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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL08020101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇チクングンヤ熱発生

デング熱に似たチクングンヤ熱という熱性疾患があります。2005年から2006年にかけてインド洋沿岸国で大きな流行をみせました。レユニオン島では人口77万人のうち26.6万人が罹患し、237人が死亡したとのことでした。2006年4月、シンガポールの隣国マレーシアの、シンガポールからわずか1.2キロの橋を渡ったところにあるジョホールバルでも患者が確認されたことは、2006年5月にご報告いたしました。

そのチクングンヤ熱がとうとうシンガポールにも侵入してきました。2008年1月14日、シンガポール国内にて罹患したと見られる患者さんがみつかりました。実は2007年末までに13人のチクングンヤ熱の患者さんがシンガポール国内で確認されていましたが、この方たちはいずれも国外にて感染したと考えられる患者さんでした。

この疾患の症状は、デング熱に似て高熱、関節痛です。そして80%の方に発疹が見られるといわれています。主症状は3日から10日続きますが、痛みは強く、長く続き(場合によっては数ヶ月以上におよぶこともあります)それがこの病気の名前の由来になっています。

2005年のデング熱の大きな流行を契機にシンガポールのNEA(National Environmental Agency)の下部機関であるEHI( Environmental Health Institute) では、デング熱の抗原を調べるシステムを作りました(研究の意味もあるため、検体を送るには患者さんの了承が必要)。この検査では同時にチクングンヤ熱の検査もしていました。このシステムが有効に機能し、患者さんの発見につながったのです。患者さんの血液をこの研究所に送った医師も、もちろんチクングンヤ熱などとは思わずデング熱だと思って送ったので、この結果に驚いたようです。その後、この患者さんの居住地の近く(リトルインディア)で2月半ばまでに13人の患者さんが見つかりました。この病気はデング熱と同じく蚊(種類も同じ)によって媒介され、また有効なワクチンや治療法もないので、蚊の発生源をなくすことが唯一有効な予防法です。NEAからは普段の3倍に当たる20人の係官と15人の防蚊官が派遣され70箇所以上の蚊の発生源を撤去したとのことです。また、340棟の商店や住宅のオーナーに雨どいなどため水が出来やすい箇所の撤去を命令、従わなかった場合は2000ドル(約15万円)の罰金を科しました。この地域の住民はバングラデシュなどからの外国人労働者が多いため、ヒンディー語やタミール語など7ヶ国語のポスターやパンフレットが作成され、蚊の発生源をつくらない様に呼びかけがおこなわれました。

インドでのある研究によりますと、デング熱とチクングンヤ熱の重複感染も1.7%から3%くらい見られたとのことです。
デング熱も、週に100人以上の患者発生があるため、蚊の防除には今後、いっそうの対策が必要になりそうです。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇2005~2007年度受診者報告

2005~2007年度 疾患別受診率比較(%)




過去三年間の受診報告です。月あたりの受診者数は述べ500名前後(健康診断数を含む)そのうち15歳未満の受診割合は約20%です。 昨年と比較し今年は小児・成人受診者、及び健康診断数も減少傾向にあります。日系の診療所・病院の設備の充実や企業の帯同家族の減少などが背景にあると思われます。
 
グラフに示しますように疾病傾向は過去三年大きな変化はなく、風邪症状や下痢などの胃腸障害が原因での受診が大部分を占めています。

風邪症状については、大気汚染や化学物質などの影響か、喉や耳の頑固な炎症、長引くアレルギー症状・咳の持続が散見されます。皮膚科では昆虫・ダニや海洋植物による発疹、帯状疱疹、アレルギー湿疹が目立ちました。整形外科ではケガや骨折のほか、頚椎・腰椎症が原因の疼痛やしびれの訴えで受診し、専門医を紹介するケースも稀ではありません。

当診療所にはフィリピン人の内科常勤医に加え、産婦人科医、小児科医、超音波医、レントゲン医、臨床検査医が非常勤で勤務しています。産婦人科については妊婦健診、子宮がん検診、更年期障害の受診もあります。月あたりの出産数は数名です(近くの総合病院での出産)。メンタル疾患に関しては職場や家族の問題を中心としたストレス障害などもみられます。そのため、休職や日本一時帰国が必要になるケースも稀ではありません。

また感染症では他年によって異なりますが、アメーバ赤痢年間約80~100名。デング熱年間20名前後。腸チフス年間5~10名。このような感染症は通常雨季にあたる8~10月頃に増加しますが、今年は異常気象の影響をうけてか、発症のピークが12~1月頃にありました。その他、急性ウイルス性肝炎(A型・B型)は年間3~5名。性感染症年間30~50名。活動性肺結核年間数名の発症者がありました。

この三年間ではマニラ日本人会診療所の受診を経由しての緊急搬送症例はありませんでした。しかし、脳梗塞や心筋梗塞急性期治療後の帰国、原因不明の症状が持続し、精密検査のための帰国、がん治療のための帰国、妄想性障害の親類付き添いによる準緊急帰国は月あたり数件ありました。いずれも医師付き添いによる飛行機搭乗はありませんでした。

さらに、年一度の日本帰国や日本への出張にあわせ、定期検査やセカンドオピニオン、精査を専門医に依頼するなど、待機可能である日本専門医への紹介も月あたり数件あります。
 
三年間の診療を振り返ると、熱帯特有の病気を除くと、ほぼ日本でプライマリー診療をおこなった時に遭遇する疾病傾向と類似しているのではないかと思います。また日本が近いこともあり、緊急時を除いては、日本で専門医にかかることもそれほど困難ではありません。さらに近年Eメールを利用して画像や検査結果を直接添付し、日本の専門医から迅速なアドバイスやセカンドオピニオンを得ることも比較的容易となってまいりました。来年には大きな私立総合病院がマニラ首都圏に完成予定です。新たに邦人にとっての拠点病院になっていくのではと期待しています。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇くも膜下出血について

くも膜下出血は、脳卒中の約10%をしめ、日本では人口10万人あたり年間約20人が発症するといわれています。インドネシアに住む日本人は約1万人としますと、年間約2名の患者さんが発生することになります。先ごろ、ジャカルタでくも膜下出血の患者さんを診察しましたので、今回はくも膜下出血のはなしとします。

脳神経外科医にとってくも膜下出血の患者さんの治療は、最も頭を悩ませ、そして最も力を注ぐ対象の一つです。この病気は、私が脳神経外科医になったころ、3分の1が亡くなり、3分の1が社会復帰、残りの3分の1が何らかの後遺症を残すというものでした。現在でもおおよそこの数字は変わっていません。もちろん、治療法にはいろいろな工夫がみられ、それなりの進歩があるのですが、全体としての治療成績を大きくかえるまでには至っていません。それは、最初の出血が重篤すぎて、病院に着く前に亡くなってしまう、または手のつけられない状態に陥ってしまう患者さんが一定数出てしまうためです。
1回目の出血で重篤にならなかった患者さんのもっとも大きな問題は、再出血です。くも膜下出血は、再出血を繰り返すごとに脳のダメージが大きくなり、最終的に亡くなります。もうひとつの大きな問題は、くも膜下出血後に起こる脳血管攣縮(脳の動脈が収縮し、脳血流が足りなくなる)ですが、非常に難しい問題を含んでいます。

症状
くも膜下出血を起こしたときの症状は、「激しい頭痛」が「突然」出現することです。突然というのは、「急に」というよりも厳密な表現で、頭痛のピークが瞬時に訪れることを表しています。これは、「ちょっと前まで何ともなかったのに、バットで殴られたように痛くなった」などと表現されます。多くの人が、「何時何十分ごろ」 「○○をしていたとき」などのように、起こったときを特定できるような痛みです。くも膜下出血を起こしたときに、意識を失ったりけいれんを起こすことがありますので、このようなことが起こった後、目が覚めたときに激しい頭痛が残っていたら、くも膜下出血の疑いがあります。
脳内出血や脳梗塞では、半身の麻痺(力が入らない)や感覚障害(しびれなど)、言語障害などの症状が代表的です。くも膜下出血のときにもこのような症状が出ることはありますが、多くはありません。

診断
くも膜下出血の診断には、まずは脳CT検査を行います。脳梗塞の場合は、MRIのほうが鋭敏ですが、頭蓋内の急性出血の場合、MRIよりもCTのほうがはっきりわかります。したがって、突然起こった激しい頭痛の場合には、CTのとれる病院へいくのが一番です。出血から日数が経過して、CTではっきりしなくなった場合には、MRI検査を行います。
くも膜下出血がわかれば、次に出血源を探します。少し前までは、脳血管撮影といって、脳の動脈に造影剤を流してレントゲン撮影を行う方法が一般的でしたが、MRIの装置で脳血管を映し出す方法(MR angiography)、造影剤を点滴してCTで脳の血管を映し出す方法(CT angiography)でも動脈瘤などを見つけることができます。

治療
くも膜下出血の治療のまず第一に目指すところは、再出血の防止です。くも膜下出血の原因の多くが、脳動脈瘤です。その他には、脳動静脈奇形、もやもや病などがありますが、それほど多い疾患ではなく、また再出血の危険がそれほど高くないため、再出血の防止は治療の最優先とはなりません。原因不明のくも膜下出血も一定の割合でみられますが、これも再出血の危険はそれほど高くはありません。
最も多い原因であり、再出血の危険性の高い脳動脈瘤に対して、現在では大きく分けて2つの方法が考えられます。
1つは、動脈瘤に直接アプローチし、動脈瘤の血流を遮断するものです。これは、頭の骨を開けて手術用の顕微鏡を使い、慎重に動脈瘤の根元を遮断します。多くの場合、金属製のクリップを使い遮断するので、クリッピング術と呼んでいます。
もう1つは、動脈の中からアプローチして、動脈瘤の中を塞ぐものです。これは、足の付け根の大腿動脈から長い管(カテーテル)を脳動脈瘤の根元まで進め、プラチナ製のコイルを動脈瘤の中に何本も詰めていき、最終的に血流がはいっていかなくなるまで詰めます。コイル塞栓術と呼んでいます。
2つの方法にはそれぞれ長所短所があり、動脈瘤の場所、形などいろいろな条件を勘案し、どちらの方法を選ぶか決定されます。


ジャカルタでくも膜下出血になったら
それでは、ジャカルタでくも膜下出血が疑われるような「突然」の「激しい頭痛」があった場合、どうしたらいいでしょう。
まず、検査で必要なのはCTを撮影することです。JJC医療相談室のあるメディカロカを含め、一般の診療所にはCTの装置がありませんので、大きな総合病院で検査を受けることになります。くも膜下出血が確認されれば、脳神経外科医に紹介してもらい、すぐに入院します。脳血管の検査を行い、出血源を見つけます。動脈瘤が発見されれば、再出血を防ぐ治療を行います。これらは、ジャカルタの病院で可能です。脳動脈瘤以外が出血源である場合や出血源が不明の場合は、安静と血圧コントロールのために2週間入院します。もう一度出血源の検査を行い、その後の治療方針を決めますので、この時点で日本帰国での治療を考慮してもよいでしょう。
最近、ジャカルタ在住の日本人で、くも膜下出血を発症した患者さんがいました。脳動脈瘤に対してクリッピング手術を受け、後遺症なく退院されたのですが、退院した日に自分の足で歩いて医療相談室に挨拶に来られるほど、回復されていました。ジャカルタの病院でこれだけの治療ができるのです。この患者さんの場合、脳動脈瘤によるくも膜下出血がわかった時点で、日本に帰って治療するかどうか迷って相談にみえましたが、航空機搭乗による再出血の危険が大きく、ジャカルタでの治療を強く勧めました。

脳卒中や出血を伴う頭部外傷の急性期は、航空機搬送に適しません
もとより脳卒中急性期(2週間以内)は、航空機搭乗に適さない病態であり、航空会社から搭乗を認められません。仮に医師同乗で医療搬送を行うとしても、1回出血した脳動脈瘤は再出血を起こしやすく、航空機搬送による気圧の変化などのストレスで再出血を起こしやすいと考えられます。非常に危険な搬送となります。脳卒中以外にも、頭の中に出血を伴った頭部外傷の場合、気圧の低下から出血が増量する危険性が高く、航空機搬送は勧められません。医師が同乗していたとしても、航空機内で手術する訳にも行かず、ほとんど効果的な手は打てません。ジャカルタの病院に入院していても、もし必要になれば、すぐに適切な手術ができる技術があるのです。インドネシアの医療に対する不安感はあるとは思いますが、医療的に正しい判断がなされずに、やみくもに航空機搬送をすることは、危険も伴うことをご理解ください。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇健康診断について


この時期、健康診断(特に派遣後)について相談を受けるケースが多いので、今回は中国における健康診断について述べたいと思います。健康診断(中国語で“体検”)そのものは、ある程度の規模の病院であれば大抵どこの病院でも実施しています(値段は内容により様々ですが、大体、500人民元~2500人民元程度、日本円換算で約7500円~約45000円前後です)。一般の検査(血液検査、尿検査、胸部X線、心電図、便検査[潜血・寄生虫]、視力検査、聴力検査)以外に、上部消化管検査(バリウム・内視鏡)、超音波検査(腹部、心臓、乳腺、甲状腺など)、肺機能検査(肺活量など)、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、AFP、PSAなど)、糖負荷試験、各種ホルモン検査、骨密度検査、ピロリ菌検査、婦人科検診(子宮癌、乳癌)などを追加することが出来ます。
最近では、健診に特化した“健診センタ-”や保険会社が主体で実施している“会員制健康診断”なども有ります。これは大連に限らず、中国他都市でも同様かと思います)。

日本人が現地医療機関で健康診断を受ける場合に問題になるのは

ほとんどの病院で、検査結果が中国語表記である
測定単位、基準値が日本と異なるので、以前のデータとの比較が難しい(検査項目の半分位は単位が異なります)
③ (衛生面での心配は一切有りませんが)内視鏡検査(上部、下部)の際の使用器材[ファイバー径、材質等]・麻酔法[咽頭麻酔のみの場合有り]の違い、技術面[組織生検、内視鏡下ポリープ切除術等]・病理診断法の違いに加えて、言葉の問題等が有りますので注意が必要かと思われます。

当相談室でも1日当たり2~3人程度であれば何とか対応可能ですが、基本的には“一般の外来が主体”ですので、それ以上の人数の場合、スタッフ数の関係で残念ながら実施困難です(現在、受付1人、看護婦3人、医師1人の5人体制です)。上海や北京では状況は異なると思いますが、少なくとも、当地大連では(当相談室以外は)基本的に病院で交わされる言葉は(英語では無く)中国語が主体ですので、全ての検査において、日本語堪能なスタッフあるいは通訳が付かない限り、検査そのものが円滑・安全に行えない場合が有ります。

他施設で健診を受けたが、結果がよくわからない場合には、受診された健診結果を持って、日本人医師の診断を受けるというのが現実的かも知れません。言葉の問題に加えて、医師の説明が不十分であるため、せっかく健診を受けても結果が本人に還元されないケースも有るようです。

血液検査、尿検査 の“検査項目”についてですが-ほとんどの検査項目は当地にて実施可能ですが、例えば、ZTT、TTTという検査項目(いわゆる膠質反応と呼ばれるもので、肝炎・肝硬変・リウマチ等の自己免疫疾患、血液疾患の一部[多発性骨髄腫等]で上昇する場合が有ります)は単独では病的な意味づけが難しいため、当院では測定していません(最近は日本でもルーチンでは測らなくなってきていると思いますが-)。また、アレルギー検査(アレルゲン毎の“特異的IgE”測定や皮膚パッチテスト)等は一部の病院でしか測定出来ません(この理由として、当地においては現時点ではアレルギー疾患はそれほど多くないことが挙げられるかと思います)。また、マラリア検査(血液鏡検)については、当地においてはほとんど見られないため、感染症専門病院(大連市内)でないと実施出来ないようです。

大連以外の他都市(北京・上海)で、日本人が比較的利用し易い病院・診療所(日本人医師あるいは日本語・英語可能なスタッフがいる)としては北京の龍頭クリニック、ユナイテッドファミリー病院、VISTAクリニック、インターナショナルSOSクリニック、上海ではグリーンクリニック、浦東森茂診療所、ワールドリンク医療センターなどが有ります。

(補足)予防接種につきましては、外国人の場合は原則として、指定された施設でのみ実施可能です。どの予防接種が必要か-については、大人と子ども(年齢も考慮)、男性と女性、職種(交通機関、医療機関、飲食業、学校勤務など)、駐在場所(都市部・農村)、期間(3ヶ月以上かどうか)により優先順位が変わってきます。各個人によりリスクが異なりますので、一般論を述べるのは難しいと思います。従いまして、個別に御相談頂いた方が宜しいかと思います。また、ワクチン自体あるいは接種方法の差異(接種回数・時期・間隔、同時接種の可否等)、万が一、接種後副作用が出現した場合の救済措置(法的措置)等の問題が有りますので、充分な説明を受けた上で接種された方が良いと思われます。

当地にて接種可能なワクチン:A型肝炎、B型肝炎、狂犬病(暴露前、暴露後)、ポリオ、3種混合DPT(ジフテリア、破傷風、百日咳)、日本脳炎、流行性脳炎*、MMRワクチン*(麻疹、風疹、流行性耳下腺炎)、水痘、インフルエンザ等。
(*)日本には無いワクチン