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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07080101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会クリニック
日暮 浩実

◇結核

かつてのシンガポールは結核の高蔓延国でした。独立前の1960年の人口10万人あたりの患者発生数は307人と記録されています。(2003年の統計で世界最多の国はジンバブエで600人を越えています)、その後、公衆衛生、治療法の確立などで20年前の1987年には56人まで減少しました。さらにその後10年ほどは55人程度で横ばいでしたが、1998年ごろから再び減少に転じ、2005年には37人、昨年は34.8人にまで減少しました。ちなみに現在の日本は25人程度となっていますが、欧米の先進諸国に比べたらこれでもまだ、数倍の高さです。

年齢別では高齢者ほど感染者が多く、80歳以上の感染者の割合は人口10万人当たり370人となっています。新規の患者さんの55%は50歳以上、また、性別では68%は男性でした。シンガポールの人種構成は中国系、マレー系、インド系の3つが主たるものですが、結核患者さんの発生はマレー系が人口10万人あたり、50.4人で最も多く、次は中国系の33.0人、インド系は23.8人となっています。マレー系の一世帯あたりの平均収入は中国系の6割以下ですので、こうした経済的格差が発生率の違いに関係しているのかも知れません。

シンガポール在住の外国籍の患者さんは新規発症の患者さんのうち15~20%を占めます。人口比と同様ですので、特に外国人に多いというわけではありません。
シンガポール在住の日本人の方の中からも少数ですが、患者さんの発生があります。長引く咳、だるさ、微熱などが主たる初期症状ですが、症状は人によってまちまちです。中にはなんらの自覚症状もなく、健診で見つかる方もいます。当院でも過去1年に、症状のある例のほかに、健診発見の例がありました。

結核はきちんと治療すれば多くの場合、薬で治すことが出来ます。しかしながら、治療、発見が遅れれば、病気が治りにくくなるばかりか、周囲に広めることになります。
何らかの自覚症状がありましたら、速やかに医療機関を受診してください。また、年に1回は必ず、健診を受けるようにしましょう。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇フィリピンで検査

先日、日本の医療に関連する記事を読みました。先進国の中では人口千人あたりの医師数が30カ国中27位である一方、一年間に医師の診察を受ける回数は先進国28カ国中最多というものでした。また高額な医療機器(CTやMRI検査)の数が飛びぬけて多いのも日本の特徴とのことでした。

今回はフィリピンの病院で検査を受けるにあたり、日本と大きく異なる点を御紹介します。
高額な医療検査はフィリピンでも当然高額です。一回にかかる検査費用は種類にもよりますが、日本と同額、もしくはそれ以上かかることもあります。
 
日本では全医療費の数割の自己負担となりますが、フィリピンでは大抵全額負担となります。(ただし、邦人が医療を受ける場合は海外旅行傷害保険や日本の健康保険を利用することもできるためこのかぎりではありません。フィリピン国内任意健康保険の場合は一部保険会社が負担することもありますが負担率が低いことが多いです)

フィリピンで全額負担となりますと、家族によっては一回の検査で数カ月分の生活費に相当し、借金が必要になる場合もあります。そして、支払いができなかった場合、大きく日本と異なるのは、病院が責任を負うわけではなく、医師個人が責任を問われるということです。つまり時には医師がその治療、検査費を負担しなければならなくなるケースがあるのです。
 
このような理由より、必然的に、患者さんと医師が会話をする中で、検査や治療にかかる費用の説明が必ず加わることになります。これが私が日本と最も違うと思う点です。医療の検査や治療はこの費用の議論なしではなかなかすすみません。自然に医師は検査にかかる費用を把握し、患者さんがどのような検査と治療を望むのかを考えながら、一般的には必要最低限の検査の中での治療方針を模索していきます。
 
日本の病院では、病気の診断、治療のためにはもちろん様々な検査が必要でありますが、患者さんとのやりとりの中で検査の必要性に関する説明同意は得るものの、「この検査はいくらかかるのでやりますか、やりませんか?」という内容の説明同意はほとんどなかったと記憶しています。

この違いはフィリピン滞在3年目となり、私が医療現場でいつも感じることです。医療の進歩のためには様々な検査や最先端の治療はとても重要なことです。まったく違う環境の中で、このような違いの良し悪しを比較することなど到底できませんが、おそらく主要先進国以外の多くの国の医療現場では同じようなことがいえるのではないかと思います。医療検査の相違を感想を含め報告させていただいた次第です。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇傷のはなし

傷に消毒は必要か?
「傷といえば、消毒」
医療従事者もずっと、これが常識と考えてきました。しかし、最近では「消毒は不要」「消毒薬はむしろ有害」という考えが示されています。

私は、日本の救命救急センターで長年、熱傷の患者さんの診療に携わってきました。最初の数年は、「やけどの傷には消毒をするのがあたりまえ」と考え、すべての患者さんの傷に消毒薬を使ってきました。しかし、消毒薬をやけどの傷につけると、患者さんは非常に痛い思いをします。そこで、あるときから、子どもでやけどの面積がそれほど広くない患者さんには、消毒をしないことにしました。古いガーゼをとったあと、見た目で汚くなければ、消毒も水による洗浄もなにもしないで、軟膏を塗るという方法をとりました。そのようにしても、傷の感染がひどくなったり、治りが遅くなることはありませんでした。その後は、大人でも広範囲でもいっさい消毒薬を使用しないようにしました。
やけどの傷の場合、ほぼ感染は避けられないものと考えます。それは、ヒトは皆、自分自身のからだに菌を持っていて、傷を無菌状態に保つことなど、もともと無理なことだからです。
それを1日1回や2回の消毒で、わずかの時間、表面上の菌を殺しても、すぐに元の状態に戻ってしまいます。もちろん感染がひどい場合には、傷はなかなか治りませんが、その状況では消毒することによって早く治すということはできません。このように、消毒薬の殺菌効果はあるものの(この効果も短時間のみ)、傷を治すことには寄与しないことがわかりました。

傷のあつかいで、もうひとつのポイントは「洗浄」です。傷の表面には、体液(浸出液)、細胞や組織が治癒に向かって活発な活動を行う際にでた老廃物、細菌や白血球の死骸などが付着しています。傷の表面を洗って、きれいに保つ(無菌ではありません)ことは、傷が治ることに悪いことはしていないだろう、と考えられます。あるとき、外来通院で治療していた子どものやけどの患者さんで、傷の状態が落ち着いていたことや、種々の事情で、毎日通院から2日おきの通院にかえたところ、傷の状態が悪くなってしまい、熱が出てしまったことがありました。毎日通院にして、傷の洗浄(水道水で)を行い、ガーゼ交換を行ったところ、数日で改善してきました。傷の状況にもよりますが、洗浄することの効果を実感しました。

やけどや擦りむき傷のような、縫合(縫って)閉鎖することのできない傷では、消毒は不要で表面を軟膏や被覆材などで保護することが重要です。保護することによって、皮膚の細胞が増殖し、新しい皮膚ができていくのを助けます。最近では、軟膏を塗った上にラップを巻くという、傷を保護することに重点をおいた治療法が注目されています。感染などで傷が「汚い」場合には、洗浄を行います。

傷を縫って閉鎖した場合はどうでしょう。
刃物やガラスなど鋭いもので切れた傷は、通常は、生理食塩水などでよく洗って、縫合します。傷の中を消毒はしませんが、傷のまわりの皮膚を消毒します。ただ、この消毒も科学的に本当に意味のあることかは、わかりません。なにしろ、かんじんの傷の中は、洗浄だけですから、傷の周りの皮膚も洗浄だけでよいのかもしれません。

さて、傷を縫合した後ですが、習慣的に消毒することが多いようです。実際には、感染しているようすがなければ、毎日の消毒は必要ないでしょう。抗生物質の必要性についても、一概には判断できず、傷の状態によります。感染している様子がなければ、全く必要ないか、数日(3日ぐらい)以内の使用に止めるべきだと考えられます。
「縫合した傷があるとき、シャワーを浴びてもよいか」という問いには、「48時間後から可能」です。およそ48時間で、縫合部は皮膚の細胞が寄ってきて、水が入り込む余地はなくなる、といわれています。実際に、手術後の傷で、48時間経過後から入浴を開始した場合に、感染が増えないことが確かめられています。

シャワーや入浴のときの注意点は、「傷に対して強くこすらないで軽く流す」ことと、「洗ってよく乾かしたタオルで水分を拭き取る」ということです。このあと、新しいガーゼなどで覆うわけですが、最近の研究では、ガーゼも必要ないという結果が出ています。しかし、縫った傷がそのまま外に出ているのは、いい気持ちがしないために、また、物理的に傷を保護するために、ガーゼなど覆うことになるのが一般的でしょう。

結論的には、「外来で傷を縫合した場合、2日後に外来で傷の状態を観察し、問題がなければ、あとは約1週間後の抜糸まで通院は不要。シャワーや入浴も可能。」ということになります。

傷を縫合する場合としない場合
「傷を縫合するのはなぜか?」皮膚は、その欠損部分を皮膚の細胞を増やすことによって治していきます。縫合すると、欠損部分の皮膚どうしが密着するために、早く治ることが期待できます。実際にきれいに縫合した後は、48時間で上皮化ができるという研究結果もあります。縫合する目的は、密着させることにあります。とすると、密着させることができれば、縫合以外の方法でも大丈夫ということです。 最近では、手術後の傷に対してステープラという金属のはり(「ホッチキス」みたいなもの)を使用することも多く、自身で経験された方もいらっしゃるかもしれません 。テープなどを工夫して密着させれば、同じ効果を期待できますので、必ずしも縫合しなければならない、ということはありません。最近の研究では、2cm未満の傷は、縫合してもしなくても治癒にかかる期間は同じ、という結果も出ています。小さな傷では、あえて縫合しないで処置するというのも、選択し得る治療法ということができます。

感染が起きている、または感染が起きそうな「汚い」傷の場合は、基本的に縫合しないで解放状態で処置を行います。このような傷をすぐに縫合してしまうと、縫合した傷の内部で細菌が繁殖してしまう危険性があります。特に嫌気性菌(酸素がないと繁殖しやすい菌)を繁殖させやすい条件となりますが、嫌気性菌には、破傷風菌やガス壊疽菌が含まれるため、これらの菌の感染症が心配されます。そのために、傷が解放された状態で処置を行うのです。このときも、消毒薬は使用せず、洗浄を繰り返します。抗生物質は、基本的に全身投与(内服か注射)で行います。傷の感染の状態が落ち着いたと判断されたときに、縫合を行います。
感染が心配されるような汚い傷と判断した場合には、縫合すべきではありません。 ただし、出血が続いている傷では、縫合の圧力によって圧迫止血を期待して、縫合の方がよい場合があります。

破傷風
破傷風菌が感染し、菌が産生する毒素によって、からだのいろいろな場所の筋肉がけいれんを起こす疾患です。破傷風菌は主に土の中にいるので、野外での傷には注意が必要ですが、埃などにのっていろいろな場所に存在していることがあるため、どんな傷でも発症する可能性があります。実際に日本で経験した破傷風の患者さんの中で、どこで傷を受けたかわからない場合もありました。

破傷風を予防するためには、まずは、予防接種を行うことが一番です。一度、基礎免疫をつくってしまえば、5年から10年は十分な抗体が維持されます。それを過ぎても、一度の追加接種で抗体が増えますので、けがをしてから接種しても十分予防効果があります。一回も予防接種を受けていない場合で、けがをした場合には、そのときすぐに接種しましょう。完全に予防できないかもしれもしれませんが、必ず役に立ちます。一回も予防接種を受けていない人に、土が傷の中に入り込んでいるような傷ができた場合、破傷風毒素に対する免疫グロブリンの注射を行うことがあります。

ガス壊疽(に代表される皮下組織、筋肉の感染症)
ガス壊疽菌をはじめとする、いろいろな菌が傷から皮膚の下の組織に広がっていく感染症です。例えば足の先端にできた傷口から、太ももや腰、腹部、胸部まで広がっていくことがあります。ガス壊疽菌は土壌に多く分布しているため、土が中に入ったままで縫合してしまわないことが肝心です。十分な洗浄と観察が重要で、感染の可能性が高いと判断した場合は、縫合せずに処置を続けることを選択します。感染してしまった場合。感染した部分の皮膚を切開、洗浄し、抗生物質で治療します。治療が難しい感染症ですので、早期に発見して治療開始することが重要です。


まとめ
傷の状態を良く見極め、それにあった処置法を選択しますが、 傷が治るのは、本人の自然治癒力ですので、あくまでもその手助けをするに過ぎません。基本的に、傷そのものに消毒は必要ありません。傷が汚い場合には、洗浄をします。小さな傷は、縫合も不要と考えられます。
縫合していない傷は、シャワーや入浴によって洗浄してかまいません。縫合した場合も、縫合後48時間経過し、状態が落ち着いていれば、シャワーなどで傷を濡らしてもかまいません。シャワーや入浴の後は、きれいに拭いて、新しいガーゼをあてておきましょう。開いた傷の場合は、表面を保護するために、軟膏や被覆材などで覆います。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇食の安全について

最近、各種マスメディアの報道で、“食品や各種製品(玩具、調理用具、医薬品含む)の安全性”の話題が盛んに取り上げられています。とりわけ“中国製品”に対する報道はますます過熱するばかりです。なぜ、“中国製品”に対する話題がここまで取り上げられるのでしょうか-。この原因として
我々の日常生活(衣食住)の様々な分野において中国製品が入り込んでおり、もはや中国製品無くしては日々の生活が成り立たない状況になっていること
2008年8月に開催される北京オリンピックに向けて、いろいろな意味で、中国が世界中から注目されていること等が背景にあると考えられます。

衣食住の中でも、特に、“食の安全”に関しては、日本では、“病原性大腸菌(O157)”、が数年前に話題となりました。記憶に新しいところでは、輸入牛肉によると考えられている“牛海綿状脳症(BSE)”の問題などが有ります。

また、本来、“健康食品”として長年親しまれてきた製品が、実は“全く効果が無いものであった”、あるいは“発癌性や肝機能障害などの健康被害を引き起こす可能性があること”が判明したため、“市場から撤退”する事態まで起きています。
 
その一方で“スローフード運動”、“食育”などの新しい概念も登場して来ています。
様々な情報やモノが氾濫する中で、以前にも増して“何が本物で何が偽物か”を見極めることが重要になってきています。
“○○を食べれば△△が治る”、“××を食べると○○が予防出来る”、“△△を食べると痩せる”などの情報に踊らされずに、真実を見極めることはとても難しいのも事実です。

ただ、言えることが有るとすれば、それは、
“(癌や生活習慣病などの)病気の原因は決して一つでは無いこと”
“体質は各個人により異なること(遺伝的要因)”
が挙げられると思います。
 
科学技術が発展し、様々な情報が氾濫する中で、ヒトは何を信じていいかわからなくなり、どうしても“確かなモノ(あるいは確かと思える)”を選択し、“不確かなモノ”を無意識に排除しようという気持ちが働くのかもしれません。
“ある問題がある特定の方法のみで解決すること”を期待してはいけないと思います(“ミラクルダイエット”は存在しない)。
 
最後に、“中国製品”に関する各種報道を見ていて感じるのは、ただ批判するだけなく、これからは、先進国が経験し蓄積してきた様々な知識や技術(食品・衛生管理、環境保護関連など)をもう少し共有していけたら-と思います。