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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06100101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇ヘイズを考える

南国の青い空はどこへ行ってしまったのでしょうか?

ヘイズとは大気中に浮遊する汚染物質の総合体、及びそれらが作り出す現象のことです。これが発生すると大気の透明度が落ち、霧がかかったようになり、遠くが見えなくなります。汚染の程度によっては、人体に害を及ぼします。頭痛、目のかゆみ、鼻づまり、鼻水、喉の痛み、咳、場合によっては息苦しさなどの症状が出ることがあります。喘息など、呼吸器系の病気がある方は症状が出やすくなります。

汚染の程度はPSI (pollutant standard index)で表されます。二酸化硫黄、オゾン、一酸化炭素、二酸化窒素、PM10(10μm以下の微粒子)などの濃度が指数化されています。0-50までのPSIの評価はGood、健康に影響なしとされます。51から100までの評価はModerate、ほとんどの人の健康には影響がないとされますが、アレルギーのある方などには症状が出始めます。大気の透明度が落ち、遠くが見えなくなってきます。60-70ぐらいで既にものを焼いたあとのような臭い(後述のようにヘイズの悪化する原因は多くが焼畑)が感じられます。視程も2-3キロぐらいに落ちます。
100を越えますとUnhealthyという評価になり、呼吸器系に病気のある方はもちろん、普段は健康な人の一部にも咳、鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどの症状が出てきます。町は、何か物を燃やしたあとのような臭いに包まれます。屋外での強い運動は避けるようにというアドバイスもされます。主観的にもとても運動などしたくないという感じがします。指数以上に健康への悪影響を感じます。

シンガポールは10月7日、1997年以来という濃いヘイズに見まわれました。学校などが一時的に閉鎖された1997年のPSIの最高値226には及ばないものの、9年ぶりの高値の150が記録されました。視程は2キロメートル以下に落ちていたようです。(普段は20キロ以上先のものが見えます。)晴天のはずなのに、太陽をはっきり見ることもできませんでした。当院には急性の呼吸器症状を訴えて来院される患者さんも増えました。

ヘイズの原因は工場や自動車の排気ガスなども一因ですが、最大の原因は焼畑の煙です。しかも、多くは違法なものだそうです。もちろん、シンガポールにはそんな大量の煙を出すほどの焼畑はありません。ほとんどはインドネシアです。10月8日の発表ではスマトラ島で1496箇所、カリマンタン島では2075箇所から火の手が上がっていることが観測されました。しかも、煙が濃いために火の場所も60-70%しか探知できていないとのことでした。

毎年、乾季の時期になりますとヘイズがこの地域で問題になります。健康被害はもちろん、飛行機の離着陸が不可能になるなどの影響、その他の様々な経済的損失は45億ドルと見積もられていますが、抜本的な解決策はでていません。

近年、違法な焼畑が多い一つの理由は、アブラヤシのプランテーションの拡大化にあるとのことです。アブラヤシから採れるパーム油は供給が安定し、高収量で、原油より環境にやさしいなのどのブームも手伝って需要が年々、増大しています。そのため、商品価値が上がり、当然、原料のアブラヤシのプランテーションを更に広げようという動きが起こります。マレー半島は既に開発しつくされ、開発する土地がなくなったので、今はインドネシアのスマトラ島、カリマンタン等の熱帯雨林が焼かれ、プランテーションに変わろうとしています。
環境にやさしいとして広まったパーム油の使用が、プランテーションの拡大から森林破壊を助長し、更にヘイズを悪化させているということになります。

ヘイズ問題を考えてみますと、背後には様々な問題が複雑にからみあっていることが感じられます。解決はとても一筋縄ではいかないようです。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇増える糖尿病予備軍

フィリピンでは近年、耐糖能異常、空腹時血糖異常を含む“糖尿病予備軍”が急増し、その数が推定800万人以上に昇ると報告されました。人口から換算すると約9人から10人に一人が糖尿病予備軍ということになります。
 
フィリピンではここ数年、ファーストフード店の普及やコンピューターゲームの普及などで運動不足や肥満の問題をかかえる子供の糖尿病発症が問題となっています。また小児全体の5%未満ではありますが確実に小児肥満がフィリピンでは増えてきています。またフィリピン人女性の平均体重もこの20年間で7~8kg増加しているという報告もあります。
 
周囲のフィリピン人同僚でも、「うちは両親、5人兄弟の3人が全員糖尿病です」とか、若い女性医師が糖尿病性昏睡で緊急入院するなど、身近で糖尿病に関するお話をたくさん聞きます。しかし、皆明るくてあまり病気を気にしていないようで、治療をしながらでも甘いものをたくさん摂っている方が多いという印象です。

甘いものがたくさん溢れ、ココナッツオイルを中心としたフィリピン料理が高カロリーであることは有名ですが、もう一つ、フィリピン人の食生活週間の中で“ミリエンダ”と呼ばれる午前1回、午後1回の間食習慣も影響しているのではないかと思います。間食といっても内容はスパゲティーや焼きそば、トーストなどかなりしっかりとした食事であり、それを含めると1日5回食となっています。職場でもこの“ミリエンダ”の時間を設けているところが多く、気がつけば食事の時間となり、つかの間の団欒を皆心から楽しんでいます。
 
フィリピンに住む邦人も例外ではありません。この“ミリエンダ”を断ることができず、出されたものをすべておいしく食べてしまったり、来客を迎えてパーティーなどで飲酒する機会も多く、つい高カロリーの食事を多く摂ってしまいます。そのような環境の中で、確実に体重が増え続けていく邦人の方を多くみかけます。
 
また健康診断で糖尿病の予備軍である可能性を指摘されても、忙しさの中で再診を後まわしにしてしまったり、日本では飲んでいたお薬をフィリピンにきてから自己中断してしまい病気を悪化させてしまうこともあります。相当病気が進行するまで自覚症状がない糖尿病は本当に怖い病気だと痛感します。
 
フィリピン滞在中は体重のコントロールに注意し、高カロリーのものをなるべく控えバランスのとれた食生活をこころがけましょう。糖尿病のリスクが高いと診断された方は特に食生活や運動に注意し、薬物治療を始められている方は定期的に医療機関を受診し、血糖のコントロールをはかるようにしましょう。

 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇インフルエンザの院内感染

皆さんは「院内感染」という言葉をご存知だと思います。
院内感染とは何らかの病原微生物により医療機関内で感染することを言います。
インフルエンザも院内感染を起こしうる病気です。インフルエンザは感染力が強く、症状の出る数日前から他の人へ感染させうる病気です。院内感染を受ける可能性のある人は外来患者さん、患者さんの家族や付き添いで来院した方、(病院であれば)入院中の患者さん、そして医療従事者などです。

今回はあえて患者さんの立場ではなく、インフルエンザ患者さんから感染を受ける人の立場に立って感染予防について考えてみましょう。

先日、ある国の高度医療可能な総合病院へ深夜行く機会がありました。深夜にもかかわらず外来は患者さんたちでごった返していました。これから診てもらう予定の患者さんも列を成して多く待っていました。あちこちで咳やくしゃみをしている人もいます。小児や老人の付きそいで一緒に来院している家族も多く見られました。

私は待合場所のイスに座り、ある医師への面会を待ちながら患者さんたちの様子を少し見ていました。建物の外見はまるでホテルのようでしたが「院内感染予防」という観点からは非常に心配な印象を持ちました。

わたしの右隣に座っていた中年男性は咳を “ごほん、ごほん” して鼻水を手でぬぐっていました。知り合いが来たらしくその鼻水が付いた両手でしっかりと握手を交わし抱擁していました。左隣の小児患者さんは熱と下痢のために来院した様子でお母さんがイスの上でオムツを交換していました。このお母さんも知り合いの奥さんが来たのでウンコを触った手で相手の奥さんの顔を暖かく包み頬ずりしながら挨拶をしていました。

インフルエンザの感染様式は主に飛沫感染、接触感染です(糞口感染、空気感染も起こると言われています)。
上に書いたように我々の通常行っている行為は感染を拡大させる可能性があります。側にいる人も隣の人の咳やくしゃみ、汚染された手でウイルスに感染してしまいます。
病院やクリニックはインフルエンザの感染拡大が起こるのには絶好の場所です。

感染経路を理解することは予防につながります。
今回はあえて患者さんの立場ではなく、患者さんから感染し得る人の立場から感染予防について考えてみました。

患者さんはもちろん、健康な方々もインフルエンザ予防のために会社や人ごみ、病院から帰ったら必ず手洗い、うがいをしましょう。外出時には必要に応じてマスクをしましょう。

病院やクリニックへ来院する患者さんで咳やくしゃみのある方へ願いがあります。
可能であればマスクの着用をお願いいたします。マスクをすることによって大切なご家族への感染が予防できます。また他の方々への感染予防にも役立ちます。特に病院やクリニックには免疫力の低下した患者さんが多く受診しています。
ジャカルタの多くの病院やクリニックには窓がありません。汚染された空気を浄化するシステムがうまく働いていないところが多い印象です。ご理解のほどよろしくお願いいたします。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇“淡水産魚貝類”に御注意

北京市衛生局の発表によると、“広東住血線虫感染症”と診断された市民が70人に達したそうです。患者の大部分は、市内のレストランで“涼拌螺肉”“麻辣福寿螺”などの貝料理を食べて発病したそうです。この料理には、海水に棲む“ホラ貝”を本来用いるのですが、同レストランでは、代用品として“福寿螺(スクミリンゴ貝)”などの“淡水マキ貝”を使用しており、調理上の問題から、加熱が不十分であり、寄生虫が完全に処理されていなかったことが判明しました(専門家によると、マキ貝の寄生虫は高温で処理すれば、ほぼ完全に死滅するそうです)。

“スクミリンゴ貝”は、別名“ジャンボタニシ”とも呼ばれ、1980年代に養殖を目的として外国から持ち込まれましたが,管理の不徹底や養殖の断念により放棄されたものが野生化しており,かつて“農作物の害虫”として日本でも問題となった貝です。

北京市市衛生局は各飲食店に対し、
① 調理前に既に死んでいる“淡水マキ貝”は調理・販売しない
② “福寿螺”などの“淡水マキ貝”は十分に火を通した上で販売する
③ “福寿螺”を調理する飲食店は衛生検査に合格すること
などの要求を出したそうです。

その後、“安全性への配慮”から、水産市場、小売店、飲食店などでは、“福寿螺”の“買い入れ”ならびに“販売・加工”など“すべての取り扱い”を一時停止する措置をとったそうです。
“広東住血吸虫”は極東、東南アジア諸国、オーストラリア、太平洋諸島、アフリカ、インド、インド洋の島々、カリブ海の島々、北米などに広く分布しています。従来、特に症例が多い地域としては、台湾、タイ、ポナペ、ニューカレドニア、タヒチなど“東南アジアと南太平洋の国々”が知られています。本邦では、沖縄に多いとされていますが、本土における症例も徐々に増加しつつあるそうです(現在までに沖縄を中心として60人程度の報告例があります)。

成虫はネズミに寄生していて、感染ネズミの口から這い出した幼虫は、陸棲貝(カタツムリ、アフリカマイマイ、ナメクジなど)に侵入します。幼虫は“感染期幼虫”まで発育し、この“感染期幼虫”をヒトが経口摂取することにより感染します。ヒトへの感染経路としては、大型の“陸棲貝”(カタツムリなど)の“生食”あるいは“野菜に付着した幼虫などを(誤って)摂取してしまう”などのケースが多いとされています。

“広東住血吸虫症”は約2週間程度の潜伏期の後、軽度から中等度の発熱、激しい頭痛、悪心、嘔吐などを示し、ひどい場合には、著しい筋力低下、知覚異常、四肢の痛みなどが出現します。複視(物が二重に見える)、運動失調(手足が動かしにくいなど)などの脳神経症状を示す場合もあります。重篤例では、昏睡に陥ったり、死亡したりする場合もあります。また、典型例では、症状が2~4週間続きますが、一般に本疾患は、自然緩解・治癒すること多く、通常、予後は良いとされています。稀に虫体が眼球や脳に移行すると、失明や知能遅延・てんかんなどの後遺症を残す場合もあります。

寄生虫の専門家によると、“涼拌螺肉”や“麻辣福寿螺”だけでなく、“淡水産魚貝類”料理(特に“生あるいは半生状態”のもの)あるいは“刺身”を食べると、“広東住血吸虫症”以外にも様々な“寄生虫感染症”に感染する可能性がありますので注意が必要であると思われます。例えば、“肺吸虫症”は淡水に住む“サワガニ、モクズガニ”などの生食により感染症を起こすことがあります。
この他、“肝吸虫症”は“コイ、フナ”などの淡水魚の生食、“有棘顎口虫症”は“雷魚やドジョウ”の生食により感染する可能性があります。

寄生虫には“世界中に広く分布しているもの”と、“風土病的に一定の地域に分布しているもの”があります。世界中に分布し、ヒトに最も多く見られる寄生虫は“蛔虫(カイチュウ)”であり、次いで、“鉤虫(コウチュウ)”、“鞭虫(ベンチュウ)”などが続きます。また、子供が感染する寄生虫の中で、最もよく見られるのが“蟯虫(ギョウチュウ)”です。これらの寄生虫は、主に汚染された“生野菜”を“経口摂取”することにより、腸管に寄生します。

寄生虫は、このような“経口感染”以外に、“皮膚”や“気道”から感染する(それぞれ、経皮感染・気道感染といいます)ことも有りますので、各々の寄生虫についての“分布・流行地域”や“感染経路”などについて、正しく認識することが、病気を予防する上で大切になります(例えば、中国南部では“マラリア”が流行している地域があり、この病気は“感染した雌の蚊”に刺されることで、ヒトに感染します)。多くの寄生虫感染症は発症後に“駆虫薬”を数日間服用すれば治癒しますが、“マラリア”のように“予防内服”が必要になる場合もあります。 
寄生虫が体内に入っても、必ず感染症を起こすわけではありませんが、“寄生虫感染症”を予防するために、日常生活の上では、次のようなことを心がけるようにしましょう。

① 淡水産魚貝類は“よく煮る”、“よく焼く”、海の魚介類は一般的には、“生で食べても構わない”  
のですが、例外として“アニサキスなどの幼虫”が“生イカ”などに寄生していることがあります。アニサキスは胃粘膜に迷入すると、突然、激しい腹痛が出現し、しばしば“急性虫垂炎”などと間違えられます。
② ブタ肉やイノシシ肉・クマ肉などはよく煮るか、よく焼くなどして、充分加熱してから食べる。
③ “野菜はよく洗ってから食べるようにする”(流水で充分洗えば、かなりの寄生虫は排除することが出来ます)。
④ “犬・猫などのペット”と遊んだ後あるいは“食事”の前には手をよく洗う。
⑤ 皮膚からうつる寄生虫が流行している地域では、“水”や“土”または“昆虫”などに注意する。また、家に帰ったらよく手を洗う。