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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL08030101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇鳥インフルエンザと新型インフルエンザ

今回は鳥インフルエンザと新型インフルエンザに関してシンガポール厚生省からの情報を元にお話します。

●鳥インフルエンザ
鳥の間で流行するインフルエンザで人への感染は特別濃い接触をしない限りはありません。

鳥インフルエンザを発症していることが疑われる人(infulenza pandemic plan(シンガポール厚生省)からの試訳)
次の1と2の両方にあてはまる方が、もし、いらっしゃいましたらすぐに医療施設に電話連絡してください。
1.急激な呼吸器症状(咳、呼吸困難感など)のある38度以上の発熱がある方で
2.症状が現れる前1週間以内に以下のいずれかに当てはまる方。
a)鳥インフルエンザの患者または疑いのある人と接触(世話をした、会話した、触ったなど)した方。
 b)過去1ヶ月以内に鳥インフルエンザまたは疑い例の発症があった地域で、鳥の屠殺に関わったり、鳥の死骸、糞便などとの接触があった方。
c)過去1ヶ月以内に鳥インフルエンザまたは疑い例の発症があった地域で、生の鳥肉やよく火が通っていない鳥肉を食べた方、または接触した方。
d)鳥インフルエンザにかかっている何らかの動物と接触があった方。
e)実験室などで鳥インフルエンザウイルスを扱っていた方。

●新型インフルエンザ
鳥インフルエンザが遺伝子変化を経てヒトからヒトへの感染をするタイプに変化したものです。A型インフルエンザが数十年に1回こうした変化を起こします。現在、鳥インフルエンザの鳥の中での流行、及び限定的ながら人への感染例が報告され、新型インフルエンザの出現が危惧されています。新型インフルエンザに対しては、抗体を持っているヒトはいないため、大流行すると予想されています。死亡率は予測の域を出ませんが、1918-9年のスペイン風邪の例では1-2%でした。当時の世界人口の30%(6億人)が感染し、2000-4000万人の死亡者があったと推定されています。

対策
世界中の国々、特に、先進諸国では新型インフルエンザの流行に備えて様々な対策をしています。日本はもちろんシンガポールも懸命に取り組んでいます。

情報の取得
最も大切なのは正しい、新しい情報を得ることです。いくつかウェッブサイトが開かれていますので頻繁にアクセスし、情報を得てください。下にその例を示しました。

日本から
1. 厚生労働省→新型インフルエンザ対策関連情報(「新型インフルエンザ対策行動計画」他)
       →鳥インフルエンザ関連情報
2. 外務省 →海外安全ホームページ
3.JOHAC(海外勤務健康管理センター)ホームページ
鳥インフルエンザ/新型インフルエンザ関連情報
海外派遣企業での新型インフルエンザ対策ガイドライン
4.グラクソスミスクラインのウェッブサイト http://influenza.jp/pandemic/phase01.html(グラクソスミスクラインは世界最大の製薬会社の一つです。行動指針の参考になります。)

シンガポールから
1. シンガポールの厚生省(Ministry of Health)のサイト http://www.moh.gov.sg
最初のページ右下にインフルエンザに対する対策が載っています。また、最初のページの左の欄のDisease and Conditionsを選びその中のavian influenzaを選んで下さい。病気の説明や最新情報が載っています。政府のサイト、WHOのサイトへもリンクしています。
2. Singapore 政府のサイト http://www.flu.gov.sg (警戒レベルの色表示が見られます。下記に詳述)
3. 世界保健機構(WHO)の サイト http://www.who.int. 

シンガポールの対策
いろいろありますが、とりあえず、覚えていただきたいのは警戒レベル(Alert Level)です。行動の指針の基礎となるもので、これにより対応の仕方が変わります。これは11月にもお伝えしましたが再びお知らせいたします。
警戒レベル(Alert Level)の色表示
WHOは現在の新型インフルエンザの発生、広まり状況を6段階(phase)表示しています。シンガポールではこれを参考に、国民への警戒レベル(Alert Level)として作り変え色で表すこととしました。インフルエンザへの対応が警戒レベルにより異なるので居住者の方は常に確認するようにして下さい。上記Singapore 政府のサイトhttp://www.flu.gov.sgで確認できます。各色の意味は以下の通りです。(この記事が書かれた3月10日時点ではGREENでした。)交通信号の色と似てますので受け入れやすいと思います。違うのは黄色が2種類(yellow とorange)あることと最後に黒(black)があることです。

警戒レベル(Alert Level)
Alert GREEN Level 0 (WHO Phase1)
世界のどこでも新種のインフルエンザウイルスの出現がない状態。

Alert GREEN Level 1 (WHO Phase2-3)
動物間での流行が起きて、新しいウイルスが出現する可能性が世界的に懸念される状態。動物からヒトに感染する例が見られることもあるが、ヒトからヒトへの感染はないかまたは極めて濃厚な接触をした場合のみ。ヒトからヒトへの感染の確率はまだ低い。(つまりAlert GREENではインフルエンザは基本的にはヒトではない他の動物に限局されている状態ということになります。)

Alert YELLOW (WHO Phase 4)
限定的ではあるが、新型インフルエンザによるヒトからヒトへの感染が、感染源の患者との濃厚な接触の場合に起きている状態。隔離などの公衆衛生的手段などにより感染の拡大は抑え得る。シンガポールへのウイルスの侵入リスクは高くなっている。しかしながら、孤立的な輸入例が見られても持続的な感染の拡大には至っていない。

Alert ORANGE (WHO Phase 5)
世界的、シンガポール国内にもヒトからヒトへの感染の集団発生がある。ヒトからヒトへのウイルスの感染はより起こりやすくなっているが、まだ、完全ではなく、感染には感染源の患者との濃厚な接触が必要。それぞれの集団発生には終息が見られる。

Alert RED (WHO Phase 6)
世界的流行が進行中。ウイルスは完全にヒトヒト感染する型に変異している。シンガポールへの侵入も不可避。感染源は特定できず、ひとたび、シンガポールに広がれば市中感染の危険は高い。

Alert BLACK (WHO Phase 6)
重症例、死亡の率が高くなったことを示すレベル。流行の拡大により、病院機能、公共サービスも支障が生じる。経済活動が著しく阻害される。

新型インフルエンザが疑われる患者さんの医療施設への受診に関して
Alert GREEN, YELLOW, ORANGEでは鳥インフルエンザ、新型インフルエンザが疑われるような例は少ないと考えられますが、仮に自分に可能性があると思った場合には、まず、マスクをして他人との接触を避けてください。そのためにはAlert YELLOWになったら常にマスクを持ち歩くのも良い方法です。(患者さん自身がマスクをすることにより、会話や咳、くしゃみをした時に出てくるウイルスを含んだしぶきの飛散を抑えることが出来ます。)感染したと思ったらすぐにマスクをして医療機関へ電話にて連絡して下さい。その後は医療機関の指示に従ってください。日本人会クリニックの場合には屋外にテントを設置し、スタッフが感染防御の準備をして対応します。実際に感染者と考えられる場合には厚生省の指針に則り、タントクセン(Tang Tock Seng)病院の感染症センター(Communicative Disease Center)に搬送され、隔離、入院加療となります。これは感染の拡大を防ぐためには必須のことですのでご理解をお願いいたします。
Alert GREENでは患者さんはまず、どこかの医療施設を受診する必要がありますが、
Alert YELLOWになった段階では市民レベルでも特別の救急車(993)を呼ぶことが出来るようになります。この場合は直接タントクセン病院に送られます。Alert ORANGEでも同様です。Alert ORANGEまでの目的は何とか感染を局所に押しとどめようということなのです。

Alert REDの段階になりますと、すでに患者数は大量となっていますので、患者さんの隔離施設への入院は最早、意味をなさなくなります。そのため、重症例を除き、外来にての治療となります。この段階では感染の拡大の速度を落とそうというのが目的となります。この段階でフレームワーク(FRAME WORK)という医療施設の組織が機能を始めます。FARAME WORKとはシンガポールに1400ある外来クリニック(現在60%以上が参加表明)を地域ごとに18の大きなグループに分け、これとラッフルズなど7つの大病院組織とで、流行を監視し治療をおこなう組織のことです。組織化により円滑で偏りのない感染防止用具、治療薬(タミフル)の配布を行なえるようにします。例えばあるクリニックでのインフルエンザ患者受診数が多ければそのクリニックにはより多くの薬剤が供給されるといった調節が行なわれます。患者さんはこのFARAME WORKに加入した医療施設を受診し治療を受けることになります。また、タミフルを投与された患者はすべてコンピューター登録され、一人に過度の量の薬が投与されないように管理されます。タミフルは約100万人分が備蓄されています。

体温チェック
Alert YELLOWの段階で患者発生がある国からの入国者に対し、空港や港、コーズウェイ、チュアスなどで検温が開始されます。感染者と考えられる者はタントクセン(Tang Tock Seng)病院の感染症センター(Communicative Disease Center)に搬送されて入院加療となります。また、新型インフルエンザの発生がある国からの入国者にはHEALTH ALERT NOTEが渡され、1週間の体温チェックの義務が課せられます。
Alert ORANGEになりますと、検温は全ての出入国者となります。また、学校や会社、マーケットなどでの体温、症状のスクリーニングが行われます。学校は休校となり、多数の人が集まるイベントは延期になります。

心構え
新型インフルエンザがシンガポール国内で世界に先駆けて発生する確率は低く、最初の患者は海外にて感染した方がシンガポールに持ち込むと予測されています。現在、タミフルが効かない鳥インフルエンザウイルス株も出現するなど、将来発生する新型インフルエンザの毒性、治療方法に不安は否めません。そのため、皆さん一人一人が、感染しない、この国にインフルエンザを持ち込まないという意識を持つことが大切です。誰もが最初の一人にならないという強い決意を持ちましょう。仮にどこかで感染してしまったと思ったら、マスクをして迷わずすぐに医療施設に連絡してください。それがご家族や会社を守る最良の選択肢です。無理をして会社に行ったりしますと取り返しのつかないことになります。たとえば、空港の検疫でひっかかったら“ラッキー”と思ってください。すぐに救急車で搬送され手厚い医療が受けられるはずです。そうすればご自身もご家族も会社も安全です。(症状があるのに飛行機に乗ることはもちろん避けて下さい)
新型インフルエンザが出現すれば効果が期待できるワクチンが生産できるようになりますが完成までに半年はかかります。どの程度の予防効果が得られるかは不明ですが、現行のワクチンと同程度としたら50-80%くらいですから、感染しない、感染を広めないという姿勢が、ワクチンが接種できたとしても大切なのは変わりません。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子


◇マニラでの3年間

マニラの地を踏んで丸3年が経過しました。この3月をもって帰国になります。フィリピンでは人口は増え続け、町は若者と子供達であふれかえっています。赴任当初はモノクロであった携帯電話がカメラや多機能を備えたカラー携帯電話になり、それを巧みに操るフィリピン人の順応の速さには感心させられました。また町を一歩でれば、森林地帯や田園、真っ青な海、野鳥が飛び交う島々などこれぞフィリピンといった大自然を満喫できる魅力的な国でもありました。時々日本に一時帰国した時に、電車や町で高齢の方を多くみかける光景とは対照的でした。

医療制度や医師の考え方、治療方針や診断にいたるまでの大きな相違に戸惑うこともありましたが、逆に日本の医療制度を改めて見つめなおす絶好の機会にもなりました。特に大きく異なるのは、フィリピンでは自由診療制度を取り入れていることです。診察料金などは自由に設定できます。医師はドクターフィーといって、高度な技術を要する治療にはその技術料を患者さんに請求することができます。また受診するさいには医師を指名することができます。

また病院が専門医を雇用するのではなく、専門医が病院に登録し、病院の一室を賃貸し、外来診療をおこないます。入院になった場合はその患者さんを受け持ちます。それぞれの部屋で個人開業をしているようなイメージです。

最初とても戸惑ったのが、治療の決定や検査をする際に、必ず医師と患者さんの間で料金の交渉があるということです。日本では診断を確実にするために、できる限りの検査項目を患者と詳細な料金交渉なしに、依頼するのが通常です。しかしこの国では、患者の同意なしに検査を次々にした結果、大変高額な請求がきて患者さんとトラブルになることもあり得るわけです。

邦人がフィリピンで医療をうける場合は、海外旅行傷害保険や日本の健康保険、会社への医療申請により還付をうけられますので、多くは問題ありません。しかし保険未加入の旅行者や緊急搬送を要するような重篤な病気や不慮の事故に遭遇すると、医療費の問題がおきることがあります。

次に異なるのは、健康保険制度です。フィリピン人が個別に加入できる国内の健康保険も増えつつありますが、加入率は僅かです。日本のような皆国民健康保険制度なく、診療費は全額全額自己負担となるのが通常です。また検査や入院費用は決して安くはありません。私立病院では一泊2~4万円程度は最低かかります。

一方で、日本にはない制度でチャリティー外来というものがあります。大きな国立・私立総合病院には、大抵「チャリティー外来」があります。高額な医療費の支払いが難しい方を対象とした外来です。収入が少ないという証明書や紹介状を持参すれば、ほとんど自己負担なく診察や投薬をうけることが可能です。重篤な病気にかかり手術を要する場合、書類申請をおこない基準を満たせば、慈善援助団体から手術費の寄付をうけることも可能です。フィリピン国内ではこのような慈善援助団体が複数あります。

フィリピン人医師との交流も大変有意義なものでした。優秀な医師は欧米へ流出してしまうといった大変厳しい状況の中ではありますが、最近は特に若手医師の中で、日本の病院やアメリカで臨床経験を積み優秀かつ技術を兼ね備えた医師がフィリピン国内でも増えつつあると実感しています。もちろん、多くの病院は衛生面や設備面、スタッフの対応、空調設備の不備や老朽化、などなど日本の病院を想像すると、その差に戸惑う方は多いと思われます。しかしまだまだ少数ではあるものの、眼科・耳鼻咽喉科・美容整形・内視鏡専門外来など、最新技術を学んだ医師と設備を整えた診療所も増えてきています。

最後になりますが、フィリピンで三年間生活し、最も印象的だったのはフィリピン人の明るさと家族のサポートです。悩み事やトラブルがあると、その日のうちにすべてを打ち明けられる友人や家族がすぐ傍らにいることはとても大きなことです。ストレスがどうしでもたまりやすい我々日本人の気質とは対照的であり、印象的でした。
フィリピンで多くのことを体験し学んだことを今後生かしていくことができればと思っています。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  


◇うがいの話など
~今まで常識と思われていたことが意外とそうではないこと、過去の情報は現在は正しくないこともあるということ~


以前、「傷に消毒は不要、むしろ有害」という話を書きました。このように、過去には「正しい」と思われてきたことが、実はそんなに根拠のあることではなかった、ということが、いろいろあるようです。今回は、そんな話をします。

"うがい用消毒薬でのうがいは、かぜの予防に無効"という話

京都大学でのデータです。ボランティアを使って、
1 うがいをしない
2 水道水でうがい
3 消毒薬(ヨード液を薄めて)でうがい
の3つのグループでかぜにかかる率を比較しました。
その結果は、消毒薬でうがいをしたグループとうがいをしないグループでは、差がなく、水道水でうがいをしたグループのみ、かぜの発症率が少なかったというものです。
この結果をみて、われわれは、消毒液のはいった水でうがいをして、予防効果がないことに驚きます。しかし、外国からみると、うがいに予防効果があったことのほうに驚くそうです。うがいは日本独特の風習で、日本以外の国でよく行われているということはほとんど聞きません。インドネシア人に「インフルエンザの予防にうがいをしろ」といっても、うがいをする習慣がないので、「なんのこと?」といった具合になるのもうなずけます。

ウイルスが感染するときは、細胞の受容体と結合後30分程度で細胞内に侵入、増殖段階に入るため、いくら帰宅後にうがい液で粘膜表面からウイルスを洗い流したとしても、その効果は限定的だと考えられています。それなのに、水道水でのうがいで予防効果があったのは、なぜでしょう。この研究をされた京都大学保健管理センター所長の川村孝先生の説明では「ハウスダスト由来のプロテアーゼ(蛋白分解酵素)がインフルエンザウイルスの感染を促進するという報告があり、うがいによってウイルスを流し去るのではなく、感染を促進するプロテアーゼを洗い流している可能性がある」とのことです。一方、水道水で効果がありながら、ヨード液で効果がなくなったことに対しては、ヨード液が粘膜の常在菌叢を破壊したためか、粘膜を構成する細胞が傷害され、水道水と比べて感染が成立しやすくなったのではないかと考えられています。(出典:日経メディカル2008年2月)

かぜやインフルエンザの予防に、うがいは有効なのか無効なのか。現状ではその答えは「水道水のうがいは有効、消毒薬のうがいは無効(?)」ということになるのです。インドネシアでは、水道水も他の病原菌があやしいので、ミネラルウォーターでうがいをしましょう。
緑茶や紅茶(カテキン)でのうがいについては、有効という報告もあります。昭和大学の研究で、紅茶でうがいをしたグループで、かぜの罹患率が低かったというものです。対照としたグループは、「うがいをしない」ので、紅茶が有効なのか、うがいの行為(水でも)が有効なのか、はっきりしません。それでも紅茶のうがいが無効とはいえませんので、やってみる価値はあるかもしれません。すくなくとも、ヨード消毒薬のうがいよりも期待が持てます。

お茶の話がでたので、次は

"お茶で鉄剤(貧血の薬)を服用しても良い"という話

「薬を服用するとき、お茶を一緒に飲んではいけない」と言われてきました。これは、貧血の薬である鉄剤をお茶と一緒に飲むと、お茶の中のカテキンと鉄がキレートを形成(カテキンと複数の鉄イオンが結合する)し、吸収されにくくなるという説がもとになっています。この説に関しては、「お茶と鉄剤を同時に服用した時に、鉄の吸収率が半分から3分の2に減った」という日本の研究結果をはじめとして、複数の報告があり、正しいものと考えられます。しかし、鉄の吸収がゼロになる訳ではなく、吸収された鉄が効果を示し貧血が改善されれば、治療としては問題ない訳です。それについても研究されていて、鉄剤をお茶で服用したグループと服用前後30分のお茶を禁止したグループで、貧血の改善に差がないことが示されています。
お茶と一緒に鉄剤を服用すると、吸収はある程度低下するが、貧血の改善には有効であるということができるわけで、「お茶で鉄剤を飲んでもよい」ということができます。

"インドネシアで命に関わる緊急治療は受けられない"という誤解

ジャカルタのある病院で狭心症と診断された患者さんは、インドネシア人の循環器科専門医に、「ジャカルタではカテーテル治療ができないので、シンガポールに行くように」と言われたということです。これは、全くの間違った情報で、複数の病院が心臓カテーテル治療を24時間態勢で行っています。この「間違った情報」は、この医師が本当に知らなかったのか、何か意図をもってわざわざ「嘘」をいったのか、言葉の問題で患者さんにうまく伝わらなかったのか、はわかりません。
医療相談室を訪れた患者さんに、「ジャカルタで治療できること」「不安定狭心症では、航空機搭乗は危険であること」を説明しました。ジャカルタで治療を受ける気持ちになった患者さんは、日本の産業医にその報告をしたところ、今度は日本にいる産業医が「ジャカルタではできないはず、シンガポールへ」といったそうです。すでに何人かの日本人の患者さんが、ジャカルタで心臓カテーテル治療を受けられています。航空機搭乗が可能な状態であれば、治療場所の選択も可能ですが、心臓で言えば、心筋梗塞、不安定狭心症、心不全など航空機搬送が危険な状態では、現地で治療を受けるのが最善です。前号で紹介したように、ジャカルタには脳外科手術のできる病院もあります。遠く日本に住んでいる医師が、過去の情報をもとに行う助言は、現在は正しくないものかも知れません。 間違った情報に惑わされて、最善の選択を逃さないようにしましょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎


◇“黄砂”ならびに“花粉症”について

“黄砂”について
毎年この時期になると、中国の各都市で“黄砂”が多く観測されます。
「新華網」によると“中国の河北省で今春最初の黄砂が観測された”ことが発表されました。河北省の広い地域では今月1日から、寒気の影響を受けて、5~6級(秒速8~13.9メートル)の北西風が吹き、広い範囲で黄砂が観測されたそうです。同地域では広い範囲で平年より高い気温が続いたこと、また降水量が平年より47%も少なかったことなどが原因で地面が乾燥し、強風が吹くと地面にたまった砂塵が吹き上げられ、“砂ぼこり”が舞いやすい状態だったそうです。

黄砂”は“咳や咽頭痛”などの呼吸器症状や“眼の痒みや異物感”などの眼科的症状のほか、様々な皮膚疾患を引き起こす原因となります。“黄砂の発生地”は内モンゴル高原やゴビ砂漠などのいわゆる“黄土地帯”です。“黄砂”は低気圧の影響で生じた上昇気流により、これらの 地域の砂が巻き上げられ、偏西風に乗って運ばれて起きる現象です。

昨年は日本の各地域、隣国の韓国などでも“大量の黄砂”の飛来が確認されて話題になりました(韓国では小学校の休校、航空便の欠航、交通事故などの被害もあったそうです)。韓国の黄砂研究チームの報告によると、
①中国で発生した黄砂は北京や大連などの大都市や工業都市上空を通過する際、黄砂成分の一つである炭酸カルシウム(CaCO3)は大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)や硫酸酸化物(SOx)と結合して化学反応を起こした後、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)や硫酸カルシウム(CaSO4)のような有害物質に変化する可能性があること、
②これらの極微細粉塵粒子の大きさは0.5-1.0μm(1μmは1000分の1mm)前後と比較的小さいために、通常のマスクでは濾過されないため、肺まで吸入される可能性があることなどが報告されています。

黄砂の発生頻度は1998年以降急増する傾向にあるといわれていますが、この原因として、“黄土地帯”の降水量・降雪量が減少していることが挙げられています(中国全土の約18%が砂漠化しつつあるといわれています)。現在、各国の気象部門では“黄砂予報”の研究に力を入れて、事前に注意を呼びかけるなどの措置を講じようとしています。
黄砂が発生した場合には、喘息を中心とした呼吸器疾患、アレルギー疾患を持っている方、乳幼児・高齢者の方は出来るだけ外出を控えるなどの注意が必要です。

“花粉症”について
環境省の発表(2008年1月24日)によると、2008年春のスギ及びヒノキ花粉総飛散量予測は、昨年春に比較すると東日本で1.5倍から3倍、西日本はほぼ昨年並みと予測され、例年との比較では、東日本で例年並かやや多く、西日本は例年並みかやや少なくなると
予測されました。例年並みといってもここ数年間では大飛散となった2005年春に次ぐ飛散量の予測となっていますので注意が必要です。

しかし、日本に居た時に花粉症の症状(くしゃみ、鼻水、眼の痒みなど)があった方で、当地に来ても症状が出る方は非常に少ないようです(詳しい統計を取っているわけではありませんが、印象としては1割前後、あるいはそれ以下と思います)。この原因として、日本と中国ではアレルギーの原因となる物質(アレルギン)がそもそも違うようです。日本で春季の花粉症の原因として最も多いスギ花粉やヒノキ花粉などは、当地での病院の検査項目(アレルギーの原因を調べる検査で“アレルゲンテスト”と呼ばれています)にも登場しません(一部は日本と中国で共通するアレルゲンです。詳しくは下記の一覧表を御覧下さい。)。

こちらで日々の診療をしていて感じるのは、いわゆる“花粉症”ではなく、新築住宅の内装塗料(ホルムアルデヒドなど)により、頭痛やめまい、眼・のどの痛み、しつこい咳などの症状が出現する “シックハウス症候群”や、①黄砂(中国内陸の砂漠から飛んでくる砂粒)、②自動車・工場の排気物質、③日本で使われていない様々な化学物質(ア. 防腐剤・着色料・保存料などの食品添加物、イ. 様々な香辛料・調味料、ウ. 肉類に残留している抗生物質、エ. 野菜に残留している農薬、オ.美容・化粧用品、カ. ドライクリーニング用薬剤等が原因と考えられる “アレルギー性皮膚炎”が多いようです。 

もともと“乾燥肌”や“アトピー性皮膚炎”の方が、当地に来て悪化することも多いようです。この原因としては、①寒冷、②極端な乾燥、③極端な温度や湿度の変化、④静電気、⑤ストレス、⑥疲労、⑦何らかの感染症などが考えられます。
また、もともとアレルギ-が有った方ばかりでなく、(日本では一度も出現しなかったのに)中国に来て初めて発症するケースも数多く見られます。

(参考)中国におけるアレルゲン(過敏原)について
①季節性のもの
春(~夏):アカシア、ヤナギ、ハコヤナギ、ユウカリなど
(夏~)秋: ブタクサヨモギ、カナムグラ、ノギクなど
②通年性のもの
ダニハウスダストカビ類ペット上皮(イヌ、ネコ)、ゴキブリ
③食物
タマゴ(白身、黄身)牛乳、トリ肉、牛肉、羊肉、エビ(伊勢エビ含む)カニ
魚(サバ、サケ、タラ、ハマチ、コイなど)、塩辛(魚、肉、海鮮類など)、貝類(ホタテ貝など)、ピーナッツ大豆など