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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07120101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇シンガポールでの出産

先々月KK women's and children's Hospitalの小児救急についてのお話をしました。ここはその名の通り、小児科のみならず、産婦人科もあります。この病院の産科部門は大変大きくシンガポールで最大ですし、ひとつの施設の年間出産件数としてかつて世界最多を記録したこともあります。1966年に39,835件を記録し、この記録は世界記録としてギネスブックにのり、その後10年間破られませんでした。この年はシンガポール人の85%がこの施設で生まれたことになるそうです。

しかしながら、在留日本人の出産はこの施設ではあまり多くはないようです。それは在留邦人は、英語などコミュニケーションの問題が大きいため、多くは私立の病院で、日本語が通じる施設を利用しているからのようです。
シンガポールの在留邦人数は2万5千人から3万人に近いとされています。多くは企業の海外赴任者とその帯同家族ということになります。赴任者の方の多くは男性ですが、30代の方、40代の方が多くを占めますので、小さいお子さんをお持ちの方も多く、当然、奥様が出産する方も見受けられます。日本人のお子さんは毎年300人程度生まれているようです。

日本語が通じるといっても施設によって少し異なります。日本人の保健師、通訳がいる施設、日本語が上手に話せる医師がいる施設の他、2年ほど前からは女性の日本人の産婦人科医が常駐している施設もあります。

料金設定は他のシンガポールの産科専門クリニックと同様に妊婦検診と分娩までをパッケージにしたセット料金としている施設が多いようです。施設によって多少違いが見られますので確認していただいたらよいでしょう。
自然分娩、無痛分娩、計画分娩や母親学級を開いている施設もあるなど妊婦さんの様々なニーズに対応しています。また、不妊治療も行っています。

シンガポールは新生児死亡率も0.2%と世界で最も良好な水準にあります。少なくとも、子供を生む施設がなくて困るというような事態はありません。出産環境としては、かなり、安心できる状況であると言えると思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇乳幼児の下痢

フィリピンに住んでいると、下痢は日常的につきあっていかねばならない身近なものとなります。WHO(世界保健機関)は下痢を「1日3回以上の軟便や水様便、もしくは個々の通常の便回数を明らかに超える状態」と定義しています。

一般的には、途上国での主な下痢の原因として、疲労やストレスからくる胃腸障害、水質や飲食物の違いによる一過性の胃腸障害、ウイルスや細菌、寄生虫感染による病的なものなどがあげられます。

特に乳幼児では、感染による病的な下痢は問題です。不衛生な食物や飲料水からの感染、衛生管理が行き届かない中で手指などを介して人から人へも感染します。免疫力がなく、栄養状態がよくない乳幼児は脱水から死に至ることもまれではありません。アジアでは、下痢によって死亡する人の90%は5才未満と報告されています。

先日、地元新聞では、フィリピンを含み、世界中で毎年180万人以上の子供達が下痢で亡くなっていること、その多くは下水設備や手洗いなど衛生管理を徹底させ、飲料水の浄化などで30~40%は防げるものだとし、予防教育・啓蒙を呼びかけていました。また世界では26億人分のトイレがなく、そのことも一因とし、国連が2015年までにその半数へのトイレの供給を計画していることなどが書かれていました。

フィリピンでは五歳未満の死亡数は33/1000人(日本は4/1000人)。1歳未満の死因では1位.周産期障害 2位.肺炎 3位.出産時の感染症 4位.先天奇形等に次いで、下痢は第5位。1~4歳では死因の1位.肺炎2位.不慮の事故に次いで下痢が3位。5~9歳でも下痢は死因の第5位といずれも上位を占めています。日本では1~9歳では現在死因の1位が不慮の事故、それに次いで先天奇形、悪性新生物が上位となっています。現在のフィリピンは日本の1960年代の乳幼児死因統計と類似しています。

先日フィリピン在住の1歳になる日本人のお子様が、何処から不衛生なものが混入したのか、急に10分毎に吐き始めました。1時間もたたないうちに、突然ぐったりとして元気がなくなり意識がもうろうとしてきました。吐くものもなくなり、胃液と胆汁が混入した黄色い液を吐き始めました。患児につきそい救急外来を受診し、「急性感染性胃腸炎」の診断で経口補液を試みるも、飲んでもすぐに吐いてしまい、小児科医の判断で点滴を開始しました。脱水改善の目的で急速輸液を開始してから30分もたたないうちに、手足をバタバタ動かし、元気に笑いはじめました。

時にフィリピンで起こる重篤な嘔吐・下痢による脱水症は、ミルクなどの飲み物が中心の乳児にとっては致命的です。今回点滴による水分補給のみで、みるみる元気になり、数時間後に食事が摂れるようになる光景を目の当たりにし、下痢を予防することの重要性、乳児の脱水はとても危険であることをあらためて認識しました。

下痢や嘔吐がある場合の水分補給は最も重要です。近年、経口補液剤(ORS: 電解質の計算された錠剤や粉を水に溶かして飲むもの)の普及もあり、フィリピンでも簡単に薬局で購入し利用できます。しかし経口補液で効果がない場合、医療機関を受診することは、郊外や離島に住む場合は容易ではありません。また現地の人にとっては、高額である点滴治療が受けられない場合もあります。したがって、下痢による死亡が、基本的な手洗いや、食べ物は十分に加熱することなどで多くが予防できるのであれば、日常生活でできることを、さっそく実行したいものです。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇世界中で増加する肥満人口

1960年代には、世界の人口の爆発的な増加とそれに伴う食料不足が危惧され、21世紀は食料危機の時代と予測されていました。幸いにもその予測ははずれ、農業生産は世界人口を十分に養える水準を保っています。それでも政治的問題や自然災害、貧困などのために、食料不足に陥っている人々は、約8億人いるといわれています。飢餓も大きな問題ですが、それを上回る13億人の人々が栄養過多による肥満の状態にあるという統計が出ています。
肥満について、最近は医学的立場から「メタボリックシンドローム」という概念が提唱されているように、健康上よくないものと定義されています。それに対して、「少し太めのほうが長生き」などというデータが発表されたりして、困惑してしまいますね。この真偽はさておきまして、人類に肥満が増えていることは、厳然たる事実です。今回は「ヒトはなぜ太るか」についての話としましょう。

転ばぬ先の杖-脂肪
20世紀半ばまでは、「いつ食べられなくなるかわからなくなる」という不安はいつもついてまわりました。冒頭に述べたように、そのまま進めば21世紀は食料危機の時代と予測されていた訳です。それが、農業の飛躍的な進歩(緑の革命)によって、農業生産量は世界人口を十分カバーできるようになっています。多くの人たちが、「食べようと思えばいつでも食べることができる」状況にあります。

一方、「いつ食べられなくなるかわからなくなる」という不安は、原始の時代からずっと動物が持っていたものでしょう。食べ物は「食べられるときに食べておく」ものであり、「よぶんに摂った食べ物(エネルギー)は何らかの形で蓄えておき、飢餓のときに役に立てる」ということが、まさに生き延びていくために必要な機能でした。エネルギーを身体に蓄えておくかたちとして、もっとも効率的なものが脂肪です(脂肪1gは9kcal、ブドウ糖1gは4kcal)。よぶんに摂った食べ物のエネルギーは、トリグリセリド(中性脂肪)に変換されて脂肪細胞のなかに蓄えられます。食べることができずに、血糖値が上がらずインスリン分泌が低下すると、脂肪細胞から動員されたトリグリセリドが分解されて、遊離脂肪酸とグリセロールができ、それらがエネルギーとなるのです。身体に蓄えた脂肪のおかげで、飢餓状態でも数ヶ月生き延びることができるといわれています。
つまりヒトに備わった生き延びるための機能が、余分なエネルギーを脂肪として蓄え、肥満につながるのです。

必要なエネルギー
「余分なエネルギー」とは、摂ったエネルギーと消費したエネルギーの差です。単純ですが、その差によって「太る」「やせる」が決まっていくのです。動物が生きていくためには、その細胞が生きていくためのエネルギーが必要ですし、心臓を動かしたり、呼吸をしたりするためにも必要です。このように目覚めている状態で生命を維持する(脳、心臓、呼吸、腎臓、肝臓の働き、体温や筋緊張の維持など)ために必要な最小限のエネルギー消費量のことを基礎代謝量といいます。このうち約1/3は脳、心臓などの諸臓器の活動に、2/3が筋肉その他の組織の活動および体温維持などに使われます。
基礎代謝量は、風土、人種、性別、年齢、体格などによって異なりますが、同性・同年齢ならば、その体表面積に比例することが知られています。ちなみに食物を消化吸収するのにもエネルギーを必要としています。運動も何もしないでねていても、20歳代では、1日おおよそ1500kcalは必要なのですが、50歳代で1300kcal、70歳代で1200kcalと落ちてきます。そのうえに身体を動かすためのエネルギーが必要になりますが、その活動性によってエネルギーの必要量は違います。 成人男性の1日の消費カロリーは、中程度の身体活動をしているひとで、約2600kcalといわれていますが、デスクワーク中心の人では、もう少し少なくなります。

日本での病院の標準食は、1日2100kcalに設定されています。若い人には物足りない量ですが、あまり身体を動かさない人には、適当な量なのでしょう。
最近では、子どもの肥満も問題にはなっていますが、一般的に子どもの肥満は少ないものです。その理由は、消費エネルギーにあります。6歳で約1000kcal、15歳で約1600kcalの基礎代謝量がありますので、おとなと同じように食べていても過剰なエネルギーとはなりにくいためです。からだの大きさに比べて基礎代謝量が高い理由は、成長に必要なエネルギーと解釈できます。大きくなるために新しい組織をつくっていくためにエネルギーが必要なのです。

太りやすい状況
20歳を越えてだんだん年齢が上がってくると、身体が必要としているエネルギーは減ってきています。まず基礎代謝量が減っていますが、さらに(個人差がありますが)活動による消費エネルギー量が減ってきます。その状況で若いときと同じように食べていては、太るのは当然の結果だといえるでしょう。

そして、便利な生活の恩恵にあずかっている現代では、日常生活でのエネルギー消費がさらに減っていること(歩いたり重いものを運ぶ機会の減少)と、いつでも食べられる高エネルギー食品(ジャンクフードや加糖飲料など)の存在が、「世界の肥満人口が増え続けている」という現象を生んでいます。消費エネルギーは少なくなっているのに、高エネルギーの食品を摂りやすい環境にさらされているのです。

「甘いもの」「脂もの」はなぜおいしい
高エネルギー食品を食べなければいいのですが、なぜか、このような食品は「おいしく」感じ、手が出てしまいやすいものが多いのです。もちろん個人差はありますので、脂っこいものや甘いものが嫌いだというひともいます。それでも多くの人にとって、「おいしい」ものであることは事実です。この理由は、やはり大昔に原因があるようです。

食べ物が不足していた時代には、高エネルギーの食べ物がエネルギー蓄積に有利なため、この種の食べ物を食べることが生き残りにも有利だった訳です。そういう行動を起こさせるために、脳のなかで「高エネルギー食品を食べる」ことが「喜び」「快楽」(=おいしい)という感覚を生むようになっているのです。このとき、脳の中では、線条体という領域で、"ドーパミン"という物質が増えています。ここでもまた、動物が生きていくために必要だった機能が、現代人にとっては肥満を生む原因のひとつになっているのです。

さて、食事が終わって「満腹でもう食べられない」と思ってもデザートが出たら…、「デザートは"別腹"」とよくいいますね。このとき、膨らんだ胃からの信号、血糖値が上がっているという信号、腸から分泌されるホルモンの信号などを脳が受け取り、満腹だと感じ取っています。そこにデザートが登場すると、いかにも「おいしそうな」(経験からわかっています)ものを感じ取り、脳のなかでドーパミンが増えます。それがもう一回「食べたい」と思わせるのです。

太らないために
動物は、生存に必要な機能を獲得して進化してきました。肥満が生存にとって不利ならば、肥満を防ぐようなしくみを備えるようになるのかもしれません。しかし、それは何世代も、もっともっとさらに先の世代の人類に備わるものでしょう。

現代に生きる私たちは、自然に「太りやすい」という環境に置かれています。ジャカルタ在住の皆さんは、自由に歩けない環境での運動不足や油もの中心の料理といったような、さらに不利な条件下にいます。運動を継続的に行える人は別ですが、太らないためには、食事のカロリーを抑えることが最重要です。普段の生活で、ちょっと気にかけてみて下さい。定期健康診断での、コレステロールや糖尿病などのチェックもお忘れなく。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇“機能性身体症候群”について

最近注目されている疾患の一つとして“機能性身体症候群”という疾患が有ります。 
血液検査、内視鏡検査、各種画像検査など、種々の検査を行っても、“器質的な病変”(=“異常”)が見つからないにも関わらず、“明確な症状が有る場合”に、この疾患名が用いられます。

この疾患の代表的な症状は、(原因のわからない)①種々の部位の疼痛(腹痛、胸痛など)、②各臓器の機能障害(消化器系、生殖器系など)、③倦怠感や疲労感などの全身症状です。
代表的な疾患として、機能性胃腸障害、過敏性腸症候群などの消化器疾患が有ります。この他に、月経前症候群、慢性疲労症候群、(原因不明の)頭痛・胸痛・眩暈(めまい)・耳鳴りなどが有ります。

このうち、“機能性胃腸障害”は別名“機能性ディスペプシア(胃弱症)”とも呼ばれ、内視鏡検査などで異常が見つからないにも関わらず、明確な症状(胸焼けがする、お腹がもたれるなど)を認めるものを指します。

一方、“過敏性腸症候群”はIBS (Irritable Bowel Syndrome)とも呼ばれています。この病気は、かつては、“下痢と便秘が交互に起きることが多い”ことから“交代性便通異常症alternate stool abnormality”と呼ばれていました。しかし、最近では“便秘と下痢が比較的規則正しく交代しているもの”は約半数程度で、残りは“便秘型IBS”、“下痢型IBS”であることがわかっています。IBSは、大腸を中心とした“消化管運動機能の異常”によって引き起こされる疾患の一つで、“下痢、便秘などの便通異常”以外に、“腹痛・腹部膨満感など”の“腹部不定愁訴”を認めます。

“消化管運動機能の異常”というのは、病気の原因となる“器質的病変(癌や潰瘍など)”が見つからないにも関わらず、明確な症状を認める状態をいいます。実際の医療現場、特に西洋医学においては、①“器質的な病気”の発見に注意が奪われやすい、②“機能性疾患”には、確立された治療体系が無い場合が多いなどの理由で、“症状に対する治療”、つまり“対症療法”に終始してしまうことが多いかも知れません。

これに対して、漢方治療に代表される“東洋医学”では“心身一如”という考え方が有ります。これは、“心”つまり、“いろいろな精神活動や感情”は、“肉体の機能”と密接な関係があるという考え方です。例えば“失恋が原因で胃潰瘍になる場合”もあれば、“怒ってばかりいると、体調が悪くなる場合”もあるでしょう。今日のいわゆる“心身医学”はこのような考え方から発展してきた学問であると言えます。

“機能性身体症候群”の治療は、いわゆる“対症療法”だけではなく、ストレスを溜めずに上手く発散するなどの“心理療法”や、精神安定剤や抗うつ薬などを用いるなどの心身医学的なアプローチも有効であると考えられています。