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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL09020101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇“Are companies ready for a pandemic?”

先月中旬、政府系の新聞THE STRAITS TIMESに“Are companies ready for a pandemic?”と題する記事が載りました。平易な内容ですが、こうした記事を載せることによって国民の意識を高めようとする政府の姿勢が伺えると思いますので御紹介いたします。
内容は最初に概論と政府の対応策が書かれ、最後に自分でできることという項目が続きます。また、副首相の談話が載っています

概論
2003年から鳥インフルエンザの患者発生数は世界で約400人、死者は250人に及んでいる。
現時点では簡単にはヒトヒト感染を起こすものではないが遺伝子変化がおこり、容易にヒトヒト感染を起こす型に変化する可能性が危惧されている。世界的大流行が起これば死者は7000万人、経済的には3兆米ドルの被害(国連、世界銀行の推計)が出る可能性がある。

シンガポール政府の対応策
1.当局は国内の家禽、野鳥、ペットや輸入される鳥、卵などを定期的に検査している。不足時対応計画も作成されている。
2.シンガポールでは抗ウイルス薬は150万人を治療できる量が備蓄されている。全ての居住者分のワクチンが発注済である(注:もちろん実際に流行が始まらなければワクチンは作れません)
3.もし鳥インフルエンザの患者が出れば、Tang Tock Seng病院、伝染病センター(CDC)が指定医療機関となり可能な限り患者を受け入れる。接触者の追跡調査が行なわれ、接触者は自宅待機することになる。
(参考:2003年のSARSの際の接触者調査はその詳細さから高い評価を受けています。この経験を生かし、可能な限り同様の調査を行い、感染の封じ込めをしていく計画です。)
4.入国者に対しては体温チェックなどが行なわれる。
5.学校、ショッピングモール、娯楽施設などは、感染の拡大を抑えるため閉鎖されることが考えられる。必須でない経済活動は閉じることが求められる。

自分でできること
1.少なくとも2週間分の食料、薬、その他の必須の物資を備蓄すること。
2.大流行の際には、もし、インフルエンザのような症状(発熱、頭痛、倦怠感、咳、咽頭痛、鼻水、体の痛み、下痢、嘔吐)があったら、病院またはflu clinic(国内で800か所以上あり)を受診すること。
3.手を頻回に、しっかり洗うこと。
4.公共交通機関を利用したり、雑踏に行く時にはフェースマスクを使用すること。
5.さらに詳しい情報は政府のウェッブサイトhttp://crisis.gov.sgの中のFlu pandemic :A Guide For You And Your Familyを参照のこと。

副首相の談話
骨子はシンガポール政府は、すでに多くの対応策を作成、演習なども行っているが、大流行を最小限に食い止めるためには個々の会社としても準備してほしいというものでした。各方面の会社が協力してくれることが流行を最小限に抑えるために必要であることも述べています。参考となる情報はMinistry of home affairs かMinistry of Healthのウェッブサイトを参照してほしいとのことでした。

こうした記事が出された背景には、現在流行中のインフルエンザウイルスの一つであるH1N1タイプの多くがタミフル耐性となったことで、より危機感が増していることがあるのでしょう。
社会全体としての準備と協力体制が是非とも望まれます。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇肥満

健診で「肥満」とか「メタボリック・シンドローム」と言われた、何か症状があるわけではないが何となく心配、痩せたいが具体的にどうすればいいのか分からない・・・ という方に。
でも、最初にお断りしておきますが、読むだけでは痩せません。

先ず、毎日の生活を振り返ってみましょう。
あなたは、いくつ当てはまりますか?


( )早食いである
( )甘いものが好きだ
( )コンビニをよく利用する
( )夜食をとることが多い
( )冷蔵庫に食べ物が少ないと落ち着かない
( )食べてすぐ横になる
( )宴会・飲み会が多い
( )人から「よく食べるね」と言われる
( )空腹になるとイライラする
( )風邪を引いてもよく食べる
( )スナック菓子をよく食べる
( )料理が余るともったいないので食べてしまう
( )食後でも好きなものなら入る
( )濃い味好みである
( )お腹一杯食べないと満腹感を感じない
( )イライラしたり心配事があるとつい食べてしまう
( )夕食の品数が少ないと不満である
( )朝が弱い夜型人間である
( )麺類が好きである
( )連休や盆、正月はいつも肥ってしまう
( )間食が多い
( )身の回りにいつも食べ物を置いている
( )他人が食べているとつられて食べてしまう
( )よく噛まない
( )外食や出前が多い
( )食事の時間が不規則である
( )外食や出前を取るときは多めに注文してしまう
( )食事のメニューは和食よりも洋食が多い
( )ハンバーガーなどのファーストフードをよく利用する
( )何もしていないとついものを食べてしまう
( )たくさん食べてしまった後で後悔する
( )食料品を買う時には、必要量よりも多めに買っておかないと気が済まない
( )果物やお菓子が目の前にあるとつい手が出てしまう
( )一日の食事中、夕食が豪華で量も多い
( )運動不足である
( )夕食をとるのが遅い
( )料理を作る時には、多めに作らないと気が済まない
( )空腹を感じると眠れない
( )菓子パンをよく食べる
( )口一杯詰め込むように食べる
( )油っこいものが好きである
( )スーパーなどでおいしそうなものがあると予定外でもつい買ってしまう
( )食後すぐでも次の食事の事が気になる
( )ビールをよく飲む
( )ゆっくり食事をとる暇がない
( )朝食をとらない
( )空腹や満腹感がわからない
( )お付き合いで食べることが多い
( )食前にはお腹が空いていないことが多い
( )肉食が多い

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肥満と肥満症
肥満とは「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」です。
BMI=体重(kg)/身長(m)2で判定され、日本ではBMI22を標準体重BMI25以上を肥満としています。(WHOではBMI30以上が肥満) 
身長と体重から算出されるため、単なる筋肉質の人が肥満と診断されることもあります。

そして、肥満(BMI25以上)の中でも、
①肥満に起因ないし関連し、減量を必要とする(減量により改善する、または進展が防止される)健康障害を有するもの
もしくは
②身体計測で上半身肥満を疑われ、腹部CT検査で確定診断された内臓脂肪型肥満
を肥満症と診断します。
将来的に問題となってくるのは、この肥満症です。

肥満症でも、皮下脂肪の蓄積が優位なタイプより、内臓脂肪の蓄積が優位なタイプがより危険で、関連して起こってくる高血圧、糖尿病、高脂血症などにより動脈硬化が進行し(いわゆるメタボリック・シンドローム)、心筋梗塞や脳卒中など生命に関わるような病気となっていきます。
当然ながら、メタボリック・シンドロームの時点では何も症状はありません。
(皮下脂肪型肥満だからといって安心してよいわけではなくて、それはそれで、睡眠時無呼吸症候群や膝関節症など別な病気の原因になったりします)

BMI22の人に比べ、BMI25の人では高血圧が約2倍、BMI27の人では糖尿病が約2倍、BMI29の人では高コレステロール血症が約2倍、多く見られたそうです。40歳以上の住民の追跡調査で、BMIが23~25未満の死亡率が最も低かった、というデータもあります。

肥満の中には、ホルモンの異常や遺伝、薬物などが原因の二次性肥満もありますが、肥満のほとんど(95%)は、環境因子や食習慣、運動不足などによる原発性肥満(単純性肥満)です。
逆に考えれば、努力次第で何とかなる、と言う事もできます。

また、肥満の人は、家族の中にも肥満者が多かったりしますが、それは遺伝というよりも、生活習慣が及ぼす影響の方が大きいのではないかと思っています。

減量の目的・目標
減量の目的は、言うまでもなく、肥満に関連して起こってくる生活習慣病を改善し、生命予後を改善することです。

減量といっても、いきなり標準体重に、と言うのは無理です。
先ずは、BMI25~30の人で体重の5%減(60kgの人なら3kg)、BMI30以上の人で5~10%減(80kgの人なら4~8kg)で大丈夫です。
3~4kg痩せるだけで、血圧や血液検査が驚くほど改善します。

また減量は、1カ月に1~2kgで十分です。それ以上のスピードでは、身体が危機を感じて代謝を落とすので、少しのカロリーが入っても太りやすくなり、かえってリバウンドすることがあります。10kg以上の減量が必要な方は、1~2年かけてゆっくり減量していきましょう。


食事について
先ずは、冒頭にあげたような問題のある食習慣がないかどうか、自分の生活を見直してみましょう。

食事は3食きちんと摂り、そのバランスは、朝食:昼食:夕食が3:4:3(可能なら4:4:2)が理想です。夜9時以降には摂らないようにしましょう。

一日に摂取するカロリーを一割程度、減らしましょう。(具体的には、単純糖質や高脂肪食を減らす、血糖上昇係数(GI)の低い食物を摂る、水溶性食物繊維や難消化性多糖類を摂る、食塩を摂りすぎない)

摂取カロリーを減らすと、最初のうち空腹感を感じますが、1ヶ月程度で身体が慣れてきて消失します。

運動について
エネルギー消費量(運動の強度x時間x回数x期間)が同じなら、運動の種類や時間や頻度に関係なく、体重の減少に及ぼす影響は同じです。
楽しく続けられ、習慣化できるものを選んでください。
忙しくて運動の時間がとれないという人は、細切れの時間を活用し、運動時間を増やせばいいことです。

今まで運動の習慣のない人は、初めから強い運動をすると整形外科的な障害を起ししやすいので、軽い運動(散歩やウォーキングなど)から徐々に強度を増やしていって下さい。また、膝や腰の悪い人は、椅座位での運動や水中運動を優先して下さい。

運動は、最低で1回30分、週3回程度。可能なら1回15~60分、週12回(朝夕2回)まで増やしてください。


自分の生活の中で問題のある習慣を、ひとつずつでよいので改善していく、そして大事なのは、それを何ヶ月、何年という単位で続けることです。
簡単に痩せる方法はありません。

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原稿を書きながら、日本で、そしてフィリピンの外来で会ってきた何人かの肥満と言われる患者さんを思い出していました。それぞれ、高血圧があったり、糖尿病があったり、脳梗塞があったり、膝が悪かったりする人たちです。
そして、こういった知識を与えることが、全くと言ってよいほど意味の無いものであることは、常々感じてきていました。こんなことは私が今さら教えなくても、世の中、雑誌もテレビも、毎日のようにメタボの特集で溢れています。問題は、ただ、それを実行し長続きさせることができない、ということだけ。それは、子供の頃から慣れ親しんできた生活習慣を変えることが難しいとか、その人の性格的なものだったりします。

それに、本当の事を言えば、私自身が、太っていようが痩せていようが、そんなことが本人の幸せとイコールとは思っていません。将来その人が心筋梗塞で死のうが、癌で死のうが、それはある程度その人の責任でもあるし、運命と思っています。(どちらにしても、世界中で飢えている何億人の人たちのことを考えたら贅沢な悩みでしかありません)
大体、太っている人をみると何となくいい人そうな人が多いし、いつも楽しそうだし、まず本人が太っていることを気にしていなさそうです。

この文章を読んでくださっている全ての人たち、その家族の方々が心身ともに健やかでありますように。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇禁煙の話


最近の日本の研究で、「癌、循環器疾患を減らすには、肥満対策より、まず禁煙、節酒を推進することが重要。国民全体の健康対策として取り組む場合、肥満中心の手法は適切ではない可能性がある」ということが示されました。これは、肥満改善を重視する現在の特定健診(メタボ健診)に疑問を投げかけるものです。肥満のほうが良いというわけではないのですが、肥満ばかりに注目してもだめで、総合的にバランスよく考えなくてはならない、ということなのでしょう。

調査対象年齢(40-69歳)の人が、10年間に癌か循環器疾患にかかるか、または死亡する可能性が最も高いのは、男性が「1日40本以上喫煙、週に日本酒2合相当以上の飲酒、BMI30以上」、女性が「喫煙、飲酒1合相当以上の飲酒、BMI30以上」とのことでした。BMIとは体格指数のことで、体重(Kg)を身長(m)の2乗で割ったものです。BMI25以上を肥満と規定していますので、30以上はかなりの肥満となります(160cm80kg、170cm90kg相当で約31)。

BMI30以上の人がただ体重を落として25-27に下げても、生活習慣を変えなければ生存率はほとんど変わらなかったのですが、禁煙や節酒の取り組みを組み合わせて体重を落とすと、大幅に向上したのです。
それだけ、喫煙、飲酒が影響しているということなのですが、今回はタバコについての話とします。

インドネシアのタバコの現状
2007年のデータですが、インドネシアは、世界では5番目にタバコの消費量が多い国です。上位4カ国は、中国、米国、ロシア、日本ということですので、人口から考えれば、日本はかなり多いということになってしまいます。

インドネシアでは、オランダ統治時代以前から「丁子(ちょうじ)タバコ」という独特の香りがするタバコが流通しています。その影響もあるためか、いまだに男性の喫煙率が50%以上といわれています。以前見学した国立プルサハバタン病院の肺がん専門医が、この国の喫煙率の高さを嘆いていたのが思い出されます。また、カリマンタン島に旅行に行ったときに、小学生ぐらいの少年たちも大人にまじってタバコを吸っている姿をみたものでした。

インドネシアでも、ジャカルタなどでは「教育施設」「児童施設」「保健施設」「職場」「公共交通機関」「宗教施設」「公共の場」を“禁煙エリア”に指定する州政令を出したりしています。「公共の場」には空港、駅、ホテル、レストラン、ショッピングセンター、オフィスビルなどが含まれます。例えば大きなショッピングモール内においては原則禁煙にして、喫煙用コーナーを別途設けさせるようになっています。それでも、現実にはそんな規制とは関係なくタバコをすっている人をみかけます。

タバコこそがストレスのもと
「タバコをやめるとストレスがたまる」「ストレス解消のためにタバコを吸う」これは常識のようなものです。確かにそのようなのですが、禁煙に成功した人がストレスを解消できない訳ではありません。喫煙者のストレスのもとは何処にあるのでしょう。

神経細胞と神経細胞の間にあり信号の伝達を行っているところをシナプスといいます。シナプスの間は、神経伝達物質というものが信号を伝達します。信号を発するほうの神経の末端では、この伝達物質がつくられ放出されます。信号を受け取る側では、この伝達物質の受容体があって伝達物質の識別を行い、これが合うと神経の興奮が起こります。役目を終えた伝達物質は速やかに代謝されて、神経の興奮は一旦収束します。これが通常の神経伝達のようすです。

シナプスにニコチンが入り込むと、ニコチンは伝達物質の生成、放出を促進し、ニコチンそのものも伝達物質と同じように神経の興奮を起こす作用を持っています。また、ニコチンは普通の伝達物質とちがって、代謝されないため、長い時間神経を興奮させることになります。これがニコチンによる覚醒感(目が覚める)や気分高揚感のもとです。
タバコを吸うことにより、ニコチンがシナプスに作用することが頻繁になると、だんだん本来の神経伝達ができなくなり、ニコチンが存在すると伝達が行われる、という状態になります。この場合、ニコチンが存在しない状態では、神経伝達が不十分で、イライラしたり、気分がすぐれなくなったり、といった症状が現れます。この症状は、ニコチン離脱症状であり、これこそがタバコによってつくられたストレスであるといえるのです。

このストレスを解消するために、またタバコを吸う、という行為をくりかえすのは、ニコチン依存症といえます。 このストレスの悪循環を解消するためには、タバコをやめるしかないのです。

最近の禁煙補助について
古くは、「禁煙パイポ」なる商品名のものがありましたが、最近では「電子タバコ」なるものが人気を博しているようです。くわえて吸うと先端のLED(発光ダイオード)が炎のように赤く光り、息を吐けば水蒸気でできた煙まで漂うそうです。日本での値段は、本体が1万円を越え決して安くはないのですが、人気は上々のようです。

日本の医療機関では、禁煙外来において「ニコチン依存症」を治療するために、健康保険が適用されます。ニコチン依存症治療薬としては、以前はニコチンパッチ、ニコチンガムしかなかったのですが、最近ではバレニクリン(商品名チャンピックス)という薬が使用されています。
この薬のひとつ目の作用は、脳の中でニコチン受容体に対してニコチンの半分程度の作用を示し、禁断症状を抑えることにあります。
もうひとつの作用として、ニコチン受容体に結びついてなかなか離れず、つぎにタバコを吸ってニコチンがやってきても受容体にうまく結合できないため、満足感が得られなくなります。つまり、ニコチンを使わずに禁断症状を抑え、タバコを吸っても思ったよりうまくない、というような効果を出します。

バレニクリンは、禁煙日を決め、その1週間前から服用を開始します。最初の1週間は、薬を飲みながら煙草も吸うという奇妙な状態になりますが、徐々に「タバコを吸っても思ったよりうまくない」ということが経験でき、禁煙に導入しやすくなるそうです。治療期間は12週間で、これに健康保険を適用すると、2週間ごとの診察料を含めて、自己負担は約18000円になります。健康保険の適用を受ける医療機関は、社会保険事務所に届け出て登録をしなければなりませんので、どの病院でも可能というわけではありません。

また、この薬は「新薬」として登録されていますので、2週間ごとに医師の診察を受ける必要があり、その度に処方されます。この規則があるために、日本で12週間分処方してもらって、ジャカルタで服用するという方法は、今のところできません。2009年4月以降、「新薬」のしばりがとれますので、長期処方が可能になるかもしれませんが、どうなるかまだわかりません。
興味のある方は、4月以降、日本の禁煙外来でご相談いただくとよいと思われます。ただし、アメリカの報告によりますと「バレニクリン服用者に精神症状が目立つ」ということなので、服用中にも医師の診察を受けることが望ましいものと思われます。 インドネシアでのこの薬の販売については、今のところ情報が得られておりません。


最近、ある患者さんから、オフィス(日本企業)での受動喫煙について悩みを聞きました。喫煙は,自分の健康だけでなく、他人の健康にも影響を及ぼしています。喫煙者のみなさん、禁煙にトライしてください。禁煙できなくても、喫煙マナーは是非守ってください。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇一酸化炭素中毒(CO中毒)について

毎年、冬場になると増えるのがCO中毒です。CO中毒は、石炭・練炭、ガソリン、灯油などの炭素含有化合物燃料の不完全燃焼で発生する他、換気不十分な状態での都市ガス・プロパンガス等の非電化調理器使用時、ガス湯沸かし器式の浴室内、化学物質や食品の製造過程、炭鉱作業坑内あるいは火災時(木材、紙類、ポリエチレン等)、火気使用時のテント内(ワカサギ釣りなど)、マフラーが雪に埋もれた状態の自動車車内などに発生します。

また、昔の日本家屋には至る所に隙間が有りましたが、最近のマンションなどの建築物は気密性が高くなっているため、“まさか”と思うような状況でも事故が起こります。

また、COは無色・無臭の気体であるため、“発生に気付きにくい”という特徴が有ります。CO自体には毒性はありませんが、COは肺内で赤血球中のヘモグロビン(Hb:酸素を体の末梢に運搬する働きをする赤血球内の蛋白質)と結合することにより、体内組織細胞の酸素欠乏を招く結果、様々な中毒症状が現れると考えられています。COのHbとの結合力は酸素の200~300倍もあり、空気中のCO濃度が0.07%(=700ppm、ppmは100万分の1)あれば、血液中のHbの約50%がCOと結合し(CO-Hb)、体内への酸素供給量は半減します。しかし、COとHbの結合は可逆的であり、COを含まない空気中では血液中のCOは呼気中に排出され、Hbは元のように酸素と結合することが出来るようになります。
CO中毒患者の応急措置として、新鮮な空気中に運搬するのはこのためです。

また、煙草の煙中にはCOが1~5%程度含まれており、肺に吸い込まれて薄まっても、肺胞(肺の末梢組織で、“酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出する”ガス交換の場)内のCO濃度は約400ppmにも到達します。血液中のCO-Hbの半減期(濃度が半分になるまでの時間)は約3~5時間です。血液中のCO-Hb濃度は呼気中のCO濃度と正相関するため、採血をして血液中のCO-Hb濃度を調べる方法以外に、呼気中のCO濃度を測る方法も有ります(血液中のCO-Hb濃度と20秒間息止め後の肺胞内CO濃度は直線関係にあります)。

症状の重症度は一般に“吸入CO濃度”と“被爆時間”により決まってきますが、それ以外の要素として、“換気量(呼気・吸気)”、“循環血液量や貧血の有無”、“大気圧(気圧が低いほど症状が出やすい)”、“元々のCO濃度(喫煙・非喫煙)”、“基礎疾患(狭心症などの持病)”などが挙げられます。このため、CO濃度と実際の症状はケースバイケースですが、目安は以下の通りです(表1)。

CO濃度
吸入時間と症状
0.02%(=200ppm) 2~3時間で前頭部に軽度の頭痛
0.04%(=400ppm) 1~2時間で前頭部痛・吐き気、2.5~3.5時間で後頭部痛
0.08%(=800ppm) 45分間で頭痛・めまい・吐き気・けいれん、2時間で失神
0.16%(=1600ppm)20分間で頭痛・めまい。吐き気、30分間で死亡
0.32%(=3200ppm)5~10分で頭痛・めまい、30分間で死亡
0.64%(=6400ppm)1~2分で頭痛・めまい、15~30分で死亡
1.28%(=12800ppm)1~3分間で死亡



一般に、非喫煙者ではCOと結合したCO‐Hb量は1%以下であるのに対し、1日20本程度の喫煙で3~6%、ヘビースモーカーでは5~20%にも達する場合があります。そのため、米国では1976年に、商業用民間航空機のクルーに対して、“フライト8時間前からの喫煙禁止”を勧告しています。

COによる急性中毒の症状として、はじめは頭痛、吐き気、めまい、動悸、呼吸困難が出現し、さらに進むと意識混濁、けいれん、昏睡に至り死に至ることもあります(まず、酸素不足に敏感な中枢神経系がその影響を受け、その後、循環器系・呼吸器が影響を受けます)。

火災現場、炭鉱現場、金属製造工場、食品工場などで発生したCO中毒では死亡率は30%以上と言われています。また、CO中毒では、倒れた人の救助に行った人が次々と倒れて死亡する、いわゆる“二次災害“が多いのが特徴ですが、これは、症状がひどくなると外に出ようとしても身体が自由に動かなくなるためです。
また、お風呂場で高齢者が意識障害を起こした場合、普通は“脳卒中”の可能性を疑いますが、“CO中毒の可能性有り”と考えられる情報提供が無い場合には、何の装備(防毒マスクなど)もしないまま救助に駆けつけた救急隊員がCO中毒になる可能性が有ります。

血液中のCO‐Hb濃度と症状については、前に述べた種々の要素が関わってくるため、一概には言えませんが、“CO‐Hb濃度と症状”についての目安は以下の通りです(表2)。

血液中のCO-Hb濃度
症状
10%~
軽い頭痛(特に運動時)、頭重感(前頭部)
20%~
激しい頭痛(拍動性)、めまい、吐き気、動悸、呼吸困難
30%~
激しい頭痛(前・後頭部)、頻脈、視力障害
40%~
上記症状の増悪、視力・聴力障害、筋脱力
50%~
昏睡、けいれん
60%~
昏睡、呼吸の抑制、心機能の抑制
70%~
心不全、呼吸不全、死亡




また、同様に、“空気中のCO基準濃度と症状”についての目安は以下の通りです(表3)。

10ppm 日本における大気汚染防止法の基準(1時間値の1日平均)(注)
20ppm 日本における大気汚染防止法の基準(1時間値の8時間平均)(注)
25ppm 米国産業衛生監督官会議が示す大気基準(米国基準)
800~1200ppm 昏睡、呼吸不全、心不全から死に至る
1900ppm 短時間で死に至る




(注) 労働衛生上でのCOの許容濃度は50ppm、生活環境における環境基準は連続8時間における1時間の平均が20ppm以下、連続24時間における1時間の平均が10ppm以下となっています。

空気中のCO濃度が高く、COが急激にHbに結合した場合には、急激な酸素不足に類似の症状が出ますが、低濃度のCOが空気中に存在しても血液中のHbの一部がCO‐Hbになるだけで、急激な中毒症状を起こすことは有りません。しかし、急性中毒を起こさない程度の濃度のCOにさらされた場合に“慢性中毒”を起こすのかどうかについては、従来より議論の対象となっています。

慢性中毒は軽い中毒の繰り返しによっておこるという見方と、10~50ppm程度のCOを長時間吸入することによっておこるのではないかという見方があります。症状として物忘れ、不眠、手足のしびれ、人格や感情の変化、色覚障害・視野障害、不整脈や虚血性心疾患などの心電図異常があります。

急性中毒の応急処置としては
1.出来るだけ新鮮な空気にあてる
2.呼吸が停止していれば人工呼吸をする
3.安静、保温を行う
などが挙げられます。
一酸化炭素が体内から出て行くのは非常に速いため、急性中毒の多くは、救急処置が取られれば問題なく救命出来ます。従って、大部分の症例では後遺症が残ることなく完全に元の健康体に戻ります。後遺症を残す一部の症例(多くは高度の意識障害が遷延した場合)では意識の回復直後あるいは長期間経ってから精神神経症状が現れる場合も有ります。

また、昏睡状態など神経学的に異常が認められる場合、酸素投与にて改善が認められない場合、CO-Hb濃度が高い場合(CO-Hb25%以上)などでは高圧酸素療法(HBO: Hyperbaric Oxygen Therapy)という治療が必要になります。この治療はルーチンに使用すべきではありませんが、中等症から重症例には有効です。この方法は治療用の特殊な部屋の空気を除々に加圧(15分程度)→治療(60分程度)→除々に減圧(15分程度)するという治療法で、大体90分前後かかります (合併症として鼓膜損傷などが有る他、乳幼児の場合など“1人で部屋にいられない”場合は実際には実施困難)。HBOは血液中の溶存酸素を増加させ、Hbと結合しているCOを解離させて低酸素状態を改善します(“HBOはCOを洗い出す”)。

CO中毒を予防するためには、“CO中毒という病気が有ることを知る”、“火気を扱う場合には窓を開ける、定期的に換気をする”などの注意が必要です。

(以上)