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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL09050101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇シンガポールの新型インフルエンザに関連した動き

4月27日WHOがインフルエンザの広まりを示す指標(フェーズ)をフェーズ3から4に、さらに29日、5に引き上げました。
これに対応して、シンガポールの警戒レベル(Alert level)も28日にGREENからYELLOWに、30日には さらにORANGEに引き上げられました。
その後、新型インフルエンザの毒性が当初考えられたものより、強くないことがわかってきたため、5月7日より、段階的に規制を緩め、5月11日から、警戒レベルをYELLOWに引き下げました。

ちなみに、簡略化して申し上げますとYELLOWは新型インフルエンザが世界のどこかで発生したこと、ORANGEは、まだ不完全ながらウイルスがヒトヒト感染しやすい型に変異し、複数の地域で集団発生がみられるという意味です。
このさらに一段階上はRED、つまりパンデミックということになります。

今回の報告では、新型インフルエンザに対して政府がとった具体的な対策のうち主なものを御紹介いたします。

1. 患者発生のある国からの帰国者の取り扱い
ガイドラインでは、患者発生国から帰国された方には1週間の自宅待機が求められておりますが、今まで、実際に行なわれたことは、以下の通りです。

Alert Orange(4月30日)になった段階から、
新型インフルエンザ患者あるいは疑わしい患者に接触した人、メキシコ出発後7日以内にシンガポールに入国した人、シンガポール入国日からさかのぼる過去7日間にメキシコに渡航歴のある場合は、症状の有無に関わらず、入国後7日間の自宅隔離の命令が出されました。シンガポールに自宅がない場合は、政府が準備する代替の場所に隔離されました。(この命令は5月16日をもって解除されました。)
隔離場所では、毎日、一日に2度体温検査を行い、インフルエンザの症状がないか確認されます。症状が現れた場合は、タントクセン病院に搬送されます。この命令に違反した者には、1万シンガポールドル(以下、Sドル)または6か月の禁固もしくはその両方が科せられ、再犯の場合には2万Sドルの罰金または12か月の禁固もしくはその両方が科せられます。

また、メキシコ以外にシンガポール政府が感染国と認定した国からシンガポールに入国した人に対しても、7日間自宅に滞在し、体調をチェックするよう勧めており、帰国後7日以内に38度以上の発熱等インフルエンザが疑われる場合にはサージカルマスク着用の上、救急車(993)を呼ぶことが求められました。

これに関しては、5月7日から、症状がない人に関しては、健康チェックをするという条件の下で、自宅への滞在義務は無くなり、通常の勤務をしても良いことになりました。
5月14日現在、感染認定国、地域はメキシコ以外では米国およびカナダとなっています。

新型インフルエンザの病原性があまり強くないことがわかってきたため、5月7日より、感染国の指定を受けた上記の国(地域)からの入国者への自宅待機は、症状がない限り、特に薦めなくなり、健康管理をして、通常の業務を行なってよいことになりました。
5月13日現在で、疑い患者さんは35名いましたが、新型インフルエンザの方はいませんでした。
また、シンガポール人及び外国人十数名に対し過去7日間にメキシコの渡航歴があるとして、自宅隔離命令が発出されていましたが、発症者はなく、順次、自宅隔離の解除が行われているようです。

2. メキシコ人に対するビザ取得の義務付け
5月2日より、水際対策の一環として実施されていましたが、5月12日をもって義務付けは中止されました。
ちなみに日本では4月29日から施行義務付けがされています。

3. 入国者の体温チェック
チャンギ国際空港では4月26日23時から、アメリカ発の飛行機に対して、27日8時から全ての到着客に対してサーモスキャナーによる体温チェックが行なわれています。29日から他の空港、港でも行なわれるようになりました。

4. 会社、学校、建物への入る際の体温チェック
Alert ORANGEに入ると同時に、職場や学校では、SARSの時のように、体温チェック、入館者の記録、渡航歴の記録などを行うように求められることになっていました。医療施設では、実際に通達が出たのは、5月4日からでした。これは、接触者を明らかにすることで、感染が広まることを抑えるための重要な情報となります。しかしながら、新型インフルエンザの病原性があまり、強くないことがわかってきたため、5月7日よりこれも中止となりました。

5. 医療機関でのスタッフの感染防御
医療施設、特に救急患者を受けいれる施設では、YELLOWの段階から、医療スタッフは完全防護服を着用することが求められました。また、一般の医療機関でも、マスクの着用、体温測定が求められました。ORANGEでは患者さんとコンタクトのある全ての医療スタッフに完全防護服の着用が求められましたが、5月7日から救急患者を受け入れる施設だけに限定されました。

6. 一般病院への見舞い客の制限
また、YELLOWの段階から患者さんへの見舞い客も一度には2人に制限されました。
ORANGEではこれが一人と厳しくなったのですが、これも5月7日からまた、2人に戻されました。見舞い客は、名前、体温が訪問の度ごとにチェックされます。

7. FRAME WORKの開始時期の変更
FRAME WORKとは、Alert REDになった後に、外来にて新型インフルエンザの患者さんを診るという国を挙げての計画で、国全体で800箇所以上の一般のクリニックが参加するものでした。
5月12日、これに変更が加えられ、国内に患者発生例が見られたら、Alert YELLOWのままでも、つまり、患者さんが多数とならない段階でも、FRAME WORKを稼働させる可能性があるとされました。
これは、今回の新型インフルエンザが想定していたよりも、死亡率が低いため、隔離入院の治療の必要性が低いので、外来で見ることが適当だと判断されたためと思われます。

最後に
今回の新型インフルエンザはH1N1型であるにもかかわらず、たまたまタミフルがまだ有効であったこと、当初考えられたよりも毒性が低いことは大変、幸運であったと思います。しかし、過去の例を見ますと、毒性が低いままという保障はなく、また、タミフルがいつまで有効かも保障の限りではありません。今後の注意深い観察が必要です。

当院には新型インフルエンザを強く疑う患者さんは来院されませんでしたが、一定の可能性がある患者さんは来院され、完全防護服を着て対応した例、CDCにお送りした例がありました。昨年、実地訓練を施行してはいたものの、実際となってみるとスムーズに対応できたとはいえず、多くの反省点を残しました。よき教訓として今後に備えて行きたいと思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇憩室

今回は、読者の方からリクエストがあったので、憩室についての話をします。

憩室、・・・、耳慣れない言葉ですが、簡単に言うと、消化管(胃、十二指腸、小腸、大腸)の壁にできる袋状のくぼみ(ポリープの反対)のことです。
粘膜の一部が腸管内圧の上昇により嚢状に腸壁外に突出することによって発生します。
健診で偶然発見されることが多いのですが、合併症(憩室のある人の10~20%:憩室出血、憩室炎など)を起こして見つかる場合もあります。
多いのは大腸憩室ですので、大腸憩室について書きます。

大腸憩室
憩室は、欧米人では60歳以上の半数近くに見られますが、食物繊維や不消化性の食品を多く含んだ食事を摂取する途上国では、まれだと言われています。日本では、食生活の欧米化に伴い、憩室が増えてきました。
直径は3mm~3cm、ほとんどが多発性です。まれに、3~15cmの巨大憩室もあります。

原因
・大腸内圧の上昇:便秘や高脂肪含有便による
・加齢による腸管壁の脆弱化
・体質、人種、遺伝、生活環境などの要因

憩室は大腸のどこにでもできますが、とくにS状結腸に多く、これはS状結腸が相対的に高圧帯であるためと考えられています。
従来、欧米で左側大腸(S状結腸)に多いのに対し、日本では右側大腸に多いと言われてきましたが、近年の食生活の欧米化に伴い、日本でも左側大腸の症例が増えています。

憩室出血
憩室のある人の5~20%くらいに出血が起こることがあり、60歳以上の血便患者さんの最も多い原因となっています。出血のリスクが高いのは、高血圧や動脈硬化のある人、非ステロイド性抗炎症薬(解熱鎮痛剤)、抗血小板薬(アスピリンなど)、抗凝固薬(ワーファリン)を常用している人です。
憩室の中に便が嵌頓し、隣接した血管にびらんが起こることにより出血すると言われています。
ほとんどの出血は、腸管の安静によって自然に止血します。
出血部位の確認と治療のために大腸内視鏡検査が行われますが、大量出血の場合は、血管造影で出血源を同定しコイルによる塞栓術を行ったり、時には緊急大腸切除術が行われたりすることもあります。

憩室炎
憩室の中に粒状物質が入り込み、糞石を形成し、炎症が起こることが原因です。
症状は、発熱、左下腹部痛、下痢などですが、重症化すると腹膜炎となり、便秘になります。
血液検査で白血球増加が見られ、CTではS状結腸憩室、4mm以上の壁肥厚、腸管周囲脂肪組織内の炎症などの所見が見られます。
安静、絶食、抗生物質で、80%の患者さんは軽快しますが、穿孔や腹膜炎、腸閉塞などの場合は、手術が必要となります。

憩室があると言われたら?
憩室の自然退縮があるかどうかについては調べた限り記載がなく、分かりません。
少なくとも、これ以上増えないように、大きくならないように、また合併症が起こらないようにすることが大事です。
毎日の食事は基本です。ふだん便秘がちの人は、食事の内容を見直してみましょう。

食物繊維は毎日摂りましょう。精製されない穀物(玄米、麦、粟、ひえなどの雑穀)、豆類、野菜類、きのこ類、果物、海藻類などに多く含まれています。

肉などの動物性蛋白の摂り過ぎは、憩室だけではなく、大腸癌のリスクファクターになることも分かっています。動物性蛋白をなるべく減らしましょう。

合併症を疑わせる症状があるときは、早めに病院を受診してください。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
山本 正志  

◇H1N1型新型インフルエンザとジャカルタの現状(5月15日現在)

今回の新型インフルエンザの流行はジャカルタ在住の邦人にも少なからぬ衝撃を与えました。
ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室にも問い合わせが殺到しました。
この現状を踏まえ、主にジャカルタ在住の邦人のために今回の新型インフルエンザの原因、治療及び現地の状況を述べたいと思います。

(1)原因
複数の動物由来ウイルスと1種類のヒト由来ウイルスが交雑したA型H1N1インフルエンザウイルスが原因と言われています。
そのため発熱や急性呼吸器症状のある人は検疫所で迅速インフルエンザ診断キットでA型陽性となった場合、更なる判別が必要となり、隔離措置がとられています。
従来人に感染していたH1N1型インフルエンザとは抗原が異なるため、現在出回っている季節性インフルエンザワクチンは新型インフルエンザには効きません。

(2)タミフル,リレンザは有効か?
今回のH1N1型新型インフルエンザウイルスではタミフルやリレンザに対する耐性株は報告されていないので治療に有効と言われています。
ただし2008年後半から2009年初めにかけて北半球で多数発見されたタミフル耐性インフルエンザの多くは同じA型H1N1型ソ連型で、今後両ウイルスが混合感染するとヒト体内で遺伝子交雑を起こしタミフル耐性株が早期に出現する可能性があります。

(3)新型インフルエンザワクチンの生産
従来各国が備蓄している鳥インフルエンザウイルスによるプレパンデミックワクチンや通常型の季節性インフルエンザワクチンの生産も止めるわけにはいかないため、今後H1N1型新型インフルエンザワクチンの生産には6ヶ月くらいかかるようです。しかし、実際に開発に着手してみないと分からないことも多く、開発スケジュールは流動的とも言われています。

(4)インドネシア政府の対応
4月27日、インドネシア政府は緊急の新インフルエンザ対策会議を行い、全インドネシア空港・港湾におけるポートヘルスセンターとの調整会議を実施し、特に感染している国からの訪問者の入国ゲートにおいて警戒レベルを上げ、入国者について体温をスキャンする等の措置を取っています。体温が38度以上ある場合、より詳細な検査を検疫室にて行い、さらに異常が疑われた人は以下の病院に搬送されることとなります。

<ジャカルタ特別州内のH1N1型新型インフルエンザ指定病院>
  1.スリアンティ・サロソ感染症病院(北ジャカルタ)
  2.プルサハバタン病院(東ジャカルタ)
  3.ドゥレン・サイウェイト病院(東ジャカルタ)
  4.ガトット・スブロト病院(中央ジャカルタ)
  5.チェンカレン病院(西ジャカルタ)

しかし問題があります。現在のインドネシア保健省の検査体制ではH1N1型新型インフルエンザの検査、診断ができず、検体を海外の検査機関に送付しなければならないため、足止めされた場合、診断までかなり時間がかかりそうです。 



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇当院における発熱外来(感染症外来)について

労働節明けの5月4日より、“熱あるいは咳などの呼吸器症状のある方”は通常の外来ではなく、発熱外来(感染症外来)を受診するようになっております。また、中国国内で1例目の新型インフルエンザ患者が報告された日の午後より、当院の外来入り口では、全身を防護服で覆ったスタッフが赤外線モニターで37.5℃以上(38℃ではなく-)の有熱者をスクリーニングし、海外渡航歴(特に新型インフルエンザ発生国からの渡航)、呼吸器症状の有無、トリや豚との接触歴、周りにウィルス研究所などでウィルスを扱っている者がいないかなどの問診を行い (中国語)、インフルエンザの疑いがある場合は、その場でマスクを装着して、発熱外来に誘導されます。

この際、外国人が(通訳無しで)1人で、感染症指定病院(当院を含む市内11ヶ所の病院)を受診した場合に少し困った事態が起きています。というのも、上記質問に対して明確に回答することが求められるのです(ある程度の中国語会話力が必要になります)。
回答がない(或いは出来ない)場合、回答があっても曖昧な場合には、日中時間帯であれば当相談室の医師か看護師が通訳として関与します(夜間や土日など我々がいない時間帯には院内で日本語がわかる職員が召集されるようです)。病院外来の入り口の段階で相談室まで連絡が有った場合には、我々が上記質問に対する回答を中国語で当該スタッフに伝え、“新型インフルエンザの疑いが薄い”と判断された場合には(相談室を含めた)通常の外来を受診することが可能になります。

しかし、飛行機内あるいは空港内において38℃以上の発熱が有ることが確認された方(特に新型インフルエンザの感染が確認された国からの渡航者)は空港の検疫職員に付き添われて救急車で直接、“発熱外来”に誘導されます。先日も、名古屋から大連に来られた日本人の男性が、“機内での検温で38℃以上の発熱があるという理由”で空港から直接“発熱外来”に誘導されました(中国語がわからないため、日本語のわかる検疫職員が同行)。通常の診療時間帯内であったため、私自身も“発熱外来”に向かい、全身を防護服で覆い(帽子、ゴーグル、全身白衣、手袋等)、通訳として付き添わせて頂きました(中国人看護師は入室を許可されなかったため、私1人で入室)。

問診の後、簡単な診察を受け、“新型インフルエンザの疑いは薄い”と判断され、帰宅してもよいということになりました。しかし、インフルエンザの潜伏期である可能性も有るので念の為、便名、連絡先(中国国内、日本国内)、中国での滞在先などを所定の書類に記載しました。

この際に“申請内容に虚偽は有りません”という旨のサインを求められます(本人、通訳である私、問診医、診察医の4名がサインしました)。

もし、本人あるいは密接接触者が後日、発病した場合に必要な処置(衛生部への報告ならびに経過観察~隔離、予防投薬・治療等の処置)を講じるためと考えられます。

日本の場合には、機内にて検温ならびにインフルエンザの簡易検査が行われ、新型インフルエンザが侵入しないような“水際作戦”がとられています。

それでも
潜伏期が2-7日であり、発熱がない者、当初の簡易検査で陰性であっても、後日、発病し、感染者であることが判明する場合があること
簡易診断キットでは100%の診断は出来ないこと[発症直後は陰性のことが多い、インフルエンザ患者であっても検体の採取の仕方や処理が適切でない場合は陰性になることがある]、(どんな検査でもそうですが-)“偽陰性”[患者であるのに検査で陰性になること]や“偽陽性[患者ではないのに検査で陽性になること]の可能性があること

などの理由から「水際で止める」という発想は根本的には不可能に近く、限界が有るのではないかと思います。

したがって、「水際で止める」というよりは、「感染者を少しでも早く発見し、治療あるいは予防処置を講じる」ことが今後、求められるのではないかと思います。その前段階として、手洗いやうがい、マスクの使用などの個人的防護に加えて、最低限の食糧の備蓄、生活用品の準備などが必要になります。

また、早期発見のための簡易検査あるいは精密検査(診断確定のためのDNA増幅検査[PCR:Polymerase Chain Reaction])を速やかに実施するとともに、治療薬であるタミフルやリレンザなどを備蓄することも重要であると考えられます。

最新の新型インフルエンザの報告を見ると、
多数の死者が出ているメキシコでは、一部の少数例ではすでに“遺伝子の変異[弱毒型から強毒型へ変化する]”の可能性が示唆されていること
高病原性であるトリインフルエンザと、弱毒性である豚インフルエンザ、通常のヒトの(季節性)インフルエンザが世界中で流行するとさらなる遺伝子変異が生じる可能性が否定出来ないこと
現時点ではH1N1A型インフルエンザに対して、タミフルは有効であると考えられていますが、通常インフルエンザでタミフルが予防目的で乱用されると、今度は“タミフル耐性ウィルス”が蔓延してしまう可能性があること

などの理由から、“依然として予断を許せない状況にある”という認識を持つことがリスク管理上必要かとは思います。

しかしその反面、過剰に反応しすぎた結果、(隔離の対象となった)発熱者本人が必要以上の多大な不利益を受けたり、企業や国家レベルで社会的・経済的に大きな損失が生じる事態は避けなければいけないと思います。

(以上)