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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07090101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇臓器移植~マレー系市民も

シンガポール政府は1987年にHOTA( Human Organ Transplant Act)という法律を作りました。その後のいくつかの改定を経て、2004年1月からはイスラム教徒以外のシンガポール市民、永住権取得者で21歳から60歳の方は死亡したら自動的に、臓器提供者候補者になるということになりました。(註:もちろん、感染、死因など様々な制約があり実際には全ての死者から臓器が提供できるわけではありません。)提供臓器は腎臓、肝臓、心臓、角膜です。臓器提供をしたくない場合は、生前に、特別な書類を出さなくてはなりません。

宗教上の理由から、イスラム教徒(マレー系市民の大半)はこの法律の外にあったわけですが、この法律が改訂になる方向で検討が進められています。

理由としてあげられているのは、人口の14%にしか過ぎないマレー系市民(ほとんどはイスラム教徒)が、シンガポールで慢性腎不全で亡くなられる人のうちの22%を占め、腎移植のウエイティングリストに載っている人のうち、21%がマレー系市民となっていることです。人口比率からして大きい数字です。また、慢性腎不全の原因の約60%は糖尿病ですが、2004年の調査ではマレー系市民のうち、11%が糖尿病にかかっています。これも人口の76%を占める中華系の7%に対して多いことが指摘されています。(ちなみにインド系市民では15%です。)

マレー系市民からも臓器移植が可能になることにより、計算上、1年に提供できる臓器が例えば腎臓なら10個増えることになるそうです。マレー系市民にとっては宗教上は厳しい選択ですが、実際に臓器移植を必要とする人が多く、将来も増える見込みであることを考えると受け入れざるを得ないように思われます。この調査、検討は8月末から始まっており、10月初めまで行なわれますが、マレー系市民もHOTAに組み入れられるのはまず間違いないでしょう。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇解熱剤の使い方

多くの感染症では発熱を伴います。病気と発熱は強い関連があり、臨床現場では発熱は最も多い症状のひとつです。一般的に正常体温は36.5度前後が最も多く、37.5度以上で発熱、38.5度以上で高熱と判断されます。発熱は体内に侵入した細菌やウイルスの増殖を抑えたり、体の免疫系の活性化を促すといった働きが考えられています。
 
解熱剤で小児から大人まで比較的安全に広く使用されているのが、アセトアミノフェン(パラセタモール)です。日本では解熱剤の使用はたいてい38.5度以上の高熱時か、それ以下でも身体が非常につらい時のみ頓服で使用されています。ところが、ここフィリピンの医師らは解熱剤を使用するときに、「37.8度を超えたら4時間おきに飲んでください」といいます。大人に対してもしばしば同様の方法で処方されます。
 
日本からフィリピンに赴任してきたばかりのお子様をもつお母さんたちは、しばしばこの解熱剤の使用法の違いに混乱します。時々大人でも、医師から言われたとおりに4時間おきに解熱剤を内服し続け、胃を痛める人もいます。また4時間おきに大量に発汗して熱が下がるため、お子様の中にはそのぶんの水分補給が追いつかず、脱水症状を助長してしまうこともあります。

赴任当初私も疑問に思い、当地の医師に質問してみたところ「ガイドラインに書いてあるから」という回答でした。確かにパラセタモールの内服方法をみると、4時間おきと書いてあります。しかし、どこを探しても37.8度以上という基準は書いていないようです。
 
さらに興味深いことに、先日ドイツからフィリピンに赴任してきた日本人のお母さんが「ドイツでは、子供が熱をだしても40度を超えないと、医者は発熱のうちにはいらないと、解熱剤もくれなかったわ」という言葉をきき、なるほどと思いました。これはもしかしたら、フィリピンのみならず各国で解熱剤の使用法は異なるのではないかと思ったからです。
 
そこで、日本の解熱剤の内服説明書をみてみましたが、結局“38.5度以上で飲みましょう”とはっきりとは書いてありませんでした。つまり解熱剤は何度で飲まなければならないのかという一定の基準がないことがわかりました。日本での解熱剤使用法しか知らなかった私にとって、このことは非常に興味深い事柄でした。
 
フィリピンでは、邦人のあいだでもデング熱や腸チフスなどの感染症で尋常ではない高熱が襲ってくることが稀ではありません。高熱に加え、全身の関節痛やひどい頭痛が伴うこともあります。また食欲も高熱が持続すると極端に落ちます。このような状況下では解熱剤ではなかなか熱が下がりませんが、それでも解熱剤には鎮痛作用もあることから、飲んで効果が持続する数時間は身体が少しは楽になるようです。

このように現在も乳幼児の感染症による死亡率が高いフィリピンでは、熱を少しでも下げることが身体のつらさから開放されるというような経験をもつ長い歴史から、解熱剤の使用が低めに設定されているのかもしれないと最近は思うようになりました。
 
フィリピンに赴任した当初は、解熱剤の使用法の日本との大きな違いに私も戸惑いました。しかし現在は、重篤な感染症の発熱は別として、フィリピン人医師からだされた解熱剤の処方箋をもって困っているお母さんには「日本では、このように使いますが、フィリピンではこのような背景があり、基準が異なるようです。しかし、基本的には38.5度以上か、そこまでいかなくとも、頭痛や関節痛など体がつらい時には使っていいと思います」と説明することにしています。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇熱について

インドネシアで熱が出る病気といえば、デング熱、腸チフス、A型肝炎、マラリアなどがあげられますが、ほかにもいろいろなウィルスや細菌などによる感染症があります。高熱が出れば心配し、熱が下がると一安心することはしばしばあります。熱が出ているとき、からだの中では何が起こっているのでしょう。今回は、熱についての話とします。

発熱は有害か?
感染症による発熱は生体防御メカニズムのひとつであり、体の免疫システムを活性化させます。病原体を認識すると、そこに白血球が集まり、白血球から様々な生体伝達物質(伝令のようなもの)がでます。この伝達物質が脳の発熱中枢に届くと、体温のセットポイント(目標温度)が上がります。脳は体の各部に指令を出し、筋肉をふるわせ(ふるえ)、手足の血管を収縮させ(手足が冷たくなる)体の中に熱をつくり貯めようとします。そして、体温が上がっていきます。細菌やウイルスは体温が上昇すると増殖する速度が鈍るとされています。また生体が細菌などと戦うには体温が高い方が目的にかなっていますし、白血球の細菌を食べる力も高まります。つまり、外部から侵入した病原体に対して戦いやすいような状況(高体温)をわざわざつくっている訳です。したがって、発熱は有害ではなく、生体防御反応として理にかなった有益なものなのです。

感染症の発熱は脳障害を起こすか?
高熱が続くと脳がどうかなってしまうのではないか、という疑問は誰しもがもつものでしょう。また、「高熱が続いて後遺症が残った」という話も耳にしたことがあるでしょう。しかし、この「感染症の発熱は脳障害を起こすか」という疑問の答えは、「ノー」です。42℃を越えると脳障害の可能性が出てきますが、普通の感染などによる発熱では体温は41.5℃を越えることはありません。それは脳の中で安全弁として熱を下げる物質(解熱性ペプタイド)を放出することで、それ以上の体温の上昇を抑えているからです。感染症による発熱は、このようにコントロールされた発熱ですが、コントロールされない発熱があります。それは、熱中症によるもの、外傷などにより脳の障害がすでに起こっているものです。この場合は、体温が42℃を越えることがあります。このようなときには、脳障害が起こりえます。また、脳炎のように脳そのものに病原体が入り込んでいる場合には、熱の高さに関係なく、病原体による直接の障害で脳の後遺症が出る場合があります。この場合も、熱が高いために後遺症が出る訳ではないのです。

熱が高いほど重症か?
大人の場合は、高熱になればぐったりしてしまう場合がおおいので、そういう意味では熱が高いほど重症というのは外れてはいませんが、医学的には、 熱の高さと重症度には必ずしも相関関係はありません。子どもの場合、かなり高い熱が出ていても、わりと平気な顔で遊んでいる場合もみられます。その場合には、「高熱だから重症」とはいえません。熱が高い低いではなく、あくまでも、全身状態が重症度を反映します。
感染症の熱は下げなければならないか?
ここまで書きますと、すでに答えはわかっていますね。生体防御反応として起こっている発熱は、下げる必要がありません。熱を下げることによって、病気が治る訳ではありません。病気が早く治る訳でもなく、もしかすると治るのを遅くさせているかもしれないのです。

解熱剤は使ってはいけないのか?
世の中には、いっぱい解熱剤が出回っていて、JJC医療相談室でも解熱剤を処方しています。「下げる必要のない熱」に対して解熱剤を処方するのは、解熱剤にもそれなりのメリットがあるからです。しかし、熱が下がれば病気が治ったというわけではなく、熱を下げることそのものが治療の目的ではないのです。解熱剤を使うときのポイントをお話しします。
いままで、有益で非の打ち所もないように説明した発熱にも、デメリットはあります。感染症と闘うために必要なものとはいえ、熱が高ければそれだけ体力を消耗し、体全体の抵抗力が落ちてしまう可能性もあります。 解熱剤を使う意味はそこにあります。特に子どもが高熱でつらそうだったり、ぐったりしていれば、解熱剤を使ってあげてよいでしょう。逆に、高熱でも比較的元気にしていれば、防御反応である熱を解熱剤で下げる必要はありません。発熱自体は怖いものではありません。大事なのは、熱の高さよりも、子どもの全身状態です。高熱だが活気があってご機嫌の場合より、微熱だがグッタリして不機嫌な場合のほうが重症です。大人の場合は、本人次第でしょう。熱が出て、全身が痛かったりだるかったり、ぐったりしてしまっているときは、解熱剤を考慮してよいでしょう。解熱剤で熱を下げても安静が重要です。無理して仕事をする人もいるでしょうが、あくまでも自己責任で服用してください。

使っていい解熱剤と使ってはいけない解熱剤がある?
解熱剤には、アスピリン、インドメタシン、メフェナム酸、スルピリン、ジクロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどがありますが、現在小児に使用してよいとされる解熱剤は、アセトアミノフェンとイブプロフェンのみです。これ以外の解熱剤は、小児に対していろいろな悪影響が指摘されていますので、使用してはいけません。大人の場合は、症状に応じていろいろな薬を使用可能ですが、インドネシアでは熱が出たときには、デング熱の可能性がありますので、アスピリンを使用してはいけません。アスピリンは、デング熱のときに血小板減少を悪化させ、デング出血熱になりやすくなるといわれています。大人もアセトアミノフェンを使用するのが無難です。
解熱剤としては、大人も子どももアセトアミノフェンを使うのがよいでしょう。インドネシアでは、パナドール、テンプラなどがあります。

解熱剤は飲み薬より坐薬の方が早く効く?
一般的には、このようなイメージがありますが、実際に血液中の濃度を測定したデータをみますと、吸収のスピードには差はありません。また、血液中の最高濃度にも、差がありません。ということは、飲み薬も坐薬も効果にかわりはないのです。したがって、薬をのむことが難しいときに、坐薬を選択するのがよいでしょう。また、熱性けいれんを予防するためにけいれん止めの坐薬を使用する場合、解熱剤の坐薬と一緒に使用すると、けいれん止めの薬の効果が弱くなります。先にけいれん止めの坐薬を挿入し、30分後に解熱剤の坐薬を挿入してください。

点滴をすると熱が下がる?
点滴と熱には関連がなく、点滴によって熱が下がることはありません。点滴をして効果があるのは、体内の水分が足りなくなっている状態のときです。高熱が続いてからだの代謝が亢進しているいるとき、からだからの水分の蒸発が多くなっているとき、そのような状態で水分の補給がままならないときは、脱水症になっていることが考えられます。そんなときに水分補給をおこなうと、からだは楽になります。水分補給の方法は、水を飲めばいいのですが、スポーツ飲料が飲みやすければ、それがよいでしょうし、ジュースやお茶がよければ、それがよいでしょう。点滴は、あくまでも脱水症状が強くて、口からの水分補給ができないときのためです。脱水症状があまりひどくないときに点滴をしても、効果がないばかりか、小児や高齢者、心臓病や腎臓病を持っている人には、かえって危険な場合もありますので、やたら点滴をすればよいというものではありません。

子どもが熱を出しているとき
発熱のはじめは、寒気やふるえがあり手足が冷たくなります。このときは衣服などを多くして暖めてあげて下さい。しばらくして一定の温度に達すると手足が暖かくなります。この温度で体温調節が行われますので、厚着をしていると熱の放散を妨げますので普通の衣服の状態に戻します。体も熱く感じますので水分の補給や冷えたタオルで頭を冷やしてあげます。でも子どもが嫌がる時には無理に冷やさなくてもいいのです。外から体を冷やしても、体温のセットポイントが高くなっている限り、体温が下がることはありません。冷やす目的は、「気持ちよくしてあげるため」と割り切りましょう。体を「冷やすか、暖めるか」は、本人が快適なようにしてあげるのが基本です。つまり、「寒ければ暖める」「暑ければ涼しく」としてください。入浴やシャワーも、本人次第といったところです。 「食欲はなくて当たり前」ぐらいに考えて、子どもの好きなもの、食べやすいものを少しずつ摂らせましょう。
解熱剤は、38℃以上でしんどそうにしている時に使いますが、40℃以上あっても元気にしている時は使わなくてもいいのです。ですから、「体温が何℃以上になったら解熱剤」といったような、決まりきった数字はありません。解熱剤で熱がさがっても、病気が治った訳ではなく、あくまでも一時しのぎです。熱が下がって楽そうにしているときに、水分などを補給してあげましょう。解熱剤は6時間以上たてば使ってもいいのですが、昼間はできるだけ2回までにしておきましょう。夜につらくて眠れないようなときのために、もう1回分をとっておきましょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇インフルエンザに関して

秋後半から冬後半にかけては“インフルエンザ”が流行する季節です。そこで、今回はインフルエンザについて述べたいと思います。
“インフルエンザ”は、突然の発熱(一般に38 度以上のことが多い)、咽頭痛、咳などの呼吸器症状で始まり、いわゆる“普通のかぜ”と比較すると、“全身倦怠感、関節痛、食欲不振などの全身症状”が強いという特徴があります。
大連市内の病院では、(現時点では)日本の医療機関にある“インフルエンザ迅速診断キット(鼻腔粘液のウィルスの有無を調べる)“や“インフルエンザ治療薬”が入手困難であることを考えると、“ワクチンによる予防”が重要になります。

“定期接種(全員接種することが望ましい)”の対象はいわゆる“ハイリスク者”であり、具体的には
①65歳以上の高齢者
②60歳以上65歳未満で、一定程度以上の心臓、腎臓もしくは呼吸器機能障害、(ヒト免疫不全ウィルス[エイズ]による)免疫機能障害を有する者などです。

“任意接種(希望者かつ同意が得られた場合のみ接種)”の対象は
①感染の機会が多い保育所、幼稚園、小学校、中学校、高校生、特に受験期の者、あるいは“基礎疾患”のある小児
②医療従事者、高齢施設の職員、声楽家など、職業上、インフルエンザに罹ると困る者
③インフルエンザの被害を受け易い“慢性疾患”を有する者
④妊婦(ただし、流行シーズンに入ってしまってからの接種は避ける)などです。

現行のワクチンは妊娠のいずれの時期でも安全と考えられていますが、第1三半期以前(妊娠14週以前)は自然流産の偶発を避けるためにも、避けた方が良いと考える専門家もいます。一方、母乳を与えている授乳児には安全であることが知られています。
なお、3歳未満の小児には、乳児院などで集団生活をしている者でない限り、一般には、勧められていません(安全性のデータが少ないことから、医師に個別に相談する必要があります)。従いまして、予防接種による“予防”よりは、むしろ“早期診断、早期治療”が重要になります。
接種後の副作用については、“局所の腫脹や発赤”などが見られることがある以外には、“発熱、頭痛などの全身反応”は極めて少ないことが知られています。“鶏アレルギ-”の副作用の報告例も有りますが、実際にはきわめて稀です。神経系合併症では脳炎などの報告例はありますが、接種との因果関係は未だ明らかにされていません。

“接種不適当者”としては
①接種当日明らかな発熱(通常は37.5 度上)を有する者
②“重症な急性疾患”に罹っていることが明らかな者
③過去にインフルエンザ接種液の成分(鶏卵成分、ゼラチン、防腐剤、抗生物質などの添加物)によって全身性発疹や高度の発熱などの“激しいアレルギー反応”を呈したことがある者などが挙げられます。

“接種要注意者”としては
①高度の基礎疾患(心血管系疾患、腎臓疾患、血液疾患および発育障害など)を有する者
②過去にけいれんの既往のある者(特に最近、けいれんを起こした者)
③過去に免疫不全の診断がなされた者などが挙げられます。

ワクチンを接種した場合には“罹患した場合でも合併症(肺炎や脳炎など)の発生率が低下する”ことが知られていますが、他のウィルスによるいわゆる“かぜ”の予防には無効です。
また、インフルエンザワクチンの効果が出る(十分量の抗体が出来る)までに3-4 週間かかること、接種の効果持続期間は4-5ヵ月程度であることから、出来れば11月中旬までに接種するのが望ましいと考えられます。