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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL07010101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇2006年のデング熱

先月に続いて感染症の報告です。近年、シンガポールではデング熱が流行を見せていることをお知らせしてきました。

一昨年(2005年)、シンガポールではデング熱が流行し、多い週には一週間で700人を超える患者さんを出し、2005年の総患者数は前年より約5000人増え、14210人(シンガポールの在住人口数は約430万人)となり、記録がある中では最多となりました。デング熱にはいまだ、有効なワクチンや治療法がないため、蚊の発生源をなくすということ以外にこの病気を押さえ込む方法はありません。そこで、国を挙げての徹底的な蚊の撲滅対策により、2005年の末から患者数は減り、昨年は総数で3126人にまで減らすことが出来ました。

下図は1週間あたりの患者発生数を年初から並べたものです。水色が2005年、赤が2006年です。2005年に比べ、2006年の患者数が激減していることがわかります。若干7,8月頃が多めですが、これは例年と同じ傾向で、気温の上昇との関連が指摘されています。

シンガポール政府がとった対策は患者数を1/4以下にしたということで大変効果的であったわけですが、それでも、3000人以上の患者さんが未だに出ているということは、都市部でも生息する蚊を完全に撲滅することがいかに難しいかを示しているとも言えます。

今後も引きつづいての蚊の撲滅対策、ワクチンの開発などが望まれます。






◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇マニラの四季?

フィリピンの印象は「1年中暑い国」とのイメージがあると思います。ところが無数の島国から構成されるフィリピンは地域によって気温や湿度、気候が異なります。
 
我々の住むマニラ首都圏は基本的に雨季(6~10月頃)と乾季(1~4月頃)に分かれ、1年のうち日中に気温が25度を下回ることはまずありません。しかし、マニラに赴任し2年がたち1年のサイクルを2度経験すると、マニラにも四季のようなものがあると感じることが多々あります。

実際に生活していても、最も暑い3~4月頃には熟れたおいしいマンゴーが店頭に並び、日が暮れるのも遅く、イースター(キリスト教復活祭)の連休と重なることもあり、子供達は真っ黒に日焼けしプールで泳いだり、ダイビングや家族旅行にでかけたり首都圏で働くフィリピン人は休暇を利用し生まれ故郷に帰るなど、皆気分がなんとなく高揚する時期です。

また雨も少なく涼しい11~1月はゴルフ日和ですが、プールに入るにはちょっと肌寒い時期です。反対に雨季はジメジメし空もいつも薄暗く各地で洪水が発生し、通勤・通学や仕事へも影響がでることもあります。なんとなく気分は沈んでしまいます。

生活面では四季のようなものを感じるのですが、実は診療所で経験する病気も日本同様、四季それぞれに特徴的な病気がはやることに気づきました。雨季から乾季への季節の変わり目には、日本の春や秋同様に気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などアレルギー症状の悪化がめだちます。

また最も寒い1月頃にはフィリピンでもインフルエンザがはやります。夏場に当たる3月~5月は海などで珊瑚やクラゲによる皮膚創傷、あせも・とびひなどの皮膚疾患がはやります。脱水症状により誘発されやすい尿管結石や膀胱炎も増えます。

雨季には熱帯地域特有の感染症であるデング熱や腸チフス、アメーバ赤痢による下痢、胃腸炎がはやります。また日本の5月病のように、なんとなく気分がすぐれない、持病が悪化する、頭痛、イライラなどのメンタル不全もおこりやすい時期です。

そして日本と比べ、1年を通じてめだつのが、喉や耳を真っ赤に腫らして長引くかぜです。これは温度調節が効かない空調の中での屋内外の激しい気温差や世界有数の大気汚染も影響しているのではないかと推測され、大変悩まされるものです。

もちろん日本のように明確な四季はなく暑い正月というものしっくりいかず、なんとなく四季感が薄れてきて寂しさもあります。しかしここフィリピンでも微妙な気候の変化によっても人々の生活は大きく影響され、気候により流行る病気も異なるというのは興味深いことです。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇航空搬送に適さない病態

2004年9月号に「航空機旅行に適していない病態」について概略を書きました。施設設備の関係から航空搬送すべき病態もあると思います。しかし今回は“適応でない病態”にもかかわらず航空搬送により、かえって悪化してしまった幾つかの例を紹介させていただきます。
「インドネシアは医療水準が低くジャカルタで医療を受けるのはイヤ」と思っている方もおられましょうが、適切な判断の一助になればと思います。
あわせて、搬送会社の医師の意見に頼るだけでなく、ご自分・ご家族の生命を守るためにも皆さん自身も適切な知識と判断力を持つようにお願いします。
そうして、実際のケースに際しては「(搬送すべきでないのに)航空搬送してくれてありがとう」ではなく「なぜ航空搬送しないといけないのですか?」と利点とリスクを確認するようにしてください。命がかかっているのです。
それと共に、信頼する医師に意見を求めることが大切です。

患者を緊急搬送してくれる組織があることは大変有り難いことです。
しかし、ジャカルタでの医療を避けようとする気持ちに便乗して患者を国外に搬送しようとしていないか、ケースバイケースのチエックが必要です。インドネシアでは日本と異なり搬送会社が利益を得るのみでなく“同乗した医師にもボーナス”が入るという仕組みがあることは念頭においておくべきです。
特に日本人の患者さんは自費ではなく保険でまかなわれることが多いし、会社の上司の方も情報不足から搬送会社の医師の勧めに応じてしまうことが有るかも知れません。時には邦人同士の誤ったアドバイスの下に患者さんや家族のほうから申し出てしまうことがないでしょうか。

以下の病態はいずれも医学的に航空搬送には適さないとされている症例です。それにもかかわらず航空搬送され低圧、低酸素、低湿度状態の機内環境により極めて深刻な状態に陥った例です。

1)腸閉塞
腸閉塞の患者さんは航空搬送に不適応です。
ある腸閉塞の患者さんが医師同乗で航空搬送され腸管が穿孔(腸が破裂すること)して便が腹腔内に漏れ出し病態が更に悪化、腹膜炎を起こして重篤化してしまったケース。ジャカルタで内科的治療にて改善したであろう患者さんは航空搬送されたがゆえに手術を受けなければならなくなりました。患者さんはある搬送会社医師の勧めでチャーター機にてシンガポールへ搬送され、機内で腸管の穿孔を起こしたと思われます。

2)頭蓋内圧亢進(脳が圧迫される)をきたす疾患
硬膜外出血は航空搬送に不適応です。
外傷性硬膜外出血の患者さんが航空搬送されたことにより頭蓋内圧が亢進し病態が悪化した例。ジャカルタで治療していたら内科的治療か直径1cmくらいの穴を頭蓋骨に開けるだけで済んだ治療が、飛行機内の低圧環境下で出血が増悪し脳圧亢進(頭蓋骨内部の圧力が高くなり脳を圧迫する)がおこり病態が悪化してしまいました。結局到着地シンガポールで直径10cm以上の頭蓋骨を取り外す治療をしなければならなくなってしまいました。

3)重症心不全
重症心不全の患者さんは航空搬送には不適応です。
駐在地では下肢の浮腫みがひどく、息切れのため歩行により動悸が起こる状態でした。日本に航空搬送され成田空港に着いたときには更に呼吸が苦しくなり成田空港から即刻近くの予定外の病院へ入院となりました。

4)急性心筋梗塞
急性心筋梗塞直後(6週間以内)の患者さんは航空搬送には不適応です。
急性心筋梗塞の患者さんが胸部圧迫症状が消失したため、約1週間後に日本へ航空搬送。成田空港到着後に胸部圧迫症状再出現。冠動脈バイパス手術を受けました。ジャカルタで心臓カテーテルによる検査・治療を受けていれば内科的治療が可能であった症例です。家族は「日本で手術が受けられて良かったです」と感謝していたそうですが医師は大いに反省しなければなりません。

以上の通りですが、航空搬送によって助かっている患者さんも多くいると思われる一方、医師の判断ミスによって搬送されたために病態が悪化したケースも少なからず見受けられます。また、飛行機に同乗した医師の技術不足により病態変化に対応できず悪化したケースも見られます。
繰り返しになりますが、健康に不安のある患者さんが飛行機に乗る場合には信頼できる医師のセカンドオピニオンを受けることが大切です。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇代替医療(CAM)の現状と問題点

代替医療とはComplementary and Alternative Medicine(CAM)の略語です。
代替医療のカバーする範囲は広く、“世界で伝わる伝統医学・民間療法”だけでなく、“保険適用外の新たな治療法”も含まれます。具体的には、“ハーブ療法”、ビタミン・微量元素等の“サプリメント療法”、“栄養補助食品(抗酸化食品群、免疫賦活食品など)”、“アロマセラピー”、“漢方治療(中国医学)”、“鍼灸療法”、“指圧・按摩療法”、“気功”、“インド伝統医学”、“食事療法”、“免疫賦活療法”、“精神・心理療法”、“温泉療法”、“酸素療法”などが含まれます。

当地、中国におきましては“漢方治療”、鍼灸療法”、“指圧・按摩療法”などが一般総合病院(当院含む)で行われているのが現状です。これらの代替医療の中には、“非科学的”であり、“西洋医学を実践する(医師や薬剤師をはじめとする)医療従事者にとって、受け入れがたい”ものもあります。しかし、一部の治療法については、最近、“有用性”や“作用機構”が(徐々にではありますが)科学的に証明されつつあるのも事実です(アメリカでは、近年急速に脚光をあびている医学分野の一つです)。

日本での最近の調査によると、“癌”の補完代替医療としてのCAM利用率は45%であり、予想以上に普及していることがわかります。わが国で、癌患者が利用しているCAMの多くは、いわゆる“健康食品(アガリクス、プロポリスなど)”です。

これらの健康食品の癌に対する効果を証明するための、“臨床試験(動物実験ではなく、ヒトにおいて有効であるか)”は現在までのところ、必ずしも十分に行われているとはいえません。しかし、実際には、動物実験などにより、癌に対する効果が強調され、多くの癌患者などで使用されているのが現状です。米国では、現在、CAMの有効性を検証するための臨床試験が進められていますが、今後、中国や日本においても同様の取り組みが必要であると思われます。

なお、“癌治療におけるCAM”の問題点として、
1)癌の“診断自体”が正確に行われていない場合がる。
2)術後の“補助療法”の症例でありながら、“代替療法そのものにより、病巣が実際に縮小しているかどうか”、明らかでない場合がある。
3)主観的な効果評価項目(“気分が良くなった”、“元気になった”など)を使用している。
4)一部の“例外的な長期生存”を取り上げている場合がある。
5)直前あるいは同時期に“他の治療(西洋医学的治療など)”が行われている。
6)漢方薬のように“含有成分”や“製品の製造過程”などが不明である場合がある
7)“後ろ向き研究- retrospective study(カルテなどを参照して過去を振り返って検討した研究)”であるため、必要とされるデータが欠損している場合がある(これに対して、対照群と治療群にランダムに割り付けてデータをとってゆく方法を“前向き研究 -prospective study”といいます)。
などが挙げられます。

多くの代替医療においては、健康に重大な害を及ぼすことは“ほとんど無い”か、あるいは“稀である”とされていますが、“一部のダイエット食品”には、健康被害(摂取することにより予想外の副作用が生じること)が報告されているものもありますので、注意が必要であると思われます。