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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06120101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇感染症小報告

水痘
先ごろ日本人の子弟が多く通う教育施設で、水疱瘡がはやりました。幸い多くのお子様が既に予防接種を受けていたこともあり、症状の程度は軽い方が多かったようです。

シンガポール全体では特に流行していたということはないようです。ここ5年間の患者数の平均は約19000人、昨年と今年はほぼ同数でこの時期までの累計は約23000人となっています。日本では年間の患者発生数は30万人程度と考えられていますので、人口比(シンガポールは日本の1/30)からするとシンガポールが日本の2倍の発生率となっています。しかしながら、シンガポールでは全例保健省に報告ですが、日本では定点把握ですので実際にはこれほどの差はないかもしれません。

結核
また、先月、日本人子弟も多く利用している教育施設の職員が結核にかかっていることがわかりました。診断後は速やかに施設からも発表があり、政府系施設のTuberculosis Control Unitが接触者検診を実施しています。シンガポールの2005年の年間の結核患者の発生数は1341人でした。日本では約3万人程度ですので発生率は日本と同じ程度といえます。かつてはシンガポールも日本と同様に結核の蔓延国でしたが、さまざまな対策により現在の数にまで減ってきたといえます。それでも、発生率からみますと日本、シンガポールは西欧諸国と比べますとまだ、数倍の高さとなっています。

日本脳炎
東南アジアは日本脳炎の流行地帯で年に3-5万人の患者発生があるとされています。シンガポールはここ10数年、国内発症は確認されていませんでしたが、2005年に1名の、海外渡航歴のない方が発症したことが確認されました。

狂犬病
先ごろ、フィリピンでイヌに咬まれたことが原因と考えられる狂犬病の発生が2例、日本で報告されました。いずれの方もお亡くなりになりました。発症したら治療法はなく死亡率はほぼ100%です。世界では年に5万5千人がこの疾患で死亡しています。イヌ、こうもりなどの動物に咬まれた後、感染を危惧して予防接種する方は年に1000万人に上るとされます。シンガポールは狂犬病の発生は報告されていませんが、周辺東南アジア諸国では発生が見られるので、出張などで頻繁に周辺国に行く機会のある方などはこの機会に受けておくのもよいでしょう。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇医療情報交換会

年に一度の海外邦人医療基金主催の各拠点医師や産業医との医療情報交換会が11月末に東京で開催され参加してきました。テーマは“海外派遣社員のメンタルヘルス”であり、今回はフィリピン派遣社員及び帯同家族のメンタル事情についてまとめます。
 
フィリピンへの派遣社員及び帯同家族は現在マニラ首都圏で約8000人いるといわれています。赴任の理由は様々であり、自分で希望する場合、全く予期せず赴任命令が直前にある場合、任期がはっきりとしない、日本にいつ帰れるのかわからない、他の国に異動するか定かでない場合など、常に不安がつきまとうのは海外赴任の宿命であるといえます。また帯同家族も子供の受験期、親の介護、出産、結婚と重なり日本を行き来しなくてはならないような二重生活を余儀なくされたりした場合のストレスは予想をはるかに超えるものです。

諸外国と比較し、フィリピンで駐在員が生活する中でのストレス要因で特徴的なものは、生活面ではメードさんを雇うケースが9割を超えるということ、車を使用しなければ生活ができないこと、娯楽が少ない、治安が悪いため女性や子供一人での行動は困難なことなどがあげられます。

またフィリピンの環境面からみると、世界でも有数の大気汚染国であり長時間の外出で疲労しやすく慢性的な呼吸器疾患をおこしやすいこと、フィリピン人とともに働くなかでの宗教上の問題(キリスト教信者が国民の8割を占めるといわれています)、治安が悪いため仕事でも生活でも常に緊張感を強いられることなどがあります。

このようなストレス要因が多い環境の中ですが、実際フィリピンでメンタル疾患にかかり来院される駐在員や家族の方々のストレスはというと、興味深いことに異文化のストレスであるよりもむしろ日本同様、職場の中での日本人同士の人間関係のもつれや、家庭内での問題、子育て、子供の受験、結婚と引越しが重なったなど、本当にどこでも起こりうる身の回りの出来事がきっかけとなりメンタル不全を起こす方が以外に多いということがわかりました。

日本であっても異文化の中であっても、やはり自分のすぐ近くで起こる家族の問題や職場や日本人同士のつきあいの中で生じる問題は日常的に起こるものであり、またそういった身近な出来事が最も個人の生活に影響するものであることを改めて感じました。

ストレスへの対策は日本同様、家族や職場でのコミュニケーションを怠らず、体調がいつもと異なる場合は、無理なスケジュールをこなしていないかもう一度生活のリズムを見直し、休養をとりながら自分にあった生活リズムを取り戻していくことが重要であると思われます。そしてメンタルの問題を気兼ねなく相談できる家族や上司、日本での友人や派遣元の職場や産業医などより多くの窓口があれば、未然に防ぐことが可能なメンタル疾患も多いのではないかと思います。

また他の疾患同様、もともとメンタル不全で日本での通院歴がある方は赴任前にお薬の情報も含めた英文の紹介状を主治医に書いてもらいましょう。万が一諸外国でメンタル不全になっても、現地の専門医がよりスムーズに治療介入できる手がかりとなります。 

 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇ムチ打ち損症(頚椎捻挫)―ジャカルタ交通事故事情

2006年11月、交通事故による「ムチ打ち損症」による患者さんが3名受診しました。
1名の方はMRI検査で頸髄(脊髄の首に位置する部分)に障害を受けていることがわかりました。
ムチ打ち損症は車の衝突時などに頸椎(脊椎の首の位置)がムチのようにしなることで発症するため、このように呼ばれています。ムチ打ち損症時、後方から追突された場合は衝撃を受けた頸椎は(1)強く後方に倒れ(過度伸展)、続いて反対方向に慣性力でより強く(2)前へ倒れ(過度屈曲)ます。シートベルトを締めていなかったり横からの衝突では体の振動が大きく揺れたり左右に振れることになり症状が重篤化することになります。

今回の3名の患者さんはともに後部座席に座っていてシートベルトをしめていませんでした。ヘッドレストの位置も不適当だったようです(ヘッドレストはシートバックの上部に付けられた頭部をサポートするための枕のようなものです。追突などによるムチ打ち損症対策と頭部を楽にする目的で、現在はほとんどの車に取り付けられています)。また女性は男性よりも首が細く、筋量が少ないため、ムチ打ちを起こしやすいと考えられています。

交通手段が車社会のジャカルタでは自動車事故には注意が必要です。

不幸にしてむち打ち損症になってしまい、頸部痛、運動痛、首の動きの動的制限、四肢筋力低下、知覚障害などがあればレントゲン検査やMRI検査を受けましょう。
受傷当初は頸椎カラー装着で頚部の安静固定を、そして病態の軽快とともにリハビリテーションを行います。
3ヶ月頃の慢性期には頸部痛、耳鳴り、めまい、集中困難など自律神経障害が目立つこともあります。上肢のシビレや重感が長引くこともあります。

2005年日本で1年間に起きた交通事故で、自動車の後部座席にいた人のうち、シートベルトをしていなかった人の致死率は、着用者の4倍に上ることが警察庁のまとめで分かりました。 運転席や助手席に比べ、後部座席のシートベルトの着用率は10%未満と低く、警察庁では、今後、法律で着用を義務付けるかどうか検討するそうです。

ジャカルタで生活している皆様は後部座席に乗るときにシートベルトをしていますか。
ヘッドレストを適切な高さに調節していますか。
命や半身不随に関わる大きな事故にもつながりかねません。「めんどうだ」と考えず、ご家族皆さんで注意しあいましょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇うつと不眠について

“慣れない海外生活”、“職場・地域社会・学校・家庭での様々な人間関係”、“日本本社からの精神的プレッシャー”などが原因で“眠れない”という症状を訴える患者様が増えてきているようです。一口に“眠れない”といっても、いわゆる寝つきが悪い“入眠障害”の他に、夜間や早朝に目が覚める“中途覚醒”、十分に眠った感じがしない“熟眠障害”などがあります。以前のニュースレターで“心の健康を考える”というテーマで述べさせていただきましたが、今回はその続編です。

最近、日大の研究チームが、“睡眠時間が7時間台の人の精神状態が最も健康的で、それより長くても短くてもうつ状態が強くなる”ことを報告しました(この調査は、20歳以上の男女約2万5000人のデータを解析したもので、“うつと不眠”の関係を調べた“国内外で最大規模”の調査です)。

この報告によると、睡眠時間毎の“うつ状態”の割合を比較したところ、睡眠時間が「7時間以上8時間未満」の群は、「うつ状態」の割合が23・5%と最も低く、「5時間未満」の群は47・9%、「10時間以上」の群は50・2%に達したという。このことから、睡眠時間が“短すぎること”、あるいは“長すぎること”も精神衛生学的観点からすると、問題があるといえます。

また、“うつ病と不眠”との間には関連性があることは、以前より知られていましたが、これまでは、夜間や早朝に目が覚める“中途覚醒”が多いと考えられてきました。しかし、今回の報告では “うつ状態”の人は、寝つきが悪い“入眠障害”の人の方が多いことがわかりました(“中途覚醒”は36・7%で、“入眠障害”は47・4%)。

さらに、寝る前にお酒を飲む“寝酒”をする習慣が1週間に1回以上ある人の割合は、男性で48%、女性で18%であり、寝酒をする人の割合が最も高い年齢層は男性で55-59歳、女性は40-44歳だったそうです。

この “寝酒”と“寝付きが悪い”、“夜間や早朝に目が覚める”といった“不眠”の症状との関係を“多変量解析”と呼ばれる方法で調べたところ、“寝酒”と“不眠”との間に有意な関連があることが分かりました。つまり、“寝酒”を定期的に行っている人(週1回以上)の半数以上が“不眠”の訴えがあったそうです。この結果から、 “寝つきをよくするため”に“寝酒”をすることにより、かえって不眠が起きる可能性が明らかになりました。

次に“うつ”についてあらためて述べたいと思います“うつ”の症状としては、“気分がすぐれない”、“何事にも興味が湧かない”、“思考力・集中力が無くなる”などの精神症状だけでなく、“食欲がない”、“眠れない”、“疲れやすい”などの“不特定の身体症状”があります。この状態が長期間続くと“生きていても仕方がない”、“死にたい(希死念慮)”などと考えるようになります。

ちなみに、精神科で使われている “うつ病の診断基準”は以下の通りです。
1. 抑うつ気分
2. 興味または喜びの喪失
3. 体重減少(あるいは体重増加)
4. 不眠(あるいは過眠)
5. 精神運動静止または焦燥
6. 易疲労性
7. 無価値感または罪責感
8. 思考力減退または決断困難
9. 死についての反復思考

A) 上記症状のうち1.と2.を含む5つの症状が同時に2週間存在し病前の機能の障害を起こしていること
B) 器質性障害や薬物の作用による障害などでないこと

[現行の診断基準としては、WHOによるICD‐10(1992年)と米国精神医学会によるDSM‐Ⅳ(1994年)があげられ、ICD‐10では気分(感情)障害、DSM‐Ⅳでは気分障害という診断名が採用されています]

この診断基準は、例えば、高血圧や糖尿病、高脂血症などの“身体疾患”の場合と同様に、 “正常状態と異常状態”の“線引き”をするために“便宜的”に設けられたものです。従って、“限りなくうつ病に近いが診断基準は満たさない”いわゆる“グレーゾーン”の人については、“御自身で気が付いていない”場合には、周囲の人(家族、知人、友人、会社、学校、地域社会、日本本社など)が早めに気付いてあげることが大切です。