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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07030101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇シンガポールの邦人医師数

先日、シンガポール日本人会再発足50周年記念パーティーが日本人会館で催されました。
そこで、シンガポールのMinistry of Health(日本の厚生労働省にあたります)の大臣が日本人会の会員になっていらっしゃる関係でご出席になり、記念の演説をされました。

その中でシンガポール政府としてはシンガポールで働く日本人医師数をもっと増やしても良いと考えておられる旨の発言がありました。
日本人在住者に好意的ととれるこのお考えですが、本当のところはどうなのでしょうか? まずは現時点でのシンガポールの医師の状況を考えてみましょう。

実は2005年6月に日本人医師に30名までは労働許可を与えるという取り決めが出来ましたが、現時点ではまだ、17名にすぎません。約3万人のシンガポール在住の日本人に対し、医師数17名というのは単純計算しますと医師1人で1764人の住民を受け持つことになります。日本では1億2500万人の日本人に対し27万人の医師ですから医師一人当たりの受け持ちは462人となります。だいぶシンガポールのほうが医師数が少ないことになりますが、シンガポール在住の医師が制度上は全員家庭医であることや日本人でもシンガポール人医師にかかることは自由であること、シンガポールの日本人社会は高齢者数が少なく、30-40代の方が多いことなどを考えますと単純な比較はできません。

日本人医師の医師免許は限定免許で日本人の患者さんは診察することができますが、他の国籍の方、例えばシンガポール人を診る事はできません。また、日本人医師はすべからく家庭医(Family doctor, General practitionerなどと呼ばれます)としてのみ登録でき、専門医としての登録はできません。つまり、耳鼻科とか眼科といったある分野に専門的な医師はそのままでは医業を営むことが出来ないのです。家庭医は手術も行なうことはできませんし、入院患者さんを診ることもできません。

実は厚生大臣が日本人医師の数を増やしてもいいとおっしゃられた背景はシンガポール国内の日本人社会を念頭に置いていたというより、シンガポールが目指す医療ハブの一環としての考え、つまり、周辺国を含め東南アジア全体の日本人患者をシンガポールに集め、積極的に診るようにしようという目的からのようです。

日本人にとって言語の障壁は大きいことから、日本人医師をおくことによって、日本人患者さんが集まりやすくするという狙いのようです。
昨今の医療情勢の変化により海外で治療をうけようという日本人も増えています。
シンガポールのこの外に開かれた医療システムは今後、大きな魅力になると思われます。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇マニラでの2年

マニラに赴任してフィリピン在住邦人の健康相談に携わりはや2年がたちました。初の海外での長期滞在で、フィリピンでは日本に住んでいた頃より時がたつのが遅く感じるのではないかと期待していたのですが、見事に裏切られました。

やはりフィリピンにいても2年間はあっという間でした。しかしこの短い2年の中でも、日々の診療の中で多くのフィリピン在住邦人の方とふれあい、お子様達の驚くほどの成長、永住を決意した退職者、旅行中病気になってしまった若者、フィリピン人スタッフの人間模様、などなど、日本では経験できなかったであろう多くの出来事に遭遇しました。日系企業の赴任期間は大抵数年であり、すっかり古株になってきた私は、新たに赴任してくる若い家族がどんどん増え、2年間の月日を実感しています。

医師になって10年目に突入しました。日本では最先端の医療設備の中で高度な技術を要する緻密な治療方法や治療機械の操作方法などを習得するのに大変労力を費やしていました。現在はフィリピンでプライマリーヘルスケアを中心とした診察、問診、簡単な検査のみできる環境の中で、まったく仕事の内容が異なります。

プライマリーヘルスケアという視点から日本とフィリピンを比較すると、随分と異なることもわかります。一番大きな違いは衛生面での環境だと思います。フィリピンでは不衛生な生活水や食物からくる感染症が大変多く、そのために命を落とす子供もたくさんいます。また経済的理由から、病院にたどりつくこと自体困難なことも多く、初めての診察の時に病気が進行していることも稀ではありません。さらに麻疹や破傷風で命をおとすことも少なくなく、予防接種の考え方もフィリピンと日本とでは異なります。よりリアルで積極的に病気の予防を考え、子供に接種します。

マニラに住む邦人も同様、不衛生な環境や熱帯地域ということから日本にはない病気、または稀な感染症である、アメーバ赤痢、デング熱、腸チフスなどに感染することがあります。食中毒菌による下痢も多く日本とはだいぶ異なります。

このような状況からは、かなり昔の日本での医療環境を想像されると思います。しかし、一方では、美容整形、眼科での近眼矯正術(レーシック)、臓器移植、など日本より低料金で技術的にもしっかりしている最先端の設備を整えたプライベートクリニックが増え、海外からフィリピンへの旅行がてらに健康診断を低料金で提供するメディカルツーリズムなどの取り組みも積極的におこなわれつつあります。こういった両面性のある医療事情もフィリピンの特徴といえます。

残り1年となったフィリピンでの滞在ですが、はやく過ぎていく時間に振り回されないよう、じっくりと貴重な経験を一歩一歩踏みしめていこうと思っているこのごろです。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇Doctor Shopping in Jakarta―反省と感謝をこめて

ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)医療相談室の菊地です。
大変お世話になりありがとうございました。2004年4月に(財)海外邦人医療基金からJJC医療相談室に派遣されて3年が経ち2007年3月で任期を終えることになりました。当初の派遣予定期間は2年間でしたが1年間延長させていただきました。ジャカルタ滞在中は患者様初めJJC職員、クリニックが所属するMedikaloka Health Care Centerのスタッフの方々の暖かい励ましにより3年間すごすことが出来ました。本当にありがとうございました。

ジャカルタでの今後の皆様方の健康を祈り、今回はジャカルタに特徴的と思われるDoctor Shoppingについて感想を述べさせていただきます。
Window Shoppingは楽しいものですがDoctor Shoppingはされる医師も、する患者さんも楽しくありません。

医師の側にも大きな問題があると思います。医師からどんなひどい対応をされても病態が改善すれば「まあ仕方ないか」で終わるかもしれませんが、病態が改善しない場合に患者さんは「あの医者の態度は何だ!今受けている治療で良いのか?」と不安になり医師に対して不満も持ち始めます。患者さんへの検査結果や治療内容の説明不足、対応の不備、治療内容の不適切さなど患者さん側から不満が出てきます。何ヶ月も前の治療対応まで思い出して不満続出の状態になります。上記のような対応を(私も含めて)医師が行えば患者さんが憤慨するのも当然のことでしょう。

しかし医師と同様に患者さん側にも問題が無いわけではありません。なぜ検査が必要なのか説明を聞かない、せっかく検査を受けたのに検査結果の説明を聞かない、処方された薬が何のための薬なのか説明を聞かない、点滴がなぜ必要なのか説明を聞かない、など納得しないまま帰宅しているようです。医師から説明を受け、その内容を了解した上であればご自分の病気が今どのような状態なのか、もし病態が改善しない場合にはどのようなことが考えられるのか、今後どのような対応を考えるべきか、など患者さんと医師が信頼関係を保ちながら治療をしていくことは可能だと思います。信頼関係が無くなれば患者さんはその医師から離れ、治療も不適切・不十分な状態のまま中断され病態は結局改善しません(自戒しています)。

日本でも患者さんと医師の信頼関係が保たれていない現象がテレビや新聞で連日のように報道されています。しかしジャカルタ在住邦人での状況は更にひどいものだと感じています。
JJC医療相談室を受診する患者さんの中には以前別のクリニックで加療を受けてよくならないのでその後に当院を受診する患者さんが多く見られます。今後の治療を考える上で前のクリニックでどのような加療を受けていたかをお聞きするわけですが、患者さんは加療内容を理解していないことがほとんどです。
・何の検査を受けたのですか?->「血を採りました」、「レントゲンを撮りました」
・何のために検査を受けたのですか?->「わかりません」
・結果はなんと言われたのですか?->「なんかの値が高いみたいだとか・・・、レントゲンは肺炎かもしれないし違うかもしれないとか・・・」
・どのような薬を処方してもらったのですか?->「白い丸い薬です、よくわかりませんが1日3回飲むように言われました」
・どのような治療を受けたのですか?->「点滴と注射を受けました」
・何のために、どのような薬が入った点滴や注射を受けたのですか?->“きょとん”としている。

また逆に患者さんから質問を受けることも多くあります。
・「前のクリニックで血液検査を受けたのですが大丈夫だったのでしょうか?」
・「レントゲンで肺炎“かもしれない“と言われたのですが大丈夫でしょうか?」
・「こんなに薬をいっぱいもらったんですが飲んでも大丈夫でしょうか?」
・「もらった薬にステロイドがはいっているみたいなのですが大丈夫でしょうか?」
・「点滴した後に気分が不快になったのですが大丈夫でしょうか?」
・「シンガポールに行ったほうが良いといわれたのですが行くべきでしょうか?」
・「これ何の薬ですか?」
などのご質問を受けます。処方した医師は何らかの理由でそれらの薬を処方したのだと思います。医師の説明不足・技量不足もあると思いますが、患者さんも検査や治療を受ける前に検査の必要性や結果の説明、処方薬や点滴の要否、治療内容の説明を担当医に納得がいくまで質問をすべきです。
そのために医師はいるのです。

パソコン、ハイヒール、洋服などを買うときでさえ機能を聞いたり試着したりして納得してから購入していると思います。ご自分の体や大切なご家族の体なのになぜ検査目的、検査結果、治療方法などについて納得するまでご質問なさらないのでしょうか。当然すべきことだと思います。
薬ひとつ、点滴一本で死につながることもあり得るのです。
納得がいかなければ他の医師にセカンドオピニオンを求めることも必要だと思いますが、まず、ご自分の責任で選択した医師、に説明を求めるべきです。

ジャカルタにも優秀なインドネシア人医師はたくさんいます。皆さんは日本人医師や日本語が話せる医師の言うことだと(仮に誤っていても)信頼し、インドネシア語や英語で対応する医師だと信頼しない傾向がないでしょうか。
日本には20万人以上の日本人医師がいますが、日本語が話せるというだけで皆さんは彼らすべての医師を信頼できますか?

ジャカルタでの医療が更に良くなるように祈っています。
そのためには“医者任せ”ではなく患者さんも治療に参加することが大切です。
皆様のご健康をお祈りいたします。
3年間、本当にありがとうございました。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇歯周病が全身疾患に及ぼす影響について

海外に赴任されている多くの方々にとって、“虫歯”を含めた“歯科疾患”は、“命に関わることは少ない”という意識があるため、あるいは“継続的な治療が必要なことが多いために、放置あるいは治療が中断されてしまう”ケースが多いようです。
しかし、最近、歯槽膿漏や歯肉炎などのいわゆる“歯周病”が心臓血管疾患、糖尿病、呼吸器疾患などの“全身疾患”の発症・増悪の危険因子になるのではないかという報告が多く見られるようになりました。“歯周病”と“全身疾患”の関係を研究する学問は“periodontal medicine”と呼ばれ、最近、注目されている分野です。

“歯周病が全身疾患に影響を及ぼす機序”として、歯周組織内で“歯周病関連細菌自体”が、あるいは、これらの細菌が産生する“様々な炎症性物質”が、全身の様々な臓器において、悪い影響を及ぼすことが想定されています。

1.歯周病と心臓血管疾患
歯周病と関連があると考えられている心臓血管疾患としては、(心臓内膜の炎症性疾患である)細菌性心内膜炎や(狭心症や心筋梗塞などの)冠動脈疾患があります。細菌性心内膜炎が起きる機序は、歯周病関連細菌が血液中に移行して心臓内膜や弁膜(僧帽弁など)に付着するというものです。

冠動脈の内腔の狭窄や血栓により引き起こされる冠動脈疾患の背景には “アテローム性動脈硬化症”があります。“アテローム性動脈硬化症”は、最近では一種の“炎症性疾患”と考えられています。このメカニズムとしては
①(血管内腔を覆っている)血管内皮細胞の障害
② (それに引き続いて)血管壁の脂肪沈着、線維性結合組織の増生、内膜の肥厚
などが起きる結果、血管内腔の狭窄や閉塞をきたすと考えられています。

この“アテローム性動脈硬化症”に関与する“感染性病原体”には、“歯周病関連細菌”も含まれています。また、“歯周病関連細菌”の産生する毒素が、血液を介して動脈硬化巣に達して、局所で様々な“炎症性物質”を産生させ、血管内皮細胞や白血球の一種であるマクロファージなどの働きが高まった結果、病変を悪化させると考えられています。

2.歯周病と経口血糖降下剤
歯周病を放置すると、血糖値や(長期的な血糖コントロールの指標である)ヘモグロビンA1c(HbA1c)に悪い影響を及ぼす可能性があることが示唆されています。さらにII型糖尿病患者(糖尿病患者の大部分がこのタイプ、これに対して、血糖を下げる膵臓からのインスリン分泌が絶対的に不足したタイプがI型糖尿病)の歯周炎を治療すると、HbA1cが改善したという報告もあります。

このメカニズムとしては、“TNFα”という一種の炎症性物質の関与が考えられています。歯周組織に存在する白血球の一種であるマクロファージにより産生された“TNFα”という物質が、血中に移行して、各細胞にある受容体を介して作用する結果、“インスリンの作用に関わる蛋白質”の機能を抑制します。その結果、“インスリンが効きにくい状態”となり、“筋肉や肝臓などの身体の末梢細胞”が糖を取り込むことが出来なくなるために、“高血糖状態”に陥り、糖尿病を悪化させる可能性が示唆されています。

3.歯周病と呼吸器感染症
高齢者では、一般に、口から摂取した食物を舌・咽頭・喉頭などの協調運動により食道に送り込む“嚥下機能”や、(本来、経口摂取した食物が気管に入らないようにする防御反応の一種である)“咳反射”が低下していて、口腔内の常在細菌(歯周病関連細菌を含む)が唾液とともに肺に誤嚥されて、いわゆる“誤嚥性肺炎”を引き起こす危険があると考えられています。実際に、高齢者に比較的高い頻度で見られる“肺気腫”や“慢性気管支炎”などのいわゆる“慢性閉塞性肺疾患”患者の肺胞を洗浄して得られる液体(肺胞洗浄液)の中には、高い割合で“口腔内常在菌”が検出されることが確認されています。