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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06070101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇AED

AEDをご存知でしょうか?これはAutomated External Defibrillator(自動体外式除細動器)です。“心室細動”を治す(除く)ための器械です。

“心室細動”とは激しい運動などの後に、急に心臓のリズムがおかしくなって、心臓の心室と呼ばれる血液を送り出す部屋が小刻みに震えてしまうことを意味します。すると、血液を全身に送れなくなってしまいます。新しい血液が来なくなると脳細胞は4分から6分で死に始めます。また、心室細動が起きて、全身に血液が送れなくなると、1分経過するごとに蘇生率は10%ずつ低下します。これは10分後には蘇生できる人はほぼゼロになってしまうことを意味します。誰かが、心室細動を起こしているところを発見して救急車を呼んでも、救急車が来るまでにはこの大切な時間が過ぎてしまいます。この方を助けるためには一刻も早く心肺蘇生及び除細動を行なわなくてはなりません。

ある研究によれば、今まで、こうしたケースでの救命は病院搬送を待ってからの心肺蘇生術となるので救命率は僅か2%程度であったとのことでした。ところが、即座に心肺蘇生と除細動を行なえばその率は10倍の20%になるといった報告がなされたことも手伝い、日本では平成16年10月からは医療関係者でなくても、誰でもがこのAEDという器械を使って除細動が出来るようになりました。

シンガポールでもほぼ同時期から一般の方がこの器械を使えるようになり、空港や官公署、スポーツセンター、オフィスビル、保険会社、ポリテクニック、いくつかのゴルフ場やクラブ、セントーサ島など多くの施設に配置されるようになってきています。

シンガポールでは心臓病は2番目に多い死因という背景もあり、シンガポールの保健省MOH(Ministry of Health)は1998年にNational Resuscitation Councilを設置し、心肺蘇生術の訓練を実施したりインストラクターを養成してきました。

AED装置の値段は5年ほど前は1万ドルしましたが現在では3000ドル程度となり、より多くの施設に普及しはじめています。

ここで興味深いのはこのAED装置を買うためにはその施設の誰かが心肺蘇生とAEDの使用法についての訓練を有料で受けなくてはならないということです。訓練を受けない限り、購入することはできません。これでは普及しないのではないかという気がしますが、上述のように、既に多くの施設に配置されています。実際には訓練を受けなくても使用は出来ますが、一度も装置を使ったことがない人が積極的に使うことは現実にはなかなか難しいと思います。

今後もこうした装置が普及し更に多くの方が講習に参加されるようになると良いと思います。



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇アメーバ赤痢

雨季に入り、急性胃腸炎、嘔吐や下痢で受診する邦人患者さんが増えてまいりました。昨年同様6月頃より月あたり10名以上アメーバ赤痢の患者さんが腹痛をともなう激しい下痢や発熱、脱水症状で受診されます。
 
この1年、アメーバ赤痢の患者さんを診てきた印象では、症状は軽度から入院を要するような重症にいたるまで本当に個人差があるということと、家族や職場内で同じ食事をとった者同士が集団で発生発生することはほとんどなく、むしろ発症者自身の体調や体質、免疫力等に起因する場合が多いということです。

また発症者が食事をする場所(屋台や大衆食堂をよく使用する人、社内食堂を使う人、ほとんど外食をしない人、日本料理店によく行く人)による差異はほとんどなく、むしろ生サラダを日常的に食べている人、氷の入った飲み物をよく飲む人、家庭でも外食でも、摂取する食物が過熱されているかどうかをほとんど気にせず、出されたものはすべて食べる傾向にある人などに罹患する確率が高いように思います。

<病原体>
原虫:赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica) 世界的に分布しています

<潜伏期間>
数日~数ヶ月(平均2週間程度)

<感染経路>
多くは生きた嚢子が混入している汚水の使用、調理が不完全な野菜、きれいに洗っていない果実やサラダを摂取することによる間接的なものが多いとされています。
無症状の嚢子保有者が感染源としては重要です。
その要因となるものは、途上国においては不十分な糞便処理、調理をするさいの衛生観念の欠如(汚れた手が混入を助長する)、糞便中の嚢子を食物の上に運ぶ可能性があるハエがたくさんいることなどがあげられます。

<症状>
腹痛、時に発熱、嘔吐をともなった下痢。また粘血便になることもあります。
また治療後に便からアメーバが検出されなくなってからでも、一週間から10日程度、食後の腹部不快感や食欲低下が持続する方が多いです。
またアメーバが血行性に多臓器に転移して腸外アメーバ症(発熱や嘔吐、体重減少をともない肝膿瘍などを形成する)となり重症化し、外科的治療を要することもあります。
ただし邦人の腸外アメーバの受診者はここ数年ありません。

<検査>
便検査(検鏡)により赤痢アメーバを確認します。
フィリピンでは通常、検査機器やコストの問題もあり遺伝子検査(PCR法)やアメーバ特異抗体検査等はおこないません。

<治療>
メトロニダゾール(Metronidazole)(子供用シロップもあり)錠剤を一週間程度飲む、また大人の場合セクニダゾール(Secnidazole)錠剤を数日飲むのがフィリピンでは一般的です。
ただし、脱水症状が激しい場合、副作用で薬が飲めない場合、治療でも下痢が止まらない場合は入院により点滴から抗アメーバ薬の投与をおこなうこともあります

<予防>
手指の清潔、加熱されたものを食べる、生サラダや店の氷などにも注意が必要です。
また特に食品を扱う人は定期的に便の検査をし、健康な赤痢アメーバ嚢子の保有者であれば治療をすることも大切です。



◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇発熱と血小板減少ならデング熱?

風邪症状が改善しない小児患者さんがあるクリニックを訪れました。「かぜ薬」と言われて何種類かの薬を渡されましたが母親も薬の詳細説明は受けませんでした。受診後も、熱は更に上がり発疹が出現したため2日後同院を再来、血液検査を勧められて施行しました。

「血小板が低下しています。高熱が5日間も出ています。発疹もでています。ああこれはデング熱ですよ。輸血の可能性もあるのでシンガポールへ行ったほうが安心だと思いますよ」。
患者さんや家族は不安になってしまいました。

このような医師の説明に対し患者さんから
“やはりシンガポールへ行ったほうが良いでしょうか?”
頻回に受ける相談内容です。

日本で“熱“と”血小板減少“があれば血液疾患、敗血症、播種性血管内凝固症候群、膠原病(これらの詳細は述べません)、薬剤副作用などをまず疑うでしょう。
しかし当然のことかもしれませんが所変われば鑑別疾患も変わるものです。

当地ジャカルタでは熱と血小板減少があるとデング熱の診断を受け、「本当なのでしょうか?シンガポールに行った方がよいでしょうか?」と相談にいらっしゃる患者さんが多くおられます。もちろんデング熱も鑑別疾患として考えなければならないでしょう。

本症例では発疹の型がデング熱の典型とは異なっていたためMedikalokaの同僚皮膚科医に薬剤性発疹(副作用)ではないかと相談してみました。皮膚科医は「薬剤による副作用の可能性が高いのですべての薬を中止すべき」とアドバイスをくれました。

薬剤中止2日後、見事に解熱し、発疹も消退しました。すでに解熱し病態も改善していましたが御家族の希望もあり、念のため発熱10日後と2週間後にデング熱抗体とチフスの培養などの検査をさせていただきました。結果はいずれも陰性でした。もちろん患者さんは「薬剤中止」意外に何の治療も受けずに元気になり、各検査値も正常に戻っていました。

輸血の必要もありませんでした。
シンガポールへ行く必要もありませんでした。
結局は単なる「かぜ」だったと思われます。

医師の処方する薬剤によって病気が作られ、
患者さんと家族はシンガポールで入院すべきかどうかまで悩まされ、
薬の中止によって病気が治りました。
なんとも皮肉な話です。

私もジャカルタに派遣されて2年余りが過ぎました。
この2年間に医学・医療は日進月歩で発展しています。
1年に1回日本で開催される所属学会に出席するたびにその恐ろしいほどの進歩の速さに驚かされます。数年前に“最良の治療法”だといわれていた医療が“何ら効果のエビデンスも無い、逆に病態を悪化させる”ことも分かってきました。
インターネットに書かれている多くのアドバイスが「時代遅れ」と言っても過言ではないでしょう。
これまで外科的手術方法でしか治療不可能とされてきた病気も遺伝子治療や再生治療などの内科的治療で治るようになってきました。
心筋梗塞や壊死した下肢等に薬剤を直接注射で注入することで病態を改善させる治療方法も開発されつつあります。
パーキンソン病や欝病に対し電極チップを脳に埋め込むことで症状が改善する治療法も開発されてきました。
消化管内視鏡検査のかわりにカプセル内視鏡が開発されつつあります。次の日のウンコに出てくる小さなカプセルを待つだけでよいのです。あの苦しい“ゲーゲー”やお尻から管を入れられる苦しみからも解放されるようになるでしょう。

通常処方している薬剤の詳細も分かってきました。どんどん新しい薬剤も開発されています。考えもしなかった薬剤の長所・予想もしなかった効果、短所・生命に関わるような副作用も更に明らかになってきています。

これまで治療不可能と考えられてきた病気の治療方法もめざましいスピードで進歩しています。数年前にはフィクション映画の話だと思っていたものが今や現実となっています。

一年前の医療知識や技術ではもう役立たない、と言っても過言ではありません。
最近訪れる患者さんは、「ジャカルタで行なえる通常の医療」を求めて来院する患者さんばかりではなくなってきました。現代医療の頂点の治療法や高度なセカンドオピニオンを求めて来院する患者さんも増えてきました。私一人の力量だけではとてもカバーできないことも多々あります。そのようなときは随時東京、神奈川・・・や米国などの各専門医のアドバイスもいただいています。
古い知識のままで患者さんに対応していては誤ったアドバイスになり得ることを自覚せねばならないと肝に銘じています。

ジャカルタで医療に携わる私にとって熱帯地方特有の疾患に対する知識や治療法を今後も修練していくことは言うまでもありません。
しかし一方で、古く狭い先入観にとらわれず幅広い新しい医療知識を身につけ、医療情報や最適な治療法を患者さんへ適切にアドバイスができるよう研鑽を積み重ねていくことも自分の大きな役目であることを再認識する今日この頃です。
 


◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇夏場が危険-脳梗塞

日本人の死亡原因の第3位である“脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの総称)”は、一般に、“冬に発症する”というイメージが強いのですが、脳卒中のうち約3分の2を占める“脳梗塞”は実は“夏場が最も危険”です。脳卒中の初期症状は、顔や手足の片側の麻痺、言葉が出ない~呂律(ろれつ)が回らない、激しいめまいがする、片眼が急に見えなくなる、激しい頭痛が突然出現するなどです。

私が大連に赴任してから約1年4カ月になりますが、私が直接・間接的に関与したケースだけでも、“脳卒中”患者数は6-7人に上ります。

日本では“脳卒中”の発症率は1000人に1、2人程度ですが、患者数は約150万人、年間死亡数は約13万人に達するといわれています。一般に“脳卒中”は“癌”と比較すると、“生命に危険を及ぼすことが少ない”ために、あまり恐れられていませんが、“脳卒中”になり、後遺症が残った場合には、“半身麻痺(右上下肢麻痺、左上下肢麻痺など)や構語障害(呂律が回らなくなること)”などの大きな問題を抱えることとなります(実際、脳梗塞の死亡率は7%と比較的低いのですが、完全に良くなるケースは2割以下であり、(程度の差はあったとしても)何らかの後遺症が出ることが多い といわれています)。

1960年代は“脳卒中”のうち約3分の2が“脳出血”でしたが、現在では“脳出血”は約4分の1に減り、逆に “脳梗塞”が約6割に増加しています。昔の食事は“塩分”が多かったため“高血圧”を容易に引き起こし、“脳出血”の一因となっていたのですが、現在ではどちらかというと“肉食”が好まれ、“定期的な運動の機会が減る”などして、“動脈硬化”が進む結果、“脳梗塞”に結びつきやすいためと考えられています。

夏に“脳梗塞”が多いのは、大量の汗をかいて、“脱水状態”になると、血液が濃縮され血管が詰まりやすくなるからです。従って、この時期は十分な水分を取ることが大切になります。

また、“脳卒中‘は、“生活習慣病”の一つでもありますので、食べ過ぎ、喫煙、多量飲酒、運動不足、ストレスなどの“悪い生活習慣”を正し、“高血圧”、“糖尿病”、“高脂血症”、“肥満”などを予防することが何より大切になります。

一般に、女性と比べて、男性が“脳卒中”になりやすいのは“性ホルモン”の影響以外に、“喫煙”や“過度の飲酒”、“外食”など、男性の方が“体に良くない生活”を続けているからではないかと考えられています。

【脳卒中の予防10カ条】
 1)“手始めに 高血圧から 治しましょう”
 2)“糖尿病 放っておいたら 悔い残る”
 3)“不整脈 見つかり次第 すぐ受診”
 4)“予防には タバコを止(や)める 意志を持て”
 5)“アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒”
 6)“高すぎる コレステロールも 見逃すな”
 7)“お食事の 塩分・脂肪 控えめに”
 8)“体力に 合った運動 続けよう”
 9)“万病の 引き金になる 太りすぎ”
10)“脳卒中 起きたらすぐに 病院へ”
   ―日本脳卒中協会による“脳卒中の予防10カ条”より引用―