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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07020101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇臓器移植

シンガポールでの最初の臓器移植は死体腎からのもので1970年に行なわれました。その後、死体からの肝移植、心臓移植が1990年に行なわれています。
シンガポール政府は1987年にHOTA( Human Organ Transplant Act)という法律を作りました。これには生前に拒否していないかぎり、事故で急死した場合は腎臓提供のドナーとなるということが定められています。(イスラム教徒は宗教上の理由により除外)

昨今の移植技術の進歩も手伝い、移植を待つ人の数の増大は著しく、シンガポールでは1998年から2003年の5年間では20%増えています。例えば腎移植を待つ人の数は現在では600人を越えています。また、肝臓や心臓の移植を待つ人の数も増え、待っている間に肝臓で年15人、心臓では3人の方が亡くなられています。

こうした臓器不足を解消し、臓器提供を促進するため、2004年1月にHOTAが改正され同年7月から施行されました。改正内容は以下のようです。
1.提供臓器が腎臓だけでなく、肝臓、心臓、角膜に拡大されました。
2.いままでは死因が不慮の事故による場合に臓器提供するということでしたが、この法律で全ての死因に拡大されました。つまり、シンガポール人は生前に拒否していない限り、死亡したら自動的に、臓器提供者になるということになりました。

この改正により年に60-80人の方が臓器提供を受けられると見積もられています。
この法律は21歳から60歳までのイスラム教徒以外の全てのシンガポール市民、永住権保持者に自動的に適応されるものです。臓器提供をしたくない場合は、書類を出さなくてはなりません。

また、別にMTERA(The Medical(Therapy, Education and Research)Actという法律があり、これは18歳以上なら誰でも希望すれば、全ての臓器を提供できるというものです。個人の自由意志によるものですので宗教は関係ありません。また、その用途も移植だけでなく、研究や教育に使ってよいというものです。希望者は登録する必要があります。(本人の意志尊重ということですので、家族が死後に臓器提供を拒否することは認められていません。)

MTERAは個人の自由意志ですから理解はできるとしても、HOTAは感情的に受け入れがたいこともあるでしょう。最近、いざ臓器提供の段になり、家族が臓器提供に激しく反対する例があったことが報道されていました。今後の成り行きを見ていく必要があろうかと思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇邦人がフィリピンで入院する場合(日本との違い)

思いもよらない事故や病気、感染症でフィリピンの病院に入院しなければならなくなると、本人や家族は日本の病院との違いに戸惑うことが多くあります。邦人の方がフィリピンで入院する場合に日本と大きく異なる点について気づいたことをまとめてみました。

<入院適応>
・ まず医師判断で入院適応とするケースは手術のための他ほぼすべて急性疾患のみです。もちろん急性心筋梗塞や脳卒中、事故による大量出血もさることながら、内服治療のみでは改善しない感染症、高度の脱水症状などで点滴治療を要する場合も入院となります。邦人の場合お子様で多いのは肺炎治療のための入院です。
・ 慢性疾患などの多くは自宅療養、外来通院となります。理由としましては慢性疾患の長期療養の入院費をカバーするような国内保険は皆無であり、1泊するごとに高額な費用がかかるためです。一方、大家族性で自宅に戻っても必ず誰かがめんどうをみることができるという習慣から長期入院という概念が生まれてこないのも一因と考えます。

<入院期間、退院時期>
・ 大きな手術を除くと数日の入院が主流です。心筋梗塞などでも、トイレ歩行などができるようになるとすぐに退院許可がでます。医師は自宅静養(家事、食事、身の回りの世話をしてくれる人がいる)ができるのが普通と考えていますので、単身や核家族である日本人は戸惑います。また医師が退院許可をだしたということは、もう仕事や外出をしていいものだと勘違いし、医師とのコミュニケーション不足から退院直後になってトラブルがおきることもあります。

<入院形態、医療設備>
・ 簡易なバス・トイレ付きの個室が主流です。個室でも日本同様料金別に段階があります。
・ 日本と違い完全看護性ではないため、子供は親や親類などの24時間付き添いが前提となります。大人の入院でも付き添いの人が寝泊りできるような簡易ベットがあり、大抵誰かが日中は付き添います。点滴がうまく落ちなくなったりしても、ベルなどですぐに看護師がかけつけてくるわけではなく、何かと人手がいります。
・ 食事制限のある病気は別とし、大抵食事の差し入れなどは自由です。
・ 空調のきいている部屋は日本と比べると相当低い温度設定が多く、また温度調整のきかない病院が多いため、入院中にのどをやられて体調を崩す方もいらっしゃいます。
たいてい長袖などの厚着の準備をするようおすすめしています。

<入院費用>
・ 入院前に頭金1~2万円程度要します。
・ 自由診療であるため、部屋や治療費用は一定ですが、担当医への診療費(ドクターフィー)はその医師の技術料として変動します。利用する室料によっても変動します。このドクターフィーは医師側と患者側との話し合いにより値段の交渉することも可能です。
・ 検査・治療の説明をする時、日本と違うのは医師がその検査に要する費用を必ず説明し、同意を得てから治療が始まります。特に高額な治療・検査費のかかる行為は(心臓や脳血管手術などはもとより気管内挿管や高カロリー輸液、内視鏡検査なども含め)患者やその家族からの治療費支払いの同意がないとおこなわれません。

<医師の選定>
・ 医師は病院が雇用しているわけではなく、個人で複数の病院に登録し、外来の診察部屋を借りています。医師一人一人が開業をしているような状況です。入院した病院に登録している医師であれば、医師を患者側より指名することができます。

自分がまさかとは思っていても、やはり自己や病気は海外でもつきものです。思いもよらぬ高額な出費で日本の家族から送金してもらい、そのやりとりだけで一週間かかってしまったり、はやくに日本に帰ろうと思っても、重い病状の中、医師付き添いの飛行機搭乗では数百万円から一千万円を超えることもありフィリピンでの治療を選択せざるをえないなど病気と関連する経済的なトラブルも少なくありません。

このような大きな事故や病気の頻度は本当に少ないのですが、おきる度に海外旅行傷害保険加入の重要性をひしひしと感じます。医師付き添いによる搬送や入院治療費を全額カバーするものが多く、安心して治療を受けることができるからです。長期出張の場合もできれば加入が望ましいのですが、特に短期出張や旅行の場合は加入を強くおすすめしますし。クレジットカードに自動付帯されていることの多い海外旅行保険(日本出発90日以内に発症した病気はカバーされます)のことを知らず入院費を自己負担されていらっしゃる方もおられるようです。
また、万が一の事故や病気に備え、日本の家族や会社の連絡先、企業では産業医や健康管理センター担当者などといつでも連絡がとれるような体制も重要と思われます。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇ジャカルタ大洪水と感染症

去る2月1日から2日かけてジャカルタとその近郊に大雨が降り、ジャカルタ市内のいたるところで河川が氾濫し道路までも川のようになってしまいました。
地域によっては多数の住宅が床上浸水し、邦人の住宅でも被害を受けたケースが沢山あります。冠水により家屋の家具・電気器具が使用不可能になり、食料品も駄目、電話、インターネットは不通、水道供給も不安定な状態、ところによっては数日間停電となり非常に不安な日々を過ごされたわけです。復旧がままならない場合には、想像に余る大変なご苦労が続いた筈です。


幹線道路も川同然に


私が実際に経験したことの一端をお伝えしますと、洪水直後のスーパーマーケットでは物資不足状態となりました。普段買い物をしているマーケットに飲料水を買いに行きましたが、既に売れ切れていて棚にはペットボトルが全く並んでいません。そうして、買い物客がジュースや保存食品を争うようにして買いあさっている場面にでくわしました。普段は客がまばらなスーパーマーケットも品物を漁るお客さんで一杯でした。
2月3日(土)の診療日には「途中までボートに乗って来ました。今夜はホテルで過ごすしかありません」という患者さんもおられました。アパートの周囲が洪水で池のようになってしまったところでは、子供を中心とする臨時のボート屋さんができて、皆さんを有料で運んで商売をしているとの事でした。
日本からもボランティア医療チームが派遣され物資の援助や医療援助が行われています。チームメンバーは、下水道の不備、排水溝の詰まり、川のごみの多さ、更にはそのごみだらけの川で泳いでいる多くの子供たちのたくましさにも驚いた様子でした。


冠水路を走るバス


洪水被災者の感染性消化器疾患、呼吸器疾患の患者さんの急増により、病院によっては病室が満床となり、急遽廊下を使ったりテントを設営して診療に当たっています。今後は水溜りが多くなることでデング熱患者の発生増加が心配されています。
2月11日、新たに鳥インフルエンザの患者さんが死亡し、インドネシアでの合計死者は65名になりました。洪水被害による栄養状態低下により更に患者数が増加するのではと懸念されます。

在住邦人にとっては慣れない衛生環境の悪化により、肉体的、精神的な疲労も積み重なってきています。当医療相談室を受診される患者さんの中にも疲れきった様子の方が多くみられます。
一日も早い衛生環境の改善、インフラの復旧を願いたいものです。
今回被害に遭われた方々の健康が損なわれないことをお祈りいたします。


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇薬剤耐性菌について考える

“薬剤耐性菌”とは“いろいろな抗生物質が効きにくくなった細菌”のことです。耐性菌が蔓延する背景には、“抗生物質の安易な投与”が原因として挙げられています。

“風邪で(抗生物質などの入った)点滴をする”のは当地中国においては、“一般的によく見られる光景”です。点滴の内容としては、“ベース”となるブドウ糖や生理食塩水に抗生物質を加えたケースが最も多いのですが、時には、①解熱・消炎・鎮痛剤、②抗ウィルス薬、③(極端な場合には)ステロイドを添加している場合もあるようです。

これらの薬剤に関しては、各々、①急激な血圧低下、意識消失、呼吸困難などが出現する “アナフィラキシーショック(点滴中あるいは点滴直後に起きる激しいアレルギー反応の一種)”が起きる可能性がある、②ウィルス性肝炎(B型、C型)、帯状疱疹・ヘルペス、エイズなどに対する西洋医学で用いられる抗ウィルス薬とは異なり、“その薬剤の組成ならびに効果・安全性が世界的に認められているとは必ずしも言いがたい注射薬の漢方薬)が使用されている、③肺炎の一種である“間質性肺炎”の一部や中等度以上の“気管支喘息”などでは時に有効ですが、“(単なる風邪ではなくて)結核であった場合”などではむしろ“禁忌(投与禁止)”であるなどの理由で“第一選択の治療薬”として推奨されるべきものではないと考えます。従いまして、経過等から、上記疾患が少しでも、疑われる場合には、必要な検査(血液検査、胸部CT、喀痰培養検査など)をしてから治療を受けるのが望ましいと思います。

“ベース”となるブドウ糖や生理食塩水に関しては、経口摂取もままならず、“身体の水分が絶対的に不足した状態(脱水)”であれば、体内の水分を補う“補液”としての意味はあるかと思います。しかし、実際には、①食欲も十分に有り、飲水も十分に可能である。②頻回の嘔吐や下痢も無い。③発熱が比較的軽度である(一般的には37℃台)、④舌の乾燥、皮膚の緊張度の低下、頻脈などの“典型的な脱水症状”を認めない場合でも、漫然と(時には10日~2週間)投与されていることもあるようです。

“耐性菌”としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が最も有名ですが、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性インフルエンザ菌(BLNAR)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)といった耐性菌も、医療関係者の間では良く知られるようになってきています。“耐性菌”そのものは、“食中毒を起こすような他の細菌”(コレラ、赤痢菌など)や時として集団感染を引き起こす“結核菌”などと比べると、決して“病原性が高い”ものではありません。しかし、乳幼児、高齢者、免疫機能低下患者(エイズなど)、腎透析患者、糖尿病患者、ステロイド服用患者(関節リウマチや気管支喘息の患者など)の場合(compromised host)には重篤な感染症、つまり、肺炎や敗血症(血液中で細菌が増殖する状態)などを引き起こす場合がありますので注意が必要です(これを“日和見感染”と呼びます)。

耐性菌に関する調査結果によると、“黄色ブドウ球菌”や“表皮ブドウ球菌”の半数以上がMRSAであると言われています。最近では“肺炎”の主要な起炎菌である“肺炎球菌”や“インフルエンザ菌”(インフルエンザウィルスとは異なります)においてもPRSP、BLNARなどの耐性菌が徐々に増加してきています。

日本感染症学会と日本化学療法学会の作成した「抗菌薬使用の手引き」には、抗菌薬利用の際には三つの観点が必要であると書かれています。
1.患者を治す-個人防衛
2.耐性菌を増やさない-集団防衛
3.医療資源の有効活用-社会的防衛

米国での研究によると、“抗菌薬を処方する”よりも、“抗菌薬が無効であること”などを丁寧に説明をした方が患者様の満足度が高いようです。患者様に“正確な情報を与える”ことも医師の重要な役割の一つではないかと思います。