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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06110101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇伝統的中国医療(漢方)について

2001年11月、シンガポールで伝統的中国医療(Traditional Chinese Medicine)を行なうためには、シンガポール保健省への登録が必要であるとする法律が成立しました。伝統的中国医学を教える教育機関から与えられた資格証明書などを保健省に提出することが必要となったのです。

この法律は鍼灸師については2002年から、中医師(伝統的中国医学を行なう医師を中医師と呼びます。日本流に言えば漢方医となります。)については2004年から実施されました。それまでは正式な政府公認の資格はなく、極端なことをいえば誰でも宣言さえすれば、中医師となれたのです。もちろん、ほとんどの人はしかるべき教育機関で教育を受けて、その機関から承認されて中医師となったのですが、中には、家業を受け継いだだけという方もいたようで、その知識、技量の程度にはかなりのばらつきも見られていたとの事です。この登録制度により中医師資格は、西洋医学の医師と同様に、正式な国家資格として認められることになりました。

シンガポールには現在、約1500人ほどの中医師が登録されています。(ちなみに西洋医学の医師は7000人ほどです。)

シンガポールで指導的なある中医師養成機関は50年以上の歴史を持ち、毎年、30名程度の中医師を送りだしています。全日制5年間と夜間7年間のコースがあります。また、2006年には西洋医学の医師のために、英語で針灸を教えるコースも設立されました。また、ここは、医院としても機能しており、月に約2万8000人もの患者さんが利用しています。これは一回の医療費が数ドルであるという安さも魅力となっているようです。年齢層も幅が広く、患者さんのうち46%は51歳以上、35%は31歳以上50歳以下、19%は30歳以下の方だそうです。

ちなみに、現在、シンガポールで医療を受ける患者さんのうち12%は伝統的中国医療を行う施設の患者さんとなっています。
正式に国が認可したことを受けて、シンガポール国立大学にも西洋医学の医師資格と同時に中医師の資格をとれるコースが2005年に設立されました。

西洋医学の医師を対象にした針灸の教科書は中国の上海中医薬大学と南京中医薬大学が共同で編纂したもので中国語に英語が対訳として書かれています。

シンガポールの医師は全員、中国語と英語の二言語教育を小学校から受けていますので今後、シンガポールの医師らが伝統的中国医療と西洋医学との架け橋として大いに貢献することになると思われます



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇メディカルツーリズム

フィリピンでは数年前より医療観光事業に力を入れ始めています。特に一年ほど前からは各総合病院も本格的に取り組みはじめ、病院のホームページでもメディカルツーリズムの取り組み内容を独自に記載する病院が増えてきたようです。

この医療観光業は東南アジアを中心にメキシコやコスタリカ、南アフリカなどでも展開されています。目的は欧米などの先進国や中東諸国の裕福層を対象とし、より低料金でレベルの高い医療を提供することです。医療分野は内科、整形外科、心臓の手術、脳外科領域の手術、移植などほぼ全領域にわたっています。

特にフィリピンで宣伝している内容はアメリカ合衆国やオーストラリア、日本などで研修を積んだ医師が多いこと、英語でのやりとりが中心であること、そして治療にあわせ、エステ、ショッピング、海や遺跡の観光などを盛り込んだツアーが可能であることをうたっています。

実際、まだまだ本当に高度な手術や治療を目的として欧米や日本からやってくる人は少なく、フィリピン周辺諸国に住む外国人が観光目的で来比し、そのさいに人間ドックなどを受けていく人達が大半とのことです。このような人々や比人海外労働者も含めると医療観光目的で比を訪問した外国人は20万人に上ったとフィリピン厚生省は報告しています。利用度の高い分野は美容整形外科、眼科、歯科だそうです。

確かに、簡単な美容整形手術や眼科での視力回復手術(レーシック)などは日本の半額から三分の一以下であり、比国に住む日本人も手軽に治療をうけられている方も多いようです。最先端機器を導入し、外国人向けに積極的に治療をおこない、技術的にもしっかりとして安心して治療をうけられる専門クリニックも徐々に増えてきています。

こうしたいわゆる手軽に受けられる美容手術や歯科検診、健康診断が目的という印象があるメディカルツーリズムとは少し方向性は異なりますが、現在日本で現在社会問題化している腎移植についても、フィリピン厚生省は外国人に対して腎臓を提供するのは禁止していないという見解を示しています。この腎移植については、フィリピンでは以前より積極的におこなわれており、年間あたり外国人へ提供できる割合は定められているものの、先進国から移植を希望する患者さんは増加傾向にあるようです。
 
臓器移植に関しては提供者や臓器の売り渡しなどの不透明な問題もからみ、積極的におこなうべきかどうかということは、非常に難しく結論が出にくい部分だと思います。しかし日本では臓器提供についての厳格な制限基準がある中で、もしかしたら近い将来、移植を目的とした日本人の患者さんも増えていくのかもしれないということが頭をよぎります。

フィリピンだけでなく、各国が国をあげて取り組み始めたメディカルツーリズム。何十年か先には質の高い治療を求め、多くの患者さんが国境を越えて各国を容易に行き来する時代がもしかすると来るかもしれないと思うこの頃です。

 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇急性肺血栓塞栓症(旅行者血栓症―エコノミークラス症候群)

先日、呼吸苦を主訴とする患者さんが受診しました。診断は「急性肺血栓塞栓症」でした。

日本に比べてジャカルタでの生活は長時間身体の動きが制限される車や飛行機での移動が非常に多いです。肺血栓塞栓症は、ほとんどが運動制限により出来た下肢深部静脈血栓が遊離し、それが心臓から肺へ流れる血管に詰まることによって発症することが知られています。その血栓の大きさや、心肺予備能によっては、突然死という最悪の結果につながることがあります。長時間の飛行機旅行や車の移動中、じっと座ったままでいることによって、下肢静脈血栓症が起こりそれに続発する肺血栓塞栓症が発症します。一般に、中高年の女性に多く、飛行機や車より降りた直後に呼吸苦、動悸、息切れなどの症状が発症し、時には失神、突然死に至る場合があると考えられています。

“動かないこと”、物理的・体質的な血液凝固能の亢進などがリスクファクターになります。2004年10月、日本の中越地震時の調査から一晩の車泊でも急性肺血栓塞栓症の危険因子になることがわかりました。

また肥満や食生活の欧米化も血栓形成のリスクファクターに挙げられています。高齢化社会の到来(ADLの低下)、糖尿病、高脂血症、下肢静脈瘤、手術後、妊娠、外傷、経口避妊薬や女性ホルモンの使用などもリスクファクターであることが分かっています。

予防するには、適度の水分摂取、車や飛行機の中で、できるだけ下肢を動かし、リラックスした服装を着ることなどです。

急性肺血栓塞栓症を疑ったらまず施行すべき検査は胸部レントゲン、心電図、心エコー、血液ガス検査(酸素飽和度)、血液検査などです。
治療には内科的治療と外科的治療がありますがジャカルタで外科的治療を行える施設は限られています。

正月や受験シーズンを備え、これからの時期は日本への帰国や長時間身体の動きが制限される時間が増えてきます。体だけでなく心の気分転換も含めて飛行機や車内でのリラックス運動に心がけましょう。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇中国で狂犬病患者急増

10月23日付けの人民日報によると、“衛生省は、今年1月から9月までの全国の狂犬病患者発生数が、昨年同期比29.7%増の2254件に上ったと発表した”そうです。9月だけでも318人が死亡しており、5カ月連続で“中国の感染症による死亡原因のトップ”となっています。

専門家は、都市部ではペットとして、農村部では番犬として犬を飼う家庭が年々増えていることを指摘しています。“飼い主らが予防接種などの狂犬病対策を怠っていること”や、“咬まれた後の適切な治療が行われていないこと”が狂犬病急増の原因となっていると考えられています。

狂犬病は日本やオセアニアなどの一部の地域を除いて、全世界に存在する病気です。狂犬病の動物との接触、主に噛み傷より感染し、発病した場合にはほぼ100%死亡します。ヒトの場合には、潜伏期間は通常20日から60日前後と考えられています。

狂犬病には“恐水型”と“麻痺型”があります。“恐水型”は、発熱、頭痛、全身倦怠感、嘔吐などの“感冒様の症状”、咬傷部位に掻痒感、熱などの“異常感覚”を覚え(前駆期)、急性期には不安症状や精神錯乱などの“神経症状”を起こし、ついには“呼吸障害”によりほぼ100%が死亡します(昏睡期)。液体を飲むと、のどが“けいれん”を起こして、非常に苦しくなり、“水を見ただけで恐れるようになるために狂水病ともいわれます。“麻痺型”では急性期の“神経症状”はなく、認められる症状は“麻痺”が中心です(死亡までの期間は“恐水型”と比べると長いといわれています)。ウィルスは皮膚や筋肉などの軟部組織で増殖し、神経を伝わって脳に移行し、中枢神経症状が出ます。脳から再び神経を伝わって唾液腺に移行し、唾液中にウィルスが排出されるようになります。

日本での狂犬病の発生は、1970年にネパールで感染して帰国後に死亡した症例以外には57年以降の発生はありません。この大きな要因は“犬へのワクチン接種”および“検疫制度”によりますが、“我が国が島国であること”も狂犬病が少ない要因の一つと考えられます。狂犬病の発生が認められない国は、日本以外では、英国本土、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、南極、スカンジナビア3カ国で、これらを除く世界中のほとんどの国で発生しています。特に東南アジア、中南米、アフリカなどの国では多数の犠牲者が出ています。WHOの調査によると、毎年、少なくとも4万人の患者が発生しており、暴露(咬まれた)後、予防接種を受けた人は1000~2000万人を超えると推定されています。

“犬”という名前がついていますが、狂犬病ウィルスは、犬(特に野良犬)以外に、多くの野生動物の間で広がっており、猫やキツネが感染することも知られています(米国ではアライグマ、スカンク、コウモリが多いと言われています)。2002年にアイオワ州で、20歳代男性が悪心、嘔吐、腹痛、頭痛で発症し、幻覚、けいれん、脳ヘルニア症状を呈し、12日目に死亡しました。この患者の脳の一部に狂犬病ウィルスの存在が確認されています(感染源は不明)。また、コウモリに(咬まれたのではなく)ひっかかれて感染したと推定される症例も複数報告されています。コウモリの場合には“罹患動物の唾液”由来のエアロゾル(空気中の微細粒子)からの感染の可能性が示唆されています。

狂犬病を発症していると思われる犬(“むやみに歩き回る”、“むやみに土を掘る”、“柱に何度も噛み付いたりする”、“狼のような遠吠えをする”、“よだれをダラダラと流すなどの特徴が有りますに咬まれ、傷口が大きく、大量に出血している場合には、大量の狂犬病ウィルスが体内に入る可能性が高くなります。このように、受傷機序がはっきりしている場合には、動物に噛まれた直後に、もよりの“防疫站”(日本でいう“保健所”に相当します)にて“傷の処置”ならびに“狂犬病ワクチンの暴露後接種(受傷後の発症防止)”をうけましょう。

狂犬病を持っている可能性の有る動物に噛まれた場合には、傷口を充分に水洗いし、速やかに“暴露後ワクチン接種”を受けましょう(この際、咬んだ動物が飼い犬の場合には、その犬が予防接種を受けているかを飼い主に問い合わせることが大切です)。初回接種を第1日目とし、以後、第3、7、14、30、90日目の計6回接種する必要があります(WHOの勧告では、傷が深い場合には、HRIG(ヒト抗狂犬病免疫グロブリン)の注射の併用も勧められていますが、我が国では、HRIGは市販されていません)。

子どもの場合でも大人と同量接種します。咬まれてからでも、治療ならびに予防が可能であることから、医療機関が整備された大都市に居住する場合には、(A型肝炎やB 型肝炎などの他の予防接種と比べると)“接種の優先度”は低くなります。しかし、実際には、狂犬病ウィルスを保有していても発症していない(潜伏期、一般には1~2週間前後)犬の場合には“見た目では健康な犬と区別は難しい”ので、“傷口が比較的大きく、出血が認められる場合”には、“暴露後ワクチン接種”をした方が良いと思われます(犬の場合には舐められたり、爪で軽くひっかかれた程度では通常は心配はありません)。

狂犬病の予防には予防接種も有効です。初回接種後、4週間後に2回目、半年後に3回目の接種を行います。その後の追加接種については、(我が国では決められていませんが)米国では狂犬病ウィルス感染の危険性の高い者(例えば狂犬病ウィルス研究者、ワクチン製造に関わる者など)は血液中の“抗体濃度”を測定して追加接種を行うことが推奨されています(約2年毎)。また、“傷口が汚染され、化膿の恐れがある場合”には、局部の消毒と同時に、“破傷風トキソイド”の注射も行った方がよいと考えられます。