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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL08060101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇手足口病、チクングンヤ熱続報

手足口病
シンガポールで手足口病が流行していることを先月報告しました。どうやら流行はピークを過ぎたようです(下図参照)。ピーク時は週に1466人の新規患者発生報告がありましたが、第23週(6月1日から7日)では508人にまで減少しました。これは昨年とほぼ同水準ですが、過去5年の平均はこの時期では週に222人ですのでまだまだ安心はできません。年初来の累計患者発生数は14571人となりました。これは平年ですとほぼ1年分の患者発生数となります。




チクングンヤ熱
チクングンヤ熱がシンガポールでもとうとう国内発生したという記事を2月に書かせていただきました。現在まで23人の患者さんが確認されていますが、うち15人が国内で感染を受けたと見られる患者さんです。2月にリトルインディアで13人の患者発生があったあと、患者発生は'確認されていませんでしたが、6月3から5日にかけてTeachers Housing Estateで2名(86歳(性別未発表)とその家の使用人)の患者発生が確認されました。ここはリトルインディアから15キロほど離れており、間には住居地区や商業地区もあり、今後の感染拡大が懸念されます。厚生省の対応は迅速で5日から7日にかけて、患者住居周辺住民のスクリーニング血液検査(311サンプルが集まりました)が行なわれました。この検査では陽性者はいませんでした。また、蚊の発生源を見つけるためその周辺150件の家屋周辺が調べられ、13箇所の蚊の発生源と考えられる場所が見つかりました。周辺65件の家屋に対し、殺虫剤の噴霧が行なわれました。
デング熱疑いとなった場合、同時にチクングンヤの検査も行なわれるのが通例であるため、今回も早期発見に繋がりました。
何とか、感染を押しとどめたいものです。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
小栗 千枝

◇水虫についてあれこれ

皆さんこんにちは。今回は水虫の話です。
水虫を持っている方は、4人に1人とも、5人に1人とも言われています。また、サラリーマンの4割が持っているという統計もあります。家族の誰か、もしくは職場で隣の人が持っていてもおかしくないくらいの確率です。皆さんの周りではどうでしょうか?
高温多湿(温度15度以上、湿度70%以上)の環境で発生しやすいので、日本では主に夏場ですが、フィリピンでは年中見られます。

水虫の歴史
水虫(主に白癬菌:人間に寄生するカビ)が存在した歴史は大変古く、人類誕生とどちらが早いか分かりません。少なくても100万年以上前から存在したと想像されます。この菌が西洋で見つかったのは200年以内で、国内でハッキリ認識されたのは120年位前です。昔は足が痒くて皮が剥ける病気を「みずむし」と呼んでいました。現在の医学では、水虫は白癬菌が原因とされていてカビに効く薬(抗真菌剤)が使われています。

本当に水虫ですか?
足が痒くて皮が剥けていれば水虫と思っていませんか?水虫の半数は痒くありません。また、実際、「水虫です」と皮膚科の外来を訪れる患者さんで本当に水虫の人は半数くらいです。(水虫のように見える皮膚病に、汗疱、疥癬、掌せき膿疱症、接触性皮膚炎、脂漏性湿疹などがあります) 皮膚科医でも見た目だけでは水虫の診断はできません。顕微鏡で白癬菌の有無を調べます。菌は皮膚の一番外側の角質層の中にいます。水虫には抗真菌剤は抜群に効きますが、水虫に見えて水虫ではない皮膚病には効きません。なかなか治らない時は受診して下さい。また、自己判断で水虫の薬を塗ってから受診すると、本当は水虫なのに顕微鏡で菌が見えないことがあります。検査の妨げになるので水虫の薬を2週間以上塗らないで受診して下さい。足の水虫10~20人に比べ手の水虫は1人くらいです。手はよく洗いますし、また外気にさらされているので少ないのです。

治療法(薬の選択など)
軟膏、クリーム、ローションタイプに分かれますが、厳密な使用基準というものはありません。
1.小水疱型の比較的新しい水虫 : 汗っぽい人にできます。水疱の水の中に菌がいるのでなく、外側の皮に菌がいます。皮は結構硬くて薬が浸透しにくいのでローションタイプを使います。
2.角質増殖型 : よく爪白癬を合併する長年かかって踵がひび割れするほどになる人。急性ではないので痒みはほとんどありません。ひび割れするほどの人はサルチル酸ワセリンとクリーム剤の併用。それほど角化が強くなければクリームでも軟膏でも合えばどちらでも構いません。軟膏は表面にとどまる作用は強いけれども、角質が厚くなったものにはあまり浸透しません。
3.趾間浸軟型 : 雑菌(緑膿菌など)が付いてぐちゃぐちゃしているもの。いきなり水虫の薬を塗っても効きません。まず雑菌の除去が必要です。抗生剤(ミノマイシンなど)を飲みながら、水溶性基剤の分泌物を吸収してくれるようなサルファ剤の外用(テラジアパスタ、ゲーベンクリームなど)を使います。

初期(1週間くらい)は、塗り薬が効果があると、今まで正常に見えていたところまで皮が剥けて、かえって悪化したように見えますが、もともと水虫菌がいて薬が効いて菌が死んで取れているので、心配しないで下さい。

また、治ったと思って外用を中止してしまう人がいますが、皮膚の中にまだ菌が残っています。痒みがなくなって皮膚が一見きれいになってからも、更に1か月は外用を続けてください。

爪白癬について
爪が白くなって肥厚してきます。白癬という名はここから来ているかもしれません。外用だけでは効かず、半年以上の抗真菌薬の内服が必要です。爪がはえかわるのにそれ位かかるからです。この場合も先ず診断が重要です。一見爪白癬に見えて、爪白癬ではない爪の病気はたくさんあります。(乾癬、扁平苔癬、爪甲白斑など) 半年以上も薬を飲むわけですから、診断が違っていると効かないだけではなく、必要のない副作用まで受けなくてはなりません。
診断は、やはり顕微鏡で菌を調べるのですが、白癬ではあるのに専門家が見ても見つからないものが25%くらいはあります。これは検体を取る場所の問題もあります。とくに爪の根元のほうに菌がいるので、必要であれば爪に穴を開けて調べることも必要になります。

爪白癬の治療がうまくいかない原因として、上記の、診断が誤っている場合、以外にも、
薬剤の血中濃度が上昇しない場合(患者さんの飲み忘れ、内服中断、用量の間違い、また消化器系疾患、制酸剤との併用など薬の吸収障害)、薬物の血中濃度は上昇しても爪甲では上昇しない場合(末梢循環不全、全身性疾患など)があります。長期の抗生剤の内服ですので定期的に肝機能検査をしながら使います。妊娠中、授乳中、肝・腎障害のある方は使えません。
また、爪甲中の薬物濃度は上昇しても病変部では上昇しない場合(広範囲な爪甲剥離など)、他の治療法の併用を考慮したほうがいい場合もあります。専門家にご相談ください。

漢方学的には
200年以上前には顕微鏡や分離培地なども存在せず「みずむし」は混沌としていましたが、この時代から有効と言われている漢方薬(十味敗毒湯、消風散)があります。十味敗毒湯、消風散は、日本で水虫に適応があります。
また、足や手だけに汗をかく人は身体が冷えていないでしょうか。甘いものや冷たいものを摂りすぎないように。クーラーも適度に。時々は運動をして汗をかいて、身体の余分な水分を出すことも必要です。

民間療法
酢を熱い湯で薄めて患部を15~20分ひたす、そのまま乾いたタオルで拭き、十分乾燥させる、を毎日続ける。他にも、ホウ酸を水で薄めて患部をひたす、木酢液など、インターネットにはたくさんの情報があります。効果は人それぞれですし、かえって悪化することもあります。民間療法単独での効果は?自己判断で行っても構いませんが、悪化するようなら早めに受診して下さい。

生活上の注意
水虫は剥がれ落ちた皮膚の中でも6週間は生き続けます。家に水虫の方がいる家庭では、他の家族にうつさないためにも、まめに掃除をすることが必要です。シーツ、足ふきマット、スリッパなども同様です。
公衆浴場、スポーツジム、プールなどはうつりやすい場所です。24時間以内にお風呂などで洗い流すことで角質層に入り込むのを防ぐことができます。
水虫の爪を切る爪切りは、他の爪を切るものとは別にしたほうがいいでしょう。

水虫になりやすい、治りにくい・・・
一度は糖尿病がないかどうか調べましょう。また、ステロイドや免疫抑制剤を内服している方も、なりやすく、治りにくいことがあります。


尚、この文章を書くにあたり、現役の皮膚科医(著者の母です)の意見も参考にしました。この場を借りて感謝します。

フィリピンも雨季に入り、感染症の増える季節になりました。
皆さんも健康に気をつけて、元気でこの季節を乗り切りましょう。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇心臓マッサージのはなし


ジャカルタジャパンクラブ医療相談室はMedikalokaという総合クリニックのなかにありますが、その中でドクターミーティングが開かれます。4月のミーティングで講演する機会がありました。「日本の救急医療システムと市民による心肺蘇生」という表題でお話をしました。そこで話したなかで、市民による心臓マッサージについての、最近の研究結果を紹介します。

この研究は、関東地方の主要な救急医療を担当する病院、58病院が参加し、また各地の消防局が協力して行われたものです。私がジャカルタに来る前に勤務していた病院も参加していました。
16か月の期間で、9592人の心臓が止まった患者さんが、心肺蘇生を受け病院に運ばれました。その中で4068人について、心肺蘇生の方法について検討しています。
除外された5464人は、「目撃者がいない(いつ倒れたかわからない)」「外傷による心停止」など、回復が非常に困難な患者さんです。この研究でもそうですが、それまでの世界中の研究でも、回復の期待できる心停止の患者さんの条件として、「急に倒れ」て、それを「目撃した人がいる」「心臓疾患が原因」で、「(心静止でなく)心室細動または心室粗動」であることとの結果をみています。心停止の直前までは、ほぼ正常の状態であったということが、回復に必要な条件と推定できます。外傷で心停止に至る場合は、胸や腹の中の臓器の大きな損傷、骨盤など大きな骨の多数骨折などがあり、大量に出血している場合が多く、回復できる見込みはまずありません。

検討された4068人についてみてみますと、救急隊が到着する前にそばにいた人によって心肺蘇生がなされていた人は、1151人(28%)、なにもされていなかった人は、2917人(72%)でした。心臓が回復し意識が戻った人は、心肺蘇生がなされていた患者さんでは5.0%、心肺蘇生がなされていなかった患者さんについては2.2%と明らかな差がありました。心臓病が原因と考えられる患者さんに限れば、それぞれ6.6%、2.0%、さらに救急隊が確認した心電図が心室細動だった患者さんでは、それぞれ14.3%、8.2%と高くなっています。
この結果からは、そばにいた人の心肺蘇生が非常に大切なこと、さらに心室細動の人の回復率が高いことがわかります。

心室細動からの回復ですが、救急救命士が使用する自動除細動器の効果が非常に大きいものと思われます。この研究の期間では、まだ一般市民に自動除細動器使用の認可がありませんでしたので、一般市民による除細動器の使用はありませんでした。現在は日本では、一般市民の自動除細動器の使用が認められていて、空港、駅、役所、学校、コンベンションセンターなど公共施設、さらにショッピングセンターなどにも設置されています。除細動器の効果は、一般市民が使うようになって、ますます期待されるものと考えられます。

問題は、一般市民による心肺蘇生の実施率の低さです。実施率をあげれば、さらに回復する患者さんを増やすことができるのです。この研究では、心肺蘇生の具体的な実施法にも検討を加えました。心肺蘇生が行われていた1151人のうち、人工呼吸と心臓マッサージの両方が行われていた人が712人で回復した人は30人、心臓マッサージだけが行われていた人が439人で回復した人が27人でした。回復率はそれぞれ、4.2%と6.2%でほとんど差がありませんでした。ちょっとだけですが、心臓マッサージだけ行った方が、回復率が高かったのです。この結果から言えるのは、心停止の人をみたとき、人工呼吸のことを考えてしまうより、むしろ人工呼吸は捨てて、心臓マッサージだけ行うことだけを考えて実行した方がよい、ということです。
人工呼吸しなくてよい、という結果の説明ですが、心臓疾患で急に起こった心停止の患者さんでは、直前まで普通に呼吸できていたので血液中の酸素がまだ十分残っているため、まず心臓マッサージだけを行っても、十分効果があると考えられます。また、蘇生時は脳にできるだけ血流を供給することが重要なため、特に1人で行う蘇生のときに、人工呼吸のために心臓マッサージを中断する時間がもったいないとも考えられています。
人工呼吸は、通常、口対口の人工呼吸が行われます。口対口人工呼吸は感染症の問題もあり、それを防ぐような器具もありますが、なかなかやりにくいものです。人工呼吸のことを考えて、躊躇してしまう人もいるでしょう。また、「心臓マッサージ何回に人工呼吸何回の割合で?」と混乱してしまう人もいるでしょう。「人工呼吸のことを考えずに心臓マッサージだけ行えば良い」というメッセージは、そんな人たちの背中を押し、思い切って心臓マッサージを行う人たちを増やしてくれることでしょう。

さらに、心臓マッサージの方法を知っていただくことが大切です。ポイントは、胸骨という胸の真ん中にある骨を押すことです。「心臓は左」という一般的なイメージから、胸の左側を押してしまいがちですが、真ん中を押すようにして下さい。高さの目安も含めて、両側の乳首を結んだ線のちょうど真ん中を押すようにしましょう。ここに、手のひらの付け根に近い部分をあて、その上に反対の手を添えて、両手で押します。肘を曲げずに、身体の上下動をそのまま伝えるように、力強く押します。心臓マッサージのスピードは、1分間に100回のリズムです。なにか有名な歌のリズムを思い浮かべるとよく、「水戸黄門」「地上の星」などが引き合いに出されます。

「心臓マッサージをするべきかどうか」の判断は、難しく考えると、回復可能なその貴重な時間を奪ってしまいます。「意識がない」「呼吸をしていない(ようだ)」「ゆすっても身体を動かすことがない」これを確認できれば、すぐに心臓マッサージをはじめます。「心臓マッサージが必要ない人にやってしまうのではないか」という危惧があっても、心臓マッサージを始めてみて、声が出たり、身体が動いたりしたら、その時点でやめればいいことです。

この研究は、成人の患者さんしか対象にしていません。こどもの心停止は、バックグラウンドが違うからです。こどもが急に心停止になる場合、心臓疾患である場合が少なく、また心臓疾患のばあいは、先天性の心疾患であることが多いものです。元気だったこどもが急に心停止となる場合は、日本では窒息、溺水などの事故が多くなっています。この場合は、呼吸に問題があるため、人工呼吸が重要になります。なにが原因かはすぐにわからなくても、こどもの心停止を見た場合、まず人工呼吸をすることが勧められています。


Medikalokaでの講演では、前半は日本の救急車のシステムを紹介したのですが、インドネシア人医師の反応は、「日本はそうなんですね」というような感じでした。インドネシアでは、あまり機能していないシステムですので、関心がないのでしょうか。
インドネシアでも公共の救急車がありますが、「すぐにきてくれるかどうか、わからない」「救急救命士が乗っている訳ではなく、また機材も充実していない」ということで、あてにはなりません。運良く利用できたとしても、「ただ運んでくれるだけ」と考えなければなりません。それも、「どの病院に運ぶのが適切か」ということについても、システムがあるわけではありません。各病院が救急車を持っていますので、こちらを依頼する方が確実かもしれません。これも日本の救急車をイメージすると、物足りないものです。ただし、頼めば医師同乗で来てくれる事もあります。もちろんその分の費用はかかります。
実際のところは、「自分の車で病院に行ってしまったほうが早い」ということになってしまうのかもしれません。住んでいる地域の主な病院の電話番号、住所などは、すぐわかるところにメモしてあるとよいでしょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇大連における在留邦人のための医療体制(その1)


2008年8月8日より北京で開催されるオリンピックまで、残すところ、あとわずかとなりました。大連市ではオリンピック開催種目は有りませんが、近郊の瀋陽ではサッカーの試合が、また、青島ではヨット競技が開催されるため、オリンピック開催期間には、観光目的で大連を訪れる外国人が増加することが予想されています。

私は大連市中心医院という中国系の公立病院にて、主に日本人を対象とした外来業務を2005年4月より担当させて頂いております。アジアの4地域(シンガポール、マニラ、ジャカルタ、大連)に医師を派遣している財団法人海外邦人医療基金(JOMF)より派遣されています。2008年6月時点で、(歯科医を除けば)大連における外国人医師は私一人です。また、上海や北京などの大都市と異なり、外資系クリニックは今のところ有りません。大連市内には日本に留学経験がある日本語が堪能な中国人医師・看護師が多いので、他都市と比べると、言葉の壁でとまどうことは比較的少ないかもしれませんが、病院で交される言葉は基本的に中国語です。当地での3年間の診療経験をふまえて、当地の衛生・医療事情について私なりに把握している範囲で、述べさせて頂きたいと存じます。

1.衛生状況一般
都市部においても、上下水道の設備上の関係で、食中毒やA型肝炎患者の発生が散発的に見られます。“生もの”特に魚貝類の摂取には十分気をつける必要が有ると思われます。また、外食時にはその店の衛生状態に十分注意を払う必要があります。

①水道水は一般に硬水(カルシウムやマグネシウムなどを多く含む)であること
②殺菌状態に問題がある場合があるために下痢症状を起こす可能性があること
③貯水タンク・水道管が汚染されている可能性があること
などを考えると、水道水を飲料水として使用する場合には、一度煮沸してから使用した方が良いと思われます。
外出先などでは、実際問題としてはミネラルウォーターを飲んだ方が簡便かもしれません。
果物・野菜の洗い、食器の洗浄、洗面・歯磨き・うがい、洗濯・入浴用に水道水を用いるのは通常は問題ありませんが、下痢をしやすい方の場合にはミネラルウォーターの使用をお勧めします。かつて問題となった野菜に付着している寄生虫(回虫、鉤虫、蟯虫など)は少なくなり、最近は、過剰の農薬使用による残留農薬の問題が有るので、洗浄後しばらく水に漬けてから使用する方がよいでしょう(目安として30分程度)。

また、道路の悪事情による砂埃や工場の排気ガス、内陸部から飛んでくる黄砂などによる空気汚染のために、眼、鼻、喉の痛み、咳などを訴える方が多いように思います。
また、日本で花粉症に悩まされた方のほとんどはこちらでは症状はおさまる場合が多いようです。この理由として、春季に飛散して花粉症の原因となるスギやヒノキは当地では少ないことが挙げられます。しかし、その一方、食品添加物、調味料、住建材のホルムアルデヒドなど各種化学物質によると思われるアレルギー性疾患(急性蕁麻疹、シックハウス症候群)が多いようです。

2.市内の主な病院・医院について
一般に病院の規模が大きい場合、大連市内では、例えば大連医科大学附属病院(第一、第二)、大連大学附属中山医院(旧鉄路医院)、友誼医院、あるいは公立病院(大連市中心医院等)であれば一定水準の衛生度・安全度は期待してよいと思われます。大連医科大学附属病院、大連大学附属中山医院には外国人外来(VIP外来)や外国人入院部(VIP病棟)が有ります。私が所属する大連市中心医院には、日本人外来は有りますが、現時点では外国人入院部(VIP病棟)は有りません。現在、日本人入院部(仮称)を建設中で、これが完成すれば、各科に在籍する日本語堪能な医師や看護婦が集結し、日本人入院患者のための医療サービスを提供出来るようになると思います。
中国の病院では一般的に、感染症対策(MRSA:多剤薬剤耐性菌対策、院内感染予防策等)が日本と比べると不十分な場合もあるので注意が必要です(特に入院部)。いわゆる“針の使いまわし”や“輸血・その他の医療行為にて肝炎やエイズ・梅毒などの感染症を発症すること”はある程度の規模の病院であればあまり心配する必要は無いと思われます。

3.中国の医師資格について
中国の医師資格は、以前は大学医学部或いは医学院(日本の医学系専門学校に相当)を卒業すれば無条件で与えられ、医師として勤務可能でした。また、現在でも農村地域の医師(いわゆる裸足の医者「赤脚医生」)と都市部の医師とではその医療水準はかなりの格差があるようです。1990年代後半から、国家試験が行われるようになったため、ある程度の水準を満たさない場合には医師として勤務することは出来ませんので、ある程度経験を積んだ中堅以上の医師であれば問題は無いと思われます。  

また、中国の医師はいわゆる中医(東洋医学)と西医(西洋医学)が混在しており、肩書き上は明確な区別がつきにくい-という現状が有ります。東洋医学は現時点では、残念ながら必ずしもエビデンスに基づいた医学とは言い難いので、特に急性の病気の場合には、その診断や治療の際に問題になるケースも有るようです。しかし、逆に慢性の病気については-例えば、西洋医学で治りにくい場合や西洋薬が使えない場合などでは有効な場合も有るようです。特に、頑固な耳鳴り、更年期障害、アレルギー疾患などの患者様で、漢方薬が著効した例を私自身、この3年間で数多く経験致しました。

4.日本人医療相談室について
当相談室は基本的に日本人患者様を対象としており、患者様の90%以上は日本人です。2007年度受診者の内訳を調べますと、風邪やインフルエンザなどの急性上気道炎患者数が約28%と最も多く、次に急性胃腸炎患者数が約12%でした。春から夏にかけては、病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、キャンピロバクターなどのいわゆる食中毒(細菌性胃腸炎)が多くみられます。食中毒予防のためには、食物の調理・保存法に気をつけるとともに、食事前の手洗い等を徹底する必要があると思われます。

秋から冬にかけては“激しい嘔吐や下痢を主症状とするウィルス性胃腸炎”の患者数が急増しました。このうちの一部については日本でも話題となった“ノロウィルス胃腸炎”であると考えられます。

大連市は緯度からすると日本の仙台市に相当するので、東南アジア、特に中国南部で見られるマラリア、デング熱、赤痢アメーバ、コレラなどの感染症は稀です。また、現時点では大連市内でのトリインフルエンザのヒトへの感染例や手足口病の集団発生の報告は有りません。CDC(Center for Disease Control and Prevention)が発表している遼寧省における各種疾病情報に関するウェブサイトはhttp://www.lncdc.com/です。
日本人医療相談室では、流行の懸念のある病気、注意すべき疾患などに関して、月1回ニュースレターを発信しています。特に、緊急性のあるものについてはその都度時発信させて頂いております(トリインフルエンザ、狂犬病、手足口病など)。
詳しくは大連日本商工会ホームページ (http://www.dlshoko.com.cn) を御覧下さい。

また、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの内科的急性疾患に加えて、急性虫垂炎、網膜剥離、交通事故による高度外傷、骨折など、当地での緊急入院や帰国にての治療が必要なケースも有ります。脳出血、心筋梗塞などの基礎疾患としては、高血圧、脂質異常症、糖尿病、痛風、肥満などのいわゆる生活習慣病が有ります。最近では“メタボリックシンドローム”という疾患概念が一般の方々にも浸透しつつあるようです。これらの病気については、当地においても検査ならびに治療が可能ですが、血液検査等では検査項目の大体半分くらいが日本の単位と異なるので注意が必要です。

2002年度に当地において、A型肝炎患者が大量に発生しました。以降、A型肝炎の大流行は認められませんが、A型肝炎は汚染された食物(海産物など)や水を介して感染しますので、引き続き注意が必要です。A型肝炎を発症した場合には原則として衛生部に届け出るとともに、感染症専門病院にて一定期間隔離の対象となってしまうため、ほとんどの方は帰国にて加療をしているのが現状です。その他の肝炎患者数(B型、C型、E型)も日本と比べると圧倒的に多いので注意が必要かと思われます(特にB型、C型は性行為を介して感染する場合が有ります)

最後に
去る5月12日に四川省で大地震が発生して多くの被災者が出ました(6月中旬の時点で、死亡者が7万人弱、行方不明者が約1万8千人、負傷者が38万人弱、震災で両親を失った孤児が約4000人)。
当院より救急部、外科系の医師・看護師からなる医療隊が2回に渡って派遣されました。そのうち、比較的軽症だが入院の必要があると判断された被災者140名前後が大連に移送され、大連市内の各病院で治療を受けました。当院は13名の被災者を収容しました(この中に外国人被災者はいません)。
被災者の御冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、この地震を教訓として今後、適切な地震対策がとられることを切に願います。


(以上)