養型と嚢子、後述します)の存在で確定します。

『治療』は、日本ではメトロニダゾール(商品名フラジール)を使い、続いて嚢子駆除薬としてジロキサニドをそれぞれ10日間処方することもあります。
JJC医療相談室ではインドネシアで流通しているparomomycin(商品名Gabbryl)を使います。現地で使われている薬辞書『SANFORD GUIDE』や『MIMS』によりますと無症候性嚢子排泄者及び軽・中等度アメーバ赤痢患者にparomomycin500mg経口1日3回7日と処方例がありますが、大体5日間の服用でほぼ完治するようです。服用1週間後に便の再検査を行いますが栄養型、嚢子共に消失しています。

アメーバ赤痢とはどのような病気か簡単に説明します。
世界に広く分布し、特に熱帯、亜熱帯の衛生状態の悪い地域に多く、感染者総数約5億人、そのうち有症者約3800万人から4000万人、年間死亡者約4万人から11万人といわれています。また日本では男性同性愛者に多く見られ、性感染症の1つと考えられています。これはoral-anal-sexなどの行為により糞便中の嚢子が直接口に入ることによります。またハエやゴキブリが嚢子を運んでくることもあるようです。

『感染経路』の説明の前にアメーバ赤痢の『生活史』を説明します。
アメーバ赤痢は原虫によって引き起こされますが、その生活史上における栄養型(trophozoite)と嚢子(cyst)の2時期があります。大腸腔内から栄養型虫体のまま排出される場合粘血便となり、また栄養型が大腸腔内で嚢子となって排出される場合(成熟嚢子となって)有形便となります。
ヒトは成熟嚢子を経口摂取して感染します。栄養型は飲み込んでも胃液のため殺され感染しません。このような嚢子が飲料水、食品に混入したり、oral-anal-sexの際にヒトの口に入ったりすることによって感染します。

『症状』は腸アメーバ症(主にアメーバ性大腸炎)と腸管外アメーバ症(主にアメーバ性肝膿瘍)に大別されますが腸アメーバ症の場合、下痢、しぶり腹,鼓腸、排便時の下腹部痛などの症状が見られ、たまに粘血便を伴います。典型的な経過をとる場合は潜伏期間(嚢子摂取から発症までの期間、数日から数ヶ月と不定)の後、腹痛、下痢をもって始まります。下痢は1日数回から数十回に及び、時に苺ゼリー状の粘血便を伴います。

『診断』は腸アメーバ症では糞便の顕微鏡所見で、粘血便を伴う症例では原虫の栄養型を、軽症例またはキャリアでは嚢子の証明をもって行います。

インドネシアで生活する場合、アメーバ赤痢は極くありふれた病気です。罹ったら治療すれば良いぐらいの気持ちであまり神経質になる必要はありません。実際に罹患した私が言うのですから確かです。とは言え、感染しないよう日常生活の清潔保持や食品管理を励行し、万一感染した場合には、治療薬の服用し忘れなど中途半端な治療にならないよう注意しましょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇癌について考える

今年の5月頃から新型インフルエンザについての話題が続きましたので、今回は少し違う話題について書きます。

メタボリック症候群を背景とした“動脈硬化性疾患”である心筋梗塞や脳卒中(脳梗塞、脳出血など)は、医学が進歩した現代においても、時には命に関わる事態を引き起こし-特に脳卒中では麻痺(手足が動かない)や構語障害(言葉が上手くしゃべれない) などの重い後遺症を残す場合が有ります。

また、新型インフルエンザ、SARS(非典型性肺炎)、AIDS(後天性免疫不全症候群)に代表される“新興感染症”、結核、マラリア、狂犬病のように古くから知られている病気であり、時に致死的である感染症も確かに恐ろしい病気です。

しかし、“癌"もこれらの病気と同じくらい恐ろしい病気の一つです。ヒトがどういう病気で亡くなるか調べた最近の統計によると、ほぼ半数以上の方が、心筋梗塞や脳卒中などの“動脈硬化性疾患”か、全身のどこかに発生した“癌"で亡くなっています。
2008年の秋の日本癌学会の報告によると、本邦では一年の全死亡者数110万人のうち、生存中に何と55%の人が癌に罹患したことが有り、37%の人が癌により、亡くなっているそうですので、決して他人事では有りません。

ただし、特に10歳以下あるいは10歳台~30歳台の場合には、病気で亡くなる場合よりも、不慮の事故や自殺で亡くなる場合の方が統計的には多いようです。男性では45歳以降、女性では35歳以降は、不慮の事故や自殺で亡くなるより、癌で亡くなる方が増えてきます。

癌は、食事の西欧化、運動不足に起因する肥満の他、喫煙、飲酒などの“生活習慣”、“ダイオキシン”や“アスベスト”に代表される“発癌性化学物質”に加えて、“遺伝的な要素”が複雑に絡みあって発症します(特に大腸癌、乳癌などは遺伝的要素の関与が大きいとされています)。
“癌がなぜ出来るか”については話が非常に複雑になりますので、話をシンプルにするために“癌の発生”を“自動車の運転”に例えてみましょう。
癌細胞が発生する際には、癌の発生を加速する“アクセル”と癌の発生を抑制する“ブレーキ”が有ることが知られています。この“アクセル”と“ブレーキ”の踏み具合で、自動車が進むかどうか、つまり細胞が癌化に向かうかどうかが決定されます。
癌の種類によっても違いますが、一般的に、一つの癌細胞がX線やCT、MRI、超音波検査などの各種画像検査ではっきり“腫瘍(しこり)”であると検出出来る大きさ(1cm前後)に成長するのには10年以上かかると言われています。

最近では、全身の癌のスクリーニング検査として“PET(Positron Emission  Tomography)”という検査が知られています。この検査は、癌細胞と正常細胞とでは糖の取り込みが異なることを利用した検査です(放射性物質で目印をした糖の一種を静注して撮影します)。

それではPETで、全身のどんな癌でも見つけられるのでしょうか?
正解は否です。PETは、確かに初期の癌病変を検出するための優れた検査方法の一つですが、このPETをもってしても見つけにくい癌として、頭頚部の癌(脳腫瘍、甲状腺癌、喉頭癌など)、一部の肺癌、泌尿器系の癌(腎臓癌、尿管癌、膀胱癌など)、胃腸系の癌があります。また、血糖値が高い方の場合には、筋肉での糖の取り込みが亢進するため、画像のバックグラウンド信号が高まり、判定が難しくなる場合が有ります。
このうち、頭頚部の癌、一部の肺癌については、基本的にPET-CT(PETとCTを組み合わせた検査)を行うことで、ある程度検出可能です。また、甲状腺癌の場合には甲状腺そのものが体表面にあるために直接触知可能であること、喉頭癌の場合には自覚症状(声がかれるなど)が出やすい等の理由で、比較的早期に発見されることが多いようです。

また、泌尿器系の癌については、尿検査(通常の尿検査や尿細胞診)、超音波やCTを施行し、疑わしい場合には尿路造影(造影剤を注射して経時的に撮影)、膀胱鏡検査(尿道からファイバーを挿入して直接、膀胱粘膜を観察)などを行います。
問題は胃腸系の癌です。胃腸系の検査方法として、上部消化管(食道、胃、十二指腸)の場合には、バリウム検査(造影剤を飲む検査)、上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)、ペプシノーゲン法(血液検査)などが有ります。下部消化管(大腸)の場合には、便潜血検査(2回連続法が一般的)、注腸検査(肛門からバリウムを注入する検査)、下部消化管内視鏡(いわゆる大腸ファイバー)などが有ります。この他に各種の腫瘍マーカー検査(CEA、CA19-9など)も普及しています。

それでは、十二指腸と大腸の間、つまり小腸はどのような検査をしたら良いのでしょうか?
小腸は、非常に長く、壁が薄く、おまけに蛇行しているために検査しにくい臓器の一つです。それに加えて、大腸の病気(大腸癌や潰瘍性大腸炎)と比べると小腸の病気の発生頻度は非常に低いために、あまり検査の対象にはなっていませんでした。しかし、最近は、小腸に出来た癌(悪性リンパ腫など)、解熱消炎鎮痛剤による小腸の潰瘍性病変などが注目されています。それは、かつては“未開の地”であった小腸病変が、小腸造影(特殊なバルーン付きファイバーを使用)やカプセル内視鏡(使い捨ての撮影装置が内蔵されたカプセルを口から飲む検査)などで検査出来るようになったためです。

それでは、どの検査が1番良いのでしょうか?
それぞれの検査方法には一長一短が有るため、どの検査法が1番良いかは難しいところです。また、費用対効果、つまり、効率良く(一次検査で陽性と出た者のうち、実際に病気が有る者が多い)、かつ、確実に病気を見つける(一次検査で陰性と出た者のうち、実際に病気が有る者が少ない、つまり見逃しが少ない)ことも重要です。
しかし、何らかの消化器症状(胸焼け、食欲不振、腹痛、下痢、便秘、血便など)を常時認める場合、あるいはそれらが新たに出現した場合、過去に何らかの消化器疾患(潰瘍やポリープなど)を指摘されたことが有る場合、身内に大腸癌罹患者がいるなどの場合には、直接、内視鏡検査を行った方が良いようです。内視鏡検査の利点は、直接、病変部を観察し、“病変部の顔”を見ることが出来ることです(悪いヒトか良いヒトかはその道のプロが見れば大体、検討がつくようです)。 

(以上)