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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07050101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇HIV感染症

HIV感染症は世界的に増えつつあります。地域別ではサハラ以南のアフリカの患者数が最も多いのですが、東南アジアも患者数が多い地域の一つです。

シンガポールで最初のHIV感染者が見つかったのは1985年のことでした。HIVウイルスが発見されてから僅かに2年後のことです。その後、感染者は持続的に増えております。新規感染者を図にあらわしますと以下のようになります。



参考までに日本の患者数(報告例のみ)も示しましたが、やはり同様に増加しています。日本の人口はシンガポールの約30倍ですから、単純に比較すると、シンガポールは日本の7-8倍の発生率になりますが、日本の患者数はあくまでも統計上のもので、必ずしも実態を反映していないとする指摘も多々あります。

累計の患者数は日本では報告されている例だけで1万例に達し、検査を受けていないため、統計に表れてこない患者数を加えると数万人に達しているといわれています。(しかし、これでもかなりの過小な評価との見方も多いようです。)
シンガポールでは累積の患者数は約3000人になります。シンガポールでは、全ての妊婦に血液検査を行なうなど、感染者の発見に積極的で、実態に近い数が見つかっていると考えられます。また、外国人は累積患者の3%ぐらいです。外国籍の方は感染がわかりますと国外退去となります。

HIVウイルスは感染しても最初の10年ぐらいは症状がありません。感染に気づかないことも多いと思います。性交時に感染する確率は1%以下とされていますが、この数字は100回性交を行なえば、感染する(させうる)数字だと考えれば、決して低い数字とは言えないしょう。

抗ウイルス薬は様々なものが開発されていますが、完璧にウイルスを体から排除できるものではありません。エイズウイルスは人の免疫細胞を攻撃するという恐ろしいウイルスです。発症すれば、死は免れません。
感染の機会をなるべく減らすように、心がけましょう。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇蟯虫症

「先生、便の中から小さい白い糸のような虫がたくさん動いていました!!」と診療所に患者さんが来られました。症状は夜に無性にお尻がかゆくなり、日中もかゆみが続き家でも落ち着かないとのことでした。

蟯虫(ぎょうちゅう)は寄生虫の一種で線形動物です。世界中に分布しており、日本でも幼稚園児の数%が感染しているといわれています。このように決して日本でも希な感染ではないものの、臨床経験の中では私にとっては初めてのケースで、少々驚きました。
フィリピンでは、ある地域でおこなわれた小学生300名の便の調査で5割以上が蠕虫(ぜんちゅう)類(回虫や鞭虫、蟯虫を含む)に感染していたという報告もあり、フィリピン国内でも感染率はかなり高いと推測されます。以下蟯虫症の解説です。

<蟯虫とは>
人の口から混入した卵は孵化し幼虫となって小腸に寄生します。さらに盲腸周囲で成長し成虫となります(成虫になるまで孵化後2~6週間)。そして成熟期に達した雌の成虫は卵を産むために夜間直腸や肛門周囲に移動し、卵を産みつけます。この卵を産みつけた部位の粘着性のゼラチン状物質と雌虫の動きがかゆみを引き起こすとされています。卵は室温で2週間ほど生き延びることもあるようです。成虫は白い糸のような形をしており、雌虫は全長約10mm、雄虫は3mmほどです。

<感染経路>
感染者の肛門周囲から手を介して衣類、寝具、食物などに卵が付着し、直接別の人の口に入ることにより感染します。床の上に落ちた虫卵が手指などについて口に入ることもあります。
学童期の感染例が多く幼稚園や小学校、家族内で流行することがあります。

<症状>
多くは無症状です。症状がでる場合は夜間に強い肛門周囲のかゆみ、集中力の低下やイライラ、不眠などがおこります。まれに、膣炎や子宮付属器炎、腹膜炎になることがあります。

<検査>
糞便検査からは検出率が悪く、朝、排便前に肛門周囲にテープを押し付け、そこに付着した虫卵を顕微鏡で同定します。できれば連日3日間以上の繰り返し検査が必要です。(スコッチテープ法)また便中もしくは夜間肛門周囲を這う成虫を直接確認することでも診断できます。

<治療・予防>
駆虫薬が有効です。副作用もほとんどないとされています。しかし卵や幼虫には効果が少ないため、内服二週間後に再度お薬を飲みます。
特に隔離などは必要ありませんが、感染者がでた場合、寝具や下着を替える、お湯を使用した洗濯、アイロンがけ(卵は55度のお湯に数分ひたすのみで死にます)などに注意する必要があります。また家庭内で複数感染者がでた場合は家族全員が駆虫薬を飲むほうがよいとされています。
予防としては飲料水の衛生管理、料理や食事の前の手洗いは重要です。爪を切る、爪をかまない、シャワー後は清潔な寝具に着替える、シーツなどはまめに取り替える、お部屋やトイレを常に清潔に保つようこころがけましょう。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
高橋 良誌  

◇予防接種の話

ジャカルタに赴任して、1か月が過ぎました。慣れないことがいっぱいですが、いろいろな人のおかげで、なんとか無事過ごしています。

JJC医療相談室での仕事でも、これまでに延べ400人余の患者さんを診て参りましたが、日本ではあまりみられない感染症が普通に存在するとことを、目の当たりにしました。
その中には、予防接種によってほぼ確実に防ぐことのできるものも含まれていました。また、予防接種の相談をされる方、予防接種を希望される方もみえていますので、ジャカルタに居住するうえで考慮すべき予防接種について、簡単に解説します。

A型肝炎
A型肝炎ウィルスに汚染された水、食べ物によって感染します。急性肝炎を発症し、発熱、全身倦怠感、食欲不振などの後に黄疸が現れます。東南アジアでは、A型肝炎ウィルスが多く存在し、感染の可能性は高いことになります。ちなみに、現地人は乳幼児期に感染し、終生免疫を得ることが多いようです。

A型肝炎ワクチンは、日本では3回、インドネシアでは2回の接種ですが、いずれにしても1回目の接種後、99%のひとが抗体陽性となり、2回目の接種後ほぼ100%の人が抗体陽性となります。つまり、このワクチンを接種すると、ほぼ100%の人が、A型肝炎の予防ができることになります。ただし、5年ぐらいすると抗体価が下がってくるので、追加接種をした方がより安全です。乳幼児期にA型肝炎に感染した場合、ほとんど症状が出ないか、非常に軽い症状で治ってしまうことが多いため、乳幼児期のワクチン接種は不要と考えられています。では何歳から接種すればいいのか、これは定められていません。日本では16歳以上となっています。インドネシアでは希望すれば何歳でも接種できるようですが、JJC医療相談室のあるメディカロカでは2歳以上(アメリカの基準と同じ)となっています。

B型肝炎
B型肝炎を持った人の血液や体液によって感染します。輸血や血液製剤、注射器などの医療器具から感染するため、医療機関での感染が多いのですが、性行為やカミソリ、歯ブラシ、タオルなどの共有によっても感染する危険性があります。急性肝炎となった場合は、全身倦怠、食欲不振、黄疸などがみられますが、A型肝炎に比べて発熱が少ないとされています。慢性肝炎となると多くは無症状ですが、長期間の経過を経て、肝硬変へ進展します。また、B型肝炎ウィルスを持ち続けますので、他の人に"うつす"可能性があります。

B型肝炎ワクチンは、日本でもインドネシアでも3回接種します。ワクチンの効果は高いのですが、なかには抗体の量が十分あがらない人や1~2年で下がってしまう人もいるため、毎年のように追加接種をしなければならない場合があります。このような人は、20%程度いるようです。3回の接種が終わった人も、1~2年に1回程度、抗体価を測定し、追加接種が必要かどうかみることになります。年齢制限はありません。

狂犬病
狂犬病ウィルスをもった動物の唾液によって感染します。かまれた場所から侵入したウィルスは、神経を通って脳にすすみ発病します。発病してしまうと死亡率はぼ100%といわれています。昨年、フィリピンで犬に噛まれた人が、日本に帰国後発病し、注目を集めました。日本国内では撲滅された狂犬病ですが、世界各地ではまだ存在しています。アジアも多い地域とされています。

狂犬病ワクチンは、3回接種します。ほぼ100%の人が抗体ができますが、1?2年で抗体価が下がってくるため、追加接種が必要です。また、予防接種を受けた人でも、狂犬病の動物に咬まれた場合、発病を予防するためにさらに3回のワクチンの接種が必要です。予防接種を受けていない人が咬まれた場合、当日、3日、7日、14日、30日、90日とワクチンを接種し、発病を予防する方法があります。年齢制限はありません。

破傷風
破傷風菌は土の中に存在し、傷のなかに土が入ると感染する可能性があります。土の中だけでなく、埃などにも存在し、ちょっとした傷からも感染した実例があります。感染した破傷風菌は、毒素を産生し、その毒素が脊髄の中で作用することにより、けいれんなどの症状を起こします。世界中どこでも危険性は同じです。予防接種は破傷風毒素の中和抗体を作るためのものです。3回の接種を行い、基礎免疫を作ります。ほぼ100%の人に抗体ができて、5?10年維持されます。最終接種から5年以上経過している場合は、けがをして大きめの傷ができたら、そのときに接種しても効果があります。年齢制限は特にありませんが、幼児期には3種混合ワクチンとして実施されるため、接種時期が定められています。

日本脳炎
日本脳炎ウィルスは、コガタアカイエカによって媒介され、刺された人の1000人に1人ていどが発病するものと推定されています。発病すると高熱、意識障害、けいれんなどが起こり、30%程度に後遺症を起こるとされています。日本国内では、患者発生数は極めて低いのですが、東南アジアは流行地となっています。
日本脳炎ワクチンは、小児期に1期3回の接種を行った後、5年ごとに追加接種を2回行います。成人では、最終接種から5年以上経過していれば、追加接種1回を行うのがよいでしょう。90%以上の人で抗体ができます。日本脳炎ワクチンで副反応の重症例が出たため、2005年5月から厚生労働省が積極的勧奨を控えました。そのため、現在は任意接種(希望すれば接種する)になっています。日本では、3歳以上で接種していることが多いようですが、6か月以上であれば、接種することができます。

腸チフス
腸チフス菌に汚染された水や食べ物によって感染します。主な症状は発熱です。腸チフスという病名から、腹痛や下痢などの症状が想像されますが、腹部症状がない人のほうが多いようです。東南アジアでは、多い疾患です。予防接種は1回です。抗体ができる可能性はそれほど高くなく、30?40%のひとは抗体ができないようです。抗体ができた人も、1~2年ごとに追加接種を行う必要があります。接種年齢は、2歳以上です。

任意接種となっている予防接種について、簡単に解説しました。
とにかくやっておきたい」というひとは、すべてやりましょう。
できるだけ注射は受けたくない」というひとでも、A型肝炎破傷風は受けておきましょう。このふたつは、抗体ができる可能性がほとんど100%で、なおかつ予防効果も高いものです。A型肝炎は東南アジア、南アジアではありふれた疾患で、ここジャカルタでも日本人の患者発生があります。破傷風は、世界中どこでも感染する可能性があるため、日本に住んでいてもするべき予防接種のひとつです。この二つの予防接種は、それだけの効果がありますので、痛い思いをしただけの価値があります。

その次に考えるべきものは、B型肝炎、日本脳炎です。抗体の獲得率、病気自体の発生数を考慮すると、2番目のグループになります。狂犬病もジャカルタでの発生数を考えると、次のグループでしょう。また、予防接種を受けていても、狂犬病の動物に咬まれた場合は、さらにワクチンの接種を受けなければならないということ、予防接種を受けていなくてもその日からワクチンを接種する治療法があることを考えると、必ず受けていなければならない予防接種とは言い切れません。ただし、日本脳炎や狂犬病は一度かかってしまったら、命、後遺症と重大な問題があり、受けておくことにこしたことはありません。腸チフスは、抗体獲得率がそれほど高くないため、接種してもかかる可能性が相応にあります。かかったとしても、大多数の人は抗生物質で治癒します。さらにその次に考慮することでよいと思います。インフルエンザについては、別の機会に解説します。

まとめ
絶対のおすすめは、A型肝炎と破傷風です。その次にB型肝炎、日本脳炎、狂犬病を考慮してください。抗体獲得率の程度(接種してもかかる可能性が相応にあること)を知ったうえで納得できる方は、腸チフスも受けてください。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇ウィルス性疾患の流行について

現在、日本では学校や職場を中心にして“麻疹(はしか)”が流行の兆しを示しているようです。麻疹は主として子どもが発症すると考えられていましたが、最近では発症する“成人型麻疹”が問題となっています(一部の大学では患者数が急増したために、すべての講義が一時中止となったようです)。日本では、少し前(3月から4月にかけて)には、子どもを中心として“手足口病(手足・口腔内に水泡が出来るウィルス性疾患)”が流行しました。

一方、遼寧省におきましては、現在(先日の“大連日報”の報道にもありました通り)“各種のウィルス性疾患(麻疹〔はしか〕、風疹、流行性耳下腺炎〔おたふく〕、水痘〔みずぼうそう〕)患者数が増加している”ようです。麻疹の症状としては、38度台の高熱が2~3日間続いて、その後、再び39度以上の高熱、発疹が出現し、“眼が赤い”などの結膜炎症状や“鼻炎・のどの痛み”などの上気道感染症状などが出現します。

麻疹は、くしゃみや咳による“飛沫感染”以外にも、手指などを介した“接触感染”、狭い空間などで患者と同じ部屋にいるだけで感染する(空気感染)可能性があり、感染力が極めて強いとされています。また、肺炎や脳炎などの合併症で死亡する場合もあり注意が必要です。1歳児に対する予防接種が普及した結果、患者総数は減少傾向にありましたが、その一方で、“病原体に触れて免疫が高まる機会が少なくなった”ために、感染が拡大したのではないかと考えられています。
①予防接種で獲得した抗体は年数が経つと(個人差はあるが一般に20年以上-)自然に低下する、②予防接種を受けても感染予防に必要なレベルまで抗体が上昇しない場合もあるなどの理由で、“予防接種を受けていても罹患する可能性”があります。06年4月以降は法令改正により、1(-2)歳の間に1回、就学前までに1回の計2回と、接種回数が増えましたが、それ以前は、1回しか接種していない人が多いので注意が必要です。しかし実際には、麻疹に罹ったことがあるか、あるいは予防接種を接種したか、覚えていない方も多いかと思います。また、“感染”しても必ず“発症”するわけではありません。このように、“感染”は成立するが、“発病”に至らない場合を“不顕性感染”といいます。“不顕性感染”では、臨床症状の出現することなく、“免疫”を残して、感染は終結します(ウイルスは体内から消滅します)。

同じウィルス性疾患でも、ポリオ、日本脳炎、黄熱などの場合には、大多数が“不顕性感染”で終わるのに対して、風疹、流行性耳下腺炎の場合でも約1/3に“不顕性感染”が見られるといわれています。

“不顕性感染”とは逆に、“感染すれば間違いなく発症する感染症”として、麻疹、狂犬病があります。
“潜伏感染”とは、“急性感染”または“不顕性感染”の後に治癒し、ウイルスは検出されなくなるが、排出されることなく体内に存続し、何らかの因子により活性化され発病する状態のことです(この時ウイルスは検出可能となります)。単純ヘルペスウイルス、水痘ウイルスなどが代表的です。 
 
“慢性感染”とは、初感染ののち長期間にわたって、ウイルスが体内で増殖して検出される状態のことです。アデノウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、麻疹ウイルス、B,C肝炎ウイルス、HIVウイルス(エイズウィルス)などが代表的です。
ウィルス性疾患の場合には一般に、疲労、糖尿病、悪性腫瘍(癌)などが原因で“免疫力が低下した状態”になると罹患する可能性が高まります。