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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06090101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇シンガポールの子は太っている?

約30年前、シンガポールでは子供の栄養不足が問題とされていました。そのため、子供に粉ミルクを配るなどの対策が採られていました。ところが、今では約10%の小中学生が肥満となっています。日本では1970年から1995年までに肥満の小中学生の割合は約2倍に増え、2001年の調査で約10%の子が肥満とされていて、さらに増加傾向にあります。

実は、シンガポールでは、1992年の時点で、既に、14%の子供に肥満があることが、明らかとなっていました。栄養不足は改善され、今度は過体重が問題となってきていたのです。小児期の肥満は成人肥満との相関が認められ、いわゆる生活習慣病の大きな要因となります。肥満は遺伝的要素のほか、食習慣などの生活習慣に影響されることがわかっています。

シンガポールでは教育省が中心となり、この1992年に、TAF(The Trim and Fit program)という方策がたてられ、現在まで実施されてきました。
このプログラムの対象は小学生から高校生までで、適度な運動と食事を組み合わせることによって健康的な生活スタイルを獲得することを目的としています。このプログラムをうまく実施して成果が得られた学校には表彰をするなど、普及にも努めています。インターネットなどでも内容を見ることができます。

具体的には、食事面では、例えば、脂っこいものや糖分の多いものは控えるといった一般的なアドバイスから始まり、アイスやケーキのかわりに新鮮な果物を食べるなどの具体的な食事内容のアドバイスの他、3度の食事をきちんととること、食事は食卓でとって、冷蔵庫の前やテレビの前で食事をするのはやめましょうなどといった習慣に関するものもあります。料理の仕方についても具体的な絵を表示しながらどうすれば油を減らせるかを示しています。また、食べ物以外に注意をそらすために何か適切な趣味を見つけましょうといったアドバイスもあります。

運動面では少し前のバス停で降りて歩きましょうとか階段を使いましょうといったアドバイスや一日に15-60分くらい運動をし、家事の手伝いなどして、自然に体を使いましょうといったことが勧められています。
こうした知識を普及させてもやはり肥満となってしまうお子さんはいらっしゃいます。そうなりますと、学校に親が呼び出され、食事の指導、運動の指導を受けることになります。

運動面では特別なカリキュラムが組まれ、実際に朝30分ほど早く学校に行って、運動をしたり、昼休みの間に決められた時間、運動するといったことを行なったりします。(ただ、必ずしも強制ではありません。本人が嫌であれば拒否することもできます。私の知人のお子さんはこの運動が退屈なものだったので今年は参加をやめたとのことでした。)また、年に何度か親も一緒に参加する運動(これは学校によって様々ですが例えば休日にハイキングコースを2時間歩くなど)も学校の主催で実施されています。

こうしてみますと、一般的な内容も少なくはありませんが、学校などを利用したかなり積極的な活動もあることがわかります。
実際には減量というのはそう簡単なことではないので、特にこれから生活習慣を身につけるお子さんたちには多少の強制力も時によっては必要なのだと思います。
より経済的に豊かになってきているにもかかわらず、子供に関しては、肥満は減っているという点を見れば、この方策は成功しているといえるでしょう。
強い政府の姿勢が言外のプレッシャーとなっている面もあるのかも知れませんが。。。




◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇比人看護師受け入れ

先日厚生労働省より、「比人看護師、介護福祉士の受け入れ枠を当初2年間で計1000人(看護師400人)」との発表がありました。

以前にもお伝えしましたが、フィリピンでは看護師の海外流出が社会的に問題になっており、国内では看護師不足に悩まされています。より多くの収入を求め、海外で働きやすい看護師へ転職する医師、会計士、技術者、弁護士なども増えてきているというのがここ数年の現状です。やっとのことで両親や親戚の経済的支援のもと、看護学校を卒業しても、多くの優秀な看護師は将来海外で働くことを夢みて、各受け入れ国が課している海外就労の試験にパスする為、国内で働きながら必死に時間を見つけて勉強をしています。そして、みごと試験に合格した看護師は仲間達に祝福されながら次々と海外に行く姿を目にしてきました。

そこで今回はこの日本のニュースをどう受けとめているのか、比人看護師の生の声をお伝えします。
 
現在フィリピンには30万人を越える看護師がいて、高校卒業後、看護学校で4年間を過ごします。入学試験の倍率も高いうえ、学年毎に試験があり、進級できずにあきらめる学生も多数います。また国家試験も決して易しいものではなく、不合格で断念する人もいます。その難関を突破して見事就職できた若い看護師達はさぞ、日本受け入れのニュースを待ち望んでいると思いきや、フィリピンでは意外に知らない人も多く、「ああ、そういえば新聞でみた」とあまり興味を示さない看護師もいてかなりクールな反応に少々驚きました。よく話をきくと、かなり前から米国での比人看護師受け入れやヨーロッパ、サウジアラビアやドバイといった中東諸国でも、受け入れを積極的におこなっています。その中で日本が受け入れを始めるというニュースはあまり大きなことではなく、しかも受け入れる人数がかなり少ないことを考えると、はじめからあきらめてしまうのかもしれません。 

海外を目指す看護師の多くはアメリカ合衆国を最終目的地としています。毎年1万人を越える看護師が海外に旅立ち、一度海外に出ると、フィリピンに休暇以外で戻ってくる人達は老後の生活のため以外はごく僅かと聞きます。中東諸国では、フィリピンからより、さらにアメリカへの切符を手に入れやすいため、第一段階としてドバイ等に就職し、そこでアメリカを目指して試験を受ける看護師も多くいるとのことです。

家族を何よりも大切にするフィリピン人の多くは海外で働き始めてまもなく家族を呼びよせます。欧米をはじめ多くの国では家族の就労も認めているとのことです。またフィリピンでは看護師に限りませんが、次々に子供を生んではすぐに復帰してきます。生まれたての子供は祖父母や親戚、ベビーシッターに仕事中は預けているようです。臆することなく当たり前のように産後復帰できる環境はどこの職場でもあり、代理の派遣看護師が出産休暇の穴埋めをします。おしゃべりや歌を歌いながら仕事をするのは国全体の気質かもしれません。残業はあまり好まず、言われたこと以外のことをやったり、応用をきかせるということが少し苦手な人も多いようですが、皆明るくてきぱきと仕事をこなします。

日本での比人看護師の受け入れ枠が将来広がっていくものかどうかわかりませんが、フィリピン人看護師にとって「仕事をしてみたい」と思われるような国になっていくには、仕事の面以外にも、仕事をしやすい環境づくりや、異なる文化で生まれ育った外国人を性格や特徴も含め、おおらかに受け入れていくような姿勢も必要になっていくかもしれません。

 

◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇ジャカルタ胃カメラ体験記

患者さんから
「ジャカルタで胃カメラをするのは危険じゃないですか?」
というご質問をよく受けます。今回私自身がジャカルタの病院で胃カメラ検査を受けましたので実体験として報告させていただきます。

今年7月下旬から心か部(みぞおちの付近)の痛みが時々起こるようになりました。症状は改善せず食欲も落ちてきました。夜間は腹痛のためになかなか眠れず、眠れたと思ったら腹痛によって目を覚ますという状態で熟睡が出来なくなりました。
自分で腹部超音波、心臓超音波検査をしましたが異常は見つかりません。
このような状態が約1ヶ月続き、とうとう嘔吐しました。血液が混じっているのを見て直ちに胃カメラを受けることに決めました。

病態が不明のまま症状が改善しないというのは非常に不安な気持ちです。受診していただいている患者さんの気持ちが改めて良く理解できました。
「患者さんはこのような心の不安に悩まされながら受診してくださっているんですね」、と痛切に感じました。

これまで何百回もジャカルタでのカメラ検査に立ち会ってきましたので当地で検査を受けることに手技的な不安は全くありませんでしたが、「結果」を知るのが不安でした。
検査室に入ると、担当医師から静脈注射による少量の睡眠導入剤を使用するかどうかの質問と説明がありました。ジャカルタでは邦人の皆さんが受診するような病院ではほとんどこの方法で検査を施行しています。
担当医に「自分自身でもモニターを見たいので意識を保つ程度で」、とお願いしました。
咽頭部にスプレーで局所麻酔をし、腕にキープした静脈ラインから少量の睡眠導入剤が注入されました。自分では眠気や不快感は全くありませんでした。

(当院から患者さんをカメラ検査で他の病院へ紹介させていただくときには睡眠導入剤の説明、使用・不使用のご希望をお聞きし、ご希望にならない場合はその旨をカメラ担当医へ私から事前に連絡しています。患者さんへは検査前に手順を私から説明をさせていただいていますが不安な点は納得がいくまで私どもにご相談ください。)

医師の技術は的確で私自身も診たいところを順番にカメラが入っていきました。
まずカメラは苦痛も無く食道へ、そして噴門部(食道と胃のつながり部分)もすんなり通り抜けました。
その瞬間 「わっ!これだ」 と心の中で叫びました。真っ赤に腫れあがった胃の粘膜が浮き彫りになり、点状出血が広範囲に認められました。
医師の巧みな技術で短時間に胃・十二指腸潰瘍や腫瘍の無いことも確認し、診断は「出血性胃炎」です、と担当医。
ヘリコバクターピロリ有無の検査目的にバイオプシーをしてもらいました。

(一般にはバイオプシー検査は採取した組織が腫瘍か否か、潰瘍の有無などを顕微鏡レベルで検査します。またヘリコバクターピロリの有無検査としても用いられています。
ヘリコバクターピロリの検査法には「バイオプシーによる検査」、「呼気による検査(ジャカルタでは検査可能施設は限られています)」、「血液による抗体検査(ヘリコバクターピロリ抗体陽性でも採血時点で菌が存在しているとは限りません。)」があります。当院から紹介してカメラを施行する患者さんへはヘリコバクターピロリ検査についても事前・事後に説明しています。当院からの紹介でなくとも、診断結果コメントとカメラ写真をご持参いただければ検査結果の説明と今後の治療方針についてできる限りのアドバイスをさせていただいています。
日本の国立がんセンターは「ヘリコバクターピロリが陽性の人は胃がん発症率が陰性の人に比べて5倍以上高くなる」という報告を出しています。陽性の方は内服薬による除菌療法で7割くらいの方は陰性化します。除菌療法は当院はじめジャカルタの多くの医療施設で可能です。)

ジャカルタに派遣される前に日本で “いわゆる名医” による胃カメラ検査を受けたことがあります。そのときはモニターを診る余裕も無いほど辛く「ゲーゲー」しっぱなしでしたが、今回は苦痛も無くじっくりと腹痛の原因を自分の目で確認できました。今回の担当医の手技は私にとっては実に安心して受けられた検査でした。
カメラ検査終了後、念のためにと30分くらいベッドで横になり、医師のコメントとカメラの検査結果写真を付けたデータを持ってジャパンクラブ・医療相談室へ戻ってきました。
その後病態に合わせた内服薬により症状は改善してきました。

今回の腹痛は、神様が「患者さんのつらい気持ちを忘れるな!」と私を戒めたのだと思っています。

《追記》
1)最近の胃カメラは改善され、チューブは鉛筆の太さよりも細いくらいになりました。患者さんの負担も軽減されてきています。胃カメラや大腸ファイバー検査の目的は病体をはっきりさせ適切な治療に結びつけることです。

2)静脈注射による睡眠導入剤の使用、不使用についてはいずれも長所、短所があります。使用による短所は、患者さんが検査中に痛みを訴えないこと(病態がマスクされてしまう)、極めて稀例ですが注射薬剤によるアレルギーがありえることです。
一方、不使用による短所は、患者さんの苦痛が強いこと、そのため医師もつらい、そのため検査時間がかかるなどがあります。
日本でも多くの医療施設で静脈注射使用により胃カメラや大腸ファイバーがなされるようになって来ました。ご心配な点がある場合は担当医とよく相談をして不安が無い状態で行うようにしてください。〔日本で行うときも同じです〕

3)衛生面での心配もあるかもしれませんね。ジャカルタで多くの邦人の方々が受診するような病院での消毒方法について各病院で話を聞いてきましたが、world standardな消毒方法がとられていると思います。

4)発展途上国での各種検査や治療についても不安なこともあるかもしれません。日本でも同じだと思いますが、適切な病院と医師を選択することが大切です。
ただし、5年前、10年前の情報を企業のマニュアルとして引き継ぐことが無いように、誤った情報に惑わされたりしないことも大切です。



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇心の健康を考える

我が国では、昨年の“年間自殺者”が3万人を超えました。“自殺”の原因の一つとして最も多いのが“うつ病”であると言われています。重い“うつ病”を患い、“自殺”という選択肢を選ぶ場合、一般に、その“動機”や“原因”を把握することは実際には困難です。

従来までの“縦割りの施策”では、“自殺防止”の効果はあまり期待出来ません。このような情況下において、“自殺対策基本法”という法律が2006年の6月に成立しました。“自殺ならびにうつ病対策”は、医療だけの問題ではなく、家庭や職場、地域、自治体などの理解ならびに連携が不可欠であると考えられます。

“社会経済生産性本部”が今年の4月に日本企業218社を対象に行った調査結果によると、“この3年間で(社員の)心の病が増加した”と回答した割合は61.5%であり、心の病による1ヵ月以上の休業者を抱える企業の割合も74.8%に上ったそうです。

最近の統計によると
(1) 日本の自殺者(正確には“自殺死亡者”)数は8年連続で3万人台を突破した
(2) 20-39歳では死因のトップは(“事故死”や“病死”ではなく)自殺であった
(3) 世界保健機構(WHO)による2002年の調査では、日本の自殺率は25.3人(人口10万人当たり)であり、米国の2.4倍、英国の3.4倍であった
という結果が出たそうです。動機や原因としては、“健康問題”が最も多く、次いで“経済・生活問題”、“家庭の問題”などが続きます。年齢別の解析によると、中高年には“経済・生活問題”の割合が高く、高齢者では“健康問題”の割合が高かったそうです。

精神科医などを中心とした専門家の調査によると、“自殺未遂者”の75%に何らかの“心の病-すなわち精神障害”があり、そのうちの46%が“うつ病”だったそうです。しかも、“うつ病患者の4人のうち3人が治療を受けていない”のが実情であり、うつ病患者の“治療とケア”が“自殺防止”の観点から急務であります。

つい最近、日本の某企業に勤務していた20歳台の男性が自殺し、“自殺したのは業務に起因したうつ病によるもので、会社は適切な対応を怠った”として、男性の両親が、総額約9000万円の損害賠償を求めた訴訟がありました。この裁判で、高等裁判所は、“会社は両親に2000万円を支払うべきである”という判断を下しました。“和解条項”として、“会社側は労働条件や勤務条件を改善し、社内でメンタルヘルスケアに努める”という内容が社内規定に盛り込まれたそうです。本件においては“うつ病の発症”と“業務”の間の因果関係の有無、“会社は自殺防止のための適切な対応を取っていたか”-などが争点となりました。

うつ病の症状の特徴として次のようなものが挙げられますので、周囲の方が如何に早く気付いてあげるかが重要になります。
(1)“何をしても楽しそうでない”-例えば、それまで“熱烈な野球ファン”だったのに、突然、テレビの野球中継さえ見なくなった場合。
(2)“睡眠障害がある”-睡眠は本来、“生理的”なものですが-“早朝に目が覚めて疲れが取れない”、“夜間何度も目が覚める”というような場合。
(3)“焦燥感やイライラ感が強い”-“こんな生活では駄目だと思い、怒りっぽくなって、家族にあたったり”、“急に不機嫌になったりする”ような場合。
(4)“集中力や判断力が低下する、考えがまとまらない”-それまで当たり前にこなしてきた作業などが、思い通りにこなせなくなった場合。
などの症状が“2週間以上”続けば、うつ病の可能性があります。また、“アルコールの量が急に増えた”場合なども注意が必要です。

また、うつ病は、
1) 自殺の恐れがあること
2) 誰でもかかる可能性があること
3) 几帳面かつ頑張り屋の性格の人が比較的かかりやすいこと
4) 早い時期に適切な治療を受ければ、良くなる可能性が高いこと(“うつ病は心のカゼである”という専門家もいます)
などの特徴があります。

今後、うつ病に関する正しい認識が、家庭、職場、地域社会において、今まで以上に普及・浸透してゆくことが望まれています。