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ニュースレター(機関紙)

JOMF派遣医師便り
NL06060101
シンガポール、フィリピン、インドネシア、中国、医療事情

◆シンガポール

シンガポール日本人会診療所
日暮 浩実

◇PM2.5

東京でディーセル車規制が実施されたのは2003年10月、また、この4月から更に規制の基準値が変更となりました。ディーゼル車が出す微粒子が呼吸器系の病気の原因になるというのが規制ができた理由のひとつです。

シンガポールでもこうした規制が強まる見通しです。
自動車から排出される微粒子のなかでPM10と呼ばれる大きさ10マイクロメートル以下のものが今まで注目されてきましたが、このなかでも特に小さいPM2.5という2.5マイクロメートル以下の微粒子は肺の最も深いところまで進入し、さらにそこに恒久的にとどまってしまい、過度に吸い込むと喘息や気管支炎の原因になることがわかってきました。免疫力の低下してきた年配の方のみならず、特にお子さんたちは免疫機能がまだ十分には発達していないため、よりこうした病気を発症しやすいこともわかってきました。シンガポールではこうした呼吸器疾患の患者さんが約14万人(人口の3%)います。

シンガポールのPM2.5の年間平均濃度は21マイクログラム/立方メートルでこれはアメリカのEnvironment Protection Agencyが定めた15マイクログラム/立方メートルという基準を超えています。

タクシーやバスなどのディーゼルエンジン車から出る排気ガスが原因の50%を占めると考えられることから、ディーゼル車に対する規制が厳しくなろうとしています。(ちなみに30%が発電やその他の工業に関するもの、20%が隣国の焼畑などの煙に起因しているとされます。)

シンガポールでは2014年までにこの基準を満たすべく、昨年の12月に政府は硫黄酸化物が非常に少ないディーゼル車を使うように勧め、更に今年の10月からは全ての新規のディーゼル車はより厳しい基準であるヨーロッパのEuro Ⅳ(同時期の日本の基準よりは少し緩いように思われます)を満たさなければならないことになりました。メーカーによれば10年前に比べ、既にPM2.5の排出量は15%以下までに低減しているとのことですが更に下げていく必要があるということのようです。

もちろん、ガソリン車がこうした物質を全く出さないわけではないし、ディーゼル車のほうがむしろ二酸化炭素の排出は少ないとか、天然ガス車よりも燃料効率がよいなどの面もあり、問題の解決には総合的な判断が要求されそうです。

困難な点もありますが、何とか少しでも大気の汚染が進まないようなシステムができたらよいと思います。 



◆マニラ

マニラ日本人会診療所
宮本 悦子

◇狂犬病

狂犬病は近年日本での発生報告はないものの、一部の島国や半島の国々を除いて全世界で発生しています。特にアフリカ、東南アジア、ラテンアメリカでは発生頻度が高く、ここフィリピンでも年間推定400例ほどの狂犬病発生が報告されています。
先日フィリピンで感染症の拠点病院とされる2ヶ所の病院(Research Institute for Tropical Medicine, San Lazaro Hospital)を見学してきました。
それぞれの病院ではルソン島(マニラがあるフィリピンで一番大きな島)全土より毎日200名を超える犬に咬まれた患者が暴露後発病予防のための狂犬病ワクチン予防接種を受けに、病院を訪れていました。そして2ヶ所の病院をあわせ、1ヵ月で15名前後の狂犬病発症者があり、鉄格子のかかった病室に入り多くは24時間以内に亡くなるとのお話でした。
特に子供が狂犬病を発症する割合が高く、咬まれても親に報告しなかったり、暴露後予防接種をしていない場合が多いとのことです。フィリピンでは野犬はよく見かけますが、できるだけ野犬には近づかないようにしたいものです。

<病原体>
狂犬病ウイルス(Rabies virus)

<潜伏期間>
通常1~3ヶ月(1年以上の報告例もある)

<感染経路>
95%以上が狂犬病に罹患した犬による咬傷やひっかき傷、その他猫、スカンク、アライグマ、コウモリなどの咬傷報告例があります。

<症状>
前駆症状:受傷部位の疼痛やかゆみ
前期症状:強度の不安感、精神的動揺、咽頭の痙攣が強い痛みを伴い、飲水を避けるようになり(恐水症)顔面に冷たい風が当たっても咽頭痙攣が誘発されるため風を避けます(狂風症)。
見学した病院では狂犬病疑いのある患者さんの顔の前で紙をパタパタさせて風を嫌がるかどうか確認するとのことでした。病室には患者さんが嫌がるという理由でベット以外に物を置かずシンプルな構造になっています。)
後期症状:昏睡、麻痺、痙攣、不整脈、呼吸不全などが起こり死亡します。

<治療>
一度発症した狂犬病には有効な治療法がないため、ほぼ100%死亡します。
受傷後直ちに狂犬病ワクチン接種(咬まれる前に予防接種を受けていない人の場合はγ―グロブリン注射も併用する)による暴露後発病予防を受けることが狂犬病を予防する唯一の手段です。
なお、病院のスタッフは、飼い犬、予防接種を受けている犬、野犬いずれに咬まれても、暴露後の予防接種を受けるべきと述べていました。

<暴露前予防接種>
日本では3回(初回、1ヵ月後、1年後)の接種で、約5年ごとの追加接種が推奨されています。
暴露前(咬まれる前)に予防接種をしていると、咬まれた後の予防接種回数が全く予防接種を受けていない場合に比べ減りますが、いずれにしても暴露後の接種は必要です(国により暴露後予防接種の接種部位、回数が若干異なります)。犬等に咬まれたら、傷口を直ちに水で洗い流し、救急外来を受診しましょう。
 


◆ジャカルタ

ジャカルタ・ジャパンクラブ医療相談室
菊地 宏久  

◇中部ジャワ島地震被災地を訪問して感じたこと

2006年5月27日早朝、インドネシア中部ジャワにおいて犠牲者約6000人が出るM6.2の地震が起きました。ジョグジャカルタ近郊のBantulという場所を中心に大きな被害が出ました。被災から約1週間後の6月4日、現地での緊急医療のボランティア活動に参加する機会に恵まれましたので報告します。

ジャカルタジャパンクラブ医療相談室のあるMedikaloka Health Care Centerからは被災翌日の5月28日からすでに3名の医師が被災地の医療救援活動に参加していました。

私はMedikallokaで救急を担当していて被災地の状況に詳しいDr.J(インドネシア人)と一緒に現場へ向かいました。
ジョグジャカルタ行きを決めたのが出発3日前だったため当初は飛行機のチケットは取れず、ホテルはすべて満室で直前までいけるかどうかわからない状況でした。

ジョグジャカルタの半分のホテルは地震の影響で閉鎖、開いているところもインドネシア各地や世界中の援助団体、マスコミによって長期に予約がなされていて私個人の申し込みでは確保不可能でした。
結局6月4日(日曜日)早朝の飛行機でジョグジャカルタへ行き、同日夜中にジャカルタへ戻ってくるというスケジュールを選択せざるを得ませんでした。

イラン国、中国、日本からの国際緊急医療援助隊、インドネシア各種援助団体、両親が地震で亡くなり孤児になった子供たちがテントで暮らしているTrauma Centerに行くことが出来ました。
中国の「国際緊急医療援助隊」を訪問したときは救急車で患者さんがひっきりなしに搬送されて来ました。現場の医師から「医師が大変足りないので何でも手伝ってほしい」と要望があったため半日間でしたが手伝わさせていただきました。

実際自分で現場へ行ってみないと分からないことがいくつもありました。
TVや新聞のニュースが偏った報道であることも分かりました。
悲惨なところばかりを誇張して写した映像、各国・各社のメリットになる部分だけの映像や報告、ヤラセ、などもあることが分かりました。
各国の緊急医療援助の実態を垣間見ることも出来ました。

6月4日私たちの飛行機がジョグジャカルタ空港に着くなり、アメリカ軍の輸送機が続けざまに着陸してきました。空港の建物も地震で半分が倒壊していました。
空港からは現地の担当者にお願いして被災の一番ひどかったBantulというところへ向かいました。
車が現場に近づくにしたがい、壊れた家並みがだんだん多くなってきました。30分後に着いたBantulの町はほとんどの家が倒壊しており、特にレンガ造りの家の崩壊がひどい印象でした。
住民は自分の家の荷物が盗まれるのではないかと心配で、破壊された自宅の庭や粉々に砕けた瓦礫の側にテントを張って雨露をしのいでいました。
そのテントにはUNICEFや各種団体が援助したと分かるように大きな文字でそれぞれの団体名が目立つところにプリントされてありました。

私がジョグジャカルタに行ってまもなく、インドネシアの新聞報道では「医師は十分に足りているので外国からの人的医療援助は不要である」とあったようですが、私の感じる限り “医師、看護師は充分どころか少なすぎて対応が極めて不充分だった”と感じています。

実際、中国の国際緊急医療援助隊がベースをはっていた場所は、外傷患者、脱水、衰弱した小児や老人がひっきりなしに救急車で搬送されてきました。救急車のサイレンは止むことがありませんでした。中国国際緊急医療援助隊は高校の校舎を借りて入院施設として使用していましたが、校舎の中だけではスペースが足りず、校庭の木の枝に点滴を引っ掛けて治療を受けている患者さんも多くいました。
地べたに這いつくばった状態の患者さんや、投げ出されたような格好で地面に横たわっている患者さんもたくさんいました。患者さんは長蛇の列を成して診察を待っていました。

中国の国際緊急医療援助隊の強みは、中国本土からの医師・看護師などの医療団に加えてインドネシア在住の多くの中国人医師たちが実働部隊として現場でも協力を行っていたことです。彼らは現地の地域・医療環境にも精通しています。言葉の面でも不自由がありません。その結果、自然に協力体制は充実し、規模も大きくなり、対応能力も拡大できるようになっていました。
これは日本の国際緊急医療援助において見習うべき点だと思いました。

夕方1時間ほどの短い時間でしたが両親を地震で失った子供たちがテントで暮らしているTrauma Centerを訪れることができました。近くの大学生がボランティアで勉強を教えたり、子供たちと遊んだりしていました。5mx10mくらいの小さなテントの中で50人くらいの子供達が地べたの上に寝泊りをしています。雨が降ればテント内は水浸しだそうです。私が訪問したときはちょうど遊びの時間だったため、私も一緒に遊戯をしたり絵を描いたりして遊びました。悲惨な状況であるにもかかわらず、子供たちは笑顔で迎えてくれました。
笑顔の子供たちに私の方が励ましてもらった感じがしました。

その後ほんの短時間でしたが日本の国際緊急医療援助隊(JMTDR)のテントを訪問させていただきました。JMTDRの皆さんの献身的な活動には頭が下がる思いです。そしてインドネシアに住んでいながら何も出来ない自分に歯がゆさを感じました。

たった一日の被災地訪問でしたが多くのことを考えさせられた長い一日でした。
自分の足で歩いて、途方にくれている人たちの顔を実際に見て、子供の涙や笑顔をみて、汗だくだくで走り回っている現地や各国のボランティア活動をしている人たちを直接自分の目で見て、何かせねばならないと思う気持ちと、いかに自分が恵まれた環境で生きているのかを感じさせられました。

これまでのジョグジャカルタ地震被災地は主に外傷患者治療が医療援助が中心だったと思います。今後は感染症対策、精神的な支え、慢性疾患の病態増悪予防対策などにも力を入れていかねばならないでしょう。そのためにはインフラ整備も不可欠でしょう。

ジョグジャカルタ近郊は今回地震により非常に大きな被害を受けました。すぐ側のムラピ火山の活動も活発になってきていると報道されています。

このような災害に対し我々は個人レベルで何が出来るのか、何をすべきなのか、また団体として、国として何をすべきなのかを改めて考える大切な時期であると思います。

地震によって亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い復興をお祈りいたします。(2006年6月5日記)



◆大連

大連市中心医院日本人医療相談室
星野 眞二郎

◇喫煙について

2006年5月、中国衛生省は「2006年 中国 喫煙と健康被害」を発表しました(共同通信報道)。これによると、2002年における中国の喫煙者数は3億5000万人で、“11億人に上ると推測される世界の喫煙者数の約3分の1を占める”ことがわかったそうです。また、肺癌などの“喫煙により引き起こされる疾病”が原因で死亡する人は年間100万人前後と考えられ、2020年には200万人に達すると推測されています。同省は“喫煙に対する規制”を強化するなど、“大衆の煙草による健康被害の拡大防止に努める必要がある”ことを指摘しました。

また、報告によると、中国では、1990年代にたばこの消費量が急激に増加し、1950年代の消費量の約4倍に達したとしています。そして、現在では、中国国内で年間約1兆6000億本が消費されているとしています。喫煙を開始する平均年齢も、1980年代の22.4歳から2004年には19.7歳に低下し、“喫煙者の若年化”が進んでいることが示されました。一方、肺癌による死者は90年代の時点で70年代の倍以上に増加し、同省は“今後、20-30年間は肺癌患者の増加傾向が続く”と推測しています。

煙草は、気管や心臓の悪い人が吸うと、咳や息切れの原因になるなど身体に有害であることは以前より知られていました。煙草の煙には、現在分かっているだけで4000種類以上の様々な化学物質が含まれていることがわかっています。そのうち有害であることが判明しているものだけでも200種類を超えているといわれています。その中でも、“一酸化炭素、ニコチン、タール”などが“代表的な有害物質”です。

“一酸化炭素”は、血液中の酸素運搬に関わる“ヘモグロビン”との結合が、酸素の240倍と極めて強力なため、一酸化炭素が体内に入ると、ヘモグロビンの酸素運搬能力が低下する結果、全身的な酸素欠乏を引き起こします。一酸化炭素は、狭心症などの虚血性心疾患や慢性気管支炎や喘息などの慢性呼吸器疾患の増悪因子となることも知られています。

人は初めて煙草を吸った場合に、通常、頭がクラクラしたり、気分が悪くなったりなどのいわゆる“急性ニコチン中毒”を起こします。しかし、喫煙を繰り返してゆくうちに、肝臓がニコチンを分解出来るようになり、本数も徐々に増加し、やがて血液中に一定のニコチンがないと不快感を覚えるようになります。これが“ニコチン依存症”です。

“ニコチン”は“有害物が脳内に入らないように設けられた脳の関門(血液―脳関門)”を容易に通過して、脳内の“報酬系システム(脳に快楽をもたらす部位)”に作用することがわかっています。これが“ニコチン依存症”につながると考えられています。

ニコチンの毒性は青酸カリにも匹敵するといわれており、ニコチンそのものを経口摂取した場合、中毒量は1~4mg、致死量は30~60mgといわれています。1本の煙草には10~20mgのニコチンが含有されており、煙草を1本吸うとそのうちの3~4mgが吸収されます。乳幼児の場合、致死量は10~20mgですから、1本の煙草を“誤って食べてしまう”と、死亡する可能性もあります(実際には、煙草を摂取すると、ニコチンの“催吐作用”によって、通常は“嘔吐が起きる”ため、重症となることは稀ともいわれています)。

“タ一ル”の中には“ベンツピレン”などの数多くの“発癌物質”が含まれています。すでにわかっている発がん物質の多くは“細胞複製の設計図であるDNA”を直接障害します。喫煙との関連性が指摘されている癌は、肺癌だけではなく、口腔癌、喉頭癌、食道癌、胃癌、肝臓癌、膵臓癌、子宮癌、乳癌、膀胱癌など多くの癌が、喫煙と関連性があることが明らかになっています。

この他、喫煙者は、慢性気管支炎、肺気腫(肺組織が破壊される病気)などの呼吸器疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍などの消化器疾患、高血圧、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)、閉塞性血管障害(下肢の動脈などに血栓が詰まる病気)、脳動脈瘤・クモ膜下出血などの心血管・脳血管疾患などにも罹患しやすいことが知られています。全死亡率(死亡原因を問わない死亡率のこと)も喫煙者は非喫煙者と比べると有意に高いことが知られています。また、妊娠中の妊婦が喫煙すると、胎児の栄養不足ならびに酸素不足を招き、流・早産や死産、低出生体重児の原因となりうることなども報告されています。

最近では、煙草の弊害は“煙草を吸う本人”の“能動喫煙(直接喫煙)“だけではなく、“煙草を吸う人の周囲にいる人”に対する弊害、つまり“受動喫煙(間接喫煙)”が問題となっています。この理由は、喫煙者が吸い込む“主流煙”よりも、煙草の先から出る“副流煙”の方が、有害物質を多く含むためです(約3~5倍)。実際、“煙草を吸わない妻が、肺癌になる確率は、夫が吸う煙草の本数に比例して高まること”、“親が煙草を吸っている家庭の幼児は気管支炎や肺炎になりやすいこと”なども報告されています。

このような喫煙による健康被害を防ぐためには、“禁煙”が重要になります。自分の意思でどうしても禁煙出来ないような場合には、“禁煙ガムやニコチン貼付薬などの禁煙補助薬”が効果的な場合もあります(現在、ニコチン貼付薬は“保険適応”となっております)。 

最近では、“禁煙補助のための内服薬”も開発されています。この薬はニコチンの代替成分を含むのですが、脳内でニコチンの影響を受ける部位に作用することによりいわゆる“禁断症状”を和らげると同時に、煙草を吸った場合に“ニコチンの作用をブロックする働き”もあるそうです。

米食品医薬品局(FDA)は国民への健康への利益が大きい”と判断し、“優先審査”の対象としたようです。日本では現時点で未認可ですが、近い将来、認可されることが期待されています。ただし、これらの薬物治療を行う場合には“効果と副作用について”医師と相談しながら治療を進める必要があります。